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バイデン大統領誕生への希望>民主党政権と金融取引税
2021.01.27
バイデン大統領誕生への希望>民主党政権と金融取引税

2021年世界はコロナ禍でたいへん厳しい状況ですが、希望と言えば、米国でトランプ政権が終わりバイデン大統領が誕生したことです。ようやく米国は国内外で対立と憎悪をもたらすトランプ流米国第一主義から決別し、国際協調・協力へと舵を切りました。

 

●大統領令で「COVAX(コバックス)」への参加に注目を

 

早速バイデン大統領は、コロナ対策のため1.9兆ドル(約200兆円)規模の追加経済対策案をまとめるとともに、矢継ぎ早に大統領令を発しました。その中で、国際協力関係を見ますと、気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」への復帰、世界保健機関(WHO)の脱退撤回があり、そしてワクチン開発に各国が共同出資・購入する枠組み「COVAX(コバックス)」への参加もあります。コロナ対策において途上国と共にあることを宣言したと言えます。

 

●バイデン政権の財政政策

 

ところで、同政権の財政政策を見ますと、「グリーン・ニューディール」実現のための環境インフラ投資、雇用拡大や経済格差の解決など10年間で11兆ドル(約1140兆円)と試算される大型財政政策を掲げています。問題はその財源です。同政権は、「フェアな税制」をということで基本的に富裕層や企業への増税、つまり法人税、所得税、金融資産税のアップによって賄うとしています。しかし、民間シンクタンクの試算によれば(*)、増税での収入は4兆3000億ドルであり、とうてい財政政策を賄いきれません。

 

(*)米債務590兆円拡大 「バイデン政権」なら―民間試算

 

 もちろん、税収全般が上がれば賄いきれないことはないと思いますが、コロナ禍による経済活動の落ち込みからしてかなり困難だと思われます。そこでもう一つの税収の選択肢として金融取引税(FTT)がいずれ浮上してくると思われます。というのは、バイデン政権内部にも、民主党の有力議員の中にもFTTを支持する勢力が存在しているからです。それを見てみましょう。

 

●政権&民主党内の金融取引税推進派

 

<政権内部でのFTT推進者>

 何よりも副大統領のカマラ・ハリス氏が筆頭です。また、閣僚級の行政管理予算局(OMB)局長のニーラ・タンデン氏。彼女はリベラルなシンクタンクである「アメリカ進歩センター」の所長です。さらに、大統領経済諮問委員会(CEA)の委員に、FTT支持のオバマ前政権でバイデン氏の首席経済顧問ジャレド・バーンスタイン氏、ワシントン公平成長センター所長のヘザー・ブシェイ氏が入っています(米国シンクタンクIPSの情報より)。

 

<有力な国会議員でのFTT推進者>

 これはいうまでもなくバーニー・サンダース上院議員であり、彼は今回上院予算委員会の委員長に任命されましたので、予算審議で辣腕を発揮するのではないかと思います。大統領予備選挙に出たニューヨーク州のカーステン・ギリブランド上院議員も強く主張しています。古くからがんばっているのは、2008年からFTTを提案してきたオレゴン州のピーター・デファジオ下院議員です。

 

そのピーター・デファジオ下院議員は、一昨年に引き続きウォール・ストリート法を今月15日提出しました。それは株式、債券、デリバティブの販売に0.1%(10ベーシス・ポイント)を課税し、10年間で推定7770億ドルを調達しようというものです。この法案にはジェイムズ・クライバーン下院院内幹事も含め、総勢15人が共同提案者になっています。(**)

 

(**)Tackle injustice, tax Wall Stree

 

●米国が金融取引税実現の先陣を切るか?

 

コロナ禍による未曾有の経済危機に対して、世界各国は莫大な財政赤字によって対策を立てています。この赤字はいずれ増税によって賄うしかなく、その増税につき国民への直接負担を最小限に抑えるとすれば、莫大な利益を上げているセクターへの増税こそが求められています。それは金融セクターとデジタルITセクターと言ってよいでしょう。

 

欧州連合はFTTにつきタイムテーブルを決めており、2024年までに実施成案を得る予定ですが、ルクセンブルグ他反対する国も多く予断が許されません。他方、米国はFTTが正式に政府案として浮上していませんが、今後の情勢で浮上してくる可能性は大きいでしょう。ただし、国会勢力の現状から、とくに上院では共和党が半数を占めていることから、この2年間のうちに実施というのは厳しいと言えます(下院も安定多数ではない)。ありうるのは2022年の中間選挙で民主党が上院でも安定多数を占めてからかもしれません。

 

ところで、欧州連合も米国も金融取引税と言いながら、外国為替取引税にはアウトリーチしていません。その理由は、金融セクターの強い反発があることもさることながら、取引場が基本的に国内にあり金融当局の監視も及び、それだけ徴税しやすいからでしょう。いずれにせよ外国為替取引税にまで課税対象を広げることができれば、税収が格段にアップするとともに、国境を超えた取引という性格から国際連帯税としてふさわしいと言えます。(了)