米欧では、このような不正・スキャンダルがあった場合政府・議会の対応が早いですね。それに比べ我が国は…。
で、米facebookスキャンダルですが、簡単に言いますと「米フェイスブックが保有する5000万人超のユーザー情報が不正に外部に流出し、それが英国の選挙政策コンサルタント会社に渡ったが、その会社が2016年の米大統領選挙でトランプ陣営についたのでユーザー情報が使われたのではないか」というものです。
この事実が発覚してから、米国でもフェイスブックなど「大量のデータを駆使し存在感を増す『プラットフォーマー』に対する規制強化の動きが」加速しそうだ、という事態になっているようです(下記、日経記事参照)。一方、欧州では「一般データ保護規則(GDPR)」が2016年4月に制定され、この規則に違反すれば、最大で年間売上の4%に相当する罰金を科されるとのこと(下記、ロイター記事参照)。また、英国では選挙政策コンサルタント会社に対して、英当局が捜索令状の手続き着手したとのこと(下記、ブルームバーグ記事参照)。
金融・資源資本主義からIT(情報)・金融資本主義へ
ところで、大量の情報を保有するプラットフォーマーですが、それらのIT企業が今や世界の株式時価総額ランキングのトップ10のうち、何と8つを占めるようになっています。①アップル(米)、②アルファベット(グーグル 米)、③アマゾン・ドット・コム(米)、④マイクロソフト(米)、⑤テンセント(中国)、⑥フェイスブック(米)、⑧アリババ(中国)です。
このIT企業のほかに、⑦バークシャー・ハサウェイ(保険・投資会社、米)、⑨JPモルガン・チェース、⑩中国工商銀行(中国)という金融企業がかろうじて占めています(いずれも2018年2月末現在)。
2008年の金融危機前の07年時点でのトップ10は、資源会社(3社)と金融会社(4社)が占めていまして、マイクロソフトが第3位で、トヨタが10位でした。
そういう意味で、経済のグローバル化のけん引役は今やITプラットフォーマーで、大量というよりはばく大な個人情報(フェイスブックで20億人)を所有し、広告や小売業の分野で独占化を進めており、何よりも税金を払っていません(または過少にしか払っていない)。
我が国でも個人情報保護に関して点検しておかないと不安ですね。また、ITプラットフォームは、よく言われていますように、半ば以上公共的なものになっています。つまり、私企業にだけ扱わせるのではなく、何らかの社会化(システム)が必要です。当面、税金も払わず独占化を強めるITプラットフォーム企業を監視していきましょう。
【日経新聞】データ独占に募る不信 フェイスブック、米で規制強化論
【ラスベガス=中西豊紀】米フェイスブックが保有する5千万人超のユーザー情報が不正に外部に流出した。自社の管理が及ばない第三者の規約違反だとしてフェイスブックは責任を否定するが、知らぬ間に個人情報が悪用されうるデータ管理のもろさを露呈した。大量のデータを駆使し存在感を増す「プラットフォーマー」に対する規制強化の動きが米国でも加速しそうだ。
…中略…
フェイスブックに過失はないのか。今回の問題点はまず、日本や欧州には個人情報保護に関する厳しいルールがあるが、米国には包括的な法律がないところだ。企業は個別の契約などで個人情報の扱いについてを定めることになっている。
ただ調査目的でのデータ取得について契約した教授が、契約に違反して外部に流用した。東京大学の生貝直人客員准教授は「フェイスブック自身に悪意がなくても、悪意ある第三者が関わったときに何が起きるかを考える責任が同社にはある。無防備だったとの批判は強まる」とみる。
データが大統領選で利用された可能性がある点も問題だ。本人も意識しないうちに特定候補への投票を誘導されるような情報操作を受けることについて、個人情報保護に詳しい板倉陽一郎弁護士は「米国では広い意味でのプライバシー侵害として社会問題化している」と指摘する。
巨大なデジタル企業が膨大なデータを抱え、周辺企業がそれを利用する「データ経済圏」が増殖する。今回の問題はその世界で生き始めている企業や個人にとって大きな分水嶺となる。
【ロイター】焦点:個人データ保護規制、フェイスブックの「アキレス腱」に
【ブルームバーグ】ケンブリッジ・アナリティカ、英当局が捜索令状の手続き着手
★図は、上記日経新聞記事より