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バフェット氏の納税の勧めとフランス議会での超富裕層への課税採択

 3人組

 

ウォーレン・バフェット氏(94歳)が週末発表した「株主への手紙」で納税の重要性と(遠回しながら)米政権を批判していることが話題になっています。他方、フランスでは国民議会(下院)で超富裕層への課税を採択しました。

 

■ バフェット氏、トランプ政権の「愚かな財政政策」等をやんわり批判

 

2月25日の日経新聞弟子版に『バフェット氏が異例の政治発言 通貨安定を要望』という興味深い記事が配信されていたので、簡単に紹介します。

 

バフェット氏とは、言うまでもなく、世界最大の投資持株会社であるバークシャー・ハサウェイの筆頭株主であり、同社の会長兼CEOを務める大富豪ですが、60年前に会社を興して以降バークシャーの税金は1016億ドルに上り、「税金をまったく支払えなかった恥ずべき時期もあった」と述懐。「税金を払えないことは『華やかな新興企業とは異なり、米経済の柱を支える企業にとっては黄信号だ』と指摘。巨額の税金を払うバークシャーの成功を誇った」と記事は述べています。

 

その上で、トランプ大統領の富裕層を含めた減税政策等に対し、「『愚かな財政運営がまん延すれば紙幣は価値を失う。米国でも危機にひんしている』『通貨の安定にはあなた方の知恵と用心が必要なことを決して忘れないで』」と述べています。

 

内外に傍若無人な振る舞いを行っているトランプ政権ですが、富裕層への大減税や関税強化等の「愚かな財政運営」でよりひどいインフレ・物価高を招来し、足元から政権弱化を招くのではないかと思われます。

 

フランス国民議会(下院)、超富裕層への課税を採択!!

 

2月20日フランス国民議会(下院)はエコロジー党などの議員が提出した超富裕層への課税、通称「ズックマン税」案を、116票の賛成、39票の反対で採択しました。これが可能となったのは会派第一勢力である極右の国民連合(RN)が棄権したという背景があったようです(それにしても議員定員が577人なのに、どうしてこんなに投票者が少なかったのか?)。

 

このズックマン税とは、経済学者ガブリエル・ズックマンの提案に基づいて、「1億ユーロ以上の資産を持つ納税者の最も裕福な0.01%に対して、資産の少なくとも2%を税金として支払う富裕税の最低額を設ける」法案で、約1800人が対象となるようです。そして税収は150億から250億ユーロ(約2.3~3.9兆円)に上ると試算されています。ただし、実現の可能性ですが、上院では右派が多数なので否決されると予想され、かつ憲法評議会での関門もあるということで、かなり困難ということです。

 

それでも、「これは歴史的な勝利だ! フランスにとって大きな第一歩であり、他の国々にも刺激を与える可能性がある」(ズックマン氏)、「勝利!超富裕層の富に2%の課税を導入する私たちの法律案が国民議会で採択されました」(提案者の一人のクレマンティーヌ・オータン氏)と意気は高いようです。

 

超富裕層への課税については、昨年のG20リオデジャネイロ・サミットで提案し、これにフランス、スペイン、南アフリカ等も賛同したという経緯があります。ですから、フランスのマクロン大統領の与党は積極的にズックマン税に賛成すべきですね。日本でも超富裕層は少ないながらも100億円以上の資産を持つのは多くて1000人程度おられるようです。

 

※写真は、左からバフェット氏、ズックマン税を提案したエヴァ・サス氏、ズックマン氏

 

バチカンでスティグリッツ教授やサンチェス西首相らが議論=税の公正と連帯

4人組

 

2月13日、国際法人税改革独立委員会(ICRICT 注1)とローマ教皇庁社会科学アカデミー(PASS)の主催による「税の公正と連帯:包括的で持続可能な共通の家に向けて」と題するハイレベル対話が開催されました。これには世界の政治的リーダーや経済学者、宗教団体、市民団体などが参加しました。米トランプ政権が国際協力・協調を次々と壊していく中で、国際租税協力の面からグローバルな連携を強化しようという有意義な取り組みでした。

 

このイベントには、道徳的責務としての税の公正を長年擁護してきた教皇フランシスコ(教皇は欠席されたもよう)のほか、南アフリカの元大統領タボ・ムベキ氏、ノーベル賞受賞者でICRICT共同議長のジョセフ・スティグリッツ氏、ICRICT委員でEU税務監視機関の所長ガブリエル・ズックマン氏、国連合同エイズ計画(UNAIDS)事務局長ウィニー・ビヤニマ氏など、著名な講演者が登壇しました。また、ビデオメッセージが、ブラジルのルーラ・ダ・シルバ大統領、 スペインのペドロ・サンチェス首相から寄せられました。

 

プログラムは、セッション1:世界的な不平等の拡大と課税の役割、セッション2:公正な国際税制の提案と機会、セッション3:税制改革のグローバル・アジェンダ、というもので、フルテキストは下記をご覧ください。

 

まず教皇フランシスコの開会の辞ですが、ご病気のためか無かったようですので、プログラムに載っていた言葉を紹介します。

 

「富の再分配を支持し、常に権力者に踏みにじられる危険にさらされている貧しい人々や最も弱い立場の人々の尊厳を守るための税制を求めつつ、税金は公正で公平で、各人の支払い能力に基づいて設定されなければなりません」

 

また、国連で交渉がはじまった国際租税枠組条約に関して重要と思われる発言を行ったのが、スペインのサンチェス首相です。そのメッセージを紹介します(注2)。

 

第一に、超富裕層への効果的な課税に関する昨年の突破口を土台としなければならなりません。ブラジルのG20議長国の下、私たちはこの問題を世界的に持ち込むことで、画期的な成果を収めました。格差の拡大は経済的な問題だけでなく、道徳的な問題でもあります。億万長者の納税額が一般人より少ない場合、社会的信頼は損なわれ、平等性は損なわれます。困難はありますが、この課題を消し去るわけにはいきません。

 

第二に、私たちは国際的な租税協力に関する国連条約の交渉に建設的に関与しなければなりません。特定の関係者がいないからといって、すべての人に恩恵をもたらす制度の推進を阻むべきではありません。私たちは、包括的で野心的で、近年の成果を土台とする枠組みを構築しなければなりません。

 

第三に、大企業が自国を気にせず、利益を生み出した場所で税金を払うようにしなければなりません。

 

なぜ重要かと言いますと、枠組条約交渉の第1回組織会合の主要議題であった、「意思決定ルール」を決めるにあたり欧州グループがコンセンサス方式の修正案を出し、これにスペインも賛成しました(ノルウェーだけが棄権)。しかし、このサンチェス首相は「包括的で野心的で、近年の成果を土台とする枠組みを構築する」と言っていますので、ぜひスペインが先頭になって他の諸国を説得し、欧州グループとグローバルサウス諸国とが連携、協調し、文字通り野心的な条約を作っていただきたいものです。当然日本政府もスペインやノルウェーを見習うべきです。

 

「税の公正と連帯:包括的で持続可能な共通の家に向けて」プログラム

 

<ハイレベル対話>

税の公正と連帯:包括的で持続可能な共通の家に向けて

 

午前 8:40~9:40  開会の辞

 

メッセージ:

フランシスコ教皇

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ、ブラジル大統領

ペドロ・サンチェス、スペイン首相

タボ・ムベキ閣下、アフリカからの不正資金流出に関するハイレベル委員会議長南アフリカ元大統領

ノシフォ・ジェジーレ、イタリア共和国駐在南アフリカ大使

アミナタ・トゥーレ、セネガル大統領府高等代表、マドリッド・クラブ会員、セネガル元首相

李俊華、国連事務次長

 

午前9:40~11:15 セッション1: 世界的な不平等の拡大と課税の役割

議長: マーティン・グスマン、ICRICTコミッショナー、PASS常任アカデミー会員

 

このセッションでは、その日の導入的な議論を提示し、今日の世界的な不平等の主な課題について取り上げます。不平等はどこから来るのか? 主な傾向は何か? 税金はどのようにして世界レベルと国内レベルの両方で不平等を強化し再生産するのか? 国際課税との関係は何か? 不平等と税の不公平がなぜ私たちの民主主義を危険にさらしているのか?

 

主な講演者: ジョセフ・E・スティグリッツ、ICRICT共同議長、PASS名誉アカデミー会員。

ジャヤティ・ゴーシュ、ICRICT 共同議長

ゲラシモス・トーマス、欧州委員会税制・関税同盟事務局長

ウィニー・ビヤニマ、UNAIDS 事務局長

アビゲイル・ディズニー、Patriotic Millionaires 会員

参加者によるディスカッション

 

11:45-13:30 セッション 2: 公正な国際税制の提案と機会

議長: ペドロ・アブラモベイ、Open Society Foundations。

 

このセッションでは、多国籍企業と社会の最も裕福な人々が公平な税金を支払うように ICRICT が提案した提案について詳しく説明します。今日の国際税制は破綻しており、社会の最も強力な人々に偏っています。1 世紀前に富裕国によって創設された、非グローバル化の世界で設計された国際税制は、多国籍企業による国境を越えた利益移転 (時代遅れの移転価格システムによって促進される)、激化する課税競争 (底辺への競争とも呼ばれる)、デジタル化、財務上の秘密、海外の隠れた富などにより、大きな圧力にさらされています。これらすべてが、税金の濫用による年間数十億ドルの損失につながり、特に公共サービス、気候変動への適応、グリーン・トランジションに資金を供給するために多額の収入を必要とする開発途上国で顕著です。この状況において、ICRICT は、親会社と子会社を単一のエンティティとして扱い、定式化されたアプローチで多国籍企業の世界的な利益を各国に配分し、世界的危機から利益を得るセクターの不当な利益に課税できるようにするためのさまざまな提案を策定しました。さらに、委員会は企業と超富裕層に対する最低課税基準を提案しています。これらの提案はすべて、不平等を減らし、公正かつ合法的で持続可能な国際税制を実現することを目的としています。

 

主な講演者:

ガブリエル・ズックマン、ICRICT コミッショナー

エドマンド・フィッツジェラルド、ICRICT コミッショナー

リカルド・マートナー、ICRICT コミッショナー

キム・ヘナレス、ICRICT コミッショナー

ローガン・ワート、アフリカ税務行政フォー​​ラム

チェナイ・ムクンバ、税制正義ネットワークアフリカ

ベンジャミン・エンジェル、欧州委員会の直接税、税務調整、経済分析および評価担当ディレクター

参加者によるディスカッション

 

午後 3:00 ~ 4:45: セッション 3: 税制改革のグローバル・アジェンダ

議長: ホセ・アントニオ・オカンポ、ICRICT コミッショナー

 

現在の課税に関するさまざまな問題と、それが今日見られる不平等のレベルと本質的に関係していることから、国際課税制度を改革し、税金の濫用、タックスヘイブン、金融の不透明性と闘うために、10年以上にわたって国際協力プロセスが進められてきました。現在、さまざまな段階のプロセスがあります。完了に近づいているものもあれば、進行中のものもあり、開始段階にあるものもあります。これらのプロセスには以下が含まれます。

  ・G20/OECDのBEPSイニシアチブに関する包括的枠組み

 ・国際租税協力に関する国連枠組条約

 ・ブラジル議長国が推進する、超富裕層への課税に焦点を当てたG20の新しい国際アジェンダ

 ・2025年の第4回国際開発資金会議

 ・2025年の第30回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP30)

 ・ラテンアメリカ・カリブ海税プラットフォーム(PTLAC)など、革新的な地域協力プロセスの方向性を定めたさまざまな地域イニシアチブ。

 ・このセッションでは、これらのさまざまなプロセス、その成果、利点と限界、そして2025年に国際レベルと地域レベルの両方で出現する新しいプロセスによって生じる改革の機会について取り上げ、分析します。

 

 主な講演者:

イレーネ・オヴォンジ・オディダ、ICRICT コミッショナー

エヴァ・ジョリー、ICRICT コミッショナー

イヤボ・マーシャ、国際通貨開発に関する 24 か国政府間グループ (G-24) のディレクター

ホセ・マヌエル・サラザール・シリナックス、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会 (ECLAC) の事務局長

パスクアーレ・トリディコ、欧州議会議員、FISC 税務小委員会の議長

ギラッド・アイザックス、経済正義研究所所長

参加者による討論

 

午後 4:45~5:00  閉会の辞

ジョセフ・E・スティグリッツ、ICRICT 共同議長、PASS 名誉学術会員

ジャヤティ・ゴーシュ、ICRICT 共同議長

 

※イベント全体の動画はこちらから 

 プログラムの原文テキストはこちらから 

 

(注1)ICRICT(Independent Commission for the Reform of International Corporate Taxation )

⇒グローバル時代における公正な企業課税(多国籍企業課税)の実現に向けて提言を行う国際NGO。

・共同議長: ジョセフ・スティグリッツ(コロンビア大学教授、ノーベル経済学賞受賞)、ジャヤティ・ゴーシュ(マサチューセッツ大学教授)

委員として、トマ・ピケティやガブリエル・ズックマン、ホセ・アントニオ・オカンポほか

 

(注2)サンチェス首相のメッセージ

 

◎写真は、左からフランシスコ教皇(BBCから)、J・スティグリッツ氏、ウィニー・ビヤニマ氏、サンチェス首相 

国際租税協力枠組条約の第一ラウンドの結果と今後について

 第一組織会合

 

当フォーラムのブログにPSI(Public Services International)東アジア事務所代表の青葉博雄さんから、先日開催された国際租税協力枠組条約交渉についての投稿がありましたので、共有します。

 

1. 『国際租税協力枠組条約』交渉始まる

 

 

2月3日から6日までの間、ニューヨークの国連本部において『国際租税協力枠組条約(枠組条約)』政府間交渉委員会のオーガニゼーショナル・セッション(今後の交渉におけるさまざまなモダリティを決定するセッション)が開催された。主な議題として、オフィサー(議長、副議長等)の選出、決定に関するルール、2つ目の初期議定書の主題の決定が挙げられた。(「議題案」参照)

 

先ず初日の会議冒頭、委員会事務局のオフィサー(議長1名、副議長18名、報告者1名)の選出が行われ、エジプト代表が議長に選出された。また、アジア太平洋グループからは中国、インド、サウジアラビア、シンガポールが副議長に選出された。(「委員会作成資料」参照)

 

決定ルールに関しEU、日本を含む先進国グループがコンセンサス方式を、そしてアフリカ・グループを中心とする途上国グループが単純過半数方式を求める中、交渉が開始された。そして最終的に枠組条約については単純過半数方式、議定書の採択については3分の2の賛成を要する方式を採ることとなった。

 

昨年末に採択された国連国際租税協力枠組み条約付託事項(TOR)は、「枠組み条約と同時に2つの初期議定書を策定すべきである。」とし、その一つを「デジタル化とグローバル化が進む経済において、国境を越えたサービスの提供から生じる所得に対する課税」とした。そして今回の交渉において次の4つの優先課題から二つ目の初期議定書の主題を決定することとなっていた。

 

1)デジタル化経済への課税 2)税に関連した不正な資金の流れに対する対策 3)税務紛争の予防と解決 4)富裕層による脱税や租税回避に対処し、加盟国での効果的な課税の実施

 

そして、交渉の結果、「税務紛争の予防と解決」を二つ目の初期議定書の課題とすることを決定した。

 

2. 米国政府の交渉離脱、日本政府の反応、そして全体の雰囲気

 

交渉初日、米国は「『国連国際租税協力枠組条約』の目標は米国の優先事項と一致せず、歓迎できない行き過ぎの所望である」として交渉を離脱した。米国代表は会場を去る前、他国代表に対し交渉を拒否するよう同調を呼びかけた。米国以外、交渉を離脱する国は現れなかったが、交渉最終日(6日)の日本政府代表の発言は市民社会団体代表者を含む観衆の注目を浴びた。

 

日本政府代表は、「日本は、交渉プロセスがコンセンサスに達することができるかどうかを注意深く見守りながら、今後の交渉への関与を評価していく(Japan will assess its future engagement in the negotiation, while closely monitoring whether the process can successfully reach a consensus.)」と述べ、コンセンサスに達しない場合は交渉を離脱する可能性もあるとも捉えかねない発言を行った。(「日本政府代表発言部分の映像(16分40秒~)」参照)他の多くの先進国がコンセンサス醸成の必要性を訴える場面はあるものの、引き続き交渉プロセスへの建設的な貢献をする旨の発言を行う中、日本政府代表の発言は特異なものとして映ったと言える。

 

GATJ(税正義グローバル連合)のエグゼクティブ・コーディネーターであるデレジェ・アレマエフ(Dereje Alemayehu)は交渉の全体の雰囲気について、当初、アフリカ・グループとOECDグループの双方が自身の提案の受け入れを迫る緊張感に満ちた雰囲気があったが、最終的にはアフリカ・グループが議定書について3分の2の賛成による採択をOECDグループが枠組条約について単純過半数による採択を受け入れる、双方が譲歩し合う結果となった、と述べている。

 

3. 今後の交渉スケジュール

 

毎年3回以上政府間交渉を行い、『国際租税協力枠組条約』と2つの初期議定書を策定し、2027年の国連総会に提出することが予定されている。今年は3回の政府間交渉が行われる予定であるが、それぞれの交渉期間の議題に沿って事前にGATJとして政策ポジションを策定していくことになる。同ポジションについては当勉強会としても適宜共有を図る予定である。

 

4. 私たちの今後の活動予定

 

情報発信に加え、立法府、特に衆議院および参議院の財務金融委員会メンバーに対するロビーイング(政策提言活動)を行っていく。なお下記の問題についての情報発信に向け準備を進めている。

 

  • 1月20日、米国政府は2021年10月のOECD主導で合意した国際課税ルールを「前政権下で支持されたOECDのグローバル・タックス・ディールは、米国内の所得に対する域外管轄権を認めるだけでなく、米国企業と労働者の利益に資する税制を制定するわが国の能力を制限するもの」と評し、合意枠組みからの離脱を表明した。(「覚書」参照)日本政府は上記の同意された国際ルールに基づき国内ミニマム課税(QDMTT)および軽課税所得ルール(UTPR)の導入を2025年度税制改正案に盛り込んでいる。米国が「差別的な域外課税」として報復措置と取る可能性もあり、事態の早急な評価が求められる。

 

  • 今年6月から7月にかけてスペインで開催される「第4回国際開発資金会議」の成果文書のゼロドラフトが発表され、それに対し「市民社会開発資金メカニズム(CS FfD Mechanism)」が既に市民社会からのコメントをとりまとめ国連への提出を行った。ゼロドラフトは幅広い課題をカバーしているが、ゼロドラフトの特に租税および金融制度に関する部分についての当勉強会としての評価を共有する予定。

 

◎ 青葉 博雄 (aoba.hiroo@gmail.com)

 PSI(Public Services International)東アジア事務所代表の青葉です。これまでPSIスタッフとして国際課税・金融分野の諸問題に取り組んでまいりました。現在、国際課税を巡る市民社会の国際ネットワーク団体GATJ(Global Alliance  for Tax Justice)および開発資金を巡る国際ネットワーク団体である「市民社会開発資金メカニズム(CS FfD Mechanism)」の金融制度問題(financial systemic issues)を扱うグループの活動に参加しております。2025年は国連における「国際租税協力枠組条約」に関する交渉が本格化し、6月にはスペインで「第4回開発資金国際会議」が開催されます。今後は主に国際課税および国際金融制度に関する情報を継続的に発信すると共にロビー活動(特に立法府に対するものを)を含む政策提言活動を行っていく予定です。

 

※左の写真は、アフリカ・グループを代表して発言するガーナのJeswuni Abudu-Birresborn氏

2月3日 国際租税枠組み条約の正式交渉始まる、米国は退席

フィージー

 

2月3日から国際租税協力に関する国連枠組み条約の正式な交渉が始まりました(6日まで)。議題は、役員選出のほかに、条約の意思決定ルールや条約原案などの主要な問題について議論することになります。初日のトピックは何といっても、米国の交渉プロセスからの離脱でした。

 

また、議論の中で目立ったのは、意思決定ルール(単純採決方式か、全員一致のコンセンサス方式か)でのグローバルサウスと先進国側の溝です。前者はサウスが要求し、後者はEUが要求しました。以下、NYを拠点とする国際NGO、CESRのXでの報告です。

 

●Center for Economic and Social Rights(CESR)のX より

 

今日(2月3日)の #UNTaxConvention (国連租税条約)交渉の進展:
エジプトのラミー・モハメド・ユセフ(注:財務省租税政策・改革担当副大臣)が政府間交渉委員会の議長に選出された。各国はそれぞれの立場を再確認し、包括的かつ公正な税制枠組みに対するグローバル・サウスからの強い支持を得た。

 

アフリカ・グループ、カリコム(注:カリブ共同体)、その他は、世界的な不平等に対処する税制を求めた。ガーナは、これを「決定的な瞬間」と呼び、公正な成果を求めた。ケニアは、コンセンサスにつき進展を阻む道具として使うべきではないと警告した。

 

EUはポーランドを通じ、関与へのコミットメントを強調したが、主要な対立点であるコンセンサスベースの意思決定を強く求めた。一方、タンザニア、バハマ、イランは、膠着状態を避けるため、単純多数決方式を支持した。

 

午後のセッションは、グローバルな租税ガバナンスの透明性と説明責任の鍵となる、市民社会の参加に関する重要な議論で始まった。

 

午後のセッションは、グローバル租税ガバナンスにおける透明性と説明責任の鍵となる市民社会の参加に関する重要な討論で幕を開けた。

 

この議論が始まった直後、米国代表団は退席した。彼らは国連租税条約は米国の目的と矛盾していると宣言し、その成果を「拒否し反対する」と誓った。

 

しかし、プロセスは前進した。交渉は中断されることなく継続され、今が極めて重要な瞬間であることを証明した。より公正なグローバルな税制ルールを求める戦いは、引き続き軌道に乗っている。

 

※Intergovernmental Negotiations for UN Framework Convention on International Tax Cooperation のWebサイト: https://financing.desa.un.org/inc

 

※写真は、フィジーの国連常駐部のXより

フィジーの国連常駐代表のFilipo Tarakinikini大使は今朝、国際租税協力に関する国連枠組条約の政府間交渉委員会においてフィジーの演説を行い、小島嶼開発途上国(SIDS)にとって国際租税協力が果たす重要な役割を強調した。「国連主導のこの取り組みは、経済規模に関係なくすべての加盟国が世界の税制ガバナンスに発言権を持つことができる包括的かつ公平な税制を構築する必要がある」と強調した。

航空券連帯税、400~1100億円の税収が可能>パンデミック対策の財源に!

今や東京でも繁華街に行きますと外国人観光客で溢れかえり、訪日外国客が年間4,000万人の大台に乗りそうな勢いです。このことから、政府・与党は「国際観光旅客税」(以下、観光税と略)の増税を検討しているようです(航空新聞)。ただし2025年度税制改正大綱には要望が出ていませんので、26年度税制改正で打ち出されるかもしれません。翻って、この観光税は様々な点で問題があり、国際線利用からの税収は地球規模課題に使用すべきです。あらためて航空券連帯税(正確には航空券・船舶券連帯税、以下連帯税と略)を考え、やや早いのですが、26年度税制改正に向け提言していきたいと思います。

 

■ 2024年の訪日外国人は過去最高、2025年は4000万人強を予測

 

2024年の訪日外国人数と出国日本人数、並びに大手旅行会社JTBの2025年予測は次の通りです(1)。前者の訪日外国人は過去最高ですが、超円安のため出国日本人は最高時の6割程度。観光税の税収ですが、出国にあたり1回1000円の徴収で、2023年度で合計440億円に上りました。

 

・2024年(実績):訪日外国人数 36,869,900人/出国日本人数 13,007,300人 ⇒合計:49,877,200人

 

・2025年(予測):訪日外国人数  4020万人/出国日本人数  1410万人 ⇒合計:5430万人

 

■ 2025年の国際線の予測のもとに、入国税としての「連帯税」の税収を試算してみる

 

2025年の国際線の予測のもとに連帯税による税収を試算してみますが、まず税目として導入されていない「入国税」と位置付けます(2)。観光税は「出国税」という形を取っていますが、日本に入国するに際して連帯税がかかるという仕組みです。

 

税率(定額税)と税収ですが、担税力の観点から座席(船舶の場合キャビン)により格差をつけるパターンを2つ、それに観光税のように座席別に関係なく一律とするパターンの3種類を試算してみます。

 

◎パターンA:税収426億円/E席0円、PE席1,000円、B席:5,000円、F席:10,000円 

 

◎パターンB:税収1121億円/E席1,000円、PE席2,000円、B席:8,000円、F席:15,000円 

 

◎パターンC:税収543億円/座席別なしで一律1,000円                    

  注1)E席はエコノミー、PE席はプレミアムエコノミー、B席はビジネス、Fはファースト

  注2)以下は(3)を参照。

 

パターンAはできるだけ税額を低くするパターンで、とくにエコノミークラスには課税しないという特徴があります。パターンBはできるだけ税額を高くし税収を多くするパターンで、したがってエコノミークラスも観光税並みに徴収します。パターンCは観光税の税額を踏襲します。

 

ひとつ見逃せないのは、富裕層や超富裕層が使うプライベート(ビジネス)ジェットの利用が近年急速に増えてきて、国際線での発着回数が2023年で5864回となっていますので(4)、2025年には1万回を軽く超えるでしょう。何よりもCO₂排出量が桁違いということもあり、これには「連帯税」を大幅に課してもよいのではないでしょうか。ちなみに英国では航空旅客税のワンクラスとして11万円以上を課しています(5)。従って、「連帯税」をその半額の5万円としても125億円となります(1機当たり5人搭乗として)。さらに言えば、プライベートヨット(高級クルーザー)利用者にも課すことができます。

 

■ なぜ「連帯税」か? 税収はパンデミック対策の財源に!

 

ⅰ) 今日の主な地球規模課題のひとつに新型コロナ等感染症パンデミックがありますが、国境を越えた人の移動、とくに飛行機による短期間の移動は爆発的な感染症拡大をもたらしました。この結果、莫大な人的被害をもたらすとともに国際経済に大打撃を与えました。現在、コロナ感染は完全に終息した訳ではなく、さらに第二第三のウイルスによるパンデミックが起きないとは限りません。その危険性からして、国境を越えて移動する人に対し予備的に一定の対策費用を負担してもらうことは理に適っていると考えます。

 

ⅱ)日本政府は出国税による税制(国際観光旅客税)を国内観光という限られたセクターの資金にしましたが、観光税で受益するのはもっぱら観光業界並びに観光を目的とした訪日外国人であり、必ずしも航空機利用者全員の利益になっていないという矛盾があります。税収を感染症対策資金とすれば間違いなく搭乗者全員にとって、ひいては人類全体にとって裨益することになります。

 

ⅲ) 米国トランプ政権が発足しましたが、心配した通り(世界保健機関)から脱退を表明しました。WHOの分担金は米国が最大拠出国で22%を占めますので(金額は1.33億ドル)、予算が立ち行かなくなりそうです。他方、日本の拠出は第3位の8.6%(4097万ドル)。さらに心配なのは、低中所得国のパンデミックPPR(予防、備え、対応)強化を支援するための「パンデミック基金」での米国の貢献がなくなることです。ここでも米国の拠出は24年のプレッジを含めダントツ1位の11.2億ドルを占めています。日本は第5位の1.2億ドルです(6)。

 

これはたいへん由々しきことで、世界的規模で感染症・公衆衛生対策が立ち遅れてしまうことになってしまいます。日本政府は、米国にWHO脱退の撤回を粘り強く求め、同時にパンデミック基金など国際保健のための資金調達を航空券連帯税で賄い、拠出金のさらなる増額に向け努力すべきです。また、連帯税が1000億円前後になるようでしたら、その半分を国内の感染症対策に使用することも考えられます。外務省・日本政府は国際・国内感染症対策の資金調達を真剣に考える時です!

 

(1)【JTB】2025年(1月~12月)の旅行動向見通し

 

(2) 入国税:航空券税につき多くの国は出国税として徴収していますが、米国は出入国税として国際通行税(出発・到着)を取っています。最近ではスイスが国会に入国税を提案しています。

  【スイス】入国税、赤字抑制…スイス冬期議会の注目ポイント 

 

(3) 注2)通常の飛行機の座席割合を、Eは70%、PEは12%、Bは16%、Fは2% とした。

       注3)訪日外国人客が増えるとともに、LCC(格安航空)利用者も増え3割を超えるようになったが(2025年予想で1629万人)、この利用者の席をほとんどエコノミー席として計算。

        注4)クルーズ船での訪日外国人数は150万人(2024年)で、キャビン(客室)による区別は飛行機に準拠。

 

(4)【国交省】日本におけるビジネスジェットの発着回数推移(国際)  

 

(5)参考:英国の航空券税(航空旅客税/25年4月1日から実施料金) ※PJ;プライベートジェット

①0~2000マイル(EU内など) E席2,500円/PE・B・F席2,700円/PJ15,000円

 

②2000~5500マイル(米国など)E席17,000円/PE・B・F席37,000円/PJ112,000円

 

③5500マイル以上(日本など) E席18,000円/PE・B・F席43,000円/PJ117,000円

 

(6)【財務省】グローバルヘルス戦略フォローアップ/パンデミックPPRに関する最近の取組

 

冬季資金支援のお願い>希望は急速に盛り上がった国際課税の議論

本年を振り返りますと、世界的には、戦争、気候危機、そしてインフレ・物価高騰等々に見舞われ、途上国ではこれに債務危機が重なり「ポリクライシス(複合危機)」に陥っています。他方、先進国では米大統領選挙に典型的なようにポピュリスト・極右勢力が台頭してきました(英国だけは別)。このような情勢の中で、人々のグローバルな希望の一つとして「国際課税」実現に向けての取り組みの進展があります。当フォーラムは当面この希望を国内で推進していく決意ですが、そのためには資金も必要ですので、冬季一時金の折、資金支援を訴えますので、よろしくお願いいたします。

 

■ 超富裕層への課税:G20リオ・サミットそして経団連会長

 

去る11月18-19日、ブラジル・リオデジャネイロでG20サミットが開催され、その首脳宣言の冒頭に「我々は、誰一人取り残すことなく、公正な世界と持続可能な地球を構築すること」というSDGs(持続可能な開発目標)理念の確認を行いましたが、宣言でも述べているように目標は17%しか進展しておらず、SDGs危機ともいうべき状況です。これを打破すべく、議長国ブラジルは「飢餓と貧困に対するグローバル・アライアンス」と、それを推進するための資金調達として「世界の超富裕層への課税」を提唱しました(宣言にも明記 注1)。

 

この超富裕層への課税ですが、4月にブラジルが起草し、ドイツ、南アフリカ、スペインが賛同した提言は、資産額が10億ドルを超える全世界の約3000人の超富裕層の資産に少なくとも2%を課税し、2500億ポンド(47兆円)の収入を見込む、というものです(注2)。

 

この提案については、今日グローバルな資金創出のツールとして国際的に市民権を得るに至っています。実際、7月と10月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議声明において、9月の国連未来サミットでの「未来のための協定」において、さらに後述する「国連 国際租税協力のための枠組条約」議論において、取り上げられています。

 

一方、こうした国際的な議論に刺激されたのか(?)日本経団連の十倉雅和会長が2040年を見据えた政策提言「フューチャー・デザイン2040」で、所得や資産に対する富裕層への課税強化で34年度までに5兆円規模の財源を確保し、現役世代の社会保険料の負担率が上がらないようにする、と提案しています。課税の具体的な中身は分かりませんが、注目すべきかと思います。ちなみに、日本で資産額が10億ドル(1500億円)を超える人は、ファーストリテイリングの柳井会長以下44人いて(フォーブス・ジャパン「日本長者番付 2023 トップ50」)、そこに2%課税すると5180億円の税収を得ることができます。

 

■ グローバル連帯税:7項目の連帯税オプション

 

フランス、ケニア、バルバドスを議長国とする「グローバル連帯課税タスクフォース」は、先月のCOP29で報告書「連帯を拡大する: グローバル連帯税の進捗(Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies)」を発表し、以下の7項目の連帯税オプションを提案しています。1)航空税、2)化石燃料課税、3)金融取引税、4)海上輸送課税、5)プラスチック生産課税、6)暗号通貨課税、7)超富裕層個人への課税。

 

詳細は、当フォーラムのWebサイトに掲載している「COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相」をご覧ください(注4)。

 

■ 国際租税協力に関する枠組条約:反対した8カ国の税収損失は1,770億ドル(約26.6兆円)!!

 

既報通り、11月27日国際租税枠組条約への付託草案が圧倒的多数で採択され、新しい条約の交渉プロセスは、いよいよ来年2025年2月に開始され、2027年に終了することとなります。条約草案は、多国籍企業への公平な課税、世界の富裕層への効果的な課税、不正な資金の流れや租税回避・脱税への対応等を求めており、総合的で持続可能な開発のための国際税制の構築を目指しています。これは、タックスヘイブンが世界の多国籍企業や富裕層の脱税を許している現在の制度の根本的転換となります。

 

ところで、付託草案採択にあたり、これまで反対していた8カ国<オーストラリア、カナダ、イスラエル、日本、ニュージーランド、韓国、英国、米国>とアルゼンチンが今回反対しました。英国のNGO、タックス・ジャスティス・ネットワークの最新の調査によれば、各国はタックスヘイブンを利用して税金を安く納めている多国籍企業や富裕層により、年間4,920億ドル(約74兆円)の税金を失っていますが、上記8カ国の損失は1,770億ドルで、ほぼ半分(43%)を占めるとのことです(注5)。何という皮肉!!

 

■ 冬季資金支援のお願い:最低向こう3年間はがんばります

 

以上、急ピッチに進んだ本年の国際課税の動きを概括すると、超富裕層への課税もグローバル連帯税も国際租税枠組条約の動向に収斂していくと思われます。今日多国籍企業や富裕層への課税につき、単独でまたは有志国で実施することは困難な状況で、まして米国で国際協調に背を向けることが予想されるトランプ政権が誕生する状況にあってはなお厳しく、従って、国連を舞台とした法的根拠のある条約と議定書が必要になります。

 

その条約と議定書が晴れて陽の目を見るのは3年後の2027年です(その頃はトランプ大統領もレームダック状況になっているかも?)。それまでは当フォーラムとしてもがんばっていこうと考えています。国内外の関係NGOのみなさんと連携しつつ、いっそう国会議員や政府・省庁へのアプローチを強化していきますので、資金支援をよろしくお願いいたします。

 

<資金支援先>

 

【お振り込み先】
■銀行口座: みずほ銀行 築地支店(支店番号015)
        普通 2698313
■口座名義: 国際連帯税フォーラム

 

※ 支援された方は、gtaxftt@gmail.com までご一報くださると助かります。

 

(注1)
G20リオデジャネイロ首脳宣言
(注2)
World’s billionaires should pay minimum 2% wealth tax, say G20 ministers
(注3)
経団連会長「税・社保改革逃げるな」 2040年見据え提言
(注4)

COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相

(注5)
The State of Tax Justice 2024

国連国際租税協力枠組条約への付託草案、圧倒的多数で採択!

投票結果

 

昨日の国連総会第2委員会での採決結果と今後について、PSI (Public Services International)の青葉博雄さんから以下のような投稿がありましたので、紹介します。

 

【 採決結果:賛成125、反対9、棄権46 】

 

11月27日昼(日本時間同日深夜)、国連第2委員会(マクロ経済政策)において、ナイジェリア政府がアフリカグループを代表して提出した決議案(資料1参照)が賛成125、反対9、棄権46の圧倒的多数の下、採択しました。欧州連合(EU)加盟27か国すべてが棄権する中、8月の「国連国際租税協力枠組み条約への付託事項草案作成特別委員会」における議長草案への採択において反対票を投じた8か国(米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イスラエル、日本、韓国)に加えアルゼンチンも反対票を投じました。一方、8月の採択において棄権したシンガポールが今回、賛成票を投じました。

 

今回採択された決議は8月に「付託事項草案作成特別委員会」で採択された付託事項を承認するものです。よって、8月に採択された特別委員会議長草案(資料2参照)が正式に効力を持つ文書となったとご理解ください。日本政府は採決に先立ち、広範なコンセンサスの不在、国内資源動員(DRM)強化への意欲の欠如などを理由に反対する旨の発言を行いました。

 

今後、決議は第5委員会(国連の行財政)に送付され、予算そして事務局構成等の検討および決定が行われます。次に来年2月に開催される租税条約交渉委員会において委員会の意思決定規則が検討・決定されます。単純過半数を基本とする規則を求めている「賛成派」と採択のハードルをより高く設定したい「反対派」との間で再び論戦が繰り広げられることになるでしょう。

 

引き続きグローバルな市民社会ネットワークである”Tax Justice Workstream of the Civil Society Finance for Development Mechanism”における議論に参加しながら、「グローバル連帯税フォーラム」ほか国際租税問題に関心のあるみなさまと共に日本政府、政党、国会議員等への政策提言活動を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 

PSI (Public Services International) 東アジア事務所

代表 青葉博雄

 

※国連の投票ボードは、Xより入手

11月20日 国際租税枠組条約問題で財務省主税局へ要請行う

■国連総会第2委員会での採択迫る

 

11月20日、現在国際的に焦点となっている「国連国際租税協力に関する枠組条約」問題に関し、枠組条約と議定書策定のための交渉に入る一歩手前の、特別委員会への付託事項草案の国連総会第2委員会(経済と開発、税を審議)での採択が迫っています。つまり、ここで否決されれば枠組条約等策定は無に帰すことになります。

 

ところで、日本政府は枠組条約に関しては前向きではなく、一貫して採択に反対してきました。本年8月の特別委員会での付託事項議長草案の採択は、賛成110カ国、反対8カ国、棄権44カ国でしたが、超少数グループとなった反対8カ国の中に日本政府も入っていました(注1)。このままでは上記第2委員会での採択でも反対し国際社会で孤立するのではないかとの懸念から、要請することになりました。

 

■ 私たちの要望と財務省のコメント

 

当日、財務省主税局からは、参事官補佐(国際租税担当)の大和史明さんが対応してくれました。冒頭、加藤勝信財務大臣あての「国連国際租税協力に関する枠組条約策定についての要望書」を提出し、主旨を説明しましたが、要望内容は次の2項目です(注2/全文)。

 

1、日本政府は、国連第2委員会における国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項草案の採択にあたり賛成票を投ずること

 

2、日本政府は、「OECD/G20 BEPS包摂的枠組」における合意にこだわることなく、BEPSプロジェクトでの先進的知見を踏まえ、国連枠組での議論において主導的立場を取っていただきたいこと

 

この後ざっくばらんな意見交換となりました。財務省側のコメントと説明について簡単にまとめると次のようになります。「日本政府としてはやはり広範なコンセンサスが不足しており、国内資源動員(DRM)強化についても意欲を欠いているという認識であること。とはいえ、日本政府としては国連の議論については建設的に参加していきたいこと。また、採択については交渉事であるので、どうするとは言えないこと。さらにBEPS包摂的枠組の柱1(市場国での一定の課税権)については引き続き交渉を進める立場であること」

 

■ 日本政府・財務省は国連の場で枠組条約議論をリードすべき

 

このことに対し、私たちは次のようなコメントを付け加えました。「かつてOECDでのBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトにおいて日本の財務省が能力を発揮し議論をけん引していたという経緯があったが、BEPS包摂的枠組の、とくに柱1での行き詰まり状況からして、OECDという枠からより広い国連という枠において財務省の知見を発揮すべきではないか」

 

早ければ来週にも第2委員会において採決が行われる見通しです。その結果を皆さまにお知らせすると共に、日本政府・財務省、政党、国会議員に対し、引き続き提言活動を行ってまいります。

 

(注1)

国際租税枠組み条約に向けた付託事項草案、圧倒的多数で採択!!

(注2)

財務大臣への要望書・全文

 

COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相

シンジケート

 

今月11日からアゼルバイジャンのバクーで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)が開催されました。最大の焦点は、条約が拠出を義務付ける先進国から途上国への対策資金の増額です。これまで2020年までに年間約1000億ドルを拠出し、2025年まで継続することになっていますが、25年以降の支援のあり方、つまり気候資金に関する新規合同数値目標(Finance and The New Collective Quantified Goal on Climate Finance)を決定することになっています。(もう一つの焦点は、パリ協定に基づく国別の温室効果ガス削減目標(NDC)の引き上げですが、ここでは省略)

 

■ グローバル連帯税タスクフォースと日本政府の動向

 

このことにつき、先進国側は具体的な提案を行っていませんが、途上国側は年間1兆ドル以上という提案をしています(G77+中国は1.3兆ドル)。が、先進国側は1000億ドルでさえようやく拠出している現在、もう一桁上げるのは容易ではなく、交渉が難航することは必至の状況です。

 

そういう中で、「一部の指導者たちは、気候変動対策のための財源を充実させるための『革新的な』方法を模索し続けている。バルバドスのミア・モトリー首相は火曜日(12日)の演説で、海運会社、航空会社、債券、株式に課税し、化石燃料の採掘に課税すれば、数千億ドルの資金を調達できる可能性があると指摘した。フランス、スペイン、ケニア、セネガル、コロンビアを含む14カ国と欧州委員会、アフリカ連合は、『連帯税連合』を通じてこれらのアイデアをより具体化しようとしている」(11月13日付Climate Home News)と伝えられています。

 

連帯税連合とは、既報の「開発・気候・自然のために国際課税に関するタスクフォース」改め、フランス、バルバドス、ケニアを共同議長とした「グローバル連帯税タスクフォース:人類と地球のために」(The Global Solidarity Levies Task Force: For People and the Planet)のことです。これも既報通り、同タスクフォース(以下、GSLTFと略)は昨年6月にパリで開催された「新グローバル金融協定サミット」を機として設立されたものですが、当フォーラム並びに国際連帯税創を求める議員連盟はGSLTFに日本政府=外務省としても参加するように要請してきました(注1)。しかし、外務省は動きませんでした。

 

■ 国際租税や気候ファイナンスの専門家など錚々たるメンバーでTF報告書作成

 

さて、モトリー首相の演説は、12日のGSLTF共同議長の国家元首または政府首脳会議の場で発したものですが、報告書「連帯を拡大する: グローバル連帯税の進捗(Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies)」(注2)の内容を述べたものです。まずこの報告書を作成した専門家や国際機関のメンバーを見ますと、国際租税や気候ファイナンスの専門家など、実に錚々たる顔ぶれが並んでいます。

 

OECD租税政策・行政センター前所長のパスカル・サンタマン(OECD・BEPSプロジェクトの責任者であった)、国連租税条約特別委員会議長のラミー・モハマド(現在最もホットな国際租税問題を主導している)、アフリカ租税行政フォーラム事務局長のLogan Wort(アフリカでのIllicit Financial Flows対策を主導)、気候ファイナンスに関するハイレベル専門家グループ共同議長のVera Songweなど(敬称略)。

 

◎連帯税のオプションを見てみましょう。

 

1)航空税:検討されている政策オプションには、灯油燃料税(プライベートジェット燃料の協調課税を含む)や、高級航空券や頻繁な飛行機利用者への航空券課税など

 

2)化石燃料課税:化石燃料の採掘、臨時利益、多国籍企業の最低法人税率の引き上げなど

 

3)金融取引税:選択肢には、株式0.1%、債券0.1%、デリバティブ0.01%の税率を想定

 

4)海上輸送課税:「well-to-wake」課税(燃料を生産し、輸送し、船上で使用するまでのプロセス全体と、そこで発生するすべての排出物への課税)をベースとする

 

5)プラスチック生産課税:一次ポリマー生産に対する課税

 

6)暗号通貨課税:暗号通貨マイニングのエネルギー需要が高いことを考慮し課税

 

7)超富裕層個人への課税:億万長者に対する協調的な最低2%の課税

 

TFは当面1)~4)をメイン課税分野とし、5)~7)をさらに検討していくようです。なお、詳しい分析については、今後のメールで報告しますが、オピニオン電子メディア Project Syndicateでも、Emmanuel Macron、Mia Amor Mottley, and William Rutoの連名で “The Case for Solidarity Levies”というテーマで寄稿されています(注3)。

 

いずれにせよ日本政府を含む先進国側は、財政がたいへん厳しい中にあって、新規合同数値目標を大きく上積みするためにグローバル連帯税を真剣に検討していかなければならないでしょう。

 

(注1)
国際連帯税議連、上川外務大臣要請を行う>国際課税TF参加を要望
(注2)
Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies
(注3)
The Case for Solidarity Levies

 

※イラストは、Project Syndicate より

財務省への質問:BEPS包摂的枠組、DST課税、国際租税枠組条約について

11月7日第83回財務省・NGO定期協議(*)で、当フォーラムは、3項目につき質問を出しました。詳細は下記提出文書を見ていただきますが、まず骨子を述べます。

 

【質問骨子&足下でのアマゾン等巨大IT企業の租税回避】

 

〇 BEPS包摂的枠組みの「市場国への新たな課税権の配分」(柱1)につき、今後実施できる可能性は厳しいものがある。実施が伸びれば伸びるほど米国等の巨大IT企業からの法人税を徴税できないか、または過少納税となっている現状を放置することになる。

 

〇 これは税制上の不公正、ビジネス上の不平等を継続することになり、これを是正するためにデジタルサービス課税(DST)を準備すべきではないか。実際、アマゾン・ドットコムは日本で3兆6663億円も売り上げており(2023年)、過少納税のまま。他のIT企業も同様である。

 

〇 グローバル化・デジタル化経済における包括的でSDGs理念に相応しいグローバル税制を確立するためにも、またDST実施への米国からの制裁関税を回避するためにも、日本政府は国際租税枠組条約を推進すべきではないか。今後行われる国連総会での付託事項草案の採決に賛同し、議論をけん引すべきである。

 

【財務省への質問文書】

 

テーマ:BEPS包摂的枠組み(IF)における柱1と柱2の進行状況、デジタルサービス課税の新設、国連国際租税協力に関する枠組条約について

 

1)BEPS包摂的枠組み(IF)における柱1と柱2の進行状況等についての質問

柱1の「市場国への新たな課税権の配分」については、2024年6月までに多数国間条約の署名、2025年発効という予定でしたが延期されています。今後の展望をどう見ていますでしょうか。

 

柱2の「グローバル・ミニマム課税」については、我が国でも2023年度税制改正で法制化され、本年4月以降より適用されていますが、今年度の税収はいくらほどになるでしょうか。また、その税収は海外でビズネスを展開している多国籍企業からの税収となりますので、税収の一部をSDGs達成のための革新的資金源として徴収できませんでしょうか。

 

2)デジタルサービス課税の新設についての質問

これは上記IFの柱1との関連となりますが、もし多数国間条約が不成立となった場合、次の国際交渉-合意までにかなりの時間を要することが予想されます。そうなれば日本においてビジネス展開する米国等の巨大IT企業からの税金が徴収できないか、過少にしか徴収できない状況が続き、これは「価値創造の場で税金を払うべき」というBEPSプロジェクトの原則に反することであり、ビジネス上での公平な競争を妨げるものです。

 

従って、日本政府としては欧州各国やインド他多数の国が実施している(実施を準備している)デジタルサービス課税を準備し、早期に実施すべきではないでしょうか。また、この税も海外でビズネスを展開している多国籍企業からの税収となりますので、税収の一部をSDGs達成のための革新的資金源として徴収すべきではないでしょうか。

 

3)国連国際租税協力に関する枠組条約についての質問

BEPSプロジェクト、就中上記IFは100年ぶりの国際課税制度の改変という画期的内容を含むものでしたが、これを主導してきたOECD(経済協力開発機構)プロセスでは行き詰まっています。これに対し、途上国側からは国連を軸とした国際租税制度を構築すべきとして、「国際租税協力に関する枠組条約」をめざす動きが起き、昨年国際租税協力枠組条約ToR起草特別委員会が組織されました。そして、先の8月16日ToR案が採決され、賛成110、反対8、棄権44で可決されました。この反対8の中に日本が含まれ、財務省主税局総務課主税企画官の原田浩気さんが反対意見を述べています。また、棄権44にはEU加盟国(OECD加盟国でもある)が多く含まれていますが、9月の国連未来サミット並びに一般討論演説においてノルウェー政府首相が建設的に取り組むと発言しています。

 

今後の予定ですが、国連総会において年内に「付託事項」が決定し、同条約および議定書の交渉委員会を支える事務局の設置が決まり、2025年から2027年にかけて同条約および議定書の中身が議論されていきます。

 

そこで質問です。日本政府は、①未来サミットの『未来のための協定』で謳われている「国際租税枠組条約策定プロセスに建設的に関与する」という提言、②先の10月23-24日開催されたG20 財務大臣・中央銀行総裁会議での「国連における、国際租税協力に関する国連枠組条約とその議定書の策定に関する建設的な議論を引き続き奨励する」という声明に逆行して、年内に開催される「付託事項」案件に関する国連総会で再び三たび反対の立場を表明するのでしょうか。むしろ日本政府においては、OECD/BEPSプロジェクトをけん引してきたという経緯を踏まえ、国連における議論につき積極的に前に進める役割を担うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 

(*)財務省・NGO定期協議は「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が事務局を担い、1997年から開催され、27年目の今回で83回を数えています。詳細は、JACSESのwebサイトをご覧ください。