グローバル連帯税フォーラム

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【投稿】途上国の現場から見えてきたもの:フォーラムへの参加にあたり
2015.01.18
【投稿】途上国の現場から見えてきたもの:フォーラムへの参加にあたり

昨年国際連帯税フォーラムの会員となった田中健一さんからの投稿です。田中さんは多くの途上国の現場を見てきましたが「政府の意思が反映されるODAとは異なり、地域の安定を主目的とする基金のアイデア」を温めて来たところにフォーラムと出会い、国際連帯税について知ったとのことです。翻って、ODAはもともと(ドナー国の)国益に絡めとられ易い性格を有していますが、近年またぞろ日本を含めてその傾向が強まりつつあります。以下の朝日新聞に記事と併せて田中さんの投稿をお読みください。

 

【朝日新聞】(インタビュー)変貌する途上国援助 エリック・ソールハイムさん

 

【投稿】

 私は中国・北京市にある日中合弁の病院に歯科医師として勤務している田中健一といいます。振り返れば、1997年に内科医、看護師とともに編成された海外巡回医療チームの1人としてナイジェリア、コートジボワール、ガーナの西アフリカを回ったことが国による違いを考える契機でした。その後、JICA専門家としてブラジルで公衆衛生を担当したことで電気もない町にもいました。

 

 アフリカや南米では広大な国土・膨大な人口に埋もれる形で、下痢などで多くの乳幼児が死んでしまう実際があります。この現実に対し、私は傍観者もしくは翻弄されるだけの人間だったと自戒しながら日本に戻りました。すでに20年近く前の話といえないところに現在がかかえている問題があります。

 

 当初、私は生死に関係しないため国際支援と歯科は接点が少ないように思っていました。しかし、注意深く観察すると、どこの国でもアメリカ型のジャンクフードの流入により伝統的な食生活が減り、それにつれて虫歯が爆発的に増えました。マンパワー不足もあり、この疾病構造の変化に多くの国は付いていけないのが実際であり、支援が求められる所以です。こうして、海外との接点を有していくうち、現地に多くの知己を有するようになり、議論の場に入れるようになったのです。

 

 そんな経緯から、私は自分の専門をこえて、関係した国々がかかえる問題を垣間見る機会をえました。同じ国の中にあっても、地域毎に振り分けられる予算に違いがあるのは、政権党ではない地盤だから、反政府の拠点だから、異民族だから、などそれぞれ理由はあります。途上国といわれる国ではBHN(Basic Human Needs)など本来、国民として享受できる公衆衛生サービスが得られる仕組みができていない、往々にしてこれは国の悪いガバナンスによるものとされますが、政府予算に目を転じれば国が抱える膨大な対外債務など、その国に課せられた制度的なものも大きく関係していることが見えてきました。

 

 また、グローバリゼーションによりもたらされた負の側面として、国をまたぐ感染症に対して各国協調だけでは立ち行かないこと、新自由主義的な風潮の流れに伴う規制緩和により、本来、政府が担うべき防疫の機能が縮小したこと、もあることがわかりました。いみじくも2003年、北京で発生したSARSはまさに現場の1人として対応にあたりましたので、その思いを強くしました。

 

 そんな経験から、政府の意思が反映されるODAとは異なり、地域の安定を主目的とする基金のアイデアが浮かびました。各国が資金を持ち寄り、一国をこえ域内の安全のために共同資金として、使うことができる、そんな仕組みが求められると考えたのです。さらに集めた共同資金は自国政府ではなく、域内の元首を経験したものらにより構成されるある専門の会(元老院や顧問委員会というイメージ)で管理され、大所高所からその資金の使途を決定できれば良いと考えている人間です。

 

 でも具体的にその財源はどこに求めればよいのだろうと考えてきました。税なのか保険なのか、さらには篤志家によるものなかです。フィリピン、マレーシア、ベトナム、タイ、インドネシア、ドイツ、フランスにある日本人学校や幼稚園での保健指導、各日本人会との健康相談会で私の問いを日本大使館、在外企業、現地の団体などで発してきました。そんな時に出会ったのが貴会でした。

 

金融取引に課税する、航空券に課税するというのは私にとって斬新なアイデアでした(さらにアジアでいえばクルージングなど遠洋航海で国をまたぐ場合も候補として良いと思います)。その後、自治労会館でのピケティの勉強会、青山学院大学での金融取引税シンポジウムに参加させていただき、金融取引税の制度的・法的な創設にむけ私もその一員になり、専門の方々と意見交換をしたいと考えました。こんな想いから、貴会への参加を希望させていただいた次第です。

 

★写真は、フィリピン・マニラの幼稚園で保健指導を行う筆者・前列右(14年6月 歯科巡回指導)