5月20日参議院決算委員会(注1)で国際連帯税創設を求める議員連盟の幹事長でもある石橋通宏議員(立憲民主党)が、ODA(政府開発援助)と国際連帯税について、上川外務大臣に対して質問を行いました。大臣の答弁は、この間の国際連帯税議論に関する経過把握が十分ではなく(これは担当部局のレクが不十分だったと言えます)、残念ながら前向きの回答を得ることはできませんでした。まず、質疑のもようを見てみます(詳細な議事録は下記を参照ください)。
■石橋議員の質問と上川大臣の回答の要旨
石橋議員の質問:
ODA(政府開発援助)が依然として国際公約であるGNI比0.7%拠出に達していないこと、こうしたODAでの資金ギャップを埋めるには、民間資金ではなく公的な責任の下で新たな資金調達メカニズムを講じなければならないこと、その一つの手段が国際連帯税です。今こそ国際連帯税の導入、大臣の決断の下に実施するという立場から、まず外務省は25年度税制改正要望として国際連帯税を提案すべきです。
上川大臣の答弁:
① ODA0.7%目標は念頭にある、新しい資金動員の在り方についても不断に模索をしている、先般超党派(議員連盟の)国際連帯税の話も聞いたが、様々なメニューを否定するわけではない、
② 国際連帯税については、「SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会(以下、懇談会と略)」(注2)で2020年7月に提出した報告書で新税の導入には様々な課題がある旨指摘されたことを踏まえて、外務省では、同年以降、税制改正要望の提出は行ってきていない。現在民間資金動員を促す有識者会議を立ち上げ、様々検討している。
■懇談会「コロナ禍による危機下では税制はなじまない」>正常化したら実施可能性も
1)大臣は、2010年の懇談会報告書を理由に、新税の導入は厳しいので税制改正要望を提出しないことにしたとしていますが、報告書では税制そのものが困難としているのではなく、「入国税としての航空券税の導入は、コロナという地球規模課題を前にして、国民の理解を得ることができるのではないか」とし、しかし「現在航空事業は危機的であり、「国際航空事業が正常化した段階で再考すべきではないか」としています。
2)実際、22年5月19日の参院外交防衛委で、井上哲士議員(共産党)の国際連帯税を税制改正要望に上げるべきとの質問に対し、当時の林外相は次のように答えています。「懇談会の提言はあくまで20年での判断だ。革新的資金調達の必要性、重要性は変わっていない。状況を踏まえながらしっかり検討していきたい」(注3)と答えています。
3)以上から、外務省としてはあらためて国際連帯税(懇談会の指摘は入国税としての航空券税)について、コロナ後の日本の経済状況(この場合、航空業界の正常化状況)等を踏まえつつ検討し、税制改正として要望するかどうかを決めなければならないのです(当然、革新的資金調達の必要性・重要性を認識しつつ)。
ということで、大臣回答はまったく不十分なものでした。国際連帯税創設を求める議員連盟は引き続き外務大臣にアプローチしていくと思いますが、私たちも外務省そのものに①経過をきちんと踏まえること、②懇談会で前向きであった航空券税について検討しつつ、税制改正要望に繋げよ、と要求していきます。
(注1)
5月20日参議院決算委員会 (暦の5月20日をクリック、57分28秒から)
(注2)
「SDGs の達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」最終論点整理
(注3)
参院外交防衛委で国際連帯税質問(井上議員)、外相「革新的資金調達は重要と認識」
【決算委員会・仮議事録・全文】
○石橋通宏君
…(前略)…
まず、ODA全体の話なのですが、外務大臣、言うまでもなく、御存じのとおりで、国際的に大きな資金ギャップが生じています。我が国ODAもかつての額から比較すれば残念ながら大きく減ぜられた額で、国際的にはGNI0.7%約束があるわけですけれども、今回の決算においても大きく足らない額しか措置されていないという現状が続いています。
外務大臣、もう諦めるんですか。諦めるなら諦めるで、国際的に、ごめんなさいと、もう言った方がいいと思いますが、諦めないのであれば、具体的な措置を講じて、やはり0.7%達成するためにきちんと外務省先頭に立って努力をすべきだと思いますが、まずこの点について、外務大臣、見解をお願いします。
○国務大臣(上川陽子君) 今委員御指摘のとおり、政府開発協力援助、ODAにつきましては、九〇年代には、ピーク、世界のトップの座を七、八年間維持してきたという状況から考えると、この間、今半減をしている状況でございまして、大変、日本としてのこれまでやってきた実績からすると、なかなかこの捻出が難しい状況の中を一生懸命対応しているということでございます。
昨年、開発協力大綱が改定をされましたけれども、まさにODAの量をGNI比で0.7%する国際目標を念頭に置くということ、その上で、我が国の極めて厳しい情勢、状況も踏まえまして、様々な形でODAを拡充をし、開発協力の実施基盤の強化のための必要な努力を行っていく旨明記されているところであります。
こうした開発協力大綱も踏まえまして、開発協力の実施基盤の強化のための必要な努力を行うとともに、新しい資金動員の在り方につきましても不断に模索をしている状況でございます。この新しいスキームの提案も含めまして、精力的にこの結果を出し、対応してまいりたいと考えております。
○石橋通宏君 外務大臣、念頭に置くのは、もうずっと念頭に置いて、でも、全然達成できない状況が続いているということで、今大臣、後半、後段のところでおっしゃられた具体的な措置を講じないと、気合だけじゃ達成できません、大臣。
我々、先般、大臣にも受けていただきましたが、超党派で国際連帯税の導入について改めて大臣に要請、要望をさせていただきました。
外務省、ずっとこの間、民間民間民間と言っていますけど、ODAは、公的な責任において公的な資金協力を国際的にするというのがODAです。そのODAでギャップがあるということは、やはり公的な責任の下で新たな資金調達メカニズムを講じていただかなければならない、その一つの手段として国際連帯税を是非一刻も早くという要請を、これ超党派で、自民党、公明党の皆さんとも一緒にさせていただいています。
大臣、今こそ国際連帯税の導入、大臣の決断の下に実施すべきだと思いますが、決断していただけないでしょうか。
○国務大臣(上川陽子君) 今、GNI比の0.7%とする国際目標ということでありますが、このことについても明記をされているところでございまして、今直近でいきますと0.44%、その前は0.39でありましたし、その前は0.34という状況でございますので、粘り強くこの数値につきましてはしっかりと目標に向かって推進してまいりたいと思います。
方法につきましては、先般、超党派で国際連帯税のお話も承っているところでありますし、あのメニューの中の資金開発の中でも様々な方法論があるというふうに思っておりますので、それを否定するわけでは全くございませんが、いろんな方法を講じてまいりたいと思っておりまして、今そのための専門家の委員会を設けながら対応していきたいと思っているところでございます。
○石橋通宏君 様々な様々なとずっと言われているけど、その状態でずっと、今や外務省は税制改正要望にも国際連帯税若しくは同類のものを入れていない状況が続いている、それすらできていないんです、外務省は。
大臣、であれば、来年度の税制改正要望に向けて、国際連帯税、若しくはきちんと様々な手段で、いろんな手段があるということであれば、その手段をきちんと、税制改正要望を外務省からしていただきたいと思いますが、それは大丈夫ですね。
○国務大臣(上川陽子君) まさにこの開発協力大綱、昨年六月改定のものでありますが、大変厳しい財政状況も踏まえつつ、国内資源の動員強化や、またドナーベースの拡大、あるいはMDBsの改革、新たな資金動員手法の検討等の議論、これを主導してきている旨明記をされているところであります。
国際連帯税につきましては、SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会、まさに超党派の会で二〇二〇年七月に提出した報告書におきまして、新税の導入には様々な課題がある旨指摘されたことを踏まえまして、外務省では、同年以降、税制改正要望の提出は行ってきていない状況であります。
その上で、現在、私の下で開発のための新しい資金動員に関します有識者会議を立ち上げまして、民間資金動員を促す施策を含めまして、様々な議論、そして検討を行ってきているところであります。
これまでの経緯もございます開発協力の実施基盤の強化、このための必要な努力、これは引き続き行うとともに、新しい資金動員の在り方につきましても不断に検討を重ねてまいりたいと考えております。
○石橋通宏君 だから、大臣、言ったじゃないですか。民間資金、民間資金じゃ駄目だと、公的にいかなる責任を国際的に果たすのかと、そのためのスキームはどうなのか、それを是非有識者会議で検討いただきたい、そのことも超党派の議連で要請、要望させていただきました。
今後も、私たち議連の方でも、大臣、取組、応援していきますから、是非具体的なスキームを一刻も早く導入していただくように大臣のイニシアチブの下で前に進めていただきたい、今日はそのことを改めてお願いしておきたいと思います。
(以下、質問がミャンマー問題に移る)
※写真は、質問する石橋議員と答える上川大臣