ウォーレン・バフェット氏(94歳)が週末発表した「株主への手紙」で納税の重要性と(遠回しながら)米政権を批判していることが話題になっています。他方、フランスでは国民議会(下院)で超富裕層への課税を採択しました。
■ バフェット氏、トランプ政権の「愚かな財政政策」等をやんわり批判
2月25日の日経新聞弟子版に『バフェット氏が異例の政治発言 通貨安定を要望』という興味深い記事が配信されていたので、簡単に紹介します。
バフェット氏とは、言うまでもなく、世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの筆頭株主であり、同社の会長兼CEOを務める大富豪ですが、60年前に会社を興して以降バークシャーの税金は1016億ドルに上り、「税金をまったく支払えなかった恥ずべき時期もあった」と述懐。「税金を払えないことは『華やかな新興企業とは異なり、米経済の柱を支える企業にとっては黄信号だ』と指摘。巨額の税金を払うバークシャーの成功を誇った」と記事は述べています。
その上で、トランプ大統領の富裕層を含めた減税政策等に対し、「『愚かな財政運営がまん延すれば紙幣は価値を失う。米国でも危機にひんしている』『通貨の安定にはあなた方の知恵と用心が必要なことを決して忘れないで』」と述べています。
内外に傍若無人な振る舞いを行っているトランプ政権ですが、富裕層への大減税や関税強化等の「愚かな財政運営」でよりひどいインフレ・物価高を招来し、足元から政権弱化を招くのではないかと思われます。
2月20日フランス国民議会(下院)はエコロジー党などの議員が提出した超富裕層への課税、通称「ズックマン税」案を、116票の賛成、39票の反対で採択しました。これが可能となったのは会派第一勢力である極右の国民連合(RN)が棄権したという背景があったようです(それにしても議員定員が577人なのに、どうしてこんなに投票者が少なかったのか?)。
このズックマン税とは、経済学者ガブリエル・ズックマンの提案に基づいて、「1億ユーロ以上の資産を持つ納税者の最も裕福な0.01%に対して、資産の少なくとも2%を税金として支払う富裕税の最低額を設ける」法案で、約1800人が対象となるようです。そして税収は150億から250億ユーロ(約2.3~3.9兆円)に上ると試算されています。ただし、実現の可能性ですが、上院では右派が多数なので否決されると予想され、かつ憲法評議会での関門もあるということで、かなり困難ということです。
それでも、「これは歴史的な勝利だ! フランスにとって大きな第一歩であり、他の国々にも刺激を与える可能性がある」(ズックマン氏)、「勝利!超富裕層の富に2%の課税を導入する私たちの法律案が国民議会で採択されました」(提案者の一人のクレマンティーヌ・オータン氏)と意気は高いようです。
超富裕層への課税については、昨年のG20リオデジャネイロ・サミットで提案し、これにフランス、スペイン、南アフリカ等も賛同したという経緯があります。ですから、フランスのマクロン大統領の与党は積極的にズックマン税に賛成すべきですね。日本でも超富裕層は少ないながらも100億円以上の資産を持つのは多くて1000人程度おられるようです。
※写真は、左からバフェット氏、ズックマン税を提案したエヴァ・サス氏、ズックマン氏