ひょんなところで日本のエコノミストが金融取引税を取り上げています。それも法人税減税の原資(代替財源)として使われるかもしれないという心配からです。
そのエコノミストとは、大和総研の吉井一洋さんですが、こちらのレポートです。
◆「政府税調委員の株式課税強化提案の問題点」
http://www.dir.co.jp/research/report/law-research/tax/20140313_008329.html
今月12日に政府税制調査会の法人課税専門家委員会での法人税改革の第1回目の議論がはじまりました。が、減税の代替財源も課題となっており、吉井さんは「株式の配当やキャピタルゲインの課税の強化」が議論されたこと、そして新税として「『金融取引税の導入』などが検討される可能性もある」、ということで心配しているのです。
もとより私たちも(吉井さんと違う理由で)法人減税の代替財源に金融取引税が使われることに反対ですが、こんなところに金融取引税が出てくるのはやはり欧州での動きなどの反映でしょうか。
ところで、法人減税が次のアベノミクスの3本の矢の目玉で、実効税率を10%も下げたいとのことですが(約35%から25%へ)、減税のための財源は5兆円も必要となってきます。さすがに代替財源をそう簡単に見つけることができないこともあり、この間「法人税パラドックス論」が盛り上がっています。「法人税率を大幅に引き下げたにもかかわらず、2000年代に法人税収が増加した」というように。何やら鼻っからインチキくさいのですが、専門家にそう言われると戸惑ってしまいますが。
が、このことに対し、明確な批判を展開しているのが、下記のBNPパリバ証券の河野龍太郎さんです。
【ロイター通信】コラム:「法人減税でも税収増」のまやかし=河野龍太郎氏
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYEA2O01P20140325
河野氏は、①財源論棚上げの減税は不適切、②租税特別措置は特定企業を利する政策、③法人税パラドックス論の罠、④企業への所得移転は本当に有効か、ということで論を進めています。その中で、「租税特別措置の廃止を(法人減税の)財源にすることを主張してきたが、全廃しても1兆円に満たない」と言っています。
が、ナフサ減税の件はどうなっているのでしょうか? 確か2010年の段階で3.6兆円もあり、これを削減するかどうかで政府税制調査会でたいへんな議論があったように記憶しています。で、26年度税制改正大綱を見ましたら、「ナフサなどの原料用石油製品等に係る免税・還付措置の本則化については、引き続き検討する」ということでまだ免税等の恒久化にはなっていないようですが。
それにしても明日から消費税がアップされます。なのに企業にだけ減税ということでとうてい納得できないものがあります。