TIME誌に「開発・気候のための国際課税タスクフォース」紹介される

ローレンス・トゥービアナ カナダ大臣 

 

1月16日付「TIME誌」電子版に、「2024 年は飛躍的な気候変動アクションの年になるに違いない」と題した小論が掲載され、その中で「開発・気候のための国際課税タスクフォース」についても述べていますので、紹介します。

 

小論の執筆者は、ローレンス・トゥビアナさんとキャサリン・マッケナさん。前者は、この間何回か紹介していますように、欧州気候財団の CEO であり、フランスの気候変動大使および COP21 特別代表であり、画期的なパリ協定の主要な立案者であり、かつ今回のタスクフォース設立の立役者でもあります。

 

後者のマッケナさんは、2015 年から 2019 年までカナダの元環境・気候変動大臣、2019 年から 2021 年までインフラ・コミュニティ大臣を務めました。現在、国連ネット-ゼロの議長などを務めています。

(写真は、左がトゥビアナさん、右がマッケナさん)

 

 

2024 年は飛躍的な気候変動アクションの年になるに違いない

    ローレンス・トゥビアナ、キャサリン・マッケナ

 

2024 年、あるいは T マイナス 6 (注:気候変動の1.5度リミットまで6年を切る)へようこそ。気候変動との闘いにおける重要な節目である 2030 年が、今やはっきりと視界に入ってきました。

 

しかし、世界はまだ、あるべき方向に進んでいません。

 

パリ協定で定められた気温上昇を摂氏1.5度以内に抑えるには、早急に軌道修正が必要だ。しかし、現在の(注:各国の現在の公約の実施による)摂氏 2.5 度から 2.9 度という軌道は、破滅的な気候変動の可能性を確実なものにしています。

 

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「今日の(温室効果ガス)排出量ギャップはむしろ排出量の峡谷に似ている」と簡潔に述べた。この峡谷を閉じるには、2024 年を飛躍的な気候変動対策の年にする必要があります。

 

これは、気候変動の主な原因である化石燃料への依存を即時かつ急速に削減することによってのみ可能なことです。

 

2024 年に、私たちは化石燃料時代が終わりを迎えたことを明確にし、次の 5つの飛躍的な行動に焦点を当てる必要があります。

 

1.IEA のネット・ゼロの道筋を実行する …省略

 

2.化石燃料の段階的廃止 …省略…

 

3.グローバル・サウスへの融資の拡大

化石燃料を段階的に廃止するには、再生可能エネルギーシステムを構築し、グローバル・サウス諸国が公平かつ公正な移行を達成できるよう支援するために利用可能な資本を大幅に拡大する必要があります。飛躍的な行動をとるためには、数十億ではなく、兆単位の資本が必要です。これが、アゼルバイジャンで開催されるCOP29を含め、今年は金融が焦点でなければならない理由であり、気候繁栄と債務の持続可能性に向けて世界的な金融アーキテクチャの方向性を直ちに転換し、民間資本を活用するためのリスクを軽減するブレンデッド・ファイナンスモデルが不可欠である理由である。

 

また、気候変動資金の新たな財源も必要です。これは、気候変動の原因となっていることが最も少ないにもかかわらず、最も高い代償を払っている気候変動脆弱国にとって、特に重要です。フランス、ケニア、バルバドスは、海運、航空、化石燃料取引、金融取引、極度の富に対する課税を検討する、開発と気候変動対策のための課税に関する新たな国際タスクフォースの立ち上げを主導している。これらの措置は、切実に必要とされている資金を提供し、気候変動の最も責任のある人々が最終的に公平な負担を確実に提供できるようにするのに役立つでしょう。

 

4.国と地方のネット・ゼロ行動を連携させる …省略…

 

5.人々に力を与える

私たちは2024年を、広報ではなく国民の声が普及する年にしなければなりません。今後 12 か月間で少なくとも 67 回の国政選挙が行われます。私たちは国民に、より野心的な気候政策に取り組む政党を支持し、投票してもらう必要があります。

 

両親や祖父母とともに行進する若者たちや、法廷で政府や化石燃料産業に異議を唱える市民グループの行動が重要であることに疑いの余地はありません。宗教団体が化石燃料投資からの撤退を表明し、若者が有望な雇用主に対して気候変動リーダーであることを要求することが重要なのです。また、消費者が信頼できる気候変動対策に取り組んでいると知っている企業から購入することや、先住民が伝統的な土地を守るために闘うことを支援することも重要です。2024年、私たちは変革のためにあらゆる場所で活動する人々への支援を倍増させる必要があります。

 

これは特に女性に当てはまります。残念なCOP28の家族写真に写っているような女性首脳の不足にもかかわらず、世界的には女性が気候変動対策をリードしています。私たちは、より多くの女性と女児がコミュニティで主導権を握れるよう支援し、世界が必要としている女性主導の気候変動解決策を拡大するために、資金、指導、技能訓練を動員する必要があります。

 

新年は、自分自身を見つめ直し、より良くやっていこうと誓う時です。しかし、決意を新たにする時期は終わりました。これは、私たち全員が参加しなければならない戦いなのです。新年には新たな希望が約束されています。この新しい年を1日も無駄にしないようにしましょう。

 

◎原文はこちら:

2024 Must Be the Year for Exponential Climate Action

 

※左の写真は、1930年3月31日付TIME誌の表紙を飾ったマハトマ・ガンディーとのことです。

 

【info:求む、グローバル連帯税フォーラムの会員】

当フォーラムの活動は主に会員の会費で賄っています。個人会員は一口3,000円/年、団体会員は一口10,000円/年です。会員になってもよいという個人・団体は、お名前(団体名)と所属(役職)をお書きの上、gtaxftt@gmail.com まで連絡ください。よろしくお願いします。 

  

「温暖化対策は国際連帯税で」>1月4日付日経新聞「私見/卓見」コーナー

climate&ISL5

 

1月4日付の日本経済新聞の「私見/卓見」欄で、当フォーラム理事の宮越氏の論考文が掲載されましたので紹介します。

 

【追加的な解説】昨年のCOP28の成果文書では、当初案の化石燃料の「段階的廃止」ではなく「脱却」という妥協的内容で合意されましたが、これは中東産油国からの強い反対があったためと言われています。しかし、反対したのは新興国を含む中所得の途上国も反対したようです。

 

その背景は、化石燃料からの脱却には多額の資金が必要で、「石炭や石油、ガスからの収入を使って、より環境に優しいエネルギーへの移行費用を確保する必要がある」(12月14日付 BBCニュース電子版)という事情があります。低所得・脆弱途上国の適応資金や損失・損害資金なども含め、資金需要は巨額です。いよいよグローバルタックス=国際連帯税の出番になってきています。

 

 

温暖化対策は国際連帯税で 宮越太郎氏

グローバル連帯税フォーラム 理事

2024年1月4日

 

 世界気象機関(WMO)は2023年の世界平均気温が記録のある1850年以降で過去最高になる見通しだと発表した。ここまで追い込まれた状況の中で、実効性のある政策が取られなければ、私たちには今よりさらに暗い未来が待っているだろう。

 

 第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では 開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォースの発足が発表された。この目的は最も温暖化ガスを排出しながらも低税率となっている経済セクターへの課税、例えば炭素税、金融取引税、海上・航空輸送税などのグローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を特定して、資金を動員することである。

 

 民間資金は最終的には利益の出る事業しか対象にできないため、誰ひとり取り残さない温暖化対策を目指すのであれば、公的資金であるグローバルタックスの導入が有効ではないだろうか。

 

 グローバルタックスとは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、グローバルな資産や国境を超える活動に課税し、負の活動を抑制しながら、税収を地球規模課題の解決に充てる税制のことだ。

 

 現在、気候変動やパンデミック、紛争、食糧危機などの地球規模課題は日本の国益にも直接影響を与えている。従来、途上国が中心に語られがちであった世界の課題は地球規模の課題になった。こうした国境を軽々越えて影響しあう世界において、グローバルタックスは国際社会の課題に対峙できる処方箋だ。

…中略…

 地球温暖化の損失と損害からの復旧にかかるコストは2030年までに1500~3000億ドルにのぼるという。日本を含め待ったなしの温暖化対策を打ち出さなければならない国際社会にとって、今こそグローバルタックスの導入が必要である。

 

※新聞の掲載記事はこちらから

「温暖化対策は国際連帯税で」>日経新聞「私見/卓見」コーナー

climate&ISL5 

 

本日(1月4日)の日本経済新聞の「私見/卓見」コーナーで、当フォーラム理事の宮越氏の論考文が掲載されましたので紹介します。

 

【追加的な解説】昨年のCOP28の成果文書では、当初案の化石燃料の「段階的廃止」ではなく「脱却」という妥協的内容で合意されましたが、これは中東産油国からの強い反対があったためと言われています。しかし、反対したのは新興国を含む中所得の途上国も反対したようです。

 

その背景は、化石燃料からの脱却には多額の資金が必要で、「石炭や石油、ガスからの収入を使って、より環境に優しいエネルギーへの移行費用を確保する必要がある」(12月14日付 BBCニュース電子版)という事情があります。低所得・脆弱途上国の適応資金や損失・損害資金なども含め、資金需要は巨額です。いよいよグローバルタックス=国際連帯税の出番になってきています。

 

 

温暖化対策は国際連帯税で 宮越太郎氏

グローバル連帯税フォーラム 理事

2024年1月4日

 

 世界気象機関(WMO)は2023年の世界平均気温が記録のある1850年以降で過去最高になる見通しだと発表した。ここまで追い込まれた状況の中で、実効性のある政策が取られなければ、私たちには今よりさらに暗い未来が待っているだろう。

 

 第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)では 開発、気候、自然の資金調達のための国際課税に関するタスクフォースの発足が発表された。この目的は最も温暖化ガスを排出しながらも低税率となっている経済セクターへの課税、例えば炭素税、金融取引税、海上・航空輸送税などのグローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を特定して、資金を動員することである。

 

 民間資金は最終的には利益の出る事業しか対象にできないため、誰ひとり取り残さない温暖化対策を目指すのであれば、公的資金であるグローバルタックスの導入が有効ではないだろうか。

 

 グローバルタックスとは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、グローバルな資産や国境を超える活動に課税し、負の活動を抑制しながら、税収を地球規模課題の解決に充てる税制のことだ。

 

 現在、気候変動やパンデミック、紛争、食糧危機などの地球規模課題は日本の国益にも直接影響を与えている。従来、途上国が中心に語られがちであった世界の課題は地球規模の課題になった。こうした国境を軽々越えて影響しあう世界において、グローバルタックスは国際社会の課題に対峙できる処方箋だ。

 

…以下、省略…

 

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