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コロナ・ワクチン>貧困国の命はカナダの27分の1か!?
2021.02.14
コロナ・ワクチン>貧困国の命はカナダの27分の1か!?

ワクチン接種回数 

ワクチン接種回数(貧困国・高所得国)

 

新型コロナウイルスの猛威は未だ衰えず、感染抑止の切り札として期待されるのがワクチンです。が、現実は高所得国によるワクチンの争奪戦となっており、貧困・低所得国は置き去り状態にされています。重要なことは、貧困国の人々を取り残さない政治的なリーダーシップと資金不足の解消です。

 

G7首脳会議が19日「ワクチンの公平な分配」などを議題として開催されるようですが、菅首相をはじめ日本政府がそのような国際政治の場で積極的発言を行ってもらうために、そして何よりも日本の全国会議員にこの「命の格差」とも言える不条理な問題を認識してもらうために、問題提起をしていきたいと思います。

 

以下、「コロナ・ワクチン>貧困国の命はカナダの27分の1か!?」と題した拙文を書きましたのでご笑覧ください。

 

 

コロナ・ワクチン>貧困国の命はカナダの27分の1か!?

 

新型コロナウイルス(以下、コロナと略)のワクチン接種が世界的にはじまっていますが、「命の格差」とも言える人道的・道義的な問題が出てきています。それは接種が行われているのは、富裕国などほんの一部の国であり、大部分の国ではいぜんとして接種のメドが立っていないことです。

 

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長によれば、前者は10か国で接種の4分の3を占め、後者は130か国にも上っているとのことです。この結果、同事務局長は「(各地の)高リスクの人々への接種に時間がかかるほど、ウイルスが変異したりワクチンが効かなくなったりする恐れが高まる。…すべての場所でウイルスを抑えないと(ウイルスとの闘いは)振り出しに戻る」と警告しました(2月6日付朝日新聞)。

 

実際、ブラジル北部アマゾナス州の州都マナウスで最近見つかったコロナの変異ウイルスが世界的な脅威になるかもしれないと懸念されています。「科学者は、ブラジルで確認された変異ウイルスに既存のワクチンが効かいない可能性を考える」2月11日付日経新聞 シンクタンク・ブリューゲルのジャン・ピサニフェリー氏)という事態が起きています。

 

1、貧困・低所得国と富裕国(高所得国)のワクチン確保の割合

 

ご承知のように、国際的にはWHOの呼びかけで、コロナのワクチン・治療薬・診断の開発、生産、公平なアクセスを加速させるため「ACTアクセラレータ」という国際的枠組みを作られ(日本も共同提案国)、その下にワクチンを共同購入し、途上国にも配布するために「コバックス(COVAX)」ができました。ここにはワクチン供給に期待して約190か国が参加しています(当初、米国と中国が不参加でしたが、その後両国とも参加)。

 

ところが、まだワクチンの供給が十分ではないのに争奪戦となり、上述のように富裕国がほとんどを確保してしまう有様となっています。コバックスが提供を予定している貧困・低所得国と富裕国(高所得国)のワクチン確保の割合を見てみましょう。

 

          接種総回数   1人当りの回数     備考

・貧困・低所得国   18億回    3分の1回?   92か国の人口の27%    

・欧州連合(EU)  15.9億回     3.5回

・米 国       12.1億回     3.7回

・カナダ       3.4億回     9.0回

・イギリス      3.7億回     5.5回

・日 本       3.14億回     2.5回

 

コバックス概念図

      コバックスの概念図

 

コバックスは21年中にワクチン18億回分確保を目指し、92か国(総人口の27%)の貧困・低所得国に供給する予定でいますが、これだけですと大雑把に言って3人に1人しか接種できない計算となります。一方、富裕国は日本を除いてどの国も1人当たり3回分以上で、カナダとなると9回分も確保しています。ということは、貧困・低所得国の人の「命の価値」はカナダの人の27分の1と見られても仕方がないと思います。

 

ちなみに、アフリカ連合(AU)は総人口13億人の6割に2回ずつ接種できる15億回を取得を目指していますが、メドが付いたのは2.7億回分だけのようで、コバックスを通じ6億回供給してもらう予定ですが、こちらもメドが立っていません。そういう中で、アフリカだけではありませんが、中国が53の途上国・地域に向けワクチンの無償援助を始めたとのことです(2月9日付読売新聞)。

 

2、「ACTアクセラレータ」と「コバックス」の圧倒的な資金不足

 

考えてみますと、貧困・低所得国(92か国)にとって命綱ともいえるコバックスが3人に1人にしか接種するワクチンを確保できないというのも最初から力不足を自ら露呈してしまっている、と言えます。要は圧倒的に資金がないからだ、ということだと思います。

 

WHOによればACTアクセラレータは約270億ドル(約2兆8千億円)の資金不足となっています。これに対し、国際協力の枠組みに復帰した米国が40億ドル(約4200億円)、日本が2億ドル(約208億円)拠出を決めました。EU並びに各国の動向は分かりませんが、多分合計しても100億ドルに届くかどうかでとても資金不足を解消するには程遠いと言えましょう。とするならば、コバックスの資金調達も厳しいことが予想され、貧困・低所得国でのワクチン接種3人に1人ベースが改善される見込みはありません。

 

別の方法としては、ワクチンを「国際公共財」という観点から、各メーカーに価格をぐっと安くしてもらうことです(できれば原価近くまで)。価格はいくらかと言いますと、1回分で、英アストラゼネカが1.78ユーロ(約225円)と最安で、米モデルナが18ドル(約1860円)と最も高く、いち早く販売された米ファイザーは12ユーロ(約1520円)と言われています(12月19日付時事通信)。当面利益を得ようとしない方針ということでアストラゼネカが一番安いようですので、他のメーカーもこれに合わせてくれれば、コバックスがより多くワクチン購入ができるでしょう。ただし、守秘義務が課せられているので、これが正しい価格かどうかは確証を得ることができません(ベルギーの高官が情報を漏らした)。

 

とはいえ、このまま推移するなら、貧困・低所得国は中国やインドのワクチンを頼るほか道はなくなります(中国シノバックは治験の透明性に対する懸念があると言われているが)。コバックスならびにWHOは中国などとの調整が必要と思われますが、どうなっているでしょうか。

 

3、先進国(ドナー国)は借金まみれ、今こそ国際連帯税の出番

 

先進国(ドナー国)が途上国支援を行うには国家予算からODA(政府開発援助)を通じて行いますが、2019年のODA実績合計は1,528億ドル(約16.7兆円)でした。ですから、感染症対策だけに特化すればACTアクセラレータなどの資金不足を解消することは可能です。しかし、途上国支援は医療・保健のみならず多岐に渡りますので、これまでのODA規模では限度があります。そもそもSDGs達成のための費用は途上国で2.5兆ドルが不足していると言われています。

 

一方、先進国は自国のコロナ対策でばく大な借金による財政政策を推し進め、今や昨年末時点で総額13兆8750億ドル(約1445兆円)にも達し(IMF報告)、ODAを飛躍的に増加させる余裕はないと言えます。日本も20年度の財政は総予算175.7兆円のうち新規国債が112.6兆円も占めて、借金依存度は65.1%にも及んでいます。

 

それではどうするか? コロナ禍による経済危機にもかかわらず相当の利益を上げている経済セクターが存在します。それは金融セクターとIT関連セクターです。この両セクターに、国境を超える経済活動に広く薄く課税するという国際連帯税を課して、ある意味グローバリゼーションの使用料(fee)を支払ってもらうのです。

 

具体的には、金融取引税、デジタル課税。前者は、外国為替取引、外国為替証拠金取引、株式取引、債券取引、デリバティブ取引など課税対象はいくつもあります。後者は、現在OECD/G20で議論中ですが、IT関連のみならず製薬会社等多国籍企業の利益に対する課税が対象になっています。金融取引税関係については、G20首脳会議レベルで国際公共財の創出として合意し、国際共通税として実施することが望ましいと言えます。

 

かつてフランスのシラク大統領(当時)が、最近では河野太郎外務大臣(当時)が国連や国際会議の場で倦まずたゆまず、前者はMDGs(ミレニアム開発目標)の資金として、後者はSDGs(持続可能な開発目標)のための資金として、国際連帯税の創設を主張してきました。今コロナ・パンデミックを前にしてその必要性がいっそう高まっていると言えるでしょう。

 

※写真は、ファイザー社のHPより