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26年度税制改正要望>国際連帯税と国際観光旅客税について
2025.09.03
26年度税制改正要望>国際連帯税と国際観光旅客税について

各省庁が26年度(令和8年度)税制改正要望を提出する8月末を過ぎましたが、私たちが要求した国際連帯税について、外務省は今年度も断念しました。一方、連帯税オプションの一つであるの航空券連帯税と同じ仕組み(出国税)の国際観光旅客税については、国交省が税目を明らかにしないまま実質的に引き上げる方向での「検討」案を提出しました。貴重な税源を国交省に取られっぱなしとなっている外務省の意欲のなさはまことに遺憾としか言いようがありません。

 

■ 国際連帯税要望、外務省は引き続き断念

 

8月27日、私たちは「①日本政府は『国際線プレミアム旅客への課税を求める連帯連合』に参加すること、②26年度税制改正要望に『仮称・国際航空プレミアム券連帯税』を要求すること」の要求(*)をもって担当窓口の外務省地球規模課題総括課の安藤課長らと話し合いました。結論から言えば、「(外国援助に対する厳しい風潮がある中で)ODAやグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア基金)の拠出水準を守るのに精いっぱいの状況で、国際連帯税関係までには考えが及ばない」というものでした。

 

確かに、先の参議院選挙で「日本人ファースト(≒外国人への排外主義)」を掲げた政党が大躍進し、最近も途上国の子どもらへのワクチン供給を担う国際組織GAVIアライアンスへの供出に対する抗議やJICA「ホームタウン」問題への抗議デモ等、異様な事態が日本の社会現象になりつつあり、国際協力・途上国支援を謳う政府やNGOにはたいへん厳しい状況となっています。しかし、だからと言って、途上国援助を委縮してしまっては、逆の意味で国益を損なう事態になってしまいます。

 

■ 途上国援助は、徹底して「国益」に繋がってくる

 

というのは、中長期的にみて人口減がいっそう進行していく日本社会において、経済はもとより日本人の社会保障等も外国人なしには立ち行かなくなることは必至です。後者については、介護・医療現場で社会保障サービスを担ってくれることのみならず、社会保険料や税金を日本で働く外国人に払ってもらうことにより社会保障費を生み出してくれることになります。現在においても人手不足が深刻な製造業や農業や建設業、介護の現場は外国人が相当部分を担っています。

 

つまり、日本人は今後さらに人口が増加するアフリカ等途上国の人的資源に頼らざるを得ず、従って現在の貧困国・脆弱国が貧困や気候災害等に打ち勝っていただくための資金が必要なのです。ですから、途上国援助は「情けは人のためならず」であり、徹底して「国益」に繋がってくるのです(企業から見れば、健全に成長を続ける途上国は市場開拓の場になっていくしょう)。

 

当フォーラムは引き続き、日本政府に対し『国際線プレミアム旅客への課税を求める連帯連合』への参加を求めるとともに、国際線プレミアム旅客への課税を求めていきます。また、同税の実現を契機として、さまざまな国際(グローバル)連帯税に挑戦していきます。

 

■ 国際観光旅客税の引き上げを狙う税制改正要望

 

一方、国交省からは税制改正要望として「観光施策を充実・強化するために必要となる財源確保策の検討」を提出しており、要望内容として「受益と負担の適正なあり方…を勘案しつつ、観光施策を充実・強化するために必要となる財源確保策について必要な検討を行い、所要の措置を講じる」としています。ところが、所得税とか法人税とかの「税目」については何も書かれていません。この財源確保のリソースは明らかに国際観光旅客税(以下、観光税と略)を差すことになり、その引き上げを狙っていると言えるでしょう(本当は観光税と書きたいがそれを隠すことに?)。実際、「政府や与党からは1人につき1000円ずつ徴収する国際観光旅客税(出国税)の引き上げを求める声がある」(8月29日付日経新聞)と報道されていました。

 

このまま推移しますと、かつて観光税を新設した時と同様に、観光庁が有識者による検討委員会を設置し、そこで観光税引き上げを答申させ、しかる後に国会成立を図るというプロセスになろうかと思います。

 

■ 観光税は出国日本人にはほとんど利益なく悪い増税に

 

観光税はご承知のように、日本を出発する航空機や船舶の乗客に、出国税として1回につき1,000円課税しており、外国人も日本人(正確には国籍には関係なく日本に定住している人)も等しく課税されています。ところが、その税収の使途は、基本的に外国人観光旅客のために使われています(「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律」に基づいて)。そのため、「その税収の大部分は訪日外国人旅行者の受け入れ環境整備やプロモーションに充てられ、日本人旅行者が享受する直接的な利益は極めて限定的である」(1月20日付航空新聞社WING)という状況です。

 

つまり、出国日本人にとっての負担と受益が一致しないのです。ほかにも細かいですがビジネスや留学で訪日する外国人も一致していません。また、国内の状況を見ても、観光地は大いに受益しますが(オーバーツーリズム問題があるが)、そうでない地方はまったく益することはありません。このように観光税は大きな矛盾を抱えています。

 

「国際観光旅客税の使途に関する基本方針等について」(観光立国推進閣僚会議決定)によれば、基本的考え方として「受益と負担の関係から負担者の納得が得られること」としています。しかし、当初から出国日本人に納得を得られたわけではなく、ましてそれが引上げとなれば納得どころか大いに国民的反発を招くのではないでしょうか。だから税制改正要望で税目を隠しているのかと勘繰りたくなります。

 

■ 国際観光旅客税引き上げに反対し、領土外での課税は地球規模課題に使用を!

 

もし外国人用観光のための財源として税を課すとすれば、出国日本人まで課税する出国税ではなく、制度設計を入国税にし直して外国観光客からだけ徴税すればよいのです。実際、ブータンやタイ等が導入しています。あるいは、米国のESTA(電子渡航認証システム)のようなシステムを導入し、事前審査を行うにあたり手数料(実質観光税)を取ることです。米国では現在の21ドルから本年9月30日より40ドルにも引き上げられます。

 

ともあれ、「国際航空運賃に対する課税は国家の領土主権の外で行われる消費行為であるから、その税収はこれを徴収した国家の歳入とされるべきではなく国際社会のために使うべき」(06年8月日経新聞「人道支援の税制創設を」)というのが、我が国の租税法の権威であった故金子宏東大名誉教授の指摘であり、先生は国際人道税を提唱したのでした。国際航空チケット(運賃)に連帯税や人道税を課し、それを途上国の貧困・感染症や気候変動対策という地球規模課題に使うことができれば、それは外国人であれ日本人であれ受益することになります。受益と負担は一致するのです。

 

いずれにしましても、国交省の税制改正要望である「観光施策を充実・強化するために必要となる財源確保策の検討」を注視し、出国日本人にはほとんど裨益しない実質的な観光税引き上げに反対していきましょう。また、航空チケット(運賃)への課税は連帯税として実施せよと日本政府に迫っていきましょう。

 

(*)2026年度 国際連帯税に関する要請書 http://isl-forum.jp/archives/4566