2020年、「政治潮流」が長期投資の焦点に
さて、日経新聞の投資情報欄に「一目均衡」というコラム欄があり、1月18日付に『資本主義・社会主義・権威主義』[注1]と題した記事がありました。それで今度の「斎藤幸平&上村雄彦対談から 国会議員と共に考える」集いに資する議論があるかなと思い、読んでみました。
まずコラムの結論。2020年は株式市場にとって「政治潮流」が長期投資の焦点になる、というもの(通常は企業業績や金融政策が投資の焦点=目安になる)。その政治潮流とは(欧米での)「やがて現役世代の多数派となる」「左傾化した『ジェネレーション・レフト』」[注1]のこと。
英米の若者層の「資本主義離れ」と日本の若者層
英米の若者層の「資本主義離れ」は次の通り(記事から)。
・英国の若者層(10代~30代半ば):資本主義に批判的約70%、社会主義が望ましい67%
・米国の若者層(18~34歳):「資本主義に否定的46%」「肯定的49%」(3年前38%対58%)「社会主義に肯定的」は全世代でも4割超
それでは日本ではどうか? 欧米とは違い、日本の若者は衆院選挙の投票結果からもわかるようにとても左傾化しているとは言えない。実際、「日本では(若者は)今の社会システムにどう適応していくかを考える傾向が強く…」[注3]という状況です。
しかし、コラムでは「『左からの風』は日本にも吹いている」と主張します。その根拠は?ということで、現在決して若者たちの運動は大きくないが、今後の可能性として斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』がベストセラーになっていることなどを挙げるのかと思いました。
左からの風をふかしているのは岸田首相!?
が、何と!左からの風をふかしているのは岸田首相だとコラム子は言うのです。
「市場に依存しすぎたことで格差や貧困が拡大した」「市場の失敗を是正する」「新しい資本主義は市場任せでは実現しません」(「文芸春秋」誌よりコラム子引用)との首相の主張は、これだけ見れば新自由主義の弊害を認識し、それからの転換を図っているのだなと思われなくもありません。コラム氏にとってはそれが「左傾化」の証と見えるようです。
ところが、新自由主義への批判はバイデン米政権も行っていますし、欧州各国の政権も濃淡はあれ批判的でしょう。実際コロナ禍中にあって国家による国民や企業への支援の重要性が高まっている今日、各国は軒並み「大きな政府」となっています。とうてい新自由主義の「小さな政府」では未曾有の危機に立ち向かえないからです。従って、これだけで左傾化というのは早すぎます。コラム子はもともと市場万能の新自由主義者だったのでしょうか。
グローバルな再分配政策が必要>国際連帯税の創設を
さらに問題は、国内の分配を公平化したとしても、コロナ禍に見られるようにこれだけでは不十分で、グローバルな再分配政策が必要です。というのは、グローバル化された世界にとってコロナ感染を国境内で封じ込めることは不可能だからです。先進国・途上国を超えてワクチンをはじめとした医療体制が必要で、そのための資金調達は緊喫の課題です。国際連帯税のグローバルな創設が今こそ求められています。
ともあれ、日本の若者たちがマスとしてジェネレーション・レフトとなるかどうかの前に、きちんと社会に物申せる主体になってくれればよいですね。
【ご案内】斎藤幸平&上村雄彦対談から 国会議員と共に考える
~「人新世」を生き延びるために何ができるのか~
[日時]1月28日(金)午前11時~12時30分
[会場]参議院議員会館B104会議室
⇒Zoomでの参加をお勧めします
◎申込み:gtaxftt@gmail.com までに、お名前と所属、並びにZoom参加希望者はその旨をお書きの上申込みください。
[注1]
[注2]
【朝日】海外で広がる「ジェネレーション・レフト」 日本での可能性は
[注3]
【朝日】「ジェネレーション・レフト」日本では POSSE編集長に聞く