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COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相
2024.11.19
COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相

シンジケート

 

今月11日からアゼルバイジャンのバクーで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)が開催されました。最大の焦点は、条約が拠出を義務付ける先進国から途上国への対策資金の増額です。これまで2020年までに年間約1000億ドルを拠出し、2025年まで継続することになっていますが、25年以降の支援のあり方、つまり気候資金に関する新規合同数値目標(Finance and The New Collective Quantified Goal on Climate Finance)を決定することになっています。(もう一つの焦点は、パリ協定に基づく国別の温室効果ガス削減目標(NDC)の引き上げですが、ここでは省略)

 

■ グローバル連帯税タスクフォースと日本政府の動向

 

このことにつき、先進国側は具体的な提案を行っていませんが、途上国側は年間1兆ドル以上という提案をしています(G77+中国は1.3兆ドル)。が、先進国側は1000億ドルでさえようやく拠出している現在、もう一桁上げるのは容易ではなく、交渉が難航することは必至の状況です。

 

そういう中で、「一部の指導者たちは、気候変動対策のための財源を充実させるための『革新的な』方法を模索し続けている。バルバドスのミア・モトリー首相は火曜日(12日)の演説で、海運会社、航空会社、債券、株式に課税し、化石燃料の採掘に課税すれば、数千億ドルの資金を調達できる可能性があると指摘した。フランス、スペイン、ケニア、セネガル、コロンビアを含む14カ国と欧州委員会、アフリカ連合は、『連帯税連合』を通じてこれらのアイデアをより具体化しようとしている」(11月13日付Climate Home News)と伝えられています。

 

連帯税連合とは、既報の「開発・気候・自然のために国際課税に関するタスクフォース」改め、フランス、バルバドス、ケニアを共同議長とした「グローバル連帯税タスクフォース:人類と地球のために」(The Global Solidarity Levies Task Force: For People and the Planet)のことです。これも既報通り、同タスクフォース(以下、GSLTFと略)は昨年6月にパリで開催された「新グローバル金融協定サミット」を機として設立されたものですが、当フォーラム並びに国際連帯税創を求める議員連盟はGSLTFに日本政府=外務省としても参加するように要請してきました(注1)。しかし、外務省は動きませんでした。

 

■ 国際租税や気候ファイナンスの専門家など錚々たるメンバーでTF報告書作成

 

さて、モトリー首相の演説は、12日のGSLTF共同議長の国家元首または政府首脳会議の場で発したものですが、報告書「連帯を拡大する: グローバル連帯税の進捗(Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies)」(注2)の内容を述べたものです。まずこの報告書を作成した専門家や国際機関のメンバーを見ますと、国際租税や気候ファイナンスの専門家など、実に錚々たる顔ぶれが並んでいます。

 

OECD租税政策・行政センター前所長のパスカル・サンタマン(OECD・BEPSプロジェクトの責任者であった)、国連租税条約特別委員会議長のラミー・モハマド(現在最もホットな国際租税問題を主導している)、アフリカ租税行政フォーラム事務局長のLogan Wort(アフリカでのIllicit Financial Flows対策を主導)、気候ファイナンスに関するハイレベル専門家グループ共同議長のVera Songweなど(敬称略)。

 

◎連帯税のオプションを見てみましょう。

 

1)航空税:検討されている政策オプションには、灯油燃料税(プライベートジェット燃料の協調課税を含む)や、高級航空券や頻繁な飛行機利用者への航空券課税など

 

2)化石燃料課税:化石燃料の採掘、臨時利益、多国籍企業の最低法人税率の引き上げなど

 

3)金融取引税:選択肢には、株式0.1%、債券0.1%、デリバティブ0.01%の税率を想定

 

4)海上輸送課税:「well-to-wake」課税(燃料を生産し、輸送し、船上で使用するまでのプロセス全体と、そこで発生するすべての排出物への課税)をベースとする

 

5)プラスチック生産課税:一次ポリマー生産に対する課税

 

6)暗号通貨課税:暗号通貨マイニングのエネルギー需要が高いことを考慮し課税

 

7)超富裕層個人への課税:億万長者に対する協調的な最低2%の課税

 

TFは当面1)~4)をメイン課税分野とし、5)~7)をさらに検討していくようです。なお、詳しい分析については、今後のメールで報告しますが、オピニオン電子メディア Project Syndicateでも、Emmanuel Macron、Mia Amor Mottley, and William Rutoの連名で “The Case for Solidarity Levies”というテーマで寄稿されています(注3)。

 

いずれにせよ日本政府を含む先進国側は、財政がたいへん厳しい中にあって、新規合同数値目標を大きく上積みするためにグローバル連帯税を真剣に検討していかなければならないでしょう。

 

(注1)
国際連帯税議連、上川外務大臣要請を行う>国際課税TF参加を要望
(注2)
Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies
(注3)
The Case for Solidarity Levies

 

※イラストは、Project Syndicate より