著名な経済学者のジョセフ・スティグリッツが、FOREIGN AFFAIRSオンラインに、『国際課税システムは破綻している しかし国連はそれを解決できる―ワシントンが邪魔をしなければ』と題して、現在国連で議論中の「国際租税協力に関する枠組条約」について寄稿文を寄せています。
今日まで国際課税ルールを主導してきたOECD(経済協力開発機構)の政策は失敗に帰していること、これを克服するためには途上国が主張するように、気候変動枠組条約の租税版となる国際枠組条約を創設すべきと訴えています。スティグリッツの寄稿文は下記をご覧ください。
■「枠組条約」問題は歴史的な取組み>しかし、日本ではまったく報道されず
この「枠組条約」問題ですが、二重の意味で歴史的ともいえる取組みとなりそうです。巨大IT企業等の目に余る租税回避行為に対し、OECD主導で「恒久施設なくして課税なし」という100年来の国際課税ルールの変更を、2021年にG20で合意しましたが、まずこのことが歴史的と言えます(まだ実施には至っていませんが)。さらに途上国側はこうしたプロセスが不十分として「国連枠組条約」として国際ルールを決めるべきとして、2023年に国連で採択したこと、です(現在、特別委員会で草案作成に向け議論中)。もし「枠組条約」案が国連で採択されるなら、気候変動問題に続いて歴史的なものになるでしょう。
ところが、日本では前者のことは報道されても、後者のことはまったく報道されていませんし、驚くべきことにシンクタンクなどでも分析や論文等が公表されていません。この背景には、日本を含むG7諸国がこぞって「枠組条約」創設に後ろ向きの態度を取っているからでしょうか。
そこであらためて私たちは国際租税枠組条約の意義を探るとともに、決して前向きではない日本政府を変えるために何をすべきか、ともに議論していくために下記のようなセミナーを開催します。ふるってご参加ください。
■セミナー「国連国際税務協力枠組条約の設立の可能性を探る」開催
◎日 時:7月29日(月)午後7時~8時30分
◎提案者:青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表/GATJ(Global Alliance for Tax Justice)世界委員会アジア代表
金子文夫・横浜市立大学名誉教授:
◎参 加:Zoomによる配信。gtaxftt@gmail.com から申込み下さい。
◎参加費:無料
国際課税システムは破綻している【FOREIGN AFFAIRS】
しかし国連はそれを解決できる―ワシントンが邪魔をしなければ
ジョセフ・E・スティグリッツ
国連の静かな廊下で激しい戦いが繰り広げられている。昨年 12 月、国連総会は、より公平な新しい世界税制の枠組みに関する交渉を開始する決議を可決した。提案されている国連国際税務協力枠組条約は、企業や富裕層が納税逃れを許す抜け穴だらけの現行の欠陥税制を改革するものである。
今日の租税回避の規模は驚くべきものだ。現在の制度では、企業や富裕層がタックスヘイブンに利益を「隠す」ことができる。毎年、多国籍企業の海外利益、つまり企業の本国以外で発生した利益の35% が、スイス、シンガポール、バミューダ、ケイマン諸島などの国に帰属し、利益が実際に発生した国の税務当局の手が届かない場所に帰属している。その結果生じる歳入の損失は、年間 2,400 億ドルから 6,000 億ドルに上ると推定される。
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