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パリ・サミット終る:大いに議論したが実行のための提案なく
2023.06.30
パリ・サミット終る:大いに議論したが実行のための提案なく

プロローグ冒頭

 

6月22-23日パリにおいて、約40カ国の政府(首脳や財務大臣)、国連以下の国際機関、シンクタンク、市民団体が一堂に会し「新グローバル金融協定サミット」が開催されました。日本からは林芳正外務大臣が出席しました。大いに議論はされましたが、2006年の国際連帯税パリ総会時に航空券連帯税実施を決めたような具体的な実行提案はありませんでした。

 

●南からのブレトンウッズ機関(IMF、世界銀行)批判・告発

 

このサミットについては、日本ではほとんど報道されませんでした(日経新聞が小さく報道)。当地フランスのメディアはどう報道したでしょうか。Le Mondeは24日付で『パリ・サミットでは、新たなグローバル金融協定はまだプロジェクトにとどまっている』との見出しの下、「約40カ国の政府がパリで会合を開き、過剰債務と気候変動の問題に取り組んだが、世界の北と南の国々の間の溝を埋めることはできなかった」と結論付けています(注1)。

 

とはいえ、サミットが気候変動と開発資金危機に関する南と北の率直な対話が開始され、南からの告発・批判が多く寄せられました。南の代表格としてブラジルのルーラ大統領のプレゼンがフランスのメディアに多く登場しています。上記Le Mondeはもとより経済紙のLes Echos(レゼコー)でも『ルーラ氏の世銀、IMF、国連への告発』という見出しで、詳しく紹介されています(注2)。その一部を紹介します。

 

…前・中略… 中見出し「IMF、国連、世界銀行の改革」
(ルーラ氏は)「ブレトンウッズ機関はもはや機能しておらず、もはや世界社会の願望に対応していない」と述べた。…中略…気候問題は 「二次的な課題」ではなく、「不平等を抜きにして気候を語ることはできない 」と彼は主張した。ジェンダー、賃金、人種、健康、教育における不平等に早急に取り組まなければ、気候に関する懸念は、世界が直面している問題の規模に比べれば「冗談のような」ものになってしまう。IMF、世界銀行、国連が改革されなければ、「世界は変わらない。金持ちはさらに金持ちになり、貧乏人はさらに貧乏になる」。サミットが開催されていたパレ・ブロンニャールでは、ルーラの発言に出席したすべての代表団から大きな拍手が送られた。

 

●海運、金融取引への課税など国際課税の提案>次はケニアでのサミットへ

 

一方、「革新的資金メカニズムの動員」に関しては、サミット2日目の冒頭「プロローグ: パリ合意、今後数か月に向けてどのような方向に進むのか?」の最初に元パリ協定の交渉担当者で現欧州気候財団のローレンス・トゥビアナ氏が次のように述べました(ONEフランスのSenior Policy & Advocacy ManagerであるMae Kurkjian氏のTwitterより、写真も)。

 

奇跡はない。将来の課題に立ち向かうためには、新たな資源が必要だ。すべてのグローバルな課税オプション(海上・航空課税、金融取引税、化石燃料や企業への課税)を検討するタスクフォースを呼びかける。

 

こうした発言もあり、サミットの議長サマリーで次のような文章が入りました。

 

課税を通じた新たな財源の可能性を検討するタスクフォースの立ち上げが提案され、このタスクフォースは、2023年9月にケニアが主催する気候変動資金に関するサミットまでに、最初の結論を提示することができる。

 

このサミットは、9月4~6日に開催されるアフリカでの第1回気候サミットです。ケニアのウィリアム・ルト大統領はパリの方で「炭素税、海運税、金融取引税をどのように執行するのか?私たちが生きている今の世界には、もっと多くの創造性、革新性、技術がある。創造性、革新性、テクノロジーは、この税金を徴収するための梃子となる」と発言し、世界のリーダーたちに感銘を与えたとの報道がなされています(注3)。

 

(注1)
Au sommet de Paris, le nouveau pacte financier mondial reste un projet
(注2)
La charge de Lula contre la Banque mondiale, le FMI et l’ONU
(注3)
Ruto Impresses World Leaders With Ideas on Raising Climate Taxes

 

※写真左はサミットの会場風景、上は23日のプロローグ冒頭でプレゼンするローレンス・トゥビアナ氏