(日経報道)「アマゾン課税」をG20が議論>日米租税条約改正必要だが

昨日(24日)の日本経済新聞の1面トップに「G20『アマゾン課税』協議へ EU案軸、売上高を対象」という記事が掲載されました。ようやくG20レベルでもアマゾン・ドットコム等の電子商取引業者の「法人税」未払い問題に対処する動きになってきました。

 

問題は二つあります。

 

(A)…ひとつはアマゾンが日本で展開しているように配送センターを持ち営業をしていながら、その配送センターや倉庫が(支店や工場のような)「恒久的施設(PE)」ではないという規定のため、法人税を払わないで済んでいるという問題(「PEなくして課税なし」)。これに対しては、OECDが昨年6月国際的な課税逃れを防ぐ多国間協定を採択し、「『大型の物流倉庫』があれば消費国で課税できるようルールを変更」(日経新聞)しました。それで日本も19年1月から適用することになるはずです(今国会での承認を得て)。

 

(B)…もうひとつは、「ネット上で完結する音楽や映画の売買は相変わらず所得課税の抜け穴だ」(日経新聞)という状態で、このままでは課税できません(OECDで詰め切れなかったのですね)。それで3月のアルゼンチンでのG20財務相・中央銀行会合で議論し、4月中にOECDでルール作りを議論する、という段取りになったようです。

 

しかし、このままでは実物を販売しているアマゾンに課税できません!

 

日経新聞を読むと、(A)で関連法を改正して日本国内で改正法人税ができればアマゾンに適用できるかのように読めますが、実はそうではないのです。というのは、米国はOECDの多国間協定に署名していませんので、日米租税条約(二国間条約)を改定しないと、アマゾンなど米系IT企業関係にはすぐに適用できないのです。多分米国の壁は厚く、相当難しい交渉が予想されます。私たちは、交渉を政府にだけ任せるのではなく、市民社会側からも圧力をかけていく必要があります。

 

(B)の方ですが、これについては「欧州委員会が主張する2段階によるルールづくり」、つまり第一段階として「平衡税」を、第二段階としてネット上の通販に対しモノでの(改正)PEような規定を行う、というものです。

 

アマゾン・ドットコムを柱に、米系IT企業(アップル、グーグル、フェイスブック)がIT空間はもとよりビッグデータはじめ情報を独占しはじめています。しかも、税金を払わないで。「グローバル企業は価値が創造されるところで税金を支払うべき」(OECD BEPSプロジェクトの柱)です。まず税金をしっかり払ってもらうように世論を盛り上げていきましょう。

 

 

【日本経済新聞】G20「アマゾン課税」協議へ EU案軸、売上高を対象 

 

 20カ国・地域(G20)は、米アマゾン・ドット・コムのような電子商取引業者に対する課税強化案を検討する。現在の租税ルールでは、国境を越えてインターネットで売買される電子書籍などの利益に、各国が法人税をかけられないためだ。国ごとの売上高に課税する欧州連合(EU)の案を軸に協議が進むが、実現すればネット企業の立地戦略やサービス展開に大きな影響を及ぼす可能性がある。

 経済協力開発機構(OECD)の租税条約では、グローバル企業が進出先の国に支店や工場などの恒久的施設(PE、Permanent Establishment)を持たない場合、法人税をかけられない。

 たとえばアマゾンの電子書籍「キンドル」を日本の消費者がネットでどれだけ購入しても、日本政府はアマゾンの利益への課税権がない。法人税は米政府に入る。動画配信サービスの米ネットフリックスが米本土のサーバーから配信した映画・ドラマのほか、音楽ソフト、アプリといった様々な「無形固定資産」も法人税は非課税扱いだ。

…(中略)

 OECDなども野放図にしていたわけではない。ネット企業の「大型の物流倉庫」があれば消費地国が課税できるようルール変更しており、日本も19年1月から適用する。それでもモノの動きを伴わず、ネット上で完結する音楽や映画の売買は相変わらず所得課税の抜け穴だ。

 G20は3月のアルゼンチンでの財務相・中央銀行総裁会議で本格的な議論に着手し、OECDの作業部会に論点報告をする。これを受けOECDは4月にも電子商取引への課税に関する報告をまとめ、具体的なルールの話し合いへとステップを進める構えだ。

 現時点でG20で有力視されている案は、欧州委員会が主張する2段階によるルールづくりだ。提唱者の中心はフランスやドイツ。欧州勢は同じサービスを提供しても海外企業と国内企業で税負担が異なるのは不公平と考え、内外企業の租税負担のバランスをとるため海外企業に限って「平衡税」と呼ぶ税金を課す。

 国ごとの売上高に一定の割合で課税する手法で、OECDルールに沿って企業は19年5月にも国ごとの売上高を公表する。このデータなどを参考に各国の課税当局は平衡税を課す。これが第1段階だ。

 第2弾として早ければ20年にも、課税の仕方を抜本的に見直す。具体的には「恒久的施設」の概念をあらため、モノだけでなく、実際にネット通販を展開している国でのデータ収集量なども基準に加える案などがある。

…(中略)

 日本では海外から配信される音楽ソフトなどに15年10月から消費税を課税するようになった。ネット商取引への法人課税は積み残しており、日本政府は「全ての国に適用される国際ルールが必要」との立場。暫定的にEU案を支持する見通しだ。

 難航が予想されるのは米国との調整だ。EU案は結果としてアマゾンなど米ネット大手を狙い撃ちするかたちで、「米国第一」を掲げるトランプ米政権の反発が予想される。

…(後略)

世界中、超カネ余りで債務の山>ドル高・高金利はデフォルトの道

 債務増大

 

2月に入っての未曽有の米株価急(暴)落に引きずられて世界同時株価急落が起きましたが、その後急落の半分ほど取り戻すなど、現在株式市場は落ち着きを取り戻しつつあるようです。しかし、今回の急落劇を局地的バブルの破裂として片づけられるかどうか、まだまだ予断は許されないようです。

 

ロイター通信は次のようにベテランの米国投資家のコメントを伝えています。「…市場には、さしたる確信もないまま『パーティー』に加わろうと、インデックス・ファンドやETFなどの購入を通じて流れ込んだ大量の足の速いお金(ホットマネー)が存在し、先週は恐らくは年内により大きな事件が起きる単なる予兆にすぎないとの見方を示した」(2月18日付ロイター(*))

 

そうです。何よりも各国中央銀行の超金融緩和政策によるマネー供給が、空前のカネ余りとなり投機マネー(ホットマネー)となって、あらゆる金融市場に流れ込み、株式バブル、債券バブルとなって現れています。このバブルが立ち行かなくなりつつあることを示したのが、先々週の株急(暴)落劇でした。多分今後とも米株式市場も、そしてそれに引きずられて各国の株式市場も不安定な動きとなっていくと思われます。

 

一方、この空前のマネー供給により世界的に債務(借金)を膨らませ、とくに途上国や新興国企業のドル債務が急膨張し、グローバルなリスクとなっています(下記の昨日(19日)の日経新聞記事を参照ください)。その債務は、新興国で2兆8350億ドル(17年末、約360兆円)にも上っています。

 

今後、米国の金利上昇とそれに連動するドル高が予想されますが、この二重パンチで途上国・新興国の債務返済や借り換えが滞り、それがグローバルリスクとして顕在化する可能性あり、という訳です。実際、米金利上昇警戒で、新興国からマネーが流出に転じている状況となっているようです(2月20日日経新聞(**))。

 

こうした金融バブルを抑えるのは、まず中央銀行の超金融緩和政策を停止することです。日銀の場合、国債等を大量に購入することをやめ、出口戦略を真剣に模索しなければなりません。次に、金融取引税(FTT)を実施し、ホットマネー(投機マネー)の移動にブレーキをかけることです。FTTからの税収を国内外の貧困・格差対策に使用すれば(SDGs達成に向け)、一石二鳥にも三鳥にもなるでしょう。

 

 

【日経新聞】企業のドル債務 膨張  昨年末、世界で21兆ドル ドル高進めば新興国に打撃 

 世界の企業によるドル建ての借金が膨張している。2017年末に米国企業を除き6兆ドル(約640兆円)と10年前の2倍以上。ドル高が進むと企業の債務返済負担が増え、さらなる信用低下に見舞われる恐れがある。アジア通貨危機を教訓に新興各国は備えを強化しているが、米インフレ観測などから金融市場もドル債務のリスクを意識しつつある。…以下、省略。

 

(*)【ロイター】古参投資家が警戒、「米株の波乱はまだある」
  
(**)【日経新聞】新興国マネー流出基調 半月で76億ドル

 

★図表は「【日経新聞】企業のドル債務 膨張  昨年末、世界で21兆ドル ドル高進めば新興国に打撃 」より
 

巨額の損失発生!>5-6日の米株相場の乱高下で不可視のリスクが顕在

5日の米株式市場での暴落や6日のジェットコースターのような急落・急騰(567ドルの大幅高で引けたが)の結果、実はまったく予想していなかった金融商品(「恐怖指数」絡みの商品)で巨額の損失が発生したようです。

 

それは低ボラティリティー(相場の変動(率))に賭ける金融商品でして、下記の日経新聞によれば2つの代表的な商品で、「運用資産総額が30億ドルから2日間で1億5000万ドルに縮小」したとのこと。たった2日間で28億5000万ドル(約3100億円)が吹っ飛んだことになりますので、かの盗まれた仮想通貨NEMの580億円の5倍強にもなり、確かに巨額ではありますが、実はこんな程度ではないようです。

 

「恐怖指数」絡みの低ボラティリティーに賭ける金融商品は全体でどのくらい投資(運用)されているのかと言いますと、何と2兆ドル(約218兆円)!!余りと見積もられているとのことです(下記ブルームバーグ参照)。え? これが本当であれば、確かに日経新聞で書かれている損失よりははるかに巨額になりそうです。

 

この損失額が、実際に全体としてどの程度のものになるのか、また上記金融商品を売っていたクレディ・スイスや野村証券は取引を停止したようですが、他の金融会社はどうなのか、全体の金融市場にどのような影響を及ぼすのか等々、注視していかなければなりませんね。また、金融バブルをしぼませるには、取引に税をかけること、すなわち金融取引税が有効です。その税収をSDGs達成のために使用できれば一石二鳥ですね。

 

 

【日経新聞】「恐怖指数」絡みの商品に怖さ

…前略
この日(注:2月6日)のダウ平均の値幅は1100ドルに達した。嵐のような相場を経て、これまで見えなかったリスクも露呈した。デリバティブ(金融派生商品)を利用した金融商品が予想外の相場変動(ボラティリティー)に直面して一気に損失を出したためだ。

 

 中でもボラティリティーの激しさを示すVIX指数(通称・恐怖指数)がらみの金融商品で巨額の損失が発生した。一部投資家はVIX指数が下がると価格が上がる「インバースVIX」連動の上場投資信託(ETF)やその関連商品である上場投資証券(ETN)に投資して高収益を上げていたが、前日の相場急落で一気に損失を被った。

 

…中略
 これらの商品は、ボラティリティーが低ければ低いほど価格が上昇する。2017年を通じて「なぎ相場」が主流だった市場環境で高収益を誇った。ヘッジファンドなど相場の上下にかかわらず収益を上げることを目標にする投資家にとっては格好の投資先となった。
…後略

 

【bloomberg】元ゴールドマンのVIXトレーダー、株売り収束までに一段の痛み予想

 

【ロイター】アングル:米VIX逆張り証券の損失、個人投資家を直撃

 米国株が急変動しないことに賭ける上場投資商品(ETP)の価格が、5日の株価急落とともに急落した。複雑な金融商品にもかかわらず、最近では多くの個人投資家が手を出しており、急落によって傷を負っている。…以下、省略

ドイツ大連立協議>NGOが金融取引税でtwitterアクション!

ドイツのGroko( Große Koalition「大連立」の略)協議が4日までに合意を得るべく最終ラウンドに入っています。この動きに対し、オックスファム・ドイツは金融取引税を求めて、関係政党(3党)の指導者に対してtwitterアクションを行っています。

 

今回このアクションへの国際的なサポートを依頼するメールが届きましたので、紹介するとともに、ご協力をお願いします。

 

 

 

<オックスファム・ドイツからの依頼>

…前略…

大連立協議は今週末最終ラウンドに向けて行われていますが、この最終的な連立協定には野心的なFTT(金融取引税)を導入しその収入をグローバルな貧困と気候変動対策へ配分することを必ず含めること、このことを関係する政党に要求します。さらに、新政府が設置されたなら直ちにかつ確実にFTTが実施されるように力を入れてください!

 

残念ながら、それは(アクションを呼びかけているWEBサイトは)すべてドイツ語ですが、あなたがたが行動を取ってくれると私は確信しています。私たちは国際的な支援を受けることができればたいへんハッピーです!

 

PIA SCHWERTNER | Kampagnenkoordination Finanztransaktionssteuer

 

◎ツイッターの文面は、以下の通りのようですので、そのままツイートしてOKです。

 

「貧困緩和と気候変動対策のための強力な金融取引税のない新たなGrokoはない! 最初の100日間にあなたの約束を守ってください!」

 

 

ドイツ大連立に関する最新報道

【日経新聞】ドイツ大連立、協議大詰め 医療保険・雇用なお溝(2月3日朝刊)

 

★写真は、大連立協議の一方の当事者のシュルツSPD党首

 

ダボス会議:英国影の財務相、金融取引税など「不快なメッセージ」発言

世界の政治家や大企業経営者などのエリートたちが参加する世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)が1月26日に終了しました。このフォーラムは「世界の課題の解決を目指す会議として世界に幅広く知られ」(1月22日付日経新聞)ていると言われていますが、果たしてそうでしょうか?

 

例えば、フォーラムでは毎年のように「経済格差」をグローバルリスクとして挙げています。しかし、「…ある元中銀当局者が指摘したように、『われわれは以前、格差を是正しようとしたが、うまく行かなかった』」(1月30日付ロイター通信)と報道されているように、行き過ぎたグローバル化がますます格差を拡大し、そのことが世界中でこれまでにない排外主義と分断された社会を生み出しています。

 

このダボス会議に先立ち、国際NGOのオックスファムは毎年格差問題に対する報告書を公表していますが(下記報道を参照)、この格差拡大の進行をくっきりと浮かび上がらせています。

 

 

【朝日新聞】世界の富の8割、1%の富裕層独占 NGO報告、格差対策を呼びかけ

 

【引用】

国際NGO「オックスファム」は22日、世界で1年間に生み出された富(保有資産の増加分)のうち82%を、世界で最も豊かな上位1%が独占し、経済的に恵まれない下から半分(37億人)は財産が増えなかったとする報告書を発表した。資産の偏在が格差拡大を招いているとして、世界の指導者に対策を呼びかけた。

 オックスファムは、スイス・ダボスで23日に始まる世界経済フォーラム年次総会を前に、世界の指導者にタックスヘイブン(租税回避地)への対策や富裕層への課税強化などの取り組みを求めた。

【引用了】

 

 

ところで、このダボス会議にイギリス労働党の影の財務相であるジョン・マクドネル(John McDonnell)も招待され、彼は「グローバルエリートにとって不快なメッセージを発した」ようです。日本ではまったく報道されていませんが、その「不快なメッセージ」を紹介します。

 

【bloomberg】Labour Official Tells Davos, ‘There’s an Anger Building Out There’
労働党は公的にダボスを語る、「そこには怒りが高まっている」

 

“(大意)ここダボスでは経済成長の回復が称賛され、エリートたちは陶酔感に浸っているようだが、世界の一般大衆はその恩恵に浴することなく、「雪崩のような不満と怒り」が溜まっている。「…人々が成長を共有し、富と利益を分かち合うという根本的な新しい課題」に取組まなければならない”として、以下の5項目をマクドネルは挙げています。

 

・労働者に「実際の生活賃金」を支払い、会社の利益を労働者とシェアすること
・労働組合を認知し労働者を会社役員に任命すること
・会計事務所が税の回避に取組むのではなく、納税を奨励するための新しい「ヒポクラテスの誓い」を行うこと
・富裕層と権力者は所得税申告を公表すること
・公的サービスと国際開発プログラムに資金を提供するための金融取引に対する「ロビン・フッド」税を実施すること

 

・Paying workers a “real living wage” and allowing them to share in the profits of the companies they work for
・Recognizing trade unions and appointing workers to company boards
・A new “Hippocratic oath” for accountancy firms to tackle tax avoidance rather than encourage it
・The rich and those in power should publish their income tax returns
・A “Robin Hood” tax on financial transactions that would be used to fund public services and international development programs