昨日(21日)の日本経済新聞4面(政治欄)に「外相『途上国支援に新税を』 国際連帯税を提起」と題して、下記の通り、比較的長文の記事が掲載されました。記事では、国際連帯税が「ODAの代替策」として扱われていますが、正確には「ODAの補強策」と表現した方がよいでしょう。日本のODAは1.1兆円(支出純額、2016年)ほどあり、いきなりこの程度の額を国際連帯税で創出するのは無理だからです。
ちなみに、航空券連帯税で500億円(フランス並みの定額税で)程度です。ただし、実施に向け議論中の欧州10カ国の金融取引税(株式・債券・デリバティブ取引への課税)の税率並みでは1兆円近くの税収となりますが。
また、記事にある「河野氏によると、16年の1日あたりの外国為替取引額は約6.5兆ドル。0.01%の税をかければ1日で6.5億ドルの税収が見込めると主張する」というのは、河野議員のブログ「ごまめの歯ぎしり」に記載されています。
安定財源狙う、経済界の反発根強く
河野太郎外相が発展途上国の貧困対策などに充てる「国際連帯税」の導入を提起している。議論を喚起して国内外の関心を高め、政府開発援助(ODA)に代わる新たな途上国支援の財源として検討を進めたい考えだ。国際連帯税の導入はかねて政府内でも構想があったものの、経済界などの反発が強く、長年議論が停滞している。
ODAの代替策
外務省は8月下旬に2019年度の税制改正要望を提出し、国際連帯税の新設を提案する方針だ。10年度以降は9年連続で検討を盛り込み、実現を求めてきた。
河野氏は7月、都内で開いた国際連帯税に関するシンポジウムで「国の予算に依存せず、必要な資金のギャップを埋めるやり方として国際連帯税は有力な方法の一つだ」と語った。「先進国は『援助疲れ』している」とも述べ、縮小傾向にあるODAの代替策が必要だと指摘した。
国際連帯税とは、国境を超えた経済取引に課税し、発展途上国の貧困や感染症対策の財源に充てる仕組み。00年に国連が採択したミレニアム開発目標(MDGs)を契機に誕生したアイデアだ。飛行機の利用や金融資産の取引、二酸化炭素(CO2)の排出に課税する案などがある。ODAと違い先進国の財政状況に左右される心配がなく、寄付よりも安定した税収が見込めるのが利点だ。
すでに一部の国で実績がある。フランスや韓国など14カ国は航空券連帯税を導入している。フランスでは国際線の利用客に、ファーストクラスとビジネスクラスで40ユーロ(約5050円)、エコノミークラスで4ユーロを一律上乗せで徴収する。フランスからの出国便に乗る日本人も対象だ。税収はエイズやマラリアといった感染症向け医薬品の支援などに充てる。
国際連帯税の定義はなく、規定する国際条約もない。現在は導入国がそれぞれ自由に税率や使途を設定して運用する。
河野氏が提唱するのは個別の国ではなく国際社会が全体で合意し、課税する仕組みだ。例えば外国為替取引に税をかけ、税収を国際機関が管理する案だ。河野氏によると、16年の1日あたりの外国為替取引額は約6.5兆ドル。0.01%の税をかければ1日で6.5億ドルの税収が見込めると主張する。
G20で呼びかけ
河野氏は5月の20カ国・地域(G20)外相会合で国際連帯税の検討を呼びかけた。来年に日本で開くG20関連会合でも議題とし、国際的な関心を高める狙いがある。
日本では10年ほど前に国際連帯税の導入に向けた機運が高まった。08年には超党派の議員連盟が立ち上がり、10年には政府税制調査会の下に「国際課税小委員会」を設置して具体的検討に入った経緯がある。
ただ、当時は経済界の反発が強く、その後の議論は進んでいない。航空業界は課税によって旅行客が減少し、国際競争力の低下を招くと主張。株式や債券に課税する金融取引税に関しても、市場をゆがめ、経済全体に悪影響を及ぼすとの懸念が根強い。
年末の与党税制調査会では国際連帯税の導入について議論する見通しだ。途上国支援のための効果的な仕組み作りには国内外の理解を得て検討を進める必要があり、成案をまとめるのは一筋縄にはいかない。