本日(1月4日)の日本経済新聞の「私見/卓見」コーナーで、当フォーラム理事の宮越氏の論考文が掲載されましたので紹介します。
【追加的な解説】昨年のCOP28の成果文書では、当初案の化石燃料の「段階的廃止」ではなく「脱却」という妥協的内容で合意されましたが、これは中東産油国からの強い反対があったためと言われています。しかし、反対したのは新興国を含む中所得の途上国も反対したようです。
その背景は、化石燃料からの脱却には多額の資金が必要で、「石炭や石油、ガスからの収入を使って、より環境に優しいエネルギーへの移行費用を確保する必要がある」(12月14日付 BBCニュース電子版)という事情があります。低所得・脆弱途上国の適応資金や損失・損害資金なども含め、資金需要は巨額です。いよいよグローバルタックス=国際連帯税の出番になってきています。
温暖化対策は国際連帯税で 宮越太郎氏
グローバル連帯税フォーラム 理事
2024年1月4日
世界気象機関(WMO)は2023年の世界平均気温が記録のある1850年以降で過去最高になる見通しだと発表した。ここまで追い込まれた状況の中で、実効性のある政策が取られなければ、私たちには今よりさらに暗い未来が待っているだろう。
第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では 開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォースの発足が発表された。この目的は最も温暖化ガスを排出しながらも低税率となっている経済セクターへの課税、例えば炭素税、金融取引税、海上・航空輸送税などのグローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を特定して、資金を動員することである。
民間資金は最終的には利益の出る事業しか対象にできないため、誰ひとり取り残さない温暖化対策を目指すのであれば、公的資金であるグローバルタックスの導入が有効ではないだろうか。
グローバルタックスとは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、グローバルな資産や国境を超える活動に課税し、負の活動を抑制しながら、税収を地球規模課題の解決に充てる税制のことだ。
現在、気候変動やパンデミック、紛争、食糧危機などの地球規模課題は日本の国益にも直接影響を与えている。従来、途上国が中心に語られがちであった世界の課題は地球規模の課題になった。こうした国境を軽々越えて影響しあう世界において、グローバルタックスは国際社会の課題に対峙できる処方箋だ。
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