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欧州議会、新財源として金融取引税などを決議!6月パリサミットでも議論!
2023.05.15
欧州議会、新財源として金融取引税などを決議!6月パリサミットでも議論!

写真は欧州議会より

 

欧州議会は5月10日、欧州委員会が今年後半の域内予算の新たな財源を提案する際に、コロナ復興基金の借入金を返済し、様々な新規ニーズに対応できるよう金融取引税(FTT)や暗号通貨課税、デジタル課税等を含めるべきとの決議を、賛成356、反対199、棄権65で承認しました(注1)。

 

一方、6月22-23日パリで「Summit for a New Global Financial Pact」が開催されますが、ここでもFTTが議論の中心の一つになりそうです(詳細は後日)。これらの動きに比して、日本政府は国内の諸政策において、また19日から開催されるG7広島サミットにおいて、FTT等の新財源にイニシアティブを発揮できずにいます。まずは、欧州議会の動きを見てみます。

 

●コロナ復興基金等での新財源が望まれる背景

 

EUは2020年新型コロナ危機からの復興計画である「次世代EU」計画を決め、総額9000億ユーロの共同借入を決定しました。この返済のための財源として、「排出量取引制度(ETS)」、「炭素国境調整メカニズム(CBAM)」、「OECD/G20が合意した巨大多国籍企業に対するグローバル税」によって収入を得ることにしています。

 

しかし、これらの財源だけでは返済資金が圧倒的に足りないことが明らかになりました。償還を行うには、返済がはじまる2028年から30年間にわたり毎年約150から200億ユーロという多額の資金を必要とします。当初見込では上記3税制により年間最大170億ユーロの収入になるはずでしたが(注2)、実際は約65億ユーロ程度の収入にしかならないからです。

 

また、共同債の利回りが大幅に上がり、借入コストがかさんでくることも明らかになりました。その原因は投資家にとってこの共同債に対するEU側の本気度が見られないこと、つまりしっかりした返済のための自主財源の姿が見えないからです(注3)。

 

●金融取引税から公正国境税まで多様な新財源メニュー

 

危機感を持った欧州議会は、欧州委員会に対して「できるだけ早く、遅くとも2023年の第3四半期までに」新しい財源を提示することを求めました。

 

その新しい財源については、FTTから公正な国境税(世界銀行が定義する貧困から脱出するのに十分な賃金を労働者に支払っていない企業が支払う)まで具体的に挙げています。

 

また域内加盟国に対しても男女の賃金格差、食品廃棄物、生物廃棄物で最も悪い結果を出している国に対するより多くの拠出要請など、実に多様多種類の新しいリソースを挙げています(注4)。

 

●FTTの潜在的収入高を期待、10か国から全加盟国に拡大を

 

決議の報告書を見ますと、FTTについては「自主財源としてのFTTは潜在的な収入が高く、次世代EU(復興計画)の債務返済を促進し、EUの優先事項に資金を供給するための手段を増やすことができると考える」と期待されています。一方、(これまでの10か国による)協力方式で交渉している加盟国に対し「2023年6月末までにFTTに関する合意に達するよう最大限の努力をするよう求める」とも述べ、然る後に全加盟国でFTT導入を検討すべきとしています。

 

従って、FTTにつき2011年に欧州委員会が指令を出してから12年たちますが、早ければ来月中には一定の合意がなされる可能性も出てきました。

 

●6月22-23日(パリ)で「SUMMIT FOR A NEW GLOBAL FINANCIAL PACT」

 

この決議案を提案したのは、議会第一会派の欧州人民党グループ (EPP)と第三会派の欧州刷新 (Renew)が行ったものですが、先の10か国によるFTT交渉でブレーキになっているのがフランス、特にルメール経済・財務相と言われています。しかし、決議を提案したRenewの主要政党はマクロン政権与党のルネッサンス(再生)であり、与党に属しているルメール大臣の宗旨替えが必要になっています。

 

加えて、来月22・23日にはパリでフランスとインド共催で地球規模課題への対策資金を話しあう「Summit for a New Global Financial Pact」が開かれますが、そこでも金融取引税が気候変動対策資金として検討されると思います。(FTTを気候変動資金対策の手段として取り上げる動きは今年G20が開かれるインドでも盛り上がっています。注5)

 

●欧州議会・欧州委員会でのFTT議論に注視し、日本政府も政策化を!

 

実は、このサミットには日本も運営委員会(Steering Committee)のメンバーとして入っており、新協定に向けての議論に加わっています。日本においては気候変動及び人道支援のような地球規模課題へ向けた対策資金と同時に、国内諸政策で赤字国債を膨大に積み上げ財政の持続可能性を失っている現状を打破するために、欧州でのFTTを含む自主財源議論やパリ新協定議論を注視し、政策化していく必要があります。

 

(注1)

EU lawmakers propose transactions tax among new sources of cash to repay joint debt

(注2)

【日経新聞】欧州委、新型コロナ復興基金の「財源」に炭素税など3案

(注3)

【ロイター】コラム:EU、共同債利回り上昇で問われる統合への本気度

(注4)

REPORT on own resources: a new start for EU finances, a new start for Europe 

(注5)

Levy a tobin tax for the climate loss and damage fund

Consider transaction tax for climate financing: Experts to G20

 

※写真は、決議案を提案する欧州議会議員