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(日経報道)「アマゾン課税」をG20が議論>日米租税条約改正必要だが
2018.02.25
(日経報道)「アマゾン課税」をG20が議論>日米租税条約改正必要だが

昨日(24日)の日本経済新聞の1面トップに「G20『アマゾン課税』協議へ EU案軸、売上高を対象」という記事が掲載されました。ようやくG20レベルでもアマゾン・ドットコム等の電子商取引業者の「法人税」未払い問題に対処する動きになってきました。

 

問題は二つあります。

 

(A)…ひとつはアマゾンが日本で展開しているように配送センターを持ち営業をしていながら、その配送センターや倉庫が(支店や工場のような)「恒久的施設(PE)」ではないという規定のため、法人税を払わないで済んでいるという問題(「PEなくして課税なし」)。これに対しては、OECDが昨年6月国際的な課税逃れを防ぐ多国間協定を採択し、「『大型の物流倉庫』があれば消費国で課税できるようルールを変更」(日経新聞)しました。それで日本も19年1月から適用することになるはずです(今国会での承認を得て)。

 

(B)…もうひとつは、「ネット上で完結する音楽や映画の売買は相変わらず所得課税の抜け穴だ」(日経新聞)という状態で、このままでは課税できません(OECDで詰め切れなかったのですね)。それで3月のアルゼンチンでのG20財務相・中央銀行会合で議論し、4月中にOECDでルール作りを議論する、という段取りになったようです。

 

しかし、このままでは実物を販売しているアマゾンに課税できません!

 

日経新聞を読むと、(A)で関連法を改正して日本国内で改正法人税ができればアマゾンに適用できるかのように読めますが、実はそうではないのです。というのは、米国はOECDの多国間協定に署名していませんので、日米租税条約(二国間条約)を改定しないと、アマゾンなど米系IT企業関係にはすぐに適用できないのです。多分米国の壁は厚く、相当難しい交渉が予想されます。私たちは、交渉を政府にだけ任せるのではなく、市民社会側からも圧力をかけていく必要があります。

 

(B)の方ですが、これについては「欧州委員会が主張する2段階によるルールづくり」、つまり第一段階として「平衡税」を、第二段階としてネット上の通販に対しモノでの(改正)PEような規定を行う、というものです。

 

アマゾン・ドットコムを柱に、米系IT企業(アップル、グーグル、フェイスブック)がIT空間はもとよりビッグデータはじめ情報を独占しはじめています。しかも、税金を払わないで。「グローバル企業は価値が創造されるところで税金を支払うべき」(OECD BEPSプロジェクトの柱)です。まず税金をしっかり払ってもらうように世論を盛り上げていきましょう。

 

 

【日本経済新聞】G20「アマゾン課税」協議へ EU案軸、売上高を対象 

 

 20カ国・地域(G20)は、米アマゾン・ドット・コムのような電子商取引業者に対する課税強化案を検討する。現在の租税ルールでは、国境を越えてインターネットで売買される電子書籍などの利益に、各国が法人税をかけられないためだ。国ごとの売上高に課税する欧州連合(EU)の案を軸に協議が進むが、実現すればネット企業の立地戦略やサービス展開に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 経済協力開発機構(OECD)の租税条約では、グローバル企業が進出先の国に支店や工場などの恒久的施設(PE、Permanent Establishment)を持たない場合、法人税をかけられない。

 たとえばアマゾンの電子書籍「キンドル」を日本の消費者がネットでどれだけ購入しても、日本政府はアマゾンの利益への課税権がない。法人税は米政府に入る。動画配信サービスの米ネットフリックスが米本土のサーバーから配信した映画・ドラマのほか、音楽ソフト、アプリといった様々な「無形固定資産」も法人税は非課税扱いだ。

…(中略)

 OECDなども野放図にしていたわけではない。ネット企業の「大型の物流倉庫」があれば消費地国が課税できるようルール変更しており、日本も19年1月から適用する。それでもモノの動きを伴わず、ネット上で完結する音楽や映画の売買は相変わらず所得課税の抜け穴だ。

 G20は3月のアルゼンチンでの財務相・中央銀行総裁会議で本格的な議論に着手し、OECDの作業部会に論点報告をする。これを受けOECDは4月にも電子商取引への課税に関する報告をまとめ、具体的なルールの話し合いへとステップを進める構えだ。

 現時点でG20で有力視されている案は、欧州委員会が主張する2段階によるルールづくりだ。提唱者の中心はフランスやドイツ。欧州勢は同じサービスを提供しても海外企業と国内企業で税負担が異なるのは不公平と考え、内外企業の租税負担のバランスをとるため海外企業に限って「平衡税」と呼ぶ税金を課す。

 国ごとの売上高に一定の割合で課税する手法で、OECDルールに沿って企業は19年5月にも国ごとの売上高を公表する。このデータなどを参考に各国の課税当局は平衡税を課す。これが第1段階だ。

 第2弾として早ければ20年にも、課税の仕方を抜本的に見直す。具体的には「恒久的施設」の概念をあらため、モノだけでなく、実際にネット通販を展開している国でのデータ収集量なども基準に加える案などがある。

…(中略)

 日本では海外から配信される音楽ソフトなどに15年10月から消費税を課税するようになった。ネット商取引への法人課税は積み残しており、日本政府は「全ての国に適用される国際ルールが必要」との立場。暫定的にEU案を支持する見通しだ。

 難航が予想されるのは米国との調整だ。EU案は結果としてアマゾンなど米ネット大手を狙い撃ちするかたちで、「米国第一」を掲げるトランプ米政権の反発が予想される。

…(後略)