10月末に突如行われた日銀の追加金融緩和などにより急激に円安が進行し、わずか1カ月の間に10円強も円安になっています。その結果、円安倒産が急に増えてきており、来年以降倒産が本格化するのではないか、と言われています(ロイター通信…【1】)。
もとより、苦しいのは輸入関係の企業だけではなく、今回の円安により輸入物価が上昇し、消費税増税と相まって我々庶民の生活も苦しくなっています。賃金が多少上がってもそれ以上に物価が上昇していますので、15カ月連続して実質賃金が下がってきています。
では、今後この円安の傾向はどうなっていくのかといいますと、「『歴史的円安』を招く」だろうというのが、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏です(ロイター通信…【2】)。
唐鎌氏は、その理由として、これまでの円安局面時期とは異なり、「巨大な貿易赤字と大幅なマイナス金利」が定着しつつあるから、と言っています(これに今後開くであろう米国と日本の金利差も強力に影響していくるでしょう)。
とするなら、もうひとつの為替相場を動かしているアクターのヘッジファンドなどの投機筋がどう動いてくるかですが、当然趨勢として円安が進行するとの予測が立つなら、徹底して空売りを仕掛けてくるでしょう。実際、1か月足らずで10円も円安になっている背後にはすでに投機筋が動いていることには間違いありません(唐鎌氏のみならずいわゆる金融系エコノミストたちの分析には投機筋の動向がネグレクトされることが多い)。
ところで、円とドルの取引は1日当たり100兆円にも上っています(東京市場での取引は世界全体の2割)。そのうちのどれだけが空売りでの取引を行っているか分かりませんが、ヘッジファンド等が一斉かつ一方的に円売り・ドル買いを行えば、円安(ドル高)はとめどなく進行していくでしょう。
これを止めていくためには、まず日銀の異次元緩和なる劇薬政策をストップさせるともに、投機を抑制するツールとして金融取引税を実施すべきだと思います。
なお、東京外国為替市場での外資系金融機関と日系金融機関との取引高は、2013年で3:1となっています<日銀:外国為替およびデリバティブに関する中央銀行サーベイ (2013年4月中取引高調査)について:日本分集計結果>。従って、日本で金融取引税(為替=通貨取引税)を導入した場合、東京市場だけでも課税全体の4分の1が日系金融機関の取引に、4分の3が外資系金融機関の取引に課せられることになります。
他の為替市場(ニューヨークやロンドンなど)での日系金融機関の(円ドル、円ユーロほか)取引割合は分かりませんが、例えばドル/円取引だけでも1日80兆円もの取引があり、それへの課税対象の多くは外資系金融機関になるものと思われます。
【1】2倍の速度で進む円安、前回円高時に比べ関連倒産件数は3倍超
円安が猛スピードで進んでいる。2007年からの円高は4年かけて40円の円高が進んだが、今回は2年で40円の円安となった。倒産は円高、円安どちらでも発生するが、企業が対応に困るのは為替変動のスピードが速い場合だ。
円安倒産は中小・零細の輸入企業が多いため1件当たりの負債総額は小さいが、件数は円高倒産に比べ3倍以上。足元の急速な円安による倒産増加が警戒されている。
【2】コラム:「歴史的円安」を招く2つの増幅装置=唐鎌大輔氏
◆ポスターはオーストラリアのロビンフッド・タックス(金融取引税)キャンペーンより