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国際観光旅客税(出国税)を国際連帯税へ改組を>峰崎・元財務相副大臣
2019.01.07
国際観光旅客税(出国税)を国際連帯税へ改組を>峰崎・元財務相副大臣

本日から、27年ぶりの新税である国際観光旅客税(通称「出国税」)の徴収が行われますが、この税制につき昨年は産経新聞から東京新聞まで全マスコミが批判するなど、たいへん評判の悪いものでした。新税施行にあたり今回も日経新聞は以下のように批判的に書いています。

 

「外国人旅行者の満足度を高めるために、ある程度の財政出動は必要だろう。しかし本来なら他の公共事業などをけずって、その分を振り向けるのが筋だ。新たな税を設け、しかも特定財源としたことで、観光振興という名目のもとで無駄遣いが生じやすくなったのは、否定できない」(日経新聞1月5日付社説「出国税の使い道を注視する」)

 

マスコミの出国税批判の主な論調は、特定財源化したことで無題遣いの温床になるのではないかというものです。もちろんそういう面は確固としてありますが、私たちはむしろ国境外の領域で徴収する税は、国内的課題に使うのではなく、国際的な課題に、すなわち国際連帯税として地球規模課題に使うべきということを主張してきました。

 

今回、以前にも紹介しましたが、峰崎直樹・元財務相副大臣が本日発行の『チャランケ通信』で「27年ぶりの新税「出国税」今日施行へ、「国際連帯税」へ改組を」と題して国内観光のための出国税を批判していますので、紹介します。

 

 

【「チャランケ通信」第253号 2019年1月7日より】

 

……

27年ぶりの新税「出国税」今日施行へ、「国際連帯税」へ改組を

 

今年は、消費税の引き上げが税制問題のメイン・イッシュウとなっている。

 

あまり知られていないが「出国税」という新税が、地価税以来27年ぶりに新設され、本日1月7日から適用される。「出国税」の正式名称は「国際観光旅客税」で、日本から出国する際に一人1,000円徴収される。昨年の税制改正で法案化され、今年から適用される目的税である。

 

政府は、訪日外国人の受け入れ環境を整備することに使うとしているが、厳密な意味での目的税ではなく、一般会計に繰り入れられる。来年のオリンピックもあり、観光施設の整備が急務となっている事も導入の理由にしているようだ。今や3,000万人を突破し4,000万人を目標とする外国人観光客や出国する日本人からも徴収するわけで、税収は平年度で500~600億円に達するものと予想されている。

 

国際社会の移動から徴収する税は、国際社会に還元すべきが筋

 

問題は、かつて民主党政権時代に「国際連帯税」の一環として「航空券連帯税」の導入を提唱した経過がある。ところが、関係業界からの反対もあり外務省もODA予算が削減されるのではないか、という疑心暗鬼もあってか消極的だったため、頓挫してしまった経過がある。こちらの方は、国際社会の抱える問題に支出するための財源であり、特にフランスから始まった制度でユニット・エイドを通じてエイズやマラリア対策などへの適用が2006年度から開始され、世界13カ国にまで拡大している。

 

いまも、国際連帯税を求める国会議員連盟が活動をしているのだが、一向に進まない。航空券連帯税は、国によって違いはあるものの、ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスで税額が異なり、累進制が採用されている。ただ、国と国の間の徴税権は誰のものでもないのが現実で、国際社会が徴収すべきものとされている。それだけに、国際連帯税は導入した国が過渡的に徴税し、国際的な支援活動をしているNGO等に資金拠出しているわけだ。

 

今からでも遅くはない、国際連帯税への改組を提案する

 

今回日本で導入される「入国税」は、アイディアとしては航空券連帯税を剽窃したものになっているわけで、民主党政権時代に反対した業界団体はどんな理由でこの税を受け容れたのであろうか。大変疑問である。出来れば、この「入国税」を「国際連帯税」として改組し、途上国支援の目的税にしていくことを提唱したい。なんと、こうした税を最初に考えられたのは、昨年文化勲章を受章された金子宏東京大学名誉教授であり、「国際人道税」というものであった。それを、最初に作り上げたのがフランスの「国際連帯税」だったわけだ。今からでも遅くはない。「入国税」を「国際連帯税」へと改組していくべきだ。

 

さらに、今問題になっているGAFAに対するデジタル課税等も、今後国と国との間の税制として導入を検討していく必要があろう。