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【資料&解説】セミナー「採択された国際租税枠組条約の草案:意義と今後」
2024.10.01
【資料&解説】セミナー「採択された国際租税枠組条約の草案:意義と今後」

9月24日g-taxセミナ-②「採択された国際租税枠組条約の草案:その意義と今後のステップ」は、講師に青葉博雄・CNEO(Center for New Economic Order)代表を迎え、30人が参加しました。

 

■ セミナーで使われた資料

 

この時に使われた資料、ⅰ) 国際租税協力枠組み条約を巡る交渉の状況

ⅱ)国連国際租税協力枠組み条約への付託事事項(TOR)議長草案(邦訳)を送ります。

 

■ セミナーでの質疑を踏まえた青葉さんのコメントと解説

 

また、青葉さんの報告の後、質疑を行いましたが、この質疑を踏まえ、あらためて青葉さんから、ⅰ)国連審議での日本政府の役割、ⅱ)IFF(不正な資金の流れ)への取り組み、ⅲ)来年の「第4回開発資金国際会議」に向けて、に関するコメントと解説が寄せられたのでお送りします。

 

青葉博雄さんのコメントと解説》

 

1. 国際租税枠組条約および関連議定書に関する国連での審議における日本政府の役割について

 

国際課税原則の見直しに向け、OECDは租税委員会の下、2012年に「税源浸食と利益移転(BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクト」を立ち上げました。この議論の大枠を纏めたのが、当時の委員会の議長、財務省の浅川雅嗣財務官(当時)でした。

 

その後、2018年に同プロジェクトのフォローアップとして、「デジタル化に伴う課税上の課題-中間報告書2018」を発表、「BEPSに関する包摂的枠組み」における交渉を経て、2021年10月に合意に至りました。

 

その後、発展途上国を中心に課税権への再配分が不十分であるとの認識が広がり、アフリカ諸国を中心とする発展途上国から国際課税改革における議論の場を国連に移す提案が出され、国連は「国際租税枠組み条約」の交渉開始を決定しました。8月まで開催された「国際租税枠組条約付託事項に関する政府間特別委員会」において、日本政府は「OECD/G20包括的枠組み」の下での合意事項見直しに繋がる動きに終始反対の立場を取ってきました。

 

現在開催されている国連総会において年内に「付託事項」が決定し、同条約および議定書の交渉委員会を支える事務局の設置が決まります。そして、来年早々に条約交渉委員会に置ける議論が始まる見通しです。私は、日本政府に対し、「OECD/G20包括的枠組み」における合意に固執することなく、国際課税改革に関する豊富な知見を活かし、国連における議論において(ブレーキ役を果たすのではなく、)積極的に前に進める役割を担うことを求めていきたいと考えております。

 

2. IFF(不正な資金の流れ)への取り組み

 

今回のセミナーの中でIFFへの取り組みに関する有意義な意見交換がありました。現在、国際社会はIFFに対する取り組みとして次のようなことを行っております。(注:ここでのIFFには租税回避も含むとします。)

 

  1)資金洗浄・テロ資金供与に対処を目的とするする「金融活動作業部会(FATF)」による取り組み

  2)匿名の法的組織の真の所有者および金融口座情報の自動交換などを通しての租税回避対策を図るための、「 税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」による取り組み

  3)「税源浸食と利益移転(BEPS)」に対するOECDを中心とする取り組み

  4)透明性があり責任ある資源管理を目指す、「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)」による取り組み

 

今回の政府間特別委員会における審議において、2つ目の初期議定書のテーマの候補の一つとして「税に関係する不正な資金の流れ」が挙げられています。よって、2)に関しては国際租税枠組条約および関連する議定書の対象となり得ると考えられますが、先ず既存の取り組みの強化が求められるものと思います。次に1)の「資金洗浄・テロ資金供与への対処」についてですが、国際的税務取り決めによって対応が図られるものではなく、刑事案件としての取り締まりが中心となると考えます。

 

3.「第4回開発資金国際会議」に向けて

 

来年6月にスペインにおいて、第4回開発資金国際会議(Ffd4)が開催されます。既に私が入っているFfDに関する国際的市民社会グループにおいても、国連のプロセスへのインプットの準備が始まっております。過去の開発資金国際会議において、SDGs実現に資する国内資金動員(DRM:Domestic Resource Mobilization)の増大を図る方策の一つとして国際課税改革の重要性が強調されてきました。

 

詳しくは『国際人権ひろば(2022年03月発行号』に掲載された拙論をご参照ください。開発資金国際会議における議論の行方も注視する必要があると考えます。

 

※写真は、国連一般討論で演説するナイジェリア副大統領のカシム・シェティマ 氏(9月25日)