国際連帯税議連、上川外務大臣要請を行う>国際課税TF参加を要望

 議連要請(24.3.27)

 

去る3月27日、国際連帯税創設を求める議員連盟(以下議連)は外務省において上川外務大臣に「開発・気候のための国際課税タスクフォース並びに国際連帯税に関する要望書」を手交し、要請行動を行いました。

 

要望内容は、以下の3項目です

 

(1)「開発、気候、自然のための国際課税タスクフォース」に我が国も参加し、議論をリードすべき

 

(2)このタスクフォースの専門家委員会に我が国から参加させるべき

 

(3)2回目の有識者懇談会を設置し、国際連帯税に関して検討を行うべき

 

<要望書全文はこちらからお読みください>

 

以下、要請行動の参加者からの聞き取りです。

 

参加したのは、衛藤征士郎会長(衆議院議員)、逢沢一郎副会長(衆議院議員)、古川元久副会長(衆議院議員)、石橋通宏幹事長(参議院議員)、田島麻衣子事務局長(参議院議員)の5名でございます。

 

上川外務大臣にお迎えいただき、衛藤会長より要望内容の説明をした後、出席者と大臣で意見交換を行い、最後に衛藤会長から上川外務大臣へ要望書を手交しました。

 

意見交換は予定の時間を越えるものとなりましたが、残念ながら要望については承るということで具体的な回答はありませんでした。これを皮切りに今後とも要請を強めていきたいと思います。

 

 【解説】

国際連帯税創設を求める議員連盟は新型コロナウイルス禍もあり、この数年日本政府(外務省や官邸)に対しての要請行動を取れてきませんでした。これに合わせるように、外務省は2020年より国際連帯税に関する税制改正要望をサボタージュしてきました。

 

国際的には、昨年6月パリでの「新グローバル金融協定サミット」や9月ナイロビでの「アフリカ気候サミット」を経て、11月COP28の場で「開発、気候、自然への取組みを強化するための国際課税に関するタスクフォース」(議長国:フランス・ケニア)が設立され、もうひとつの公的資金調達を目指す動きが強まっています。

 

このことは途上国において、貧困・飢餓や気候危機、その上に債務危機が重なり、総じてSDGs達成の危機となって現れています。外務省はODA以外の資金として、国際連帯税を諦めて民間資金利用を図ろうとしていますが、民間資金は本当に援助を必要とする貧困国・(気候)脆弱国には向かいません。今こそ、日本外務省は上記タスクフォースに参加し、国際協調・協働でSDGs達成など途上国支援のための資金創出を図るべきです。

 

議員連盟におかれましても、こうした国際的な動きを理解しつつ、再度国内においてモメンタムを創出しようとしていますので、大いに期待したいと思います。

 

※写真は、田島麻衣子参議院議員事務所から提供してもらいました。

フランス:労組、市民団体並びに国会議員らが相次いで金融取引税を要求

フランスの有力紙、ル・モンドはこの間相次いで金融取引税(以下、FTTと略)に関する記事を配信していましたので、お知らせします。ひとつは、政府の100億ユーロ予算削減に関する労組・市民団体の抗議と意見の中で、もうひとつは、フランスの与党プラス中道派の国会議員の意見の中で、です。前者は、住宅やODAなど公共支出の削減ではなく、FTTによる財源確保を行うべき、と主張しています。後者は、欧州での財源不足に対し、欧州規模でのFTT導入を求めています。また、両者とも国内や欧州のみならず貧困や気候危機下にある南の国々への財政支援を訴えています(下記参照)。                 

 

■仏FTTや英印紙税をG20諸国に適用すれば1,560億€から2,600億€の税収

 

そのFTTですが、具体的には株式取引税で、パリ第一パンテオン・ソルボンヌ大学のギュンター・カペル・ブランカール教授の論文を参考にしているようです(*)。前にも紹介しましたが、教授の推定によれば、フランスのFTTや英国の印紙税と同様のFTTをG20諸国に適用した場合、年間1,560億ユーロから2,600億ユーロの税収を得られること、また、このFTTを日中取引や高頻度取引に拡大すれば、税収が年間4000億ユーロ近くまで増加する可能性があること、が分析されています。

 

■日本の東証株価の売買高1日当り4~6兆円、その内約70%は海外投資家

 

日本では、株価が史上最高値を更新するなど高騰を続け、この間の売買高は1日当たり4~6兆円にも上っています。昨年の売買高は歴代最高となりましたが、1日当りの平均3.8兆円です(年間943兆7,637億円)。また、その売買高のうち約70%は海外投資家によって行われています(日本取引所グループ・JPCXの「投資部門別売買状況」参照)。このほか株取引にはデリバティブ取引もあり、こちらも莫大なお金の取引が行われています。

 

ともあれ、もし日本でも株取引税が実施されているとすれば、大雑把に言って、1日当り4.5兆円の売買高があるとして、フランス並みに0.3%課税(日中取引含む)で3.4兆円の税収、日中取引外しで1兆円強の税収となります。しかもその税の大部分は海外投資家が払うことになります(フランスでは50%とのこと)。

 

 

【以下、ルモンドの電子版より】

 

「フランスが最終的に金融取引への課税を受け入れれば、欧州は多大な利益を手にすることができるだろう。」

 « Si la France accepte enfin la taxe sur les transactions financières, on verra que l’Europe peut rapporter gros »

2024年3月11日

 

ソフィー・ビネ、マリリーズ・レオン、メラニー・ティセラン・ベルジェ、ナジャット・ヴァロー=ベルカセムを含む市民社会のリーダーたちは、『ル・モンド』紙に掲載された記事の中で、100億ユーロの公共支出削減ではなく、金融取引税(FTT)による投機への課税を主張している。

 

(注:ビネ氏は最大労組CGTのトップ、レオン氏は有力労組CFDTのトップ、ティセラン・ベルジェ氏はCJD・若手経営者センターの会長、ヴァロー=ベルカセム氏は元教育大臣。4人とも女性)

 

他の多くのヨーロッパ諸国と同様、フランスでも、政府が電気代やディーゼル燃料の税金を引き上げると、ますます多くの市民が不快感を示すようになっている。何百万人もの人々が生活費の高騰に苦しみ、多くの農家が仕事から生計を立てられなくなっている今、このような増税は耐えることのできる限度を超えるものであり、市民はより大きな税の公正を求めるようになっている。

 

南の国々でも状況は悪化している:新型コロナのパンデミックの結果だけでも、2020年以降、特にアフリカでは1億2,400万人以上の人々が1日2.10ドル[1.92ユーロ]以下の極貧状態に置かれている。私たちは今、経済的、社会的、気候的な課題が計り知れず、その解決に必要な投資も莫大なものとなる歴史の瞬間にいる。

 

私たちは、ヨーロッパと南の国々で気候変動と戦うための資金を見つけなければならない(建物の断熱化、再生可能エネルギーの開発、公共交通機関への投資、農民への支援、洪水や干ばつ、森林火災などの災害に対する真の予防策など)。

 

劇的な結果

 

私たちはまた、貧困と不平等と闘うための国際連帯や、開発途上国が最初の犠牲者である気候変動への適応を支援するための追加的な資金を解放する必要がある。COP28では、最も大きな被害を受けた国々のための損失損害基金が設立されたが、基金が空っぽでは意味がない。

 

私たちはまた、医療制度、教育、警察、司法のための資金も必要としている…私たちは、日常生活と私たちの将来にとって基本的な公共サービスの深刻な貧困化を目の当たりにしている。私たちは最終的に、グリーン産業がヨーロッパに留まるのを助ける資金を見つけなければならない。

 

米国にグリーン投資を誘致するためにジョー・バイデンが今後10年間に提示した3,600億ドルの補助金に直面して、欧州は移転や雇用の喪失、気候変動対策の大幅な遅れを避けるために迅速かつ強力に対応しなければならない。

 

残念ながら、ブルーノ・ルメール経済大臣は、新たな財源を確保する代わりに、100億ユーロの予算削減を発表したばかりだ(省エネ住宅改修への10億ユーロの削減、国際連帯への8億ユーロの削減、地方自治体の気候変動適応基金への4億ユーロの削減など)。これらが実現すれば劇的な結果をもたらすだろう。…(以下、有料記事)

 

※全文は、https://www.lemonde.fr/idees/article/2024/03/11/si-la-france-accepte-enfin-la-taxe-sur-les-transactions-financieres-on-verra-que-l-europe-peut-rapporter-gros_6221390_3232.html

 

 

「欧州委員会が提案した金融取引税は、毎年最大570億ユーロの収入をもたらすだろう。」

≪ La taxe sur les transactions financieres proposee par la Commission europeenne rapporterait chaque annee jusqu’a 57 milliards d’euros ≫

2024年3月14日

 

危機を脱するためには、投機と闘い、金融取引に対する欧州税を導入することが急務であると、ホライゾンズ、LIOT、MoDem、ルネサンス各グループの国会議員58名が「ル・モンド」紙に寄稿した。

 

(注:各グループはLIOTを除いてマクロン大統領の与党に属します)

 

ディーゼル燃料の増税計画に対して農民が示した怒りは、広く国民が共有している苦しみを明らかにしています。支払うのは常に同じ人々でなければならないのでしょうか? 電気に対する税金は10%増税されるのに、定期的に新記録を更新する金融市場には課税されないのだろうか?

 

新しい資金源を見つける必要性に異論を唱える人はいない。ジョー・バイデンがすべてのグリーン産業を米国に誘致するために4,000億ドルを投じるとき、黙って見ているわけにはいかない。また、私たちは新型コロナウイルスの援助に返済し、気候変動との闘いに勝つための新たな手段を見つけなければなりません。公共交通機関に投資し、農業援助に資金を提供し、最終的にはすべての建物の複数年にわたる大規模な熱改修計画を実施し、COP28で創設された途上国支援基金への資金提供を行う必要があります。

 

フランスでは今年、建設業界が最大15万人の人員削減を発表しているが、もし私たちがこれらの人員削減を受け入れれば悲劇的なことになるだろう。 2007 年にジャン=ルイ・ボルロー(注:元環境・持続的開発・計画大臣)が主催した環境フォーラムでは、「 2010 年から 2017 年にかけて、エネルギー不安の深刻な状況にある 30 万人の質素な持ち家を改修する」ことに賛成する強力なコンセンサスが得られたことを私たちは覚えています

 

公平で迅速かつ効果的な対応

 

残念なことに、17年経った今でも、効率的な改修は毎年 13,000 件しか行われていません…何百万もの国民が深刻なエネルギー貧困の状況にあり、フランスの貿易収支はガスと石油の購入により巨額の赤字となっており、気候学者は現在、1960 年代や 1970 年代の 3 倍の速さで増加している大気中のCO 2濃度に唖然としている。

 

こうした人員削減を回避し、気候変動の緊急事態に対応するには、私たちは直ちに新たな財源を見つけ出さなければなりません。同時に、私たちのすべての領土から発せられている税の正義への要求に応えなければなりません。

 

公平かつ迅速で効果的な対応策は、金融取引に対する欧州税の創設です。これは欧州議会全体からの要請であり、欧州議会はこの 3 年間でこの主題に関する3つの報告書を可決しました。欧州委員会が2011年から提案している少額の税金(0.1%)は、毎年最大570億ユーロの収入をもたらすことになる。

 

経済学者のギュンター・カペル・ブランカール氏が指摘するよう に、金融取引税(TTF)には優れた税金を生み出すあらゆる利点が…(以下、有料記事)

 

※全文は、https://www.lemonde.fr/idees/article/2024/03/13/la-petite-taxe-proposee-par-la-commission-europeenne-rapporterait-chaque-annee-jusqu-a-57-milliards-d-euros_6221788_3232.html

 

 

(*)金融取引の課税: 世界の税収の推定

 

ギュンター・カペル・ブランカール(パリ第一パンテオン・ソルボンヌ大学教授)

 

<以下、ソルボンヌ・エコノミック・センターのHPの扉より>

 

経済学者ギュンター・カペル・ブランカールによる新しいノートによると、フランスのFTTや英国の印紙税と同様の金融取引税をG20諸国に適用した場合、年間1,560億ユーロから2,600億ユーロの税収が見込まれる。分析によると、この国際的な金融取引税を日中取引や高頻度取引に拡大することで、この税収は年間4000億ユーロ近くまで増加する可能性がある。

 

金融取引税(FTT)はしばしばユートピア的なアイデアと考えられ、その実施は金融市場に乗り越えがたい障害をもたらすと考えられている。しかし、英国では17世紀以来、株式市場取引に印紙税という形で課税されており、シティーの発展を妨げることなく、年間約40億ユーロを生み出している。事実上すべての先進国がどこかの時点でこの制度を採用しており、現在でもスイス、香港、台湾、フランスなど世界30カ国以上が金融取引に課税している。

 

実際、FTT は歪みが少なく、潜在的な税収が高く、徴収コストが最小限に抑えられる優れた税であるようです。再分配効果もあります。G20 諸国が適用する英国の印紙税またはフランスのFTT相当額は、多くの免除にもかかわらず、年間 1,560億ユーロから2,600億ユーロを生み出すことになります(名目税率 0.3% または 0.5% に基づく)。課税をデリバティブや日中取引に拡大すれば、金融市場の透明性を向上させながら歳入が増加するだろう。

 

※全文は、

https://centredeconomiesorbonne.cnrs.fr/en/gunther-capelle-blancard-the-taxation-of-financial-transactions-an-estimate-of-global-tax-revenues/

 

 

 

G20サミット、財相会議で富裕層への最低課税案 フランスも支持

G20ブラジル ロゴ

 

今年のG20サミットはブラジル・リオで11月に開催されますが、それに先立ち外相会議に続いて、2月28-29日と財務相・中央銀行総裁会議が開催されました。会議2日目「ブラジルのアダジ財務相は…『超富裕層を対象にした公平な税金の支払いは国際協力次第だ』と述べ、富裕層への課税強化をG20の枠組みで目指す考えを示し」(下記、日経新聞)、これにフランスなどが支持したとのことです。

 

■ 世界の10億ドル(約1500億円)以上の資産を持つ超富裕層は2756人

 

パリ経済学院のガブリエル・ズックマン教授が参加した調査機関「EUタックス・オブザーバトリー」によると、「10億ドル(約1500億円)以上の資産を持つ富裕層(ビリオネア)の保有資産の2%に相当する最低課税を導入する国際合意が必要だとの考えを示している。その場合、2500億ドルの税収増につながると試算している。世界には2756人のビリオネアがいて、東アジア(838人)や北米(835人)に多い」(同紙)との報告がなされています。

 

■ 日本の「超富裕層ミニマム税」、株式市場では1日6兆円の売買

 

ところで、日本では2025年度より3.3億円超の納税者に対し「超富裕層ミニマム税」が実施されますが、課税対象者は200~300人程度で、税収は300~600億円程度という、とても小粒な税制です。さらに言えば、日本では金を最も貯めこんでいるのは大企業で、2022年度の日本企業の内部留保(利益剰余金)は、554兆7,777億円と過去最高で(2023年厚労省)、23年度はさらに積みあがっているものと思います。むしろここに税を課した方がよいでしょう。

 

ついでに担税力に満ち溢れているのは、金融セクターです。3月1日の東京証券取引場での株式売買高は6兆円を超えました(昨年の東証での1日の売買高は平均で3兆円前後)。しかも、この売買の約70%は外国投資家が占めています。ここに税を課すことができれば、主要に外国人投資家に税を支払ってもらうことになります。

 

■ ブラジルの貧困・飢餓TFとフランス・ケニアの国際課税TFとの連動を

 

話を戻しまして、今度のG20サミットで議長国ブラジルが主要テーマとしているのが貧困と飢餓の削減であり、「飢餓と貧困に対抗する世界連合」の設立です。そのために、“Task Force for a Global Alliance Against Hunger and Poverty”を設置しました。目標の1と2(貧困と飢餓)を含むSDGs達成プロセスが極めて厳しい中にあって時宜にかなった取り組みと言えましょう。

 

そのタスクフォース第1回会合を2月中に行っています。ブラジル側は国際機関を含むすべてのG20メンバーが参加することが見込まれているとしています(注)。日本政府もこのタスクフォースに参加するのでしょうか。

 

ざっとブラジルのG20関係のWebサイトを見ても、このタスクフォースに関し、まだ詳細な報告はなされていません。気になるのは、途上国における「貧困・飢餓」目標を含むSDGs達成のための資金ギャップ(不足額)で、これをどのように埋めていくか、つまり資金調達の議論がどう行われるか、です。その点、新しい国際課税による資金調達という、フランスとケニアが議長国となって立ち上げた“Taskforce on International Taxation to Scale Up Development, Climate, and Nature Action” においても、今回の超富裕層への課税などもテーマになると思われますので、両タスクフォースがうまく連動していくと、「新規かつ追加的で予測可能な(公的資金となる)」国際連帯税の実現の可能性が高まるのではないでしょうか。

 

(注)“It’s about putting the poor in the budget and the rich in income tax,” said Minister Wellington Dias

 

 

【日経新聞】G20、富裕層への最低課税案が浮上 ブラジルや仏が支持

2024年3月1日

 

サンパウロで開いた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、富裕層への課税強化の議論が浮上した。貧富の格差が大きい議長国ブラジルを含む途上国や新興国だけでなく、フランスも賛同している。今後は国際連携の枠組みに向けて具体的な提案を目指していく見通しだ。

 

ブラジルのアダジ財務相は29日、2日目の会議冒頭の演説で「超富裕層を対象にした公平な税金の支払いは国際協力次第だ」と述べ、富裕層への課税…(了)