毎年各省庁の税制改正要望は8月末締切りで、内容は財務省のHPに一覧の形で掲載されます。今年はコロナ禍のため9月末締切りでした。外務省は11年連続して国際連帯税を要望してきましたが、今回財務省のHPを見ると、一覧に外務省の名がありません。何も要望していない、つまり国際連帯税要望を取り下げてしまいました。このことは外務省がSDGsなど地球益のための(同時に外交益のために)資金づくりを断念したことを意味し、誠に遺憾であると言わざるを得ません。
●河野太郎前外相で盛り上がった国際連帯税議論と外務省のとん挫
ご承知のように、一昨年(2018年)5月のG20ブエノスアイレス外相会合で河野太郎外相(当時)がSDGs達成のための資金として国際連帯税を提案して以降、出席する国際会議の場で、また国会においても国際連帯税の必要性を訴えてきました。同外相は19年7月『SDGs達成のための新たな資金を考える有識者懇談会』を設置しました。その問題意識は「日本の税制ということだけでなく、国際的にできればいろんな議論を経て統一した課税ルールというのを作っていきたい」と、いうものでした。
グローバル連帯税フォーラムは、日本リザルツや世界連邦運動協会などとともに、また河野外相の出席も得て、18年と19年のそれぞれ7月に「SDGs達成のための国際連帯税を実現するシンポジウム」を開催してきました。とくに後者のシンポジウムには大学生等若者たちが200人近くも参加するなど大いに盛り上がりました。また、懇談会にはグローバル連帯税フォーラムの田中徹二もメンバーとして参加することになりました。
その懇談会ですが、新たな資金として、「国際連帯税+民間資金の活用」として議論を進めることでしたが、途中から後者の議論が主となってしまい、「課税方式には(元々)様々な問題があり、コロナ禍により日本経済が厳しい中で新税導入は現実的ではない」という結論に落ち着けようという流れになってきました。こういう中で、田中(委員)としては連帯税につき河野外相の問題提起に答えていないこと等から、最終報告書の提言には同意できないこと、従って委員を辞退することになりました。
率直に言って、9月に外務大臣が変わる前後から懇談会の性格もがらっと変わったと言えます。また、これはコロナ禍の前ですが、自民党税制調査会の幹部から税制に対する圧力もあり、外務省がこれに抵抗できない面もありました。
●今後の国際連帯税実現に向けての展望>連帯税議連とともに
以上の経過からして、外務省を通しての国際連帯税実現の道は、当分閉ざされたと言えます。これに対して、国際連帯税創設を求める議員連盟は外務省に対して遺憾の意を表するとともに、議員立法による国際連帯税実現の道を切り開くべく、次の臨時国会が開催されてから総会を開催することになりました。まず国際連帯税を取りまく状況について勉強会を持つとともに、議員立法に向けてなど具体的な活動について議論していく予定です。
この勉強会ですが、次の先生方にもご協力を得られるようにしていきたい、としています。それは小林慶一郎・東京財団政策研究所主幹や佐藤主光・一橋大学教授です。お二人とも国際連帯税についてとくに関心を寄せていませんでしたが、コロナ禍を経ることにより国際連帯税について発言するようになりました。それは「コロナ禍による国家財政の大幅悪化に対処するための新しい税として金融取引税等々を実現すべき」とし、その中で「新税の一部を(途上国支援のための)国際連帯税とすべき」と提案*しています。
*「ポストコロナの政策構想:税制の国際協調による財政再建を(下)」
さらに、国際連帯税を取りまく状況で言えば、欧州連合(EU)のコロナ対策基金での金融取引税等の新税論議、また米国の(政権を取る可能性がある)民主党有力者での金融取引税論議なども注目していく必要があります。
ともあれ、グローバル連帯税フォーラムは引き続き国際連帯税実現を議員連盟とともに図っていく所存です。近々あらためて外務省の国際連帯税要望の断念を受けて声明を出す予定ですので、注目くださるよう願います。