グローバル連帯税フォーラム

サイトマップ
お問合せ
NEWS
【寸評&社説】政府の「SDGsアクションプラン」は科学万能・経済成長主義に偏りすぎ
2018.09.19
【寸評&社説】政府の「SDGsアクションプラン」は科学万能・経済成長主義に偏りすぎ

一昨日(9月17日)の朝日新聞に「政府とSDGs かけ声に終わらぬよう」と題した社説が載りましたので、紹介します。実はNGO・NPO側の懸念と共通することが書かれています。

 

その前に、SDGs(持続可能な開発目標)について簡単に説明します。2015年9月国連において採択され、17目標と169ターゲットをもつもので、①主に途上国の貧困問題等を対象としたミレニアム開発目標(MDGs)分野、②気候変動等地球環境問題を対象にしたリオ・サミット分野、③持続可能な経済成長と雇用分野、の3つの分野を統合したものです。その基本理念は「誰一人取り残さない」「貧しい人々や脆弱な状況下にある人々に対する連帯の精神」(*)にあると言えます。

 

(*)[国連総会採択] 「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」

 

我が国も2016年のG7伊勢志摩サミット直前の5月、内閣総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」が立ち上がり、同年12月には「SDGs実施指針」がまとめられ、世界的にもSDGs取組みの先端を走っていました。ところが、昨年12月「SDGsアクションプラン2018」が公表されたのですが、二重の意味で、それまでの取組みを台無しにするような事態になってきています。

 

ひとつは、アクションプランの内容で、あまりにも科学万能・経済成長主義を打ち出し過ぎており(**)、上記SDGs理念から外れつつあること。もうひとつは、マルチステークホルダー(広範な関係者)による連携を謳い、課題の推進や実施について円卓会議で行っていたものが、それなしで一方的に公表されてしまったこと、です。

 

(**)「SDGsアクションプラン2018」

第一目標に「SDGsが掲げる社会課題や潜在ニーズに効果的に対応すべく,破壊的イノベーションを通じた“Society 5.0”や,“生産性革命”を実現」とあるが、経済白書か何かと間違っているのではないか。

 

以下、朝日新聞の社説ですが、本文の下から11行目に「…NPO関係者らは、独自の行動計画づくりに取り組んでいる」とありますが、それはSDGs市民社会ネットワークが作成しつつあるものです。

 

SDGs市民社会ネットワーク「SDGsボトムアップ・アクションプラン2018」(第一次)

 

 

【朝日新聞】(社説)政府とSDGs かけ声に終わらぬよう
 

 地球環境を守り、貧困を克服して、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにする。

 

 そんな世界をめざす「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連で採択されて3年。国内でも関心が高まっている。

 

 とくに政府の動きが目立つ。安倍政権は、全閣僚からなる推進本部を設けている。この6月の会合では「国家戦略の主軸にすえる」「SDGsで世界の未来を牽引(けんいん)する」とうたった。

 

 かけ声だおれにしてはなるまい。この国際目標の達成には、官民あげた取り組みが欠かせないが、政権の思惑先行の印象がぬぐえないのが懸念材料だ。

 

 少子高齢化のなかで成長への突破口に位置づけつつ、国際貢献の旗印にする。19年のG20首脳会議、20年の東京五輪・パラリンピックに向け、政権はそんな狙いを抱いているようだ。

 

 SDGsは、貧困や健康・福祉、教育、気候変動、まちづくりなど、17分野の169もの目標からなる。抽象的なテーマも多く、行政のどの施策も何らかの形でかかわるといえる。

 

 推進本部がまとめた行動計画には、「生産性革命」や「地方創生」などの言葉が並ぶ。政権が看板とする課題であり、今年度当初予算に盛り込んだ施策が予算額付きで記されている。

 

 問われているのは、SDGsの理念に沿って政策をどう見直していくかであり、既存の施策をPRすることではない。そのことを肝に銘じてほしい。

 

 政権の姿勢を疑問視するNPO関係者らは、独自の行動計画づくりに取り組んでいる。

 

 「誰一人取り残さない」とのSDGsの標語を踏まえ、まず貧困・格差対策を重視する。既存の施策を見直し、すぐ実行すべき事業、政府は手をつけていないが必要と考えられる事業など4段階に整理する。

 

 そうした作業を重ねながら、いずれ「持続可能な社会」基本法をつくる。そんな構想だ。

 

 NPOが動き出したのは、計画をめぐって政府の「言行不一致」が表れたからでもある。

 

 政府はSDGsを「広範な関係者が協力して推進する」として、NPOや大学、経済団体、国際機関などと、各省庁の担当者が集まる円卓会議を立ち上げた。ところが昨年末に最初の行動計画を決める際、円卓会議では触れないまま、その後の推進本部会合で打ち出した。

 

 行政と企業、NPOをはじめとする市民社会が対等の立場で力を合わせていく。それがSDGsの精神だ。政権の本気度は、民間としっかり手を携えるかどうかを通じても試される。