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「気候・開発・自然のための国際課税に関するタスクフォース」も始動
2024.05.08
「気候・開発・自然のための国際課税に関するタスクフォース」も始動

 国際課税TF②

 

既報通り、4月17日IMF・世銀春季総会時に、「気候・開発・自然のための国際課税に関するタスクフォース(以下、TFと略)」の第1回運営委員会(参加国のシェルパで構成)が開催されました。遅れましたが、このTF始動について報告します。

 

まず参加国を見ますと、ケニア、バルバドス、フランスの3か国が共同議長国となり、これまで参加を表明していたスペイン、アンティグア・バーブーダに加えて、アイルランド、マーシャル諸島、コロンビアが参加しました(ブラジルが参加を検討中)。当日は、これらの国に加えて欧州連合、ドイツ、IMF、国連の代表らが会議を傍聴しました。

 

この会合について、フィナンシャル・タイムズは次のように報道しました(注1)。

 

❝ …世界銀行とIMFの会議の公式アジェンダの外では、ケニア、バルバドス、フランスの3カ国政府が議長を務め、国際的な税制を通じて気候変動対策により多くの資金を集める方法を検討する新しいタスクフォースの初会合が開催された。

 

画期的なパリ協定の立役者の一人であるローレンス・トゥビアナ氏【注:TF事務局の共同リーダー】は、各国政府が「さまざまな戦争にどう対処するかにとらわれている」ため、エネルギー転換や気候変動プロジェクトの資金調達に利用できる財源は「非常に縮小している」と述べた。

 

同グループが検討している課税には、航空旅客税、富裕税、船舶燃料税、化石燃料生産者へのグローバル税が含まれる。理想的には、このような税金はG20で採択されるか、あるいは、より小規模な有志国連合で導入されることになるだろう、とトゥビアナ氏は語った。❞

 

ここで議論されたことをTFのWebサイトから抽出してみます(注2)。

 

◎目 的:途上国や気候脆弱国のエネルギーシステムの脱炭素化、気候ショックへの対応、回復力の構築のために2030年までに必要とする年間2.4兆ドル(注3) の投資に資金を供給する方法を検討する。

 

◎今回議論したこと:TFの作業計画に関しての合意を図ること、選択された税制オプションに関する影響調査を開始すること、可能性のある税制関する文献調査と分析を行うこと等を確認。

 

◎次のステップ

今後1年半にわたり、専門家グループが各税制の影響調査を開始し、実現可能性、公平性、規模拡大の可能性、消費者への負担回避策などを検討する。さらに、各国ですでに実施されている既存の税制の棚卸しや文献調査を行い、各税制の設計オプションを検討するとしている。

 

スケジュールとしては、11月にアゼルバイジャンで開催されるCOP29で最初の調査結果を発表し、2025年にブラジルで開催されるCOP30会議で、気候税制に関​​する一連の実行可能な選択肢をめぐってG20レベルもしくは有志連合を結成する。

 

●気候・開発のための国際課税議論が始まった!日本政府はTFに参加を!

 

このように新しい気候・開発資金をグローバル規模で創出しようという動きが始まりました。この動きに対し、「国際連帯税創設を求める議員連盟」(会長:衛藤征士郎衆議院議員)は3月末に上川外務大臣に「TFならびに同 専門家委員会に我が国も参加し、議論をリードすべき」を旨としての要請を行いました。しかし、大臣から前向きの回答を得ることはできませんでした。

 

翻って、今年のアゼルバイジャンでのCOP29は、「気候資金のCOP」とも言えるほど途上国・脆弱国支援のための資金問題が重要なテーマとなります。それは、国連グテーレス事務総長の次の言葉からも明らかです。「先進国は最低でも、1,000億ドルの拠出について明確にし【注:新規合同数値目標のこと】、2025年までに少なくとも年間400億ドルまで適応資金を倍増する方法を説明しなければなりません。COP29では、すべての国が、気候変動対策資金に関する野心的な新しい目標に合意しなければなりません。私たちは、革新的な気候変動対策資金源を模索すべきです」、と(「2024年の優先課題に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長の総会発言」(注4))

 

一方、今年のG20サミットはブラジルが議長国ですが、アダジ財務相は超富裕層への課税強化をG20の枠組みで目指す考えを示し、「7月の(財務相・中央銀行総裁)会議までに国際課税に関するG20宣言作成を目指す」としています(注5)。この税制は、ブラジル・サミットの主要テーマである「貧困と飢餓との闘い」のための財源確保にあることは言うまでもありません。

 

このように世界的には気候と開発のための新しい資金創出に向けて始動しはじめています。日本政府は「グローバル・サウスとの連携強化」を謳うなら、ぜひこれらの議論に参加していくべきです。

 

(注1)

Rich nations pledge $11bn to World Bank for climate and global crises

https://www.ft.com/content/7cf9fd4c-58ca-48c9-8024-18f4c9a3892f 

(注2)

Climate and development action requires political will and financial support.

https://internationaltaxtaskforce.org/ 

(注3)

Scaling up investment for climate and development

https://www.lse.ac.uk/granthaminstitute/wp-content/uploads/2022/11/IHLEG-Finance-for-Climate-Action-1.pdf

(注4)

2024年の優先課題に関するアントニオ・グテーレス国連事務総長の総会発言

https://www.unic.or.jp/news_press/messages_speeches/sg/49902/

(注5)

G20、富裕層への最低課税案が浮上 ブラジルや仏が支持

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN28EC90Y4A220C2000000/