11月7日第83回財務省・NGO定期協議(*)で、当フォーラムは、3項目につき質問を出しました。詳細は下記提出文書を見ていただきますが、まず骨子を述べます。
【質問骨子&足下でのアマゾン等巨大IT企業の租税回避】
〇 BEPS包摂的枠組みの「市場国への新たな課税権の配分」(柱1)につき、今後実施できる可能性は厳しいものがある。実施が伸びれば伸びるほど米国等の巨大IT企業からの法人税を徴税できないか、または過少納税となっている現状を放置することになる。
〇 これは税制上の不公正、ビジネス上の不平等を継続することになり、これを是正するためにデジタルサービス課税(DST)を準備すべきではないか。実際、アマゾン・ドットコムは日本で3兆6663億円も売り上げており(2023年)、過少納税のまま。他のIT企業も同様である。
〇 グローバル化・デジタル化経済における包括的でSDGs理念に相応しいグローバル税制を確立するためにも、またDST実施への米国からの制裁関税を回避するためにも、日本政府は国際租税枠組条約を推進すべきではないか。今後行われる国連総会での付託事項草案の採決に賛同し、議論をけん引すべきである。
【財務省への質問文書】
◎テーマ:BEPS包摂的枠組み(IF)における柱1と柱2の進行状況、デジタルサービス課税の新設、国連国際租税協力に関する枠組条約について
1)BEPS包摂的枠組み(IF)における柱1と柱2の進行状況等についての質問
柱1の「市場国への新たな課税権の配分」については、2024年6月までに多数国間条約の署名、2025年発効という予定でしたが延期されています。今後の展望をどう見ていますでしょうか。
柱2の「グローバル・ミニマム課税」については、我が国でも2023年度税制改正で法制化され、本年4月以降より適用されていますが、今年度の税収はいくらほどになるでしょうか。また、その税収は海外でビズネスを展開している多国籍企業からの税収となりますので、税収の一部をSDGs達成のための革新的資金源として徴収できませんでしょうか。
2)デジタルサービス課税の新設についての質問
これは上記IFの柱1との関連となりますが、もし多数国間条約が不成立となった場合、次の国際交渉-合意までにかなりの時間を要することが予想されます。そうなれば日本においてビジネス展開する米国等の巨大IT企業からの税金が徴収できないか、過少にしか徴収できない状況が続き、これは「価値創造の場で税金を払うべき」というBEPSプロジェクトの原則に反することであり、ビジネス上での公平な競争を妨げるものです。
従って、日本政府としては欧州各国やインド他多数の国が実施している(実施を準備している)デジタルサービス課税を準備し、早期に実施すべきではないでしょうか。また、この税も海外でビズネスを展開している多国籍企業からの税収となりますので、税収の一部をSDGs達成のための革新的資金源として徴収すべきではないでしょうか。
3)国連国際租税協力に関する枠組条約についての質問
BEPSプロジェクト、就中上記IFは100年ぶりの国際課税制度の改変という画期的内容を含むものでしたが、これを主導してきたOECD(経済協力開発機構)プロセスでは行き詰まっています。これに対し、途上国側からは国連を軸とした国際租税制度を構築すべきとして、「国際租税協力に関する枠組条約」をめざす動きが起き、昨年国際租税協力枠組条約ToR起草特別委員会が組織されました。そして、先の8月16日ToR案が採決され、賛成110、反対8、棄権44で可決されました。この反対8の中に日本が含まれ、財務省主税局総務課主税企画官の原田浩気さんが反対意見を述べています。また、棄権44にはEU加盟国(OECD加盟国でもある)が多く含まれていますが、9月の国連未来サミット並びに一般討論演説においてノルウェー政府首相が建設的に取り組むと発言しています。
今後の予定ですが、国連総会において年内に「付託事項」が決定し、同条約および議定書の交渉委員会を支える事務局の設置が決まり、2025年から2027年にかけて同条約および議定書の中身が議論されていきます。
そこで質問です。日本政府は、①未来サミットの『未来のための協定』で謳われている「国際租税枠組条約策定プロセスに建設的に関与する」という提言、②先の10月23-24日開催されたG20 財務大臣・中央銀行総裁会議での「国連における、国際租税協力に関する国連枠組条約とその議定書の策定に関する建設的な議論を引き続き奨励する」という声明に逆行して、年内に開催される「付託事項」案件に関する国連総会で再び三たび反対の立場を表明するのでしょうか。むしろ日本政府においては、OECD/BEPSプロジェクトをけん引してきたという経緯を踏まえ、国連における議論につき積極的に前に進める役割を担うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。
(*)財務省・NGO定期協議は「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が事務局を担い、1997年から開催され、27年目の今回で83回を数えています。詳細は、JACSESのwebサイトをご覧ください。