2022.02.17
寺島実郎氏「国際連帯税からグローバル・タックスへ」(『世界』誌より)
すでにお知らせしていますように、このところ著名な経済学者・専門家などが国際連帯税や金融取引税について発言するようになりました(以前はそうでもなかったのですが)。慶応大学・政府コロナ分科会の小林慶一郎氏、一橋大学・政府税調委員の佐藤主光氏、元日銀理事の早川英男氏、アライアンス・フォーラム財団・元内閣府参与の原丈人氏など。
そういう中で、いち早く(2008年G8洞爺湖サミットの頃から)国際連帯税に賛同し、これを広めてくれたのが(財)日本総合研究所会長の寺島実郎氏です。
●新局面の資本主義に新しいルールを
その寺島氏が、月刊誌『世界』3月号の連載コラム「脳力のレッスン」であらためて国際連帯税について発言しています。コラムのタイトルは「『新しい資本主義』への視界を拓く」。今月号はその4回目とのこと。内容を簡単に見てみましょう。
まず資本主義の歴史的な経緯について。寺島氏はこれまで「資本主義の歴史とその現代的変質を考察してきた」と述べ、冷戦の終焉を境に資本主義は次のように局面を転換した、と。それは「新自由主義」を通奏低音として情報技術革命と金融技術革命を経てきて、「途方もないエネルギーが蓄積しつつある」と見る。
金融の方は行き過ぎたマネーゲームを常態化し、情報の方はデジタル資本主義の様相を示し、しかし資本主義社会の光となるか影となるか分からない状況となっている、と。このことから、寺島氏は「新局面に入った資本主義には、新しいルールが必要なのである」と述べています。
●国際連帯税からグローバル・タックスへ
さて、金融の方のルールとしては、「国境を越えた金融取引の制御という」トービン税構想があり、これがさらに国際連帯税へと進化してきたこと。2008年には日本でも「国際連帯税創設を求める議員連盟」が設立され、その下に2回にわたり(2009年と2014年)有識者会議が設けられ、寺島氏が座長を務め報告書を作成し【注1】、国際連帯税実現に向け奮闘してきたことが述べられています。しかし、国際連帯税が日本で実現せず、世界的にも一部の国でしか実現してきませんでした。
ところが、寺島氏は今日「国際連帯税は『グローバル・タックス』というべき方向へ進化し始めている」と、つまり「国家間の連帯で実現する税制度という次元から一歩踏み出し、地球全体を一体として認識し、その秩序を制御するという視界が拓け始めてきた」と見ています。
実際、昨年10月、国際的な法人税の最低税率(並びにデジタル課税)という国際課税ルールについてG20で合意されましたが、これこそニュールールとしてのグローバル・タックスの姿である、と。従って、寺島氏は国際連帯税も「国民国家を超えた新しい資本主義のルールとして形成」する可能性が拓けてきたと見ています。
以下、「デジタル資本主義の制御」については省略。