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金融取引税は近年になく現実的である可能性>米第116回議会で
2019.02.24
金融取引税は近年になく現実的である可能性>米第116回議会で

米国では1月から第116回連邦議会が行われていますが、与野党の溝は深くて新たな経済法案を成立させることがとても難しくなっています。そういう中で与野党双方が歩み寄りやすい政策のひとつとして(老朽化が甚だしい)インフラストラクチャーへの投資がある、と指摘されています。

 

そのインフラ投資の財源に金融取引税(FTT)を充ててはどうか、という提案が出されています。FTTであれば共和、民主の両党も乗りやすく、したがってかなり現実性のある政策ではないか、というのです。提案者は、K&L Gatesという国際的な業務も行っている米国の法律事務所のメンバーです(東京にも事務所あり)。内容を見てみましょう。

 

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インフラ投資には1兆ドル程度の資金が必要だが、財政的には厳しいので、株式・債券取引への課税によって資金を作ることができ、その実現性はある(というのがまずもってK&L Gates側の見立て)。理由は以下の通り。

 

1)たいへん低いFTTレートでもすごく税収を上げることができること
 ⇒毎日大量の取引があり、広大なタックスベースがある。株式取引の0.5%、債券取引の0.1%、デリバティブ取引の0.005%という税率で、10年間に5000億ドル~1兆ドルの税収が見込まれる。

 

2)FTTは(税が取られても)見えにくいこと
 ⇒最初は取引を行う仲介者によって税が支払われるので、投資家はごく少額の請求には気づかないだろう。

 

3)FTTはユーザー料金と呼ぶことができること
 ⇒FTTを伝統的な税金ではなくユーザー料金(金融機関を使う利用料)として構想すると、そのような料金は共和党にとって受け入れやすくなる。FTTが適切に記述されていれば、FTTを超党派的に支援する機会ができる。

 

4)FTTはすでに米国でおよび世界中で存在していること
 ⇒米国は年間約15億ドルを証券取引委員会(SEC)に手数料として払っており(100万ドルあたり13ドル、0.0013%の課金)、オーストラリア、ドイツ、インド、韓国などの他の国でも存在している。

 

5)FTTはメインストリートを舗装するために(インフラ整備の意?)ウォールストリートに払わせる方法であること
 ⇒FTTの収益はインフラ開発などの超党派的政策を推進するためにも使用できる。両党もアメリカのインフラを活性化させることには興味を持っているが、それの資金提供の方法で違いがある。従って、FTTの収益をインフラに分配することは双方にとって非常に魅力的になる。

 

結論として、このように考えるとFTTがこの第116回議会で、近来になく現実的に使える可能性ある、ということです。

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原文:【JD Supra】Will a Financial Transaction Tax Be Used to Pay for Infrastructure?

 

【寸 評】
1)FTTについては、当然ウォールストリートからの猛烈な反発が出ると思うので、共和党がこれに耐えうるかは疑問なしとしませんので(ウォールストリートからの政治献金は民主党にも相当流れている)、実現性という点からいえばどうでしょうか。とはいえ、トランプ大統領の公約であるインフラ投資が財政難のため手を付けることができないでいるという点に着眼したのは面白いですね。

 

2)またFTT提案が、このような大手弁護士事務所から出されることも意義があると思います。

 

3)さらにこうした米国でのFTT議論の盛り上がりが、欧州のFTT計画にも跳ね返り少なくとも10か国での実施に弾みがつくこと、そしてそれが日本にも押し寄せ議論が高まることを期待します(日本では連帯税として)。