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ワン・プラネット・サミット前に、フランスが金融取引税推進を主張

パリ協定採択からちょうど2年目の1212日、パリ近郊で「ワン・プラネット・サミット」が開催されます。このサミットは主宰がフランス政府ということもあり(国連、世界銀行が共催)、日本ではあまり報道されていませんが、時事通信は次のように伝えています。

 

「サミットには政府だけでなく企業やNGOなどから計約2000人の関係者が参加し(注:4000人参加との報道も)、温室効果ガスの抑制と経済成長を両立する方策を話し合う。河野太郎外相も出席し、日本の取り組みについて説明する見通しだ」(1210日付「パリ協定推進へ環境サミット=仏主催、米大統領招待せず」)。

 

このサミットの主な目的は気候変動対策資金の創出に向けての議論にあるようです。11月に開催された気候変動枠組条約・COP23で、米トランプ大統領の「パリ協定」離脱表明を受けて、途上国支援のための資金問題で対立が目立ったことは記憶に新しいところです。

 

そこで気候変動問題に並ならぬ政治的意思を持っているフランスがこのサミットを機に「資金問題」でも国際的なイニシアティブを発揮しようとしているようです。

 

●サミット前に仏政府4閣僚が欧州金融取引税を強く要求

 

この4閣僚とは、ブリュノ・ル・メール財務相とジャン=イヴ・ル・ドリアン外務相、ニコラ・ユロ環境相、フレデリック・ヴィダル高等教育大臣ですが、Le Journal du Dimanche紙に共同声明として掲載されました。

 

骨子は、次の通りです。フランスはすでに金融取引税を導入し(注:株式購入に0.2%課税、17年は0.3%に)、昨年は11億ユーロの税収を上げ、環境政策の資金として役立てている。政府は、この金融取引税を欧州連合(EU)規模に拡大し、気候変動対策のための資金調達に向け推進する方針である。EU規模の金融取引税は2020年までに毎年50億ユーロ(59億ドル=約7000億円)の税収を得ることができる。

 

4人の閣僚は、『欧州でこの税制が適用されるように推進し、全員にこの連帯の努力に参加するよう求めている』と述べた」とのことです。

 

【ロイター】France to push for European financial transactions tax

 

●「ワン・プラネット・サミット」は、フランス、国際連合、世界銀行の共催で、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、ウィ・ミーン・ビジネス、気候エネルギー首長誓約、ヨーロッパ委員会、C40世界大都市気候先導グループ、経済開発協力機構(OECD)、ブルームバーグ・フィランソロピーズの協力、そして参加国は100か国超という大掛かりなものです。

 

*詳細は、フランス大使館のWEBサイトを参照ください。

 

ライブ配信もありますので、関心のある方はご覧ください(公式HPから)。

 

 

 

 

 

シンポジウム「税と正義…」、盛況のうちに開催>当日資料

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12 3日青山学院大学において「シンポジウム『税と正義/グローバル・タックスと税制改正』」が開催され、100人が参加しました。共催は、グローバル連帯税フォーラムと民間税制調査会。

 

4時間にわたるシンポジウムは、予定していた時間をややオーバーして討論が行われました。当日のプログラムと講師の方々の資料を送りますので、目を通していただければ幸いです。なお、録音起こしも行う予定ですので、全体の議論については今しばらくお待ちください。

 

<シンポジウム開催の意図>

 

シンポジウム開催の意図につき、冒頭金子文夫・横浜市立大学名誉教授より以下のように述べられシンポジウムは始まりました。

 

「経済のグローバル化が進展するなかで、国内的にも世界的にも所得と資産の格差が広がり、不平等・不公正な社会が出現しており、パラダイス文書で明らかとなった多国籍企業や富裕層の目に余る租税回避を許すならば、格差の拡大は際限なく続く。格差を是正する公正な税制が、国内的にもグローバルな規模でも求められている。

 

今必要なことは、税とは何か、税の正義(タックス・ジャスティス)とは何か、という原理的視点を改めて確認し、国内的およびグローバルな規模での公正な税制の方向を明確にしていくことだ。

 

本日のシンポジウムでは、名古屋市立大学の伊藤先生には、政治哲学の立場から、税の正義について原理的・規範的な議論の提示をしていただく。北海道大学の津田さんからは、国際課税問題の最新の動向について、パラダイス文書とEU金融取引税に絞って紹介していただく。まとめとして、青山学院大学の三木先生には、2018年度税制改正をめぐる問題点について縦横無尽に語っていただく」。

 

<当日配布された資料>

 

1、プログラム

 

2、主催者あいさつ:金子文夫・横浜市立大学名誉教授

     

3、講演 

 1)「税の正義とグローバル・タックス」…伊藤恭彦・名古屋市立大学人文社会学部教授

 

 2)「グローバル・タックス・ジャスティスの検討―“パラダイス文書”と EU 金融取引税の観点から―」…津田久美子・北海道大学法学研究科博士課程日本学術振興会特別研究員 DC

 

 3)「2018 年度税制改革を考える」…三木義一・青山学院大学法学部教授

 

4、今後の活動について…田中徹二・グローバル連帯税フォーラム代表理事

 

<シンポジウムに対する感想・コメント>

 

・普段は日常の仕事に追われてグローバルレベルで税ことを考えないが、それを考える時間をもったことが良かった。カントやアダム・スミスのことも勉強しないといけないと思った。

 

3名の先生方のお話は大変分かりやすく、抱えている課題についても理解が深まりました。伊藤先生の税の正義について考える事は非常に重要だと感じました。ここを考えずして税の話はできないと思います。貴重な会を有難うございます。

 

2018年度税制改革のことがとても理解できた。税の在り方はとても重要だと感じました。

 

・伊藤先生の話されるようなそもそも論は必要。タックスヘイブンの利用などの税回避行為は許せない。それを防ぐ、法的、国際的システムの構築が急務。

 

・現在、税の富の再分配機能について論文を書いており、本日の講義を聞いて枝葉末節の話にならないよう、基本的なところをしっかり押さえた内容にしなければならないと感じました。大変参考になった。

 

ほか。

 

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【申込み締め切り】12.3シンポジウム「正義と税/パラダイス文書…」

●インターネット中継があります!

 

今度の日曜日(123日)開催のシンポジウム「正義と税/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」ですが、本日19時を持ちまして、定員100人強に達しましたので、申込みを締め切らせていただきます。

 

このところ、開催日前日にどっと申込みが来る傾向もあり、これ以上増えますと消防法に触れることになりますので、これ以降の申込みはご遠慮くださるようお願いします。

 

なお、今回はインディペンデント・ウェブ・ジャーナル(略称 IWJさんのご協力でインターネット中継を行いますので、参加できない方はこちらをご覧ください。

 

※中継は、http://iwj.co.jp/ からご覧ください。

 

もう少し広い会場が取れればよかったのですが、空きがなかったため申し訳ありません。これに懲りずに次の機会をご利用くださるよう願います。

11.29国際連帯税議連総会報告>安倍総理に早急に要請書を提出へ

縮小議連総会①

 

昨日(11月29日)衆議院議員会館で「国際連帯税の創設を求める議員連盟」の今年度第2回目の総会が開催されました。早朝午前8時から始まった総会には、国会議員8人、代理10数人、市民11人が参加しました。以下、簡潔に報告します。

 

本総会の課題は、1)衆議院選挙後の新たな役員体制の確認について、2)次年度税制改正に向けた議連方針について、でした。

 

司会は石橋通宏事務局長(参議院議員)が務め、冒頭衛藤征士郎会長(衆議院議員)が次のような挨拶を行いました。「議員連盟も9年目に入り、30年度税制改正も大詰めとなっているが、突然伴走者も現れてきた(注:出国税のこと)。我々の立場は世界の貧困や感染症問題等の資金源となる国際連帯税の実現だ。国際連帯税について国会議員の間では相当理解が進んでいるが、まだそれが行動に結びついていない。国際連帯という理念に軸足を置き、30年度税制改正に向けしっかりと取組みを行っていきたい。早朝にもかかわらず、総会に参加してくれた市民のみなさん、役所のみなさんに感謝したい」。

 

総会は、まず新役員体制が提案され、承認されました。新役員を見ますと、二階俊博幹事長、竹下亘総務会長、岸田文雄政調会長という自民党三役や井上義久公明党幹事長などが参加していることが目立ちます(会員は衆議院39人、参議院22人の計61人)。

 

続いて、外務省の鈴木秀生・地球規模課題審議官より、「平成30年外務省税制改正要望における国際連帯税(貢献税)に関する要望と、国際的な動向について」の説明を受け、また市民社会を代表して、グローバル連帯税フォーラムの田中徹二代表理事より、「国際連帯税の導入に向けた提言」を行いました。

 

外務省・鈴木審議官は「SDGsに示される世界の開発需要に対応し貢献するための国際連帯・貢献税として新設要望していること」を力説しました。田中の方からは、「出国税のたいへんな悪評(マスコミ6大紙がこぞって批判)に対し、航空券連帯税は世論の75%が賛同していること(外務省委託研究より)を踏まえ、外務省は航空の国際線への課税による税収は本来地球規模課題に使用すべきものとして国交省と調整が必要なこと、また議員連盟としては官邸への申し入れを行うこと」を要望しました。

 

これを受けて活発な議論が行われ、「所管である外務省が頑張っている姿を見せるため、外務大臣がことあるごとに国際連帯税の必要性を訴えるべき」などの意見も出されました。最後に、衛藤会長から「各党は税制改正に向けての取り組みを強化していただくこと、そして議連としては、地球規模課題に対応するための国際連帯税の創設を引き続き求めて、安倍総理に早期に要望書を提出したい」と提案され、これを全体で確認して閉会となりました。

【緊急】12.3シンポジウム「税と正義」の会場が変更となりました

12月3日開催のシンポジウム「税と正義/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」ですが、予定していた会場の機器類の不具合が見つかりました。それで急きょ別の教室に変更しましたのでお知らせします。

 

●「5号館 545教室(4階)」を⇒「14号館5階14509教室」に変更

 

14号館は正門入ってすぐ右の総研ビルとなります(キャンパスマップ参照)。そこの5階の教室です。突然の変更で申し訳ありませんが、どうぞお間違えのないようにお願いします。

 

 

シンポジウム「税と正義/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」

 

・講演1:伊藤 恭彦(名古屋市立大学人文社会学部教授/副学長)
・講演2:津田久美子(北海道大学法学研究科博士課程 日本学術振興会特別研究員DC1)
・講演3:三木 義一(青山学院大学法学部教授/学長)
  
◎日 時:2017年12月3日(日) 13時00分~16時50分  
◎会 場:青山学院大学渋谷キャンパス 14号館(総研ビル)5階14509教室
     キャンパスマップ:http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html   
◎共 催:グローバル連帯税フォーラム、民間税制調査会
◎資料代:500円
◎申込み:info@isl-forum.jp から、お名前、所属(あれば)ならびに「12.3シンポ参加希
       望」とお書きの上、お申込みください。
※詳細は、http://isl-forum.jp/archives/1941 参照ください。

 

 

全国会議員へNL配布「出国税、使途に地球規模課題を含めよ」

今年の夏、突然観光資源整備のための財源として「出国税」構想が浮上し、官邸の強い意向もあり実現の可能性が高まっています。このことに対し、私たちは「出国税の使途に地球規模課題を含めるべき」として、昨日全国会議員に対してニュースレター『g-tax News Letter 国際連帯・貢献税』を配布しました。

 

この出国税ですが、実は「受益と負担」の関係を見れば大幅に乖離していることが分かります。

 

◎受益する人(観光目的の訪日外国人):1990万人

◎受益しない人(出国日本人①+商用目的の訪日外国人②):2110万人

         ※①1700万人、②410万人  (⇒数字は2016年)

 

そこで観光庁の検討委員会では、使途を観光資源関係だけをとするのではなく、出入国の管理体制の強化や空港整備等も加えています。しかし、課税ポイントが出国という領土主権外のサービス提供に対してですので、税収による使途は一国の一部門のみに使用すべきではなく、国際社会での普遍的課題に(感染症問題や気候変動問題など地球規模課題に)使用すべきです。

 

そういう立場から、ニュースレターでは、グローバル連帯税的要素も入れた出国税として制度設計すべき、と提案しています。今後国際連帯税創設を求める議員連盟とも連携しつつ、地球規模課題の財源を得るために活動していきます。

 

★ニュースレターを読む ⇒ PDF

 

 

 

 

「パラダイス文書」:三木義一・青山学院大学長のコメント

先月末に第2のパナマ文書が出るかもしれないという報道が一部にありましたが、予想を超えて「パラダイス文書」として公表されたものは電子ファイル1340万件(パナマ文書は1150万件)に上るというぼう大な資料のようです。

 

また、パナマ文書の出所はパナマのモサック・フォンセカ社で、ほとんど米国の会社や個人の名前は出てきませんでした(なのでCIA説が流れた)。が、今回のパラダイス文書の出所の法律事務所「アップルビー」は主に米英系の会社・個人を顧客に持っているようです。従って、とくに米国の権力中枢やグローバル企業の実態が明らかにされてきています。ロシアとの<秘匿されていた資金の>繋がりがこれほどあるとは!驚いてしまいます。

 

さて、昨日(6日)の朝日新聞の「パラダイス文書」の記事につき、三木義一先生のコメントが載っていましたので紹介します。

 

 

●高い「守秘性」の闇に光あてた意義大きい 《三木義一・青山学院大学長(租税法)の話》 

 

 タックスヘイブンの利用について、日本企業では、租税回避を目的としているのは一部で、(税制や規制などで有利な国に船籍を置く)便宜置籍船や海外の企業の買収などが多いと言われている。一方で、日本で納税されるべきお金がタックスヘイブンに流れているのも事実だ。タックスヘイブンは「守秘性」が高く、通常はその利用法が適切かどうか、一般市民が知るすべさえない。その闇に光をあてる意味でも、秘密文書がその一部をつまびらかにする意義は大きい。本来であれば、企業が積極的に開示していくのが望ましいだろう。

 

朝日新聞】商社・損保・海運…日本企業も「パラダイス文書」に続々

 

 

財務省、外資系企業への課税強化>が、アマゾンは日本で法人税を払わず

財務省は日本で営業している外資系企業への課税対象を広げるため、来年の通常国会で法改正するとのことです(下記参照)。が、日本で営業しているなら、日本国に法人税やら一般消費税を払うのが当然でしょう、財務省は何を今さら寝ぼけたことを言っているのか、とお思いでしょうが、実は税を払っていない外資系企業があるのです。

 

その筆頭が、みなさんもよく利用するアマゾン・ドット・コム社(以下、アマゾン)です。アマゾンは法人税を払っていません(一般消費税は2015年10月から課税されることに)。アマゾンは千葉県などに100%子会社のアマゾンジャパン合同会社という巨大な配送センターを持ち、日本人を顧客として大規模なネット販売ビジネスを展開し、その売り上げは、何と!昨年で1兆1千億円もあったのにもかかわらず、です(純利益は分かりませんが数百億円に上るでしょう)。

 

(法人税を払わないなんて)そんな馬鹿な、と思いますが、外国企業(非居住者等)に関しては日本国内に支店や支社などのなどの拠点がなければ法人税をかけられないというのです。それは「恒久的施設(PE)」と言い、「PEなければ課税なし」というのがこれまでの原則でした。でも、アマゾンには巨大な配送センターがあるではないか、これはPEそのものではないか、と誰でも思うでしょう。ところが、「『倉庫はPEには当たらない』(正確には、『倉庫の様々な機能を活用した活動の全体が、準備的・補助的なものである場合にはPEに当たらない』)」という規則ゆえに(森信茂樹・東京財団上席研究員/税・社会保障調査会座長)、配送センター等はPEではないと言うのです。

 

そんな馬鹿な!(これで馬鹿を二回使いました-失礼)ということで、実はOECDがこのような規定は租税回避に繋がるのではないかということで、「グローバル企業は払うべき(価値が創造される)ところで税金を払うべきとの観点」に立って、BEPS(税源侵食・利益移転)プロジェクトをスタートさせたのです。そこでは「人為的にPEの認定を逃れることを防止するために、租税条約のPEの定義を変更する」(行動7)とされたのです。

 

が、BEPSプロジェクトは勧告であり法的な拘束力がありませんので、行動7につき行動15(多国間協定の開発)で対応するとしたのです。そしてついに、2016年11月24日100を超える国・地域が多国間協定の交渉妥結に至ったのです。これを受けて、日本の財務省も、冒頭に述べたように、「現在は支店や支社などの拠点がなければ法人税をかけられないが、大型の配送用倉庫などがあれば課税できるようにする」として外国企業の課税対象の拡大を企図し、国内法を改正する段取りへと進んだのです。

 

これで、ようやくアマゾンからも法人税を取れる!と思ったのですが、何と先の多国間協定につき米国が署名していないことと、(古いPE規定のままの)日米租税条約があるため、いぜんとしてアマゾン等米系グローバル企業からは法人税を取れないまま推移しそうです。同じ悩みを抱えるEUは国際的に決まらなければ(米系企業に適用できなければ)、EU独自策を取ると言っています。日本もぜひそうすべきではないでしょうか。

 

追記. では日本での売り上げは、(日本にあるアマゾンジャパン合同会社ではなく)米国のワシントン州法人である Amazon.com Int’l Sales, Inc. に入り、同社が米国に法人税を払っているという形となっている。すると、ものすごく円安(ドル高)になったら、米国のアマゾンはすごく損をすることになると思うのだが…? (逆に、円高・ドル安になれば為替差益=不労所得そのもの=が生じますが)

 

 

【日本経済新聞】財務省 外資への法人税課税の対象拡大

 

 財務省は日本で営業する外資企業の課税対象を広げる。現在は支店や支社などの拠点がなければ法人税をかけられないが、大型の配送用倉庫などがあれば課税できるようにする。ネット通販企業などにも法人税を課せるようにする。日本、欧州、中国などが参加する多国間協定に対応して、2018年の通常国会で関連法を改正する見込みだ。

 一方で米アマゾン・ドット・コムのような米国企業の場合は見直しの対象外だ。米国はOECDの多国間協定に署名しておらず、日米間の租税条約が適用されるため課税されない。

 

 グローバルに展開するIT企業のなかにも認定できるPEがなく、国内で事業展開していても課税対象外となる企業がある。欧州委員会は「国際的な進展が乏しければ、EU独自策を導入すべきだ」と主張しているが、日本はグローバルに協調すべきだとの立場だ。

 

図は、「アマゾン日本事業の売上はほぼアメリカへ ~自国の税金をどう確保していくか~」よりお借りした。
https://manetatsu.com/2016/06/66812/

出国税:貴重な税収を一国の一部セクターに使用すべきではない

各メディアからの報道によれば、観光資源の財源確保のための「出国税」が2018年度税制改正大綱に盛り込まれる方向性となったようです。訪日外国人ならびに出国日本人など国際線航空機利用者やクルーズ船利用者から「1人1000円の徴収」が有力案のようです。そもそもこの税制は「政府内などで制度の是非を巡る十分な議論も経ないまま唐突に浮上した」(1027日付日本経済新聞)という経緯がありますが、航空券連帯税との関係で問題点・今後の対応などを探ります。

 

領土外の消費行為への課税は地球規模課題の対策に(グローバル化の負の影響も考慮し)

 

私たちは航空券連帯税を求めていますが、もし国際線航空機利用を含む出国税を実施するなら、その税収を観光資源の確保(だけ)に使用するのではなく、世界の貧困や気候変動等のグローバルな課題に使用すべきと提言してきました。

 

というのは、これまで国際線利用者に消費税が免除されてきたのは、自国の領土外の消費行為であるためであり、その性格からして税収を自国の課題のみの使うべきではないのです。こうした考えは租税法のオーソリティーである金子宏東京大学名誉教授が1990年代から提唱していたものです(『人道支援の税制創設を 国際運輸に定率で』日経新聞 200686日)。

 

それだけでなく、今日国際的な航空網の発達というグローバル化に伴って負の影響が生じており、航空機利用者は一定コストを負担する必要性があります。負の影響とは感染症の地球規模の拡大や温室効果ガスの排出増などで、その対策費用の一部を払っていただくことです。

 

ともあれ、新しい税収による貴重な財源は、一国の観光という一部セクターのみに使うことは避けるべきと考えます。

 

●観光のための財源は実は余っている!?

 

ところで、今回の出国税構想は観光資源のための財源を確保することですが、実はその財源は十分に足りているという指摘があちこちからなされています。

 

「観光庁を所管する国土交通省は、18年度の公共事業の関連予算で前年度比16%増の6兆円強を要求。北海道局だけでも空港予算は160億円に上り、訪日客の受け入れ整備に使う。観光目的とあらば仏像修繕から国立公園の整備、税関強化などあらゆる分野に適用が可能で水ぶくれの恐れが高い」(1027日付日経新聞)

 

17年度観光庁予算210憶円、出国税税収予測410億円という金額を前提にして)「国家全体の観光関連予算は約3200億円ある。観光政策を推進する観光庁がこれら全体を統括できなければ、機能は発揮できない」と日本観光ホスピタリティ教育学会の鈴木勝会長が言っていますが、実は観光関係予算は観光庁を含む国土交通省や農林水産省、経済産業省関連にもあるというのです。

 

問題は観光行政の司令塔である観光庁のマネジメントがうまく発揮できていないところにありそうです。

 

実際、税収の主たる使途先となる地方の観光地の関係者は、「…中部地方の観光地の自治体関係者は『もともと外国人観光客を受け入れるノウハウや人材が足りない市町村は、予算を有効に使えないのではないか』と話す」(916日付東京新聞)という状況です。

 

また、東北インアウトバウンド連合(仙台市)の西谷雷佐理事長は、「財源は必要なので否定はしないが、もっと有効な手法を探ってみるべきだ。世界的には行政に観光課がないのが一般的で、民間に委託されている。新しい税を徴収する前に、整理すべき予算や団体があるのではないか」(1018日付河北新報)。

 

こうしたことから、「観光目的とあらば仏像修繕から国立公園の整備、税関強化などあらゆる分野に適用が可能で水ぶくれの恐れが高い」(同上日経新聞)とか「『観光立国』を名目に集めた税金が、地方の効果の薄い施策や公共事業に投じられる懸念も残っている」(同上東京新聞)という懸念が指摘されています。

 

●受益と負担の関係が大きく乖離:出国日本人1700万人に受益なし

 

1013菅義偉官房長官は記者会見で、出国税につき「受益と負担の適正なあり方を勘案し、増加する観光需要に高次元の対応を行う観点から具体的な検討を深めていく」と述べました。この税制で受益するのは主に観光を目当てとした訪日外国人客で、出国日本人はほとんど受益しません。ところが、この出国税は、訪日外国人はもとより出国日本人からも徴収することになります。出国する両者のうち、日本人は約42%を占めます(訪日外国人2400万人、出国日本人1710万人、2016年)。

 

また、訪日外国人のうちビジネス客は約20%を占めます(2015年)。したがって、400500万のビジネス客にも受益はありません。

 

これでは「受益と負担の適正なあり方」とは程遠いと言えるでしょう。

 

●地球規模の課題の財源も射程に、引き続き航空券連帯税も要求

 

繰り返しますが、私たちは貴重な出国税からの税収につき、一国の観光という一部セクターのみに使うことは避けるべきと考えます。そもそも観光資源のための財源は十分にあるようです(どうしてそれが有効に使われていないかの検証も必要でしょう)。従って、観光庁が観光地の地元・関係者ならびに他省庁と協働・協議を行いつつ、ありうべき観光インフラの整備等についてマネジメントしていくことが先決であるように思われます。

 

ところで、出国税が18年度税制改正大綱に盛られたとしても、実施するのは19年度のようです。したがって、私たちはその間、1)いぜんとしてその税金が公共事業の水ぶくれ・無駄遣いになるという懸念が強く出されていることに対し、観光庁の検討委員会は真摯に検討すべきである、2)出国税を実施するとしてもその税収を観光資源の財源にのみ使用すべきではなく、グローバルな課題についても使用すべき、3)(地球規模の課題に使用しないとすれば、引き続き)パンデミック等が心配される感染症対策等を目的とする航空券連帯税を実施すべき、ということを要求していきます。

 

3)につき、韓国では、観光目的のための出国税も航空券連帯税も実施していますので、十分実施が可能です。

 

<資料>

日経新聞】出国税構想、見切り発車 受益・負担に見えづらさ

 

【日経新聞】「出国税」は本当に要るのか 

 

【朝日新聞】「出国税」千円、日本人も対象 政府方針、19年度から

 

【税制調査会・参考資料】人道支援の税制創設を 国際運輸に定率で

 

【訪日ビジネスアイ】観光庁の出国税「財源確保としては疑問」×「予算整理や法の整備を」

 

【河北新報】<衆院選 東北・経済人に聞く>論点(5完)観光 人材育成 時間も必要

 

【東京新聞】「出国税」新設を検討 外国人誘客、日本人も負担?

 

 

 

シンポジウム「税と正義/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」

定数に達したため、申込み受付を終了させていただきます!】

 

シンポジウム「税と正義/パラダイス文書、グローバル・タックス、税制改正」

 

・講演1:伊藤 恭彦(名古屋市立大学人文社会学部教授/副学長)

・講演2:津田久美子(北海道大学法学研究科博士課程 日本学術振興会特別研員DC1)

・講演3:三木 義一(青山学院大学法学部教授/学長)

 

◎日 時:2017年12月3日(日) 13時00分~16時50分  
◎会 場:青山学院大学渋谷キャンパス 14号館(総研ビル)5階14509教室
     キャンパスマップ
◎共 催:グローバル連帯税フォーラム、民間税制調査会
◎資料代:500円
◎申込み:info@isl-forum.jp から、お名前、所属(あれば)ならびに「12.3シ

     ンポ参加希望」とお書きの上、お申込みください。

 

●パラダイス文書と「税の正義(タックス・ジャスティス)」を考える

 今日、国内的にも世界的にも格差・不平等が拡大していますが、昨年のパナマ文書に続き、今回のパラダイス文書で暴露されたように各国の著名な政治家や富豪そしてグローバル企業のタックスヘイブンを利用した税金逃れの横行は、これに大いに拍車をかけています。こうした格差や不公正を背景として、各国で排外主義的なポピュリズムが吹き荒れています。

 

 格差拡大をもたらしているのは、度を越した金融緩和やグローバル企業が優位となる経済・税政策(含むタックスヘイブンの存在)によりグローバル企業と富裕層が肥大化してきたからです。その結果、「世界の富豪トップの8人の資産と世界人口の下位半分の36億人の資産が同じ」(国際NGOオックスファム、2017年)という異様な事態が出現しているのです。

 

 ひるがえって、経済のグローバル化の土台である市場社会は競争社会でもあり、それが行き過ぎると人間の尊厳を奪う可能性を内包します。格差と貧困の拡大はその典型的事例です。従って、市場社会で人間の尊厳を確保するには、政治分野での民主主義とともに、税・財政分野での再分配を軸とする「税の正義」が求められています。

 

 今日、タックスヘイブンの存在とそこへのグローバル企業や富裕層の利益(資金)移転の増加はあまりにも不条理であり、(たとえ合法であっても)許されることではありません。また政治社会的に野蛮なポピュリズムが台頭する時代にあって、あらためて「税を人間の尊厳を維持するためのシステム」へと変えるにはいかにすべきか、を考えていきます。

 

●タックス・ジャスティスからグローバル・タックスへ--その原点と欧州FTTの課題

 とはいえ、経済がグローバル化した社会にあっては、一国内でのタックス・ジャスティスの追求には限界があること、また世界の貧困や地球環境問題、さらに加えてタックスヘイブン(グローバル企業等の税金逃れ)など地球規模課題に取り組まなければならないこと等から、今やグローバルなジャスティス、とくにグローバルな分配的正義に関する議論と実践が必要となってきています。タックス・ジャスティスからグローバル・タックスへ--その原点と可能性を探っていきます。

 

 グローバル・タックスのひとつが、金融取引税(FTT)です。2008年リーマンショック後の国際的な金融危機の後、2011年欧州委員会は欧州連合(EU)規模の金融取引税を2014年1月に導入する指令案を提示しました。しかし、議論の進展とともに規模が縮小し、現在はユーロ圏10か国での先行導入が計画されていますが、これも遅々として進まない状況となっています。ところが、今年9月マクロン仏大統領は「欧州改革」の一環として、FTTを国際協力のための資金として英国を含めて全欧州で導入すべき、という新たな提案を行いました。EU-FTTの最新情報と課題について報告していただきます。とりわけ、FTTは金融機関の資金の流れを透明にする役割を負っており、この面から不正な資金の流れを押しとどめることができます。

 

●2018年度税制改正を軸にタックス・ジャスティスを探る

 12月は次年度の税制改正について確定するときです。日本の税制がタックス・ジャスティスとしての役割を果たしていないこと、別に言えば、再分配機能がきわめて弱いこと、このことがとみに指摘されてきました。実際、子どもの貧困率をはじめひとり親世帯や高齢者世帯の貧困率が高まっています。また、非正規雇用が全雇用者の40%近くを占め、社会全体としての貧困化は改善されずじまいです。一方、家計金融資産は過去最高の1800兆円まで膨らみ、富裕層は年々増加しています。日本社会でも確実に格差が拡大しています。

 

 格差拡大を是正する手段の一つが税制改革です。しかし、政府与党がこの数年課題としてきた所得税改革は鳴りを潜めてしまい、さらにあまりにも突然行われた衆議院選挙のため税制改革の議論は大幅に後退しています。あらためて「格差を是正し、分厚い中間層を形成する税制と財務支出」(民間税制調査会設立宣言)をめざす立場から、18年度税制改正を軸にタックス・ジャスティスの在り方、ならびにタックスヘイブン問題を日本でどうするか、を探っていただきます。

 

<プログラム>

・講演(1)「税の正義とグローバル・タックス~パラダイス文書からひも解く」  13時05分~14時05分(60分) 

   講師:伊藤 恭彦(名古屋市立大学人文社会学部教授/副学長)

・講演(2)「EU金融取引税:現状と課題」 14時05分~14時35分(30分)                                  

   講師:津田久美子(北海道大学法学研究科博士課程 日本学術振興会特別研究員DC1)

・講演(3)「2018年度税制改正の課題:格差是正は可能か?」  14時50分~15時30分(40分)

   講師:三木 義一(青山学院大学法学部教授/学長)

◎パネル討論  15時30分~16時40分(70分)

 

<講師プロフィール:敬称略>
■伊藤 恭彦(いとう・やすひこ)
 1961年生まれ。大阪市立大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得。博士(法学)。静岡大学人文学部教授を経て、名古屋市立大学大学院人間文化研究科教授。主要著書に『貧困の放置は罪なのか―グローバルな正義とコスモポリタニズム』(人文書院、2010年、2011年日本公共政策学会著作賞受賞)、『タックス・ジャスティス―税の政治哲学』(風行社、2017年)など多数。

 

■津田 久美子(つだ・くみこ)
 1986年生まれ。北海道大学法学研究科博士課程、日本学術振興会特別研究員(DC)。2008年、中央大学総合政策学部を卒業。日本アイ・ビー・エム株式会社にて3年半の勤務を経て、2013年に北海道大学法学研究科修士課程入学、15年修了。著作に「『車輪に砂』―EU金融取引税の政治過程:2009-2013年(1)/(2・完)」『北大法学論集』66巻6号/67巻1号。

 

■三木 義一(みき・よしかず)
 1950年生まれ。一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。立命館大学法科大学院教授を経て青山学院大学法学部教授。専門は租税法、弁護士。2015年12月より青山学院大学学長。主要著書に『日本の納税者』(岩波新書、2015)、『日本の税金 新版』(岩波新書、2012)、『よくわかる税法入門(第9版)』(有斐閣、2015)、『よくわかる法人税法入門(第2版)』(編著、有斐閣、2015)など多数。

 

◆写真は、2015年11月のシンポジウム「ピケティ『21世紀の資本』とグローバル・タックス」のもようです。