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ピケティの予言が現実に>トランプ・リスクに大慌ての産業界
2017.01.07
ピケティの予言が現実に>トランプ・リスクに大慌ての産業界

2017年の幕が開けましたが、米国トランプ次期大統領の出現で、世界は政治的・経済的に大きなリスクを抱えての出発となりそうです。

 

5日には、トヨタ自動車のメキシコ新設工場につきツイッターで「ありえない! 高い関税を払え」と投稿し、トヨタのみならずメキシコ進出企業は軒並み大慌てという事態になっています。グローバル化の先駆けともいうべきNAFTA(北米自由貿易協定)が危うくなっているのですが、グローバル化が行き過ぎた結果(含む、自由貿易)、その鬼っ子ともいえる人物が今や大統領になろうとしています。

 

それにしても世界最大の権力者になろうとしている人物が、一方的にツイッターで見解を述べる、攻撃する(しかも下品に)なんて、まったく信じられないことです。こんな人物が核のボタンを持つことになりますから、実に厄介極まりないですね。

 

ところで、こうした事態が起こり得るかもという予測は、トマ・ピケティの『21世紀の資本』の中に出ています。最初のフランス語版は2013年に出版されているので、3年前に予測できた?ということになります。当該箇所を見てみましょう。

 

こういうようなことが起きなければ、国粋主義的な色彩を持つ防御反応がほぼ確実に生じてしまう。たとえば、各種の保護主義と、資本統制の強制との組み合わせへの復帰が生じるかもしれない。…これはほぼまちがいなくフラストレーションにつながり、国際的な緊張が高まってしまう。〔「第15章 世界的な資本税」日本語版540頁〕

 

「こういうようなこと」とは、「世界的な資本税(注:資産税)」の実現のことですが、それを何のために行うのかと言えば、歴史的な最高記録となりつつある富の格差をもたらしている「21世紀のグローバル化した世襲資本主義」を規制し民主主義を取り戻すため、です。そうでなければ、資本主義は「次の危機や次の大戦(今度は本当の世界大戦になる)を待つ」ことになるからです。〔以上、「第13章 21世紀の社会国家」日本語版489頁の要約〕

 

どうでしょうか? “米国ファースト”を掲げるトランプ新大統領の出現は、文字通り「国粋主義的な色彩を持つ防御反応」として保護貿易などに走りつつあります。さらに、今後(米国の雇用を奪っていると信じ込んでいる)中国との間できな臭い出来事が生ずる恐れなしとは言えません。

 

とはいえ、私たちは引き続き、民主主義を取り戻すために世界的な資産税をめざすことになりますが、これはピケティも言うように徹底したグローバルな金融の透明性と情報共有が前提となります。そういう意味で、現在OECD/G20が取り組みつつあるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの取組みを前進させていくことが必要です(とくに税務当局に提出する多国籍企業の国別報告書の取組み)。この取り組みの進展なくしてタックスヘイブンを根絶することはできません。

 

また、欧州(10カ国)でなかなか決まりませんが、金融取引税の取組みにも注目していくことが重要です。こちらも金融の透明性と情報共有が求められるからです。

 

さて、最新の富の格差ですが、昨年末ブルームバーグが次のような記事を配信していました。2016年中経済・景気の浮き沈みはあったものの「(世界の)富豪の資産評価額の合計は今年に入って12月27日の株式取引終了時点までに5.7%、2370億ドル(約27兆9000億円)増加した」(16年12月28日付ブルームバーグ)。昨年1月に「世界で最も富裕な62人の資産と世界人口の(下位)半分の36億人の資産の合計とほぼ同じ」と国際NGOオックスファムが発表しましたが、今年は最富裕層の数がいっそう減っていくと思われます。

*【ブルームバーグ】世界の富豪の資産評価額:今年は27.9兆円増加

 

●トランプ次期大統領のツイッターのフォロアー:18,946,051人!!