国連国際租税協力枠組条約への付託草案、圧倒的多数で採択!

投票結果

 

昨日の国連総会第2委員会での採決結果と今後について、PSI (Public Services International)の青葉博雄さんから以下のような投稿がありましたので、紹介します。

 

【 採決結果:賛成125、反対9、棄権46 】

 

11月27日昼(日本時間同日深夜)、国連第2委員会(マクロ経済政策)において、ナイジェリア政府がアフリカグループを代表して提出した決議案(資料1参照)が賛成125、反対9、棄権46の圧倒的多数の下、採択しました。欧州連合(EU)加盟27か国すべてが棄権する中、8月の「国連国際租税協力枠組み条約への付託事項草案作成特別委員会」における議長草案への採択において反対票を投じた8か国(米国、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イスラエル、日本、韓国)に加えアルゼンチンも反対票を投じました。一方、8月の採択において棄権したシンガポールが今回、賛成票を投じました。

 

今回採択された決議は8月に「付託事項草案作成特別委員会」で採択された付託事項を承認するものです。よって、8月に採択された特別委員会議長草案(資料2参照)が正式に効力を持つ文書となったとご理解ください。日本政府は採決に先立ち、広範なコンセンサスの不在、国内資源動員(DRM)強化への意欲の欠如などを理由に反対する旨の発言を行いました。

 

今後、決議は第5委員会(国連の行財政)に送付され、予算そして事務局構成等の検討および決定が行われます。次に来年2月に開催される租税条約交渉委員会において委員会の意思決定規則が検討・決定されます。単純過半数を基本とする規則を求めている「賛成派」と採択のハードルをより高く設定したい「反対派」との間で再び論戦が繰り広げられることになるでしょう。

 

引き続きグローバルな市民社会ネットワークである”Tax Justice Workstream of the Civil Society Finance for Development Mechanism”における議論に参加しながら、「グローバル連帯税フォーラム」ほか国際租税問題に関心のあるみなさまと共に日本政府、政党、国会議員等への政策提言活動を行ってまいりますので、よろしくお願いいたします。

 

PSI (Public Services International) 東アジア事務所

代表 青葉博雄

 

※国連の投票ボードは、Xより入手

11月20日 国際租税枠組条約問題で財務省主税局へ要請行う

■国連総会第2委員会での採択迫る

 

11月20日、現在国際的に焦点となっている「国連国際租税協力に関する枠組条約」問題に関し、枠組条約と議定書策定のための交渉に入る一歩手前の、特別委員会への付託事項草案の国連総会第2委員会(経済と開発、税を審議)での採択が迫っています。つまり、ここで否決されれば枠組条約等策定は無に帰すことになります。

 

ところで、日本政府は枠組条約に関しては前向きではなく、一貫して採択に反対してきました。本年8月の特別委員会での付託事項議長草案の採択は、賛成110カ国、反対8カ国、棄権44カ国でしたが、超少数グループとなった反対8カ国の中に日本政府も入っていました(注1)。このままでは上記第2委員会での採択でも反対し国際社会で孤立するのではないかとの懸念から、要請することになりました。

 

■ 私たちの要望と財務省のコメント

 

当日、財務省主税局からは、参事官補佐(国際租税担当)の大和史明さんが対応してくれました。冒頭、加藤勝信財務大臣あての「国連国際租税協力に関する枠組条約策定についての要望書」を提出し、主旨を説明しましたが、要望内容は次の2項目です(注2/全文)。

 

1、日本政府は、国連第2委員会における国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項草案の採択にあたり賛成票を投ずること

 

2、日本政府は、「OECD/G20 BEPS包摂的枠組」における合意にこだわることなく、BEPSプロジェクトでの先進的知見を踏まえ、国連枠組での議論において主導的立場を取っていただきたいこと

 

この後ざっくばらんな意見交換となりました。財務省側のコメントと説明について簡単にまとめると次のようになります。「日本政府としてはやはり広範なコンセンサスが不足しており、国内資源動員(DRM)強化についても意欲を欠いているという認識であること。とはいえ、日本政府としては国連の議論については建設的に参加していきたいこと。また、採択については交渉事であるので、どうするとは言えないこと。さらにBEPS包摂的枠組の柱1(市場国での一定の課税権)については引き続き交渉を進める立場であること」

 

■ 日本政府・財務省は国連の場で枠組条約議論をリードすべき

 

このことに対し、私たちは次のようなコメントを付け加えました。「かつてOECDでのBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトにおいて日本の財務省が能力を発揮し議論をけん引していたという経緯があったが、BEPS包摂的枠組の、とくに柱1での行き詰まり状況からして、OECDという枠からより広い国連という枠において財務省の知見を発揮すべきではないか」

 

早ければ来週にも第2委員会において採決が行われる見通しです。その結果を皆さまにお知らせすると共に、日本政府・財務省、政党、国会議員に対し、引き続き提言活動を行ってまいります。

 

(注1)

国際租税枠組み条約に向けた付託事項草案、圧倒的多数で採択!!

(注2)

財務大臣への要望書・全文

 

COP29:グローバル連帯税で数千億ドル創出可能との訴え>モトリー首相

シンジケート

 

今月11日からアゼルバイジャンのバクーで国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP29)が開催されました。最大の焦点は、条約が拠出を義務付ける先進国から途上国への対策資金の増額です。これまで2020年までに年間約1000億ドルを拠出し、2025年まで継続することになっていますが、25年以降の支援のあり方、つまり気候資金に関する新規合同数値目標(Finance and The New Collective Quantified Goal on Climate Finance)を決定することになっています。(もう一つの焦点は、パリ協定に基づく国別の温室効果ガス削減目標(NDC)の引き上げですが、ここでは省略)

 

■ グローバル連帯税タスクフォースと日本政府の動向

 

このことにつき、先進国側は具体的な提案を行っていませんが、途上国側は年間1兆ドル以上という提案をしています(G77+中国は1.3兆ドル)。が、先進国側は1000億ドルでさえようやく拠出している現在、もう一桁上げるのは容易ではなく、交渉が難航することは必至の状況です。

 

そういう中で、「一部の指導者たちは、気候変動対策のための財源を充実させるための『革新的な』方法を模索し続けている。バルバドスのミア・モトリー首相は火曜日(12日)の演説で、海運会社、航空会社、債券、株式に課税し、化石燃料の採掘に課税すれば、数千億ドルの資金を調達できる可能性があると指摘した。フランス、スペイン、ケニア、セネガル、コロンビアを含む14カ国と欧州委員会、アフリカ連合は、『連帯税連合』を通じてこれらのアイデアをより具体化しようとしている」(11月13日付Climate Home News)と伝えられています。

 

連帯税連合とは、既報の「開発・気候・自然のために国際課税に関するタスクフォース」改め、フランス、バルバドス、ケニアを共同議長とした「グローバル連帯税タスクフォース:人類と地球のために」(The Global Solidarity Levies Task Force: For People and the Planet)のことです。これも既報通り、同タスクフォース(以下、GSLTFと略)は昨年6月にパリで開催された「新グローバル金融協定サミット」を機として設立されたものですが、当フォーラム並びに国際連帯税創を求める議員連盟はGSLTFに日本政府=外務省としても参加するように要請してきました(注1)。しかし、外務省は動きませんでした。

 

■ 国際租税や気候ファイナンスの専門家など錚々たるメンバーでTF報告書作成

 

さて、モトリー首相の演説は、12日のGSLTF共同議長の国家元首または政府首脳会議の場で発したものですが、報告書「連帯を拡大する: グローバル連帯税の進捗(Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies)」(注2)の内容を述べたものです。まずこの報告書を作成した専門家や国際機関のメンバーを見ますと、国際租税や気候ファイナンスの専門家など、実に錚々たる顔ぶれが並んでいます。

 

OECD租税政策・行政センター前所長のパスカル・サンタマン(OECD・BEPSプロジェクトの責任者であった)、国連租税条約特別委員会議長のラミー・モハマド(現在最もホットな国際租税問題を主導している)、アフリカ租税行政フォーラム事務局長のLogan Wort(アフリカでのIllicit Financial Flows対策を主導)、気候ファイナンスに関するハイレベル専門家グループ共同議長のVera Songweなど(敬称略)。

 

◎連帯税のオプションを見てみましょう。

 

1)航空税:検討されている政策オプションには、灯油燃料税(プライベートジェット燃料の協調課税を含む)や、高級航空券や頻繁な飛行機利用者への航空券課税など

 

2)化石燃料課税:化石燃料の採掘、臨時利益、多国籍企業の最低法人税率の引き上げなど

 

3)金融取引税:選択肢には、株式0.1%、債券0.1%、デリバティブ0.01%の税率を想定

 

4)海上輸送課税:「well-to-wake」課税(燃料を生産し、輸送し、船上で使用するまでのプロセス全体と、そこで発生するすべての排出物への課税)をベースとする

 

5)プラスチック生産課税:一次ポリマー生産に対する課税

 

6)暗号通貨課税:暗号通貨マイニングのエネルギー需要が高いことを考慮し課税

 

7)超富裕層個人への課税:億万長者に対する協調的な最低2%の課税

 

TFは当面1)~4)をメイン課税分野とし、5)~7)をさらに検討していくようです。なお、詳しい分析については、今後のメールで報告しますが、オピニオン電子メディア Project Syndicateでも、Emmanuel Macron、Mia Amor Mottley, and William Rutoの連名で “The Case for Solidarity Levies”というテーマで寄稿されています(注3)。

 

いずれにせよ日本政府を含む先進国側は、財政がたいへん厳しい中にあって、新規合同数値目標を大きく上積みするためにグローバル連帯税を真剣に検討していかなければならないでしょう。

 

(注1)
国際連帯税議連、上川外務大臣要請を行う>国際課税TF参加を要望
(注2)
Scaling Solidarity: Progress on Global Solidarity Levies
(注3)
The Case for Solidarity Levies

 

※イラストは、Project Syndicate より

財務省への質問:BEPS包摂的枠組、DST課税、国際租税枠組条約について

11月7日第83回財務省・NGO定期協議(*)で、当フォーラムは、3項目につき質問を出しました。詳細は下記提出文書を見ていただきますが、まず骨子を述べます。

 

【質問骨子&足下でのアマゾン等巨大IT企業の租税回避】

 

〇 BEPS包摂的枠組みの「市場国への新たな課税権の配分」(柱1)につき、今後実施できる可能性は厳しいものがある。実施が伸びれば伸びるほど米国等の巨大IT企業からの法人税を徴税できないか、または過少納税となっている現状を放置することになる。

 

〇 これは税制上の不公正、ビジネス上の不平等を継続することになり、これを是正するためにデジタルサービス課税(DST)を準備すべきではないか。実際、アマゾン・ドットコムは日本で3兆6663億円も売り上げており(2023年)、過少納税のまま。他のIT企業も同様である。

 

〇 グローバル化・デジタル化経済における包括的でSDGs理念に相応しいグローバル税制を確立するためにも、またDST実施への米国からの制裁関税を回避するためにも、日本政府は国際租税枠組条約を推進すべきではないか。今後行われる国連総会での付託事項草案の採決に賛同し、議論をけん引すべきである。

 

【財務省への質問文書】

 

テーマ:BEPS包摂的枠組み(IF)における柱1と柱2の進行状況、デジタルサービス課税の新設、国連国際租税協力に関する枠組条約について

 

1)BEPS包摂的枠組み(IF)における柱1と柱2の進行状況等についての質問

柱1の「市場国への新たな課税権の配分」については、2024年6月までに多数国間条約の署名、2025年発効という予定でしたが延期されています。今後の展望をどう見ていますでしょうか。

 

柱2の「グローバル・ミニマム課税」については、我が国でも2023年度税制改正で法制化され、本年4月以降より適用されていますが、今年度の税収はいくらほどになるでしょうか。また、その税収は海外でビズネスを展開している多国籍企業からの税収となりますので、税収の一部をSDGs達成のための革新的資金源として徴収できませんでしょうか。

 

2)デジタルサービス課税の新設についての質問

これは上記IFの柱1との関連となりますが、もし多数国間条約が不成立となった場合、次の国際交渉-合意までにかなりの時間を要することが予想されます。そうなれば日本においてビジネス展開する米国等の巨大IT企業からの税金が徴収できないか、過少にしか徴収できない状況が続き、これは「価値創造の場で税金を払うべき」というBEPSプロジェクトの原則に反することであり、ビジネス上での公平な競争を妨げるものです。

 

従って、日本政府としては欧州各国やインド他多数の国が実施している(実施を準備している)デジタルサービス課税を準備し、早期に実施すべきではないでしょうか。また、この税も海外でビズネスを展開している多国籍企業からの税収となりますので、税収の一部をSDGs達成のための革新的資金源として徴収すべきではないでしょうか。

 

3)国連国際租税協力に関する枠組条約についての質問

BEPSプロジェクト、就中上記IFは100年ぶりの国際課税制度の改変という画期的内容を含むものでしたが、これを主導してきたOECD(経済協力開発機構)プロセスでは行き詰まっています。これに対し、途上国側からは国連を軸とした国際租税制度を構築すべきとして、「国際租税協力に関する枠組条約」をめざす動きが起き、昨年国際租税協力枠組条約ToR起草特別委員会が組織されました。そして、先の8月16日ToR案が採決され、賛成110、反対8、棄権44で可決されました。この反対8の中に日本が含まれ、財務省主税局総務課主税企画官の原田浩気さんが反対意見を述べています。また、棄権44にはEU加盟国(OECD加盟国でもある)が多く含まれていますが、9月の国連未来サミット並びに一般討論演説においてノルウェー政府首相が建設的に取り組むと発言しています。

 

今後の予定ですが、国連総会において年内に「付託事項」が決定し、同条約および議定書の交渉委員会を支える事務局の設置が決まり、2025年から2027年にかけて同条約および議定書の中身が議論されていきます。

 

そこで質問です。日本政府は、①未来サミットの『未来のための協定』で謳われている「国際租税枠組条約策定プロセスに建設的に関与する」という提言、②先の10月23-24日開催されたG20 財務大臣・中央銀行総裁会議での「国連における、国際租税協力に関する国連枠組条約とその議定書の策定に関する建設的な議論を引き続き奨励する」という声明に逆行して、年内に開催される「付託事項」案件に関する国連総会で再び三たび反対の立場を表明するのでしょうか。むしろ日本政府においては、OECD/BEPSプロジェクトをけん引してきたという経緯を踏まえ、国連における議論につき積極的に前に進める役割を担うべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 

(*)財務省・NGO定期協議は「環境・持続社会」研究センター(JACSES)が事務局を担い、1997年から開催され、27年目の今回で83回を数えています。詳細は、JACSESのwebサイトをご覧ください。