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政府「骨太方針」にSDGs観点なし、幼児教育の無償化が目玉?
2017.06.05
政府「骨太方針」にSDGs観点なし、幼児教育の無償化が目玉?

政府は6月2日、「経済財政運営の基本方針(骨太の方針)」(以下、「骨太」と略)の素案をまとめました。この「骨太」は2018年度国家予算の原型となるもので、たいへん重要な政府の政策であることは間違いありません。

 

・「経済財政運営と改革の基本方針 2017(仮称)」素案  
 

●SDGs理念「持続可能で強靱、誰一人取り残さない…」見当たらず

 

重要な政府の政策と言えば、これが持続可能な開発目標(以下、SDGsと略)観点からの捉え返しが行われているかどうか注目する必要があります。というのは、昨年12月SDGs推進本部(本部長:安倍内閣総理大臣)は『SDGs実施指針』を策定しましたが、「政府全体及び関係府省庁における各種計画や戦略、方針の策定や改訂に当たっては、SDGs達成に向けた観点を取り入れ、その要素を最大限反映する」と記述し、“SDGsの主流化”を謳っていたからです。

 

結論から言えば、この「骨太」にはほとんどSDGs観点が入っていません。かろうじて第2章「…中長期の発展に向けた重点課題」の最後の項目である「外交・安全保障」のところで「SDGs実施指針に基づく国内施策や国際協力を含めた総合的な取組…など、グローバルな課題の解決に向けた取組を推進する」と述べています。しかし、「総合的な取組」については何も語っていませんので、SDGsが完全な付け足しになっているといっても過言ではありません。

 

また本来的な「骨太」の課題としては、「一億総活躍ができず、持続可能かつ強靭とはいえない」分野を分析し、その対策を講ずることですが、その分野とは第一に「少子(高齢)化」であることは言を俟ちません。

 

●「骨太」の目玉は「保険方式」による幼児教育の無償化か?

 

その少子化ですが、「骨太」が出された当日、「昨年の出生数 初の100万人割れ」と厚労省の統計が発表されました(出生数のピークは1949年の269万6638人)。止めどなく少子化が続いていることに対し、「今後本格化する人口減少・少子高齢化は必ずしもピンチや重荷でなく、イノベーションのチャンスとして捉えるべきである」と「骨太」では強がりを言っていますが、ちょっと認識が甘いのではないでしょうか。

 

ともあれ、その少子化問題とも絡みますが、どうやら今回の「骨太」の目玉は“幼児教育の無償化”にあり、なかでも小泉進次郎議員ほかが提唱している「こども保険」にあるようです。「骨太」では、その財源につき①新たな社会保険方式、②財政の効率化、③税の3案を含めて検討するとなっていますが、どうも「こども保険」を目玉中の目玉にしようという流れとなっています。とくに、マスメディアの日本経済新聞が「骨太」に関し、「教育財源に『保険』明記」(6月3日付朝刊)として報道するなど、すでに既定路線であるかのような報道ぶりです。

 

●教育財源は保険方式ではなく税方式で、かつ「社会連帯税」(佐藤主光一橋大学教授)で

 

この「こども保険」ですが、そもそも保険は疾病や死亡などリスクに備えるものですから、教育にはとうていなじまないという本質論はともかく、多数の識者は税方式で行うべきという主張です。では、どんな税制で行うべきか?

 

現在の日本の社会保障は、年金、介護など高齢者向けの対策が優先されており、少子対策等が立ち遅れていることは明白です。そこで高齢者対策はできる限り高齢者同士で助け合い、それで浮く分を少子対策等に回すことが必要です。高齢者同士の助け合いとは、言うまでもなく困っている高齢者につき、裕福な高齢者が税制を通じて支え合う仕組みです。

 

その税制のあり方として、佐藤一橋大学教授は「健保の保険料のうち高齢者医療支援に充てている分は、金融所得などに課税ベースを広げた社会連帯税に転換すべきだ」と、下記の日経新聞で主張しています。ここでは主に社会保険のうちの健康保険料のことを言っていますが、課税ベースをいっそう広げ社会連帯税の税収を上げることができれば、高齢者の社会保障全般の財源として使うことができると思います。

 

ちなみに、2016年末での金融資産残高は、家計で過去最高の1800兆円(ちなみに企業の金融資産残高も過去最高で1101兆円)。これに0.1%という薄い税をかけても1.8兆円の税収となります。

 

また、現在の所得税が累進性にも拘わらず所得1億円をピークに逓減していくというまことにおかしな仕組みを直す(富裕層の主な所得源である株式譲渡や配当の20%分離課税制を総合課税化するなど)等々、高齢富裕層優遇措置を抜本的に改正していく余地は十分あります。

 

さらに金融資産への課税としては、金融取引税(FTT)も当然考えられます。東証一部上場株取引で717兆円、デリバティブ取引で2293兆円が昨年取引されました。また外国為替取引を見ると1京534兆円という天文学的数字となります(2016年の営業日を240日として計算)。これらの金融取引に0.01%~0.005%という超薄い税率をかけても相当の税収になることは間違いのないところです。ちなみに、一昨年12月公表したグローバル連帯税推進協議会(第二次寺島委員会)の最終報告書では、金融取引税につき8000億円~3.0兆円まで4段階のメニューが提示されています。

 

【日経新聞】社会保険料という名の税 上級論説委員 実哲也