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開発のための資金:国際租税枠組み条約、SDRスキーム>フォーラム総会に向けて
2025.06.10
開発のための資金:国際租税枠組み条約、SDRスキーム>フォーラム総会に向けて

来る6月29日(日)、グローバル連帯税フォーラムの第15回総会が開催されます。開催にあたって簡単にご挨拶を述べさせていただきます。

 

               グローバル連帯税フォーラム・代表理事 田中 徹二

 

■ グローバル化の行き過ぎ、自国第一主義・ポピュリスト勢力の伸張

 

「富裕層がさらなる富を築き、それ以外がさらに困窮するという二極化した経済において、現在、あまりにも多くの人々が繁栄を逃している。この分断が(トランプ政権の)保護主義政策の台頭を助長した…。資本主義は機能する。ただ、あまりにも少数の人々にとってだ」と述べたのは、世界一の米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンクCEOです(*)。グローバル化の最前線にいる人の明け透けな物言いです。

 

経済のグローバル化が行き過ぎた結果、先進国においては中間層がやせ細り富裕層と大多数の取り残された人々というように格差が拡大してきました(米国で顕著な事態に)。このことはすでに2016年の米トランプ第1次政権の誕生(就任は翌年1月から)や英ブレグジット(EUからの離脱)の時に散々指摘されてきたことですが、以降も格差が拡大し続け、米国ではトランプ第2次政権が生まれ、欧州では極右・ポピュリスト政党がいっそう台頭してきました。

 

■ 先進国による途上国援助の停止(米国)と後退(欧州)

 

一方、途上国においては一部新興国の台頭はありつつも、新型コロナ禍等から債務危機に見舞われ、貧困・飢餓、そして難民・避難民が拡大しています。

 

トランプ政権の高関税を武器にした米国優先主義は世界中で軋轢を生じさせていますが、とくに看過できないのは、突然米国際開発庁(UNAID)を実質的に解体し、国際援助のほとんどを一時停止したことです。この結果、食糧や医療支援の停止で百万人単位での犠牲者を生ずる恐れが出てきています。実際、6月5日国連総会でエイズ対策についての会議が開かれ、その場で「米がエイズ支援停止の場合には4年後までに死者が400万人増となる」と報告されました(**)。

 

また、ODA優等生であった欧州でも、英・仏・独などがODA削減に踏み切りました。主要国がこぞって国際協調よりも自国優先や地政学を重視する傾向となり、途上国の危機はいっそう厳しくなりそうです。

 

■ 排外主義が拡大する中での途上国支援、フォーラムの二つの方針

 

日本国内においては、超円安以降の物価高騰とくに食料品高騰が続き、他方賃金アップがそれに追いつかないことにより国民生活は苦しいものになっています。こうした背景から、現役労働者の間に、高齢者や在日外国人等に対しての分断・排外主義的思考がSNSを通じつつ拡大しています。

 

このような情勢の中で、私たち途上国援助・国際協力としてのNGOの役割は何でしょうか? 当フォーラムは、(前身の団体活動含め)20年近く国際(グローバル)連帯税の実現を目指し活動してきました。しかし、今日日本の世論においても、欧米の風潮と同じように「途上国にカネを使うな、(困っている)国内の自分たちに使え」という声が大きくなりつつあります。こうした中で、一国内で連帯税実現は厳しいものがあるものの、フォーラムとしては国際的な包括的かつ持続可能な税制を求める「国際租税枠組み条約」の取り組みと連動して実現を図っていきたいと考えています(個々の税制は議定書で実現していく)。

 

とはいえ、上記枠組み条約が承認されるのは2017年9月以降となりますので、その間途上国援助のための資金調達を何としても見出さなければなりませんが、そのひとつが先進国では流動性や外貨準備としてほとんど未使用状態にあるIMFのSDR(特別引出権)です。SDRは外貨準備に積まれていますが、日本では本年4月末現在で600億ドル(約8.6兆円)も有しています。ちなみに外貨準備全体では1兆2,983億ドル(約186兆円)もあります(***)。もし積み上がっているSDRを途上国支援に使用しても、国庫の一般会計から拠出するわけでも、新税を制定するわけでもないので、抵抗なく実施できるのではないでしょうか。ということで、この資金調達スキームにもチャレンジしていきたいと考えています。

 

(*)【日経新聞】米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極化が助長」
(**)【NHK】“米がエイズ支援停止の場合 4年後までに死者400万人増”国連
(***)【財務省】外貨準備等の状況(令和7年4月末現在)

 

 

info:g-taxセミナー:国際租税枠組み条約交渉の振り返りと今後の取り組み

 

  ◎日時:2025年6月29日(日)午後2時30分~3時30分(延長の可能性あり)
  ◎場所:Zoomで開催
  ◎参加申込:gtaxftt@gmail.com まで。後ほどリンクを送ります。
  ◎参加費:無料
  ◎提案者:金子文夫(グローバル連帯税フォーラム/横浜市立大学名誉教授)