11月30日よりCOP28がはじまりましたが、当フォーラムが注目していた次の2つのテーマが開催間もなく決定に至りました。それは、1)「損失・損害基金」立上げが決議されたこと(規模や制度の詳細は今後になりますが)、2)マクロン大統領が公表していた「開発・気候のための国際課税タスクフォース」が開催3日目で発足したこと、です。以下、後者について報告します。
●国際課税タスクフォースの構成と役割
*正式名:「開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォース」
*参加国:フランス、ケニア、スペイン、バルバドス、アンティグア・バーブーダならびにアフリカ連合と欧州委員会(オブザーバー)
*事務局:欧州気候財団と新パートナー
*役割と目的:最も温室効果ガスを排出しつつも低税率の経済セクターへの課税、例えば炭素税、金融取引税、海上・航空輸送税などに基づく革新的な資金調達手段を特定する任務を負う。
この新しい世界税の目的は、開発、自然保護、気候の3つの課題に対応するための追加資金を動員すること
*次のステップ:
・2024年初めに専門家を特定
・COP29に作業内容を提示
・2025年のブラジルが議長の下のCOP30までに具体的な提案をまとめる
●欧州気候財団CEOのローレンス・トゥビアナさんのコメント
事務局となる欧州気候財団(ECF)のCEOはローレンス・トゥビアナさんで、彼女はCOP21での議長国フランスの気候変動交渉担当大使を務め、歴史的な「パリ協定」の策定に主要な役割を果たした人です。そのトゥビアナさんがECFとして事務局を担うにあたり、次のようにコメントしています。
私は、フランス、ケニア、バルバドスその他の国々の指導者が「開発と気候変動対策を強化するための国際課税に関するタスクフォース」を立ち上げたことを心から歓迎します。気候変動と貧困との戦いを支援するために追加資金を調達するための大きな一歩です。
その目標は、包括的かつ公平な方法で追加的な資金を調達する可能性のある課税オプションを特定するために、力を合わせて取り組む意思のある国々を集めることです。開発途上国に負担を強いることなく、いかなる悪影響も緩和されるようにします。
欧州気候財団は事務局として、公平性と包括性を議論の中心に据え、解決策が最も脆弱な国のニーズを満たすことを保証します。私たちは事務局が多様性に富み、必要とされている専門知識に基づいて世界中のすべての地域を代表するよう努めます 。(以上、彼女の「X」投稿より)
なお、バルバドスのモトリー首相も12月1日のセッション、World Climate Action Summit – Transforming Climate Financeで国際課税について以下の通り発言しています。「石油とガスから 2,000 億ドル、国際海運から 700 億ドル、国際航空旅客からさらに 400 ~ 500 億ドル、そして金融取引税を徴収すると、私たちは損失・損害のためだけでなく、回復力を構築するための専用の資金源を手に入れることができます」(*)。
●(付録)「パリ平和フォーラム」でのトゥビアナさんのアピール
以下は、11月10-11日開催された「パリ平和フォーラム」の冒頭セッション、「『人と地球のためのパリ協定』の実現」でのトゥビアナさんのアピールを紹介します。
マクロン大統領:
数ヶ月前にパリで言及した国際課税(international taxation)へのコミットメントについてはナイロビ気候サミットでルト大統領によって取り上げられましたが、その意義についてトゥビアナさんから報告していただきます。
ローレンス・トゥビアナ:
大統領、発言の機会を与えていただきありがとうございます。私たちは気候変動に対する財源を劇的に増加させていく必要があります。それは発展途上国・貧弱国をサポートし、各国の二酸化炭素削減への移行、強靭な経済の実現のために、です。
この会場におられる各国のみなさまがともに「ロスアンドダメージ(損失と損害)」の問題を含め気候変動の弊害の問題に取り組む必要があり、そのためにはより多くの資金を要しますし、まさに喫緊の問題でもあります。
国際課税の話については、各国同士の連携や実施の難しさから、多くの国でタブーであるとされていますが、気候変動の対策資金として新しい税を実現すべきときなのです。国際課税は化石燃料の会社など最も環境を汚染している産業などにも対応し、(税のほかに産出を削減する効果もあり)気候変動に対する具体的な解決策となります。
フランスとケニアは気候変動の対策としての国際課税について、タスクフォースを始めました。これはきわめて前向きな解決策であり、多くの国々にとってよい機会となるでしょう。COP28は共同でこれらに取り組むことができるのではないでしょうか、これらは国際社会全体のグローバルシステムにいっそうの公平性もたらす策となります。
最後に、フロアのみなさまに訴えます。国際課税への理解を深め、国際課税に対するタブーの意識がなくしましょう!
マクロン大統領:
トゥビアナさん、報告ありがとうございました。加えて一言申し上げます。気候変動対策において、G20は改革とともにより具体的なアクションを続けていく必要があります。私が最も主張したいのは、今日会場に集まったようなNGOなどのLocal actor(地域のアクター)を支援することが重要であり、今後も続けていく必要があると思います。このことは、私たちが気候資金とともに取り組まなくてはいけないアジェンダなのです。
(*) https://youtu.be/dqUoK7WAwzc
(**)https://youtu.be/pr27my-uJvo
※写真:左はパリ平和フォーラムのもよう、中は12月1日のCOP28での World Climate Action Summit – Transforming Climate Finance セッションのもよう(フランス・コロンビア・ケニア・ガーナの各大統領、バルバドス・英国の各首相が参加)