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報告:気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?
2023.07.10
報告:気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?

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7月7日横浜市立大学の講堂とオンラインによって「~明日のために今の大学生が考える~気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?」が開催され、70人を超えての参加申し込みがありました。

 

主催は、グローバル連帯税フォーラムと横浜市立大学SDGs学生団体TEHs。冒頭主催者挨拶として、TEHs代表が挨拶されました。同グループは「SDGsを広めることを目的に様々なプロジェクトベースで活動している団体」で現在100人を超える部員が活動しているとのことでした。

 

プログラムですが、「第1部:講演」では、明日香壽川・東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授と田中徹二・グローバル連帯税フォーラム代表理事が行い、グリーンピース・ジャパンの儀同千弥さんが「COP28に向けての活動事例」との報告を行いました。その後「第2部:大学生による未来のためのディスカッション」に移りました。

 

今回は、講演を行ったお二人の当日の資料を送ります(第2部の報告は別稿で)。

 

・明日香壽川「気候危機と『損失と被害』」

 

・田中 徹二「国際連帯税は未来を救えるのか?」

 

なお、グローバル連帯税フォーラムのニュースレター『国際連帯税・通貨取引税』も送ります。同レターでフォーラムの会員を呼び掛けていますので、会員になっていただける方は gtaxftt@gmail.com までご連絡ください。

 

 

《講演のエッセンス》

 

●明日香壽川「気候危機と『損失と被害』」

 

お話するのは、①気候危機の現状、②気候変動の国際交渉、③損失と被害、④今後の展望。中でも、③につき、次のように話された。

 

「損失と被害」(基金)の意義

日本に限らず、先進国に住む人々は、途上国での被害に同情するものの、自らを加害者として認めて賠償金を払うという意識を持つ人の数は極めて少ない(ほぼゼロ?)。しかし、自分が交通事故などの被害者になった時のことを考えればわかるように、「援助」と「賠償」は全く意味合いが異なる。

 

さらに、日本の場合、財政支出は増えるものの、その財源に関する議論は乏しい。一方、実現可能かどうかは別にして、「損失と被害」に関しては、国際航空のフライト、化石燃料会社や金融市場などへの課税などイノベーティブな財源が提案されており、硬直化した日本の財政に関する議論にも一石を投じる可能性がある。

 

●田中徹二「国際連帯税は未来を救えるのか?」

 

1)世界には幸福がいっぱいあるが、不幸もそれ以上に多い。本来人間は幸福を求める権利があるが、この地球上では貧困・飢餓という最悪の不幸に見舞われている人が多い。とくに途上国では今日、感染症、食料・エネルギー危機、気候危機、債務危機等のポリクライシス(複合危機)に苦しむ。

 

2)よって途上国支援が求められているが、国際社会が確約した「SDGs=持続可能な開発目標」を達成するための資金が毎年4.2兆ドルも不足している。が、富裕国によるODA総額は2000億ドルたらずで、公的資金による支援では間に合わず。そこで先進国や国際機関は盛んに民間資金の動員・利用を訴え、ブレンドファイナンスやESG投資など様々なスキームが実施されている。しかし、肝心の貧困国や脆弱国にはお金届かず。民間資本は利益の上がらないところに融資したがらないから。

 

3)従来の公的資金ならびに民間資金が途上国の資金ニーズに及ばないとすれば、第三の革新的資金の創出が必要。それが国際課税方式による国際連帯税。そのスキームは極めてシンプルで、グローバル化によって受益している経済セクターの活動に広く薄く課税して、その税収を地球規模課題であるSDGsや気候変動対策資金に充てる、というもの。

 

4)国際連帯税はまずは航空券連帯税としてフランス等で始まったが、国際的な広がりに欠けてきた。しかし、SDGsや気候危機資金ニーズが今や「兆ドル」単位に跳ね上がる中で再び注目を浴びる。6月開催された「新グローバル金融協定のためのサミット」でも多くの提案が行われた。とくに金融取引税。OECDも言うように世界の金融資産はコロナ禍やインフレににもかかわらず増額の一途を辿っている。つまり、お金は有り余るほど世の中にはある。まずそのフローである株取引や為替取引(通貨取引)への課税へ、と。

 

5)このままではODAや民間資金動員が増えたとしても依然として億ドル規模だし、民間資金は貧困国等には向かわない。すると債務に押しつぶされそうな60を超える低・中所得国では借金返済に手いっぱいであり、SDGs達成はまず不可能に。「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」というSDGsの理念は水泡に帰す。こうした根本問題・構造的な解決なくしてSDGsを語ることはできない。債務の帳消しと新しい資金による支援が必要だ。世界にはお金はある、有り余るほど使い切れないほどあるのだから。

 

※左のロゴは、横浜市大TEHsグループのロゴです。