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23年度税制改正:外務省は「国際連帯税」要望を復活させよ
2022.07.31
23年度税制改正:外務省は「国際連帯税」要望を復活させよ

 林芳正パネル討論

 

2012年10月「国際シンポジウム:金融取引税・国際連帯税は世界を救うか?~革新的資金メカニズムを巡る世界のリーダーと市民社会との対話~」(青山学院大学国際会議場)で発言する林芳正・国際連帯税創設を求める議員連盟会長/参議院議員(当時)

 

グローバル連帯税フォーラムは去る7月25日外務省に「23年度税制改正要望で『国際連帯税』要望を復活させることの要請書」を提出しました。要請書の要旨は次の通りです。

 

1)SDGs達成のための途上国での資金ギャップがコロナ危機が進行する中でそれが4.2兆ドルへと拡大していること、

 

2)このギャップを埋めるには1800億ドル程度のODA(政府開発援助)ではとうてい間に合わず、OECD(経済協力開発機構)は約390兆ドルの金融資産を有する民間資金の動員・利用を提案。しかし、民間資金の投融資には限界があることから、国際連帯税など革新的資金調達が望まれること、

 

3)コロナ禍にあっても資産や利潤を増やしている金融セクター、ITなど情報技術セクター等グローバル化で受益している経済セクターへの課税を実施すること、

 

4)日本政府は国際連帯税の国内実施と国際社会での共同実施に向け努力すべきこと

 

 

 

 2023年度税制改正要望で「国際連帯税」要望を復活させることの要請書

 

外務大臣 林 芳正 様

                  

                          グローバル連帯税フォーラム                        

                            代表理事 金子 文夫                            

                        田中 徹二

 

日頃からの世界と日本のための外交平和努力に敬意を表します。

 

さて、コロナ禍やウクライナ戦争という厳しい情勢にありますが、次年度税制改正要望を提出する時期となりました。ご承知のように、国際連帯税につきましては、2010年度より外務省から要望が提出され、それが2020年度まで10年間連続して続けられました。ところが、2021年度、2022年度と要望提出を断念し、今日に至っています。

 

その断念の理由は、外務省が2019年7月に「SDGsの達成のための新たな資金を考える有識者懇談会」を設置し、翌年7月に提出された懇談会の「最終論点整理」(以下、「整理」と略)に沿ったからと思われます。つまり、「コロナ禍で日本経済全体が大きな打撃を受けているので課税による資金調達方式は現実的ではない」というのが整理での提言だったからです。

 

しかし、こうした厳しい経済情勢下にあっても、日本を含む世界ではITや金融というグローバル経済セクターは多大な利益を上げていましたし、日本経済も3年目にしてようやく復活の兆しが出てきました。また、整理では課税についてすべて反対しているわけではありませんでした。実際、航空券税については「国際航空事業が正常化した段階で再考すべきではないか」と提言しております。航空事業も正常化に向かいつつあるのが現状です。従いまして、外務省としてはSDGs達成のため課税による資金調達要望を復活させるべきと考えます。

 

一方、林外務大臣は先の国会において「SDGs達成のための資金不足を埋めるためには革新的資金調達は重要と考え、外務省としては引き続き適切な資金調達の在り方を検討してまいりたい」と発言しています(5月19日参議院外交防衛委員会)。ここでの革新的資金調達とは国際連帯税を含む新たな資金調達の在り方と言えるでしょう。

 

林外務大臣はさらに「SDGs達成のためには年間2.5兆ドル不足と言われている。コロナ禍でそのギャップはさらに拡大しているとの推計もなされている」と発言していますが、今やそのギャップはOECDの推計によれば4.2兆ドルへと拡大しています。一方、世界のODA総額は1,789億ドル(2021年)ですから、とうていODAでこのギャップを埋めることはできません。

 

そこで期待されるのは民間資金の利用、動員です。今日SDGs理念の世界的な浸透もあり、ESG投資やインパクト投資、グリーンボンドなど地球規模課題に向けての民間資金の投融資が盛んになってきました。このことは歓迎すべきことですが、それが民間資金という性格上どうしてもリターンが不可欠であることから、最も必要としている貧困国やセクターに届いておらず、また投資分野もエネルギーなど気候変動分野に偏るという傾向があります。これらのことからも、第二の公的資金となりうる革新的資金メカニズムとしての国際連帯税の実施、拡大が望まれます。

 

以上のことから、国際連帯税に関し、下記の5項目を要望しますので、ご検討くださることをお願い致します。

 

 

1.2023年度(令和5年度)税制改正要望に新設税として「国際連帯税(国際貢献税)」を要望すること(注1)

 

2.外国為替取引に課税する通貨取引税につき、外務省が事務局となり政府内に省庁横断的な会議体を設置するとともに、その下に専門家・有識者及びNGOや市民団体の代表者等からなる『有識者検討委員会(仮称)』を設置すること(注2)

 

3.航空券税につき、航空事業が正常化された段階で入国税として実施すること(注3)

 

4.デジタル課税につき、消費地での新グローバル課税ルールと世界共通最低税率をG20財務相会合で取極めたが、この取極めによる新たな税収のX%を国際連帯基金(仮称)として徴収すること(注4)

 

5.林外務大臣におかれては、G7やG20の外相会合において、また国連総会など国際会議の場において、SDGs資金ギャップについて警鐘を鳴らすとともに、国際連帯税を共同して実施することを訴えていただきたいこと

以上

2022年7月26日

 

(注1)国境を超える経済主体に広く薄く課税するという税制の主旨から、国際連帯税のリストとしては、①通貨取引税、②航空券税、③デジタル課税等、が挙げられる。

 

(注2)

①     金融セクターはコロナ禍にもかかわらず利益を増殖させ、為替取引総額が増大していること、

          副次的には今日の超円安等を招いている投機マネーの抑制にも繋がる。

②     先の有識者懇談会でも、通貨取引税に関し検討されたが、十分に検討されないままに報告が出されている。

③     もし日本で導入ということになれば、先進国では初めてのことになり(中進国のブラジルやトルコで実施中)、それだけ国際的に注目を浴びることから、有識者検討会にノーベル賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏や開発経済の第一人者であるジェフリー・サックス コロンビア大学教授など世界の著名人からの助言も有効である。

 

(注3)既に出国税として、国際観光旅客税(利用者一律1,000円)が実施されているので、入国税として実施する。ちなみに、米国では国際通行税として出入国の都度$17.5(約2,280円)徴収されている。                 

 

(注4)日本政府は23年度税制改正でこの取極めへの対応を検討することになっている。なお、この新しい国際ルールによる税収については、カリフォルニア大学バークレー校のガブリエル・ズックマン准教授らが試算している。