BS11で22日放映「国際連帯税構想と日本導入の可能性」

BS11

 

寺島実郎・日本総合研究所理事長が司会を務める、BS11テレビの「報道ライブ21 『現代ビジネス講座』世界を知る力」で、上村雄彦・横浜市大教授が、もうひとりのゲストの田瀬和夫・デロイトトーマツコンサルティング執行役員とともに国際(グローバル)連帯税について語ります。

 

■「国際連帯税構想と日本導入の可能性」(1月22日放送)

 

ゲスト:上村雄彦(横浜市立大学国際総合科学部准教授)、田瀬和夫(デロイト
トーマツコンサルティング執行役員)

 

「国際連帯税」とは、金融危機、感染症や気候変動など、一国だけでは解決しえ
ない世界規模の深刻な課題に対処する仕組みを支える税体系のこと。既に欧州で
は「航空券連帯税」が導入され、現在「金融取引税」導入の準備も進んでいる。
また、日本でも国会議員が超党派の議員連盟を立ち上げ、議論が始まった。今回
は「国際連帯税」研究の第一人者が、新しい課題に対応する新しい税構想の意義
と今後について提言する。

 

・放送:1月22日(金)よる9時00分~9時54分

 

※「報道ライブ21『現代ビジネス講座』世界を知る力」:
「経済・金融・国際情勢」をメインテーマにした知的報道番組。
 中堅ビジネスマン、知的視聴者を対象に、世界と日本の動きの見方と処方箋を
提示。「世界を知る力」が身につきます。

【分析】株、原油価格暴落の背後でうごめく投機マネー

年が明けてから、世界の株や原油価格の下落が止まりません。もともと株や原油も価格が高すぎました。米欧日の中央銀行による超金融緩和政策により生み出されたぼう大な過剰流動性が投機マネーとなって、いわゆる金融相場を演出していたのです。日本がそうであるように、とくに景気も良くないのに株だけが上昇していました。つまり、実体経済とは何の関係もない、バブルだったのです。

 

●空売り手法=金融市場での破壊的メカニズム

 

そのバブルが今はじけつつあるようですが、問題はそれがあまりにも急速であることです。株も原油もあれよあれよという間に下落し、底値が見えない状態です。どうしてそうなるのかと言うと、今日の金融市場には破壊的なシステムがビルトインされ、従って(エコノミストとかの)予想をはるかに超えて落ち込むことになります。そのシステムとは、「空売り」です。

 

●米NY株式市場ダウ株価の事例

 

16,000ドルの大台を割った1月15日のNY株式市場ダウ株価のもようを、日本経済新聞(以下、日経新聞)は「機関投資家は米株の持ち高を急いで減らし、ヘッジファンドがそれに乗じて空売りを入れた」と米証券会社幹部の声を伝えています(15日付夕刊「(ウォール街ラウンドアップ)『運用のプロ』にも及ぶ売り連鎖」)。が、真実はヘッジファンドによる空売りが激しく、それに他の機関投資家が追随した、というのが本当のところではないでしょうか。

 

●東京証券取引所1部での事例

 

日本の株の例で見ますと、年初から下落しっぱなしでしたが(13日だけ上昇)、その裏では次のような事態になっていました。「東証1部の空売り比率は昨年12月に30%台半ばを挟み推移していたが、ことしに入り40%台が恒常化している。東洋証券の大塚竜太ストラテジストは、『空売り比率40%というのは異常な高さ。いくら株が割安で売られ過ぎていると分かっていても、投資家が手を出せないレベル。お手上げだ』と言う。13日に株価が反発したにもかかわらず、空売り比率が低下しなかったことについては、『CTAなどヘッジファンドが本格的にショートに取り組んでいる。これではほとんどの投資家は様子見になる』との見方を示した」(1月14日付ブルームバーグ)。つまり、東京証券市場はこの間ヘッジファンドなどの投機筋による空売りに翻弄されている、と言うのです。

 

【Bloomberg】空売り比率高止まり、投機家本腰に警戒-日本株安定へ30%台前半必要

 

●原油:米WTI市場での事例

 

次に、原油価格について見てみましょう。原油市場もとっくに株式市場と同じような金融市
場となっており、株券の代わりを原油が務めているだけである。当然ここでも空売りが頻繁に行われます。先月の半ば次のような記事が日経電子版に載っていました。

 

「…皮肉なことには、石油輸出国機構(OPEC)が価格調整役を放棄したことで、原油価格形成における投機家の存在感が飛躍的に高まったことだ。(WTIの1バレル)100ドル台から30ドル台まで空売り・買い戻しを繰り返して連戦連勝。笑いがとまらない。今年は、充分もうけさせてもらったから、もう打ち止めにして、早々とクリスマス休暇に入る、という声が聞こえてくる」(15年12月15日付)。現在、ヘッジファンドは第二ラウンドの空売り攻勢に入っているようです。「底打ち」どころではありません(時間外取引で29.09ドルまで下落中)。

 

【日経電子版】原油下げ局面に底打ちの兆し(豊島逸夫の金のつぶやき)

 

●「空売り」とはどんな手法?

 

ところで、「空売り」とはどんな手法でしょうか。以下、日経新聞の説明です。

 

「株式の信用取引を利用し、一定の保証金を積むことによって現在持っていない株式を売ること。証券会社や証券金融会社から借りてきた株を売るもので、実物取引の形だが、持っていない株を売るためこれを空(から)売りという。空売りしている株が値下がりしたとき、その株を買い戻して値ざやを稼ぐのが目的。相場が大幅に下落する局面では、株価下落の原因扱いされることが多いが、会社の弱点などを早期にあぶり出すといった一定の役割を果たしているという議論もある。」

 

つまり、株や通貨や原油の価格が下がれば下がるほど儲けが出るという、いわば倒錯した金融手法なのです。通常、株であれ通貨であれ、実体経済の景気・不景気に合せて価格を上げ下げするはずですが、空売りはいわば不景気を増幅させ経済を混乱させてしまう手法なのです。

 

●アジア通貨危機の再来? ドルペッグ制採用の国への攻撃

 

現在、中国経済の減速や米国の利上げという新たな事態に対して、グローバル経済が揺れ動いています。そしてこのことを絶好の機会とばかりに、ヘッジファンドなどの投機筋がいっせいに空売りを仕掛け、大きな混乱を呼び起こしています。当面、ドルペッグ制(対ドル固定相場)を取っている中国やサウジアラビア等への通貨攻撃の帰趨がどうなるか、が焦点となるでしょう(中国当局が言うように投機筋は勝てないと思いますが)。ともあれ、1997年のアジア通貨危機を思い出されるような事態となっています。

 

さらにその企業や国が倒産や破産によりデフォルト(債務不履行)状態になった方が儲けられるという、これまた倒錯した金融手法であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)が、このような危機の状況の中で再々度(2008年リーマンショックや2012年ギリシャ危機に続き)浮上してきました。下の記事をご覧ください。この件は後ほど説明します。

 

【Bloomberg】アジア信用市場に広がる恐怖感、2008年以来の大きさ

上村教授、NHKに連続出演:次回は1月14日「視点論点」

昨年末から、グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)の最終報告書の公表もあって、国際連帯税(グローバル連帯税)関係のメディア取材が増えてきました。

 

この中で、上村雄彦・横浜市立大学教授がNHKのラジオとテレビに出演し、グローバル連帯税(グローバル・タックス)につきたいへん分かりやすく説明・解説しています。どうぞお見逃さずお聞きください。

 

■1月6日【⇒録音あり!】NHKラジオ第一放送「先読み!夕方ニュース」
http://www.nhk.or.jp/hitokoto/backnumber/
(「1月6日(水)放送分」のところをクリック)

タイトル:「“ピケティ税”がやってくる ~ニュース裏読み 日本の論点③」
→グローバル・タックスのイロハと、最新の動向を竹田解説委員とトークしてい
ます。

 

■1月14日(木)NHKテレビ「視点論点」
タイトル:「地球規模課題とグローバル・タックス」

NHK 総合テレビ 4:20-4:30
NHK Eテレ(再) 13:50-14:00

 

グローバル連帯税推進協議会・最終報告書『持続可能な開発目標の達成に向け
た新しい政策科学―グローバル連帯税が切り拓く未来―』はコチラから
 ⇒ http://isl-forum.jp/archives/1420

 

◆写真は、上村雄彦教授です。