エジプトで開催されている第27回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP27)で、温暖化による途上国の「損失と被害」への先進国からの資金支援がメイン議題の一つとなっています。途上国側の代表として島が沈みつつあるなどたいへんな被害を受けている「島しょ国グループ」から、次のようなアイデアが出されているとのことです(注1)。それはこの間のエネルギー価格の高騰で「巨額の利益」を得ているエネルギー企業等の(超過)利益に課税し、それを対策資金とすべき、というものです(注2)。
温室効果ガス排出がとても少ない途上国からすれば、パキスタンの大洪水やアフリカ諸国の大干ばつなどに見られるように多大な被害を受けているのですから、このようなアイデア=提案はもっともなことだと思います。しかし、このエネルギー企業等の(超過)利潤への課税については、「ウインドフォール(棚ぼた課税)」として欧州各国で既に実施または検討中であり(注3)、先進国と途上国で奪い合いになりそうです。
こうした状況から、11月16日付日経新聞ではエネ企業等の利潤への課税について次のように述べています。
「実現には国際的な合意が必要で、簡単ではない。国際的な航空輸送や金融取引に課税する国際連帯税構想も長らくあるが、いまだに実現していない」
いずれにしても、「損失と被害」対策資金については、恒久的かつ国際(共通)炭素税、そして国際連帯税から捻出することがよいでしょう。通常の支援の方法は、自国の領土内で徴収した税収を海外支援に回すということで、絶えず自国国民からブレーキがかかります。例えば、アフリカの貧困に何億円か拠出するとした場合、その資金は自国の私たちの税金であること、また国内にも貧しい人たちがいること等から結構国民からの反発があります。こうした反発を抑えることができるのが国際連帯税スキームです。航空輸送や金融取引税は国家の領土主権の外で行われる消費行為に対する課税となるからです。
ともあれCOP27での「損失と被害」に対する資金については、いぜんとして先進国と途上国との対立があるようです。そういう中で、「130か国余りの途上国(G77)と中国が共同で、気候変動による被害を受けた途上国支援のための新たな基金の創設を議長国に提案」しました(注4)。提案の中身は分かりませんが、注目していきたいと思います。カリブ海の島国バルバドスのミア・モトリー首相が途上国や脆弱国により多く配分するIMFの特別引出権(SDR)の新規発行などを提案していましたが、どうなりますでしょうか。
(注1)
【日経】途上国の損失支援、エネ企業に課税案 COP27で浮上
(注2)
利益への10%課税(1ドルにつき10セント)。主要なエネルギー企業はこの3カ月で2000億ドル(約28兆円)の利益を上げている。
(注3)
【日経】「棚ぼた課税」は愚策か 財源めぐるタブー破れ
(注4)
【NHK】COP27 130か国余の途上国と中国 新たな基金創設を議長国に提案
※写真は、UNFCCCのホームページより