G7首脳会合振り返り:資金不足、新ワクチン債と国際連帯税で

2月19日世界的なコロナ対策を主要議題にしてG7首脳会議が開催されました。成果としては、米国がWHO(国際保健機関)に復帰し、コロナ対策の国際的枠組みであるACTアクセラレータ等にも参加したことです。

 

課題は、ワクチンを含む国際的なコロナ対策費用がG7ではとうてい賄いきれないことです。首脳会議声明ではACTアクセラレータ(含むワクチン支援)にG7全体で総額75億ドル(約7900億円)拠出するとさらっと述べていますが、これではACTアクセラレータが求めている必要資金には遠く及びません。

 

●首脳会議声明とACTアクセラレータの資金不足は270億ドル

 

声明をまとめると以下の2点。

①ワクチン・治療・診断への安価かつ公平なアクセスを促す「ACTアクセラレータ」、ならびにワクチン共有の国際的枠組みCOVAX(コバックス)を支持し、G7全体で総額75億ドル(約7900億円)拠出

②将来のパンデミックに対する強力な防衛のために、財源の確保や迅速に対応できるメカニズムなどの国際的な保健条約が必要

 

ところで、WHOはACTアクセラレータ(含む、ワクチン)の予算につき、270億ドル(約2兆9000億円)不足と試算していますので、75億ドル程度ではまったく足りないのは明白です。そのためでもしょうか、COVAXは昨年の段階でワクチン接種20億回分をめざすとしていましたが、それが今年に入り1月段階では18億回分が目標となり、今回13億回分と縮小されました。

 

18億回分目標時は、92カ国の貧困国・低所得国に供給すると言っていました。これだけですと対象国の総人口の約27%への接種にしかなりません。それが今回さらに減ってしまいます。そもそも当初の目標の20億回分が少なすぎではないでしょうか。1人1回としても80億回分くらいは必要なはずです。

 

●中国とG7の「国際公共財」、同じ言葉を使っても…

 

G7会合の2日前の17日、国連安全保障理事会が開かれ、ここで国連事務総長のグテーレス氏は「世界全体でこれまでに実施されたワクチン接種のうち75%は、わずか10カ国で実施されたに過ぎない、130カ国ではまだまったく接種が行われていない」と述べ、「ワクチンの公平性は、国際社会のモラルが試される最大の課題だ」と訴えました。今日では中国製のワクチンが途上国にも入りつつあるので、接種国は数としては増えているようです。

 

その中国ですが、53の途上国・地域にワクチンを「無償で」援助を実施し始めました。習近平国家主席は中国ワクチンを「国際公共財」とすると宣言しています(2月21日付毎日新聞)。ロシアも独自に動き始めています。中国ワクチンは情報公開の面で課題があると言われ、またワクチン提供が外交政策として使われているという問題点があります。が、G7も先の首脳声明でワクチン等を「国際公共財」と言いながら、各国はワクチンナショナリズムに陥っています。その結果、COVAX等への支援は十分ではなく、従ってまだワクチンを途上国に届けていないからです。

 

ジョンソン英首相に至っては「余剰ワクチンの大半を貧困国に寄付する」(2月20日付BBC放送)と言っています。つまり自国で接種し終わって余ったら途上国に寄付する、と言っているに等しい言い方です。これは途上国を侮辱していることにならないでしょうか。

 

●どう資金不足を解消するか?新コロナワクチン債と国際連帯税で

 

もとよりワクチンはきちっと情報公開され安全性が担保され、しかも外交の道具に使わない方がずっとよいと思います。もともとACTアクセラレータとCOVAXはWHO主導により国際保健機関、そして先進国(EU、欧州6か国、日本が提案国)によって設立されたもので、この点を払しょくしているはずでした。しかし、当初米国が参加していないこともあり、先進国が十分に資金を拠出しないこと、そして各国ともワクチン争奪戦に血道をあげていたことから、大幅に遅れをとったと言えます。

 

ともあれ、G7はじめ先進国が極力早めにワクチンを貧困国・途上国に提供することですが、WHOも言うように、まず医療従事者や高齢疾患者に届けることが必要です。そのためには、高所得国の健康な若者たちへの接種分を回すことが考えられます。とくに1人当り9回分を確保しているカナダ、同7回分を確保している英国は大幅にCOVAXに提供すべきです。

 

資金不足を大急ぎで解消するには、コロナ対策でばく大な借金を負っている先進国のODA(政府開発援助)はそうそう期待できません。従って、G7は共同して10年物の2兆円規模の新(コロナ)ワクチン債(*)を金融市場で発行し、その償還について共同の国際連帯税を実施し(金融取引税やデジタルサービス税等)、それによる税収で賄う、というものです。つまり、1年以内に債券で資金を作り、2~3年以内に共同で実施する国際連帯税の税目を決定し、10年目に償還するというプロセスです。

 

先の首脳会議の声明で、「将来のパンデミックに対して財源の確保などの国際的な保健条約の必要」を謳っていますが、将来ではなく、今すぐ上記スキームを実施しつつ、共通の課税ベースを有した税制として条約化していくことが望ましいと言えます。例えば、外国為替取引に0.005%課税するとか。

 

他に問題は、ワクチンや治療薬等の特許権保護規定の問題があります。その規定の適用を除外するよう途上国やNGOは求めていますが、WTOでは結論が出ていません。ワクチン等が「国際公共財」であるとするなら、各製薬会社は極力価格を下げること(原価近くまで)が求められると思います。

 

(*)すでに「予防接種のための国際金融ファシリティ(IFFIm)」がワクチン債を発行しており、ワクチン開発資金として「感染症流行対策イノベーション連合(CEPI)」に供給されています。従って、G7が新たに債券を発行するとすれば、ACTアクセラレータに向けてのものとなりますが、分かりやすい形で「新コロナワクチン債」と名付けることにします。

 

 

コロナ・ワクチン>貧困国の命はカナダの27分の1か!?

ワクチン接種回数 

ワクチン接種回数(貧困国・高所得国)

 

新型コロナウイルスの猛威は未だ衰えず、感染抑止の切り札として期待されるのがワクチンです。が、現実は高所得国によるワクチンの争奪戦となっており、貧困・低所得国は置き去り状態にされています。重要なことは、貧困国の人々を取り残さない政治的なリーダーシップと資金不足の解消です。

 

G7首脳会議が19日「ワクチンの公平な分配」などを議題として開催されるようですが、菅首相をはじめ日本政府がそのような国際政治の場で積極的発言を行ってもらうために、そして何よりも日本の全国会議員にこの「命の格差」とも言える不条理な問題を認識してもらうために、問題提起をしていきたいと思います。

 

以下、「コロナ・ワクチン>貧困国の命はカナダの27分の1か!?」と題した拙文を書きましたのでご笑覧ください。

 

 

コロナ・ワクチン>貧困国の命はカナダの27分の1か!?

 

新型コロナウイルス(以下、コロナと略)のワクチン接種が世界的にはじまっていますが、「命の格差」とも言える人道的・道義的な問題が出てきています。それは接種が行われているのは、富裕国などほんの一部の国であり、大部分の国ではいぜんとして接種のメドが立っていないことです。

 

世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長によれば、前者は10か国で接種の4分の3を占め、後者は130か国にも上っているとのことです。この結果、同事務局長は「(各地の)高リスクの人々への接種に時間がかかるほど、ウイルスが変異したりワクチンが効かなくなったりする恐れが高まる。…すべての場所でウイルスを抑えないと(ウイルスとの闘いは)振り出しに戻る」と警告しました(2月6日付朝日新聞)。

 

実際、ブラジル北部アマゾナス州の州都マナウスで最近見つかったコロナの変異ウイルスが世界的な脅威になるかもしれないと懸念されています。「科学者は、ブラジルで確認された変異ウイルスに既存のワクチンが効かいない可能性を考える」2月11日付日経新聞 シンクタンク・ブリューゲルのジャン・ピサニフェリー氏)という事態が起きています。

 

1、貧困・低所得国と富裕国(高所得国)のワクチン確保の割合

 

ご承知のように、国際的にはWHOの呼びかけで、コロナのワクチン・治療薬・診断の開発、生産、公平なアクセスを加速させるため「ACTアクセラレータ」という国際的枠組みを作られ(日本も共同提案国)、その下にワクチンを共同購入し、途上国にも配布するために「コバックス(COVAX)」ができました。ここにはワクチン供給に期待して約190か国が参加しています(当初、米国と中国が不参加でしたが、その後両国とも参加)。

 

ところが、まだワクチンの供給が十分ではないのに争奪戦となり、上述のように富裕国がほとんどを確保してしまう有様となっています。コバックスが提供を予定している貧困・低所得国と富裕国(高所得国)のワクチン確保の割合を見てみましょう。

 

          接種総回数   1人当りの回数     備考

・貧困・低所得国   18億回    3分の1回?   92か国の人口の27%    

・欧州連合(EU)  15.9億回     3.5回

・米 国       12.1億回     3.7回

・カナダ       3.4億回     9.0回

・イギリス      3.7億回     5.5回

・日 本       3.14億回     2.5回

 

コバックス概念図

      コバックスの概念図

 

コバックスは21年中にワクチン18億回分確保を目指し、92か国(総人口の27%)の貧困・低所得国に供給する予定でいますが、これだけですと大雑把に言って3人に1人しか接種できない計算となります。一方、富裕国は日本を除いてどの国も1人当たり3回分以上で、カナダとなると9回分も確保しています。ということは、貧困・低所得国の人の「命の価値」はカナダの人の27分の1と見られても仕方がないと思います。

 

ちなみに、アフリカ連合(AU)は総人口13億人の6割に2回ずつ接種できる15億回を取得を目指していますが、メドが付いたのは2.7億回分だけのようで、コバックスを通じ6億回供給してもらう予定ですが、こちらもメドが立っていません。そういう中で、アフリカだけではありませんが、中国が53の途上国・地域に向けワクチンの無償援助を始めたとのことです(2月9日付読売新聞)。

 

2、「ACTアクセラレータ」と「コバックス」の圧倒的な資金不足

 

考えてみますと、貧困・低所得国(92か国)にとって命綱ともいえるコバックスが3人に1人にしか接種するワクチンを確保できないというのも最初から力不足を自ら露呈してしまっている、と言えます。要は圧倒的に資金がないからだ、ということだと思います。

 

WHOによればACTアクセラレータは約270億ドル(約2兆8千億円)の資金不足となっています。これに対し、国際協力の枠組みに復帰した米国が40億ドル(約4200億円)、日本が2億ドル(約208億円)拠出を決めました。EU並びに各国の動向は分かりませんが、多分合計しても100億ドルに届くかどうかでとても資金不足を解消するには程遠いと言えましょう。とするならば、コバックスの資金調達も厳しいことが予想され、貧困・低所得国でのワクチン接種3人に1人ベースが改善される見込みはありません。

 

別の方法としては、ワクチンを「国際公共財」という観点から、各メーカーに価格をぐっと安くしてもらうことです(できれば原価近くまで)。価格はいくらかと言いますと、1回分で、英アストラゼネカが1.78ユーロ(約225円)と最安で、米モデルナが18ドル(約1860円)と最も高く、いち早く販売された米ファイザーは12ユーロ(約1520円)と言われています(12月19日付時事通信)。当面利益を得ようとしない方針ということでアストラゼネカが一番安いようですので、他のメーカーもこれに合わせてくれれば、コバックスがより多くワクチン購入ができるでしょう。ただし、守秘義務が課せられているので、これが正しい価格かどうかは確証を得ることができません(ベルギーの高官が情報を漏らした)。

 

とはいえ、このまま推移するなら、貧困・低所得国は中国やインドのワクチンを頼るほか道はなくなります(中国シノバックは治験の透明性に対する懸念があると言われているが)。コバックスならびにWHOは中国などとの調整が必要と思われますが、どうなっているでしょうか。

 

3、先進国(ドナー国)は借金まみれ、今こそ国際連帯税の出番

 

先進国(ドナー国)が途上国支援を行うには国家予算からODA(政府開発援助)を通じて行いますが、2019年のODA実績合計は1,528億ドル(約16.7兆円)でした。ですから、感染症対策だけに特化すればACTアクセラレータなどの資金不足を解消することは可能です。しかし、途上国支援は医療・保健のみならず多岐に渡りますので、これまでのODA規模では限度があります。そもそもSDGs達成のための費用は途上国で2.5兆ドルが不足していると言われています。

 

一方、先進国は自国のコロナ対策でばく大な借金による財政政策を推し進め、今や昨年末時点で総額13兆8750億ドル(約1445兆円)にも達し(IMF報告)、ODAを飛躍的に増加させる余裕はないと言えます。日本も20年度の財政は総予算175.7兆円のうち新規国債が112.6兆円も占めて、借金依存度は65.1%にも及んでいます。

 

それではどうするか? コロナ禍による経済危機にもかかわらず相当の利益を上げている経済セクターが存在します。それは金融セクターとIT関連セクターです。この両セクターに、国境を超える経済活動に広く薄く課税するという国際連帯税を課して、ある意味グローバリゼーションの使用料(fee)を支払ってもらうのです。

 

具体的には、金融取引税、デジタル課税。前者は、外国為替取引、外国為替証拠金取引、株式取引、債券取引、デリバティブ取引など課税対象はいくつもあります。後者は、現在OECD/G20で議論中ですが、IT関連のみならず製薬会社等多国籍企業の利益に対する課税が対象になっています。金融取引税関係については、G20首脳会議レベルで国際公共財の創出として合意し、国際共通税として実施することが望ましいと言えます。

 

かつてフランスのシラク大統領(当時)が、最近では河野太郎外務大臣(当時)が国連や国際会議の場で倦まずたゆまず、前者はMDGs(ミレニアム開発目標)の資金として、後者はSDGs(持続可能な開発目標)のための資金として、国際連帯税の創設を主張してきました。今コロナ・パンデミックを前にしてその必要性がいっそう高まっていると言えるでしょう。

 

※写真は、ファイザー社のHPより

コロナワクチン:「蜘蛛の糸」に我先にとぶら下がる先進国

今週の日曜日(1/31)のTBSサンデーモーニングで、新型コロナウイルス(以下、コロナと略)のワクチン問題を特集として放映していましたが、コメンテーターの松原耕二氏が「ワクチンの(世界的な)争奪戦を見ていると、芥川龍之介の小説『蜘蛛の糸』(*)を思い出す。まず豊かな国々が我先にと糸にぶら下がり、でも貧しい国は糸につかまることすらできていない」、と。テレビでは、イスラエルがどんどんワクチン接種をしているのに、すぐ隣のパレスチナ系住民は一人も接種していない模様も放映されてました。

 

(*)超大まかあらすじ:お釈迦様が地獄にいる亡者の一人を助けようと極楽から糸を降ろすと、その亡者がその糸を手繰って上ってきたが、ふと下を見ると多くの亡者がその糸にしがみつき上ってきている。そこでくだんの亡者が亡者たちを振り落とそうとし、「これは俺のものだ」と叫んだとたん、ぷっつりと糸が切れて亡者は真っ逆さまに地獄に落ちていった。

 

●コロナワクチンを富裕国が囲い込む

 

コロナがパンデミックとなってから1年が過ぎ、世界で感染者がついに1億人を超え、死者も200万人を超える事態となっていますが、その脅威は未だ衰えるところを知りません。コロナ感染を防止するための強力なツールのひとつがワクチンです。これが異例のスピードで開発され、各国で接種がはじまりつつあります。

 

ところが、まだワクチンの供給が十分ではないのに争奪戦となり、富裕国がほとんどを確保してしまう有様となっています。国際NGOオックスファムによると「人口の約5倍のワクチンを調達するカナダを筆頭に先進国の多くが人口の約3倍の確保を予定し、低・中所得国では2021年末までに人口の10%未満しかワクチンを接種できない可能性となっている」と報告しています。また、英誌エコノミスト系の調査部門の報道によりますと、途上国にワクチンが行き渡るのは2023年以降にずれ込む見通し、とも報じられています(1月31日付日経新聞)。

 

●本来COVAX(コバックス)が富裕国・貧困国別なく公平に配布するはずが

 

国際社会は、昨年WHO(世界保健機関)の呼びかけで、医療体制が脆弱な低所得国等を支援するために「ACTアクセラレーター(Access to COVID-19 Tools Accelerator)」を設立し、ワクチン・治療・診断・保健システムという4つの柱を軸に対策を進めています。そのうちのワクチン関係を担っているのが「COVAX(COVID-19 Vaccines Global Access)ファシリティー」です。

 

COVAXは富裕国の資金でワクチンを共同購入し、途上国にも公平に配布しようというファシリティで、現在190か国が参加しています。が、当初ワクチン大国の米国、中国、ロシアが不参加でしたので、最初から資金不足に見舞われ、目標も2021年末までに途上国に20億回分のワクチン供給を目指すというものでした(その後米国、中国が参加することに)。

 

今年に入り、COVAXは92カ国に供給し、対象国の総人口の約27%への接種が可能という見込みを立てました。しかし、先進国を先頭に多くの国がワクチン保有国や製薬会社と個別に交渉し、ワクチン確保に躍起となってしまいました。このためCOVAXに参加している多くの途上国ではワクチンの確保や接種開始のめどが立たない状態となっています。

 

●国際社会が共同して拠出する国際連帯税方式で支援を

 

こうした憂うべき状況をもたらしている要因として、1)国際的な政治的リーダーの不在、2)COVAXを含むACTアクセラレーターへの資金の圧倒的不足、ということが挙げられます。

 

その資金不足ですが、ACTアクセラレーターの第3回会合で、「(昨年)12月14日時点で、今後数か月の緊急需要のための資金ギャップは43億ドルであり、2021年には追加で239億ドル(約2.6兆円)が必要」と試算されました。ところで、資金調達のためには、(いぜんとして)各国のODA予算からの拠出が主力となりますが、そろそろ国際社会は国単位でのバラバラな資金拠出方式から、共同して資金調達を行う仕組みを構築することが必要ではないでしょうか。

 

その理由の一つは、ドナー国となる各国も国内のコロナ対策のために多大な借金政策をしており、ODAを増加させる余力がまったくなくなっていること、もう一つはグローバル化によってばく大に儲かっている経済セクターから税またはフィー(料金)を徴収する仕組みを考える時期に来ていること、です。後者についてですが、国境を超える活動に対して税を課す国際連帯税方式で、外国為替取引やデジタル商取引等に適用できるでしょう。ちなみに、世界の為替取引量は2019年で年間約1647.5兆ドル(18.1 京円)にも上っています。ここに薄い税、例えば0.005%をかけるのです。すると9兆円の税収を得ることでき、ACTアクセラレーターの必要資金を優に賄うことができます。

 

政治的リーダーで言えば、かつて2004年当時シラク仏大統領がルーラ伯大統領とともに国際連帯税創設を国際社会に訴え、近年で言えばつい一昨年まで河野太郎外務相が国際連帯税の共同実施を国際会議の場で提案していました。現在どの国の政治リーダーも国内のコロナ対策で手一杯という状況にありますが、国連ならびにG7やG20サミットの場で、どこかの首脳が国際連帯税を提案することを期待します。そのような結束と資金提供がなければ、ワクチンを外交の道具に使おうという大国の跳梁を許すことになります。

 

●途上国を取り残してのコロナ対策は次のパンデミックを招くだけ

 

コロナ禍が「経済格差」をいっそう浮き彫りにしたと言われますが、このワクチン争奪戦での富裕国の一方的なワクチン確保状況を見ますと、グローバルな規模での「格差」を示していると言えます。こうした状況は「誰一人取り残さない」というSDGs理念に真っ向から反するものです。

 

そして、何よりも途上国を取り残してのコロナ対策は、グローバル化が進んだ今日、再びパンデミックを招くことになり、先進国の努力も水泡に帰する可能性が大きいと言えます。あらためて先進国の政治リーダーは目先の、足元だけの対策だけではなく、並行して中長期の、地球規模の対策を考えていただきたいと思います。

 

ところで、日本政府の態度はいかなるものでしょうか。昨年12月に行われた国連新型コロナ特別総会にで菅首相は次のように述べています。「日本は、その(ACTアクセラレータの)共同提案国として、ワクチンの公平なアクセスのためにCOVAXファシリティに、いち早く拠出するとともに、特許プールを通じた治療薬の供給などに取り組んでいきます」。

 

その言や良しですが、現実は日本もやはり外国産ワクチン確保の争奪戦にのめり込んでおり、途上国に対しての思いやりは二の次となっています。国際的な発言ができる首相はじめ、外務相や財務相が国連、そしてG’7やG20サミットの場において、ワクチンの公平な流通とACTアクセラレータへの資金調達のため共同して国際連帯税を創設しようと呼びかけることが期待されます。