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欧州11カ国FTT:5月~6月のEU財務相会合で最終合意か?
2015.02.19
欧州11カ国FTT:5月~6月のEU財務相会合で最終合意か?

2月12日に行われた「金融取引税(FTTs)に関する市民社会グループの国際電話会合」の議事録が届きましたので、報告します。

 

欧州11カ国FTTですが、5月または6月のEU財務相会合で最終合意に至るのではないか、というのがNGO側の分析です。既報通り、昨年末までにまとまるはずであった共通の制度設計がとん挫してしまいました。が、ブレーキ役となっていたフランスが方針を転換したことにより、制度設計が進んでいるようです。

 

針の転換とは、「最初は株取引への課税に限定して行う」というものから「株だけでなくデリバティブを含む金融取引に幅広く課税する」という(元々の)欧州委員会提案に沿ったものに変わったことです。

 

また、3月10日前にはシンクタンクのドイツ経済研究所(DIW)がFTTの税収試算(ただしドイツ、フランス、イタリア、スペインの分)を公表するということで、たいへん興味がありますね。

 

あと米国でのオバマ大統領の一般教書へFTTを盛り込ませようとした活動や議会の動きも興味深いところです。以下、報告します。

     金融取引税(FTTs)に関する市民社会グループの国際電話会合  
                                               2015年2月12日
             報告: Sarah Anderson(Institute for Policy Studies; IPS)

 

1)議論の現状

 

●報告―ヨーロッパ:David Hillman, Stamp Out Poverty

 

フランスが1月にFTTに関する弱々しい提案を取り下げると、EU-FTTの導入にコミットしている11カ国の政府間協議の最後のフェーズにまさに勢いがついた。今やすべてのデリバティブ(を課税対象とすること)が議論の俎上に戻ってきた。債券については各国の負債をめぐる懸念があるため、ソブリン債(訳者注:国債など)への課税はないだろうと我々は考えている。とはいえ、大いに広範な課税ベースとすべきである。

 

また我々は、11カ国の政府が2段階プロセスの計画を取り下げたと考えている。彼らはもはや可能な限りもっとも広範な課税への合意を目指し、それを単一のプロジェクトとして前進させようとしている。もし政府間交渉が手に負えないほど困難であるとわかった場合にのみ、各国は2段階プロセス計画へと回帰することになるだろう。

 

もう一つの主要な前進は、11カ国グループにおける小国の力が増大していることだ。なぜフランスが自身の立場を変えたのか、その一つの理由は、フランス提案が十分な税収をもたらさないために小国らが抵抗したからであったことは今や明らかである。

 

ポルトガルは非公式な形で、技術的議論の調整役となっていくだろう。これは良い知らせで、その理由の一つは、ポルトガルがFTTに非常に前向きな租税専門家を常駐代表として(EUの本拠地である)ブリュッセルに在籍させているからだ。この専門家は今後主要な役割を担っていくことだろう。オーストリアも非公式に政治的な調整役を担っていく見込みだ。

 

今後のスケジュールについて、我々は技術的な取り決めに約3ヶ月ほどかかるだろうと考えている。そして、おそらく5月、あるいは遅くとも6月のEU財務相会合で、最終合意が発表されることになるだろう。我々は、7月中旬のエチオピアでの国連開発資金調達会合までには、11カ国の政府が税収配分についても何らかの合意に達するよう望んでいる。

 

3月10日のECOFIN(EU財務相会合)の前には、シンクタンクのドイツ経済研究所(DIW)がドイツ社会民主党により委託された報告書のなかで、EU11カ国のうち4大経済大国(訳者注:ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)にもたらされる税収試算を公表する予定だ。我々はその調査結果を広く拡散させるよう計画すべきである(アメリカにおいても、我々は税収試算に取り組む政策決定者へその結果を確実に知らせていく)。

 

●報告―アメリカ:Nicole Woo, Center for Economic and Policy Research

 

前回の電話会合にて、中道・主流派民主党員と見なされているヴァン・ホーレン(Van Hollen)議員が、民主党員で下院議長のナンシー・ペロシの支持のもとFTTに関する提案をしたことを報告した。それ以降ヴァン・ホーレンは、法案提出に向け支持を獲得すべく、その他多くのメンバーと会合をもってきた。約80名が所属する革新党員集会は、自身が提出する予算案にFTTを採用する予定であり、その提案は通常3月の第2週に発表される。アメリカのキャンペーン担当者らは、同提案について広く報道されるよう方法を検討しているところだ。

 

パブリック・シティズン(訳者注:米国の有力なNGO)は、オバマ大統領の予算案にFTTを含めるよう求める署名を集めた。タイミングの良さもあいまって、この署名活動は主として教育的効果をもち、短期間で2万人の支持者を確保した。結果オバマは予算案にFTTを含めず、我々もそれを期待はしていなかったが、オバマは大銀行の報酬に関する提案を盛り込んだ。これらの提案について、我々は代替策ではなく補完的な施策として検討すべきだと主張している。

 

<訳者注:上記の点については下記の注参照>

 

議会職員は、(予算)法案の税収試算を担う両院合同税制委員会(Joint
Committee on Taxation: JCT)と共に作業を進めており、さまざまな税率の分析に着手している。(それに対し)ドイツの研究は大いに役に立つだろう。同委員会の試算(JCT score)なしには、法案が議会で真剣に検討されることはほとんどあり得ない。

 

Ken Zinn(NNU:全米看護師組合)によれば、ロビン・フッド税キャンペーンは引き続きエリソン議員の法案(もうひとつのFTT法案)が迅速に再提案されるよう推進している。またZinnは、ヴァン・ホーレンがFTT提案を中産階級の減税を含む提案パッケージの一部として提示しているのは問題だと指摘した。

 

2)エチオピアで7月に開催される国連開発資金調達会議に向けたプロセスにおけるFTTの推進

 

サラ・アンダーソンは、このプロセスにてFTTが扱われるよう働きかける集中戦略を検討するため、2週間以内に会合を開催する予定だ。もし同会合に参加したい方、あるいは参加すべき者を推薦したい方がいれば、サラ(sarah@ips-dc.org)まで連絡を。

 

会合では、以下の異なる関わり方について検討する予定。

 

1.インサイダー:どのように最終宣言にFTTを盛り込むよう推進できるか、あるいは公式的なプロセスでFTTに関する話題を取り上げる他の方法、その他すべきことなどを検討。

 

2.準インサイダー:アディスにおいてFTTに関する市民社会イベントを計画。

 

3.アウトサイド:このプロセスに直接的には関係しない人々に、FTTやFfD(開発資金調達)とのつながりをどのように持たせることが出来るか。メディアやその他のコミュニケーション・ツール、あるいは政策決定者の参画に関する戦略的機会、要点など(の模索・検討)。

 

次回会合:3月12日AM9時

 

<注>オバマ大統領の銀行課税案
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NIHZ916TTDS401.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM18H0C_Y5A110C1FF8000/
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-02-17/2012021707_01_1.html
http://blog.knak.jp/2015/01/post-1500.html

                                                                                                                                 (翻訳:K.Tsuda)

 

◆写真は、ユーロネックスト(証券取引場)・ブリュッセル