このところ、「パナマ文書」問題で上村雄彦先生とテレビ出演のコンビを組んでいる(?)森信茂樹教授のパナマ文書関連の所論が、ダイアモンド・オンラインに連続して掲載されていますので紹介します(下記参照)。専門家だけあって、タックスヘイブン問題に関する実務について語られていますので、必読です。
例えば、「今後日本人(日本居住者)や日本企業の情報がパナマ文書の中から見つかった場合には、どうなるか」など。
その中で面白かったのは、日本居住者の海外財産の捕捉のための国外財産調書ですが(5000万円以上の財産)、「未提出が相当数いると言われている」とのこと。故意の不提出には罰則(1年以下の懲役)が科せられるので、パナマ文書問題には戦々恐々としているのではないか、と。
これらのことは、本日(4月30日)の日経新聞にも載っていますね。「…パナマ文書発覚以降、氏名公表を心配した富裕層からの(法律事務所への)問い合わせがやまない」、と。
*【日経新聞】「パナマ文書が問う上:逃げる富 揺らぐ税の信頼」
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO00282090Q6A430C1SHA000/?dg=1
【感想:罰則強化(例えば懲役5年以下とか)がひとつのカギになるか】
あと大企業のタックスヘイブンへの子会社(現地法人)の実態をどう把握するかですね。まずは徹底した情報開示と各国の自動情報交換制度構築が課題となります(パナマはこれに入ろうとしていなかったが、今回の事件もあり入ることに)。
日本の大企業がタックスヘイブンにどのくらいの現地法人を持っているかというと、資本金1億円以上の日本の大企業1,700社(大企業総数は2万9672社)が9000社を持っているとのことです。これは4月26日の参議院財政金融委員会で大塚耕平議員の質問(民進)に対して国税庁が答えたものですが(下記録画、42:16分頃)、やはりすごい数ですね。
*参院財政金融委員会ネット録画:http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/index.php
しかし、問題はその自動交換制度の実効性です。交換制度の条約を結んだのはよいが、タックスヘイブン諸国からまったく情報が上がってこない、という実質的サボタージュに対してです。実は、何十万社というペーパーカンパニーがあるケイマン諸島の政府機関は5階建てのビルひとつに入るくらいの規模だそうで、このような陣容で果たして政府当局が供与すべき情報を把握できるのか(志賀櫻「タックス・オブザーバー」エヌピー新書)、ということであり、情報を把握する能力も意思もなく、結果的に何ら有用な情報が出ないということも考えられます。
次に、4月のG20財務相会合の声明も挙げておきます。ちなみに、「G20では、ドイツが租税回避地への制裁も含めた強硬策を求めたが、新興国側は「事務量が増える」と慎重姿勢で、「防御的措置(対抗措置)」というあいまいな表現にとどまった」と毎日新聞にありました。
以上、森信教授の所論とG20財務相会合の声明、毎日新聞記事につき添付ファイルを見てください(赤、青字は分かりやすいように私が付けたものです)。
★写真は、ケイマン諸島とICIJのパナマ文書関連WEBサイト