マクロン大統領、金融取引税に向け再起動>公的援助資金として

フランスのマクロン大統領は、9月26日パリのソルボンヌ大学で「主権を有する、結束した、民主的なヨーロッパのためのイニシアティブ」と題する「欧州改革プロジェクト」を発表しました。

 

そのプロジェクトのひとつとして、欧州金融取引税(FTT)を再起動させたいと言明。しかも、これまで(欧州全体での導入が無理だったため「強化された協力」という手続きで)有志国10カ国の先行導入を目指して協議してきましたが、今回のマクロン提案はBrexitした英国を含む28カ国での導入を目指す、というものです。

 

その目的については、アフリカ開発支援など“European public aid”(欧州公的援助)のためとしています。ご承知のように、2011年の欧州委員会指令案ならびにその後の10カ国導入案での目的は、財政を増やすためでした(前者は欧州全体の財政、後者は各国財政)。

 

詳細は、EURACTIVの記事をご覧ください。同案は、しかし前途が厳しいこと(総選挙後のドイツ・メルケル政権の右傾化の可能性などから)なども書かれています。

 

【EURACTIV】Macron relaunches financial transaction tax project, including the UK

 

 

サンタマンOECD局長講演会「BEPSプロジェクト- 進捗と課題」

OECDやG20はアップルなど多国籍企業の税逃れを防止すべくBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを開始しています。進捗状況と今後の課題について、その中心的役割を果たしているサンタマンOECD租税センター局長からじっくりお話を聞きたいと思います。

 

 

        「BEPSプロジェクト - 進捗と課題」

       講師:パスカル・サンタマン氏(OECD租税センター局長)

 

 日頃のご活躍に心より敬意を表します。パナマ文書が公開されて約1年半が経過しましたが、大企業や富裕者によるタックスヘイブン(租税回避地)を利用した税逃れの仕組みはいまも変りません。

 

 一部の大企業や富裕層が税逃れを図れば、もっぱら課税が一般市民に押し付けられることになり、公正であるべき税制を歪めてしまいます。また社会保障や教育など公共支出に必要な財源を奪い、財政の基盤を危うくしています。

 

 OECD(経済協力開発機構)やG20諸国は、アップルやスターバックスなど多国籍企業による税逃れに歯止めをかけるために、BEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトを開始し、一昨年秋に最終報告書を発表しました。現在、各国はその内容に沿って、国内法の改正や租税条約の改定に取り組んでいるところです。

 

 BEPS報告書の内容はあまり知られていませんが、私たちの生活に密接なかかわりのある問題であり、政府や企業任せにするのではなく、私たち市民がその内容や意義を理解し、監視していく必要があります。

 

 この度、講師としてお招きしたパスカル・サンタマンさんは、OECDの租税センター局長で、BEPSプロジェクトを推進してきた中心人物です。サンタマンさんはこのプロジェクトを成功させるためには市民運動の支えが不可欠と考えています。この機会にBEPSプロジェクトについて学び、ともに考えましょう。ご多忙とは存じますがぜひご参加くださるよう願います。

 

                                                  記
◎日 時: 2017年10月4日(水) 午前10時~11時30分
◎場 所: 参議院議員会館  B104会議室
◎主 催: タックス・ジャスティス・ネットワーク・ジャパン(TJN―Japan)
◎後 援: グローバル連帯税フォーラム、公正な税制を求める市民連絡会、民間税制調査会

◎申込み: info@isl-forum.jp から、お名前、所属(あれば)、ならびに「サンタマン氏講演会参加希望」とお書きの上、お申込みください。

  ※参加希望者は午前9時50分までに参議院会館ロビーにお集まり下さい。
  ※会場で通訳代として500円を徴収させていただきます(逐次通訳が入ります)。

【連絡先】 携帯電話 090-3598-3251 (田中)

 

◆講師紹介:
Pascal Saint-Amans(パスカル・サンタマン)
1996年からフランス財務省で税務畑を歩む。2007年からOECDで租税回避対策などに携わる。12年から現職、48歳。

 

◆チラシもご利用ください ⇒ PDF

15日観光庁検討委員会>出国税と航空券連帯税の「受益と負担」

観光庁(国土交通省)は15日、国内の地方の観光施設整備などに使う財源を確保するための有識者検討委員会を開催しました。検討委員会には、次の3案が提示されたようです。「▽出入国者(出国税など)▽航空機利用者(航空旅客税など)▽宿泊施設の利用者(宿泊税など)」(毎日新聞)。が、観光庁側の本心は出国税であることは間違いありません。

 

●国土交通省の二枚舌

 

これまで国交省は、外務省から新設要望として9年間出し続けている航空券連帯税(以下、連帯税)につき「観光客の減少が予想される」などとして反対してきました。出国する国際線航空から徴税するという仕組みにおいては、連帯税も出国税も変わりません(当然使い道が違ってきます)。連帯税で客が減少するなら、出国税でも減少するはずですが、そのことは不問にしています。これこそ二枚舌ではないでしょうか。

 

●出国税は受益と負担の乖離が大きすぎる

 

以前にも書きましたように、一応観光庁側は「受益と負担」との関係を気にしているようですが、受益する外国人観光客だけに課税すれば「内外無差別原則」(WTOサービス貿易など)に反しますし、出国する日本人にも課税するとすれば受益はなく負担だけとなってしまいます。また、訪日外国人もすべて観光客ではなくビジネス客もいますが、こちらも受益なしです。

 

また東京新聞では次のような指摘がなされています。

 

検討会で座長の山内弘隆・一橋大大学院教授は「財源的な裏付けが観光の持続的な発展につながる」と述べた。ただ、使途は明確に示されておらず、中部地方の観光地の自治体関係者は「もともと外国人観光客を受け入れるノウハウや人材が足りない市町村は、予算を有効に使えないのではないか」と話す。「観光立国」を名目に集めた税金が、地方の効果の薄い施策や公共事業に投じられる懸念も残っている。

 

ところで、座長の山内教授ですが、20109月に開催された政府税制調査会の国際課税小委員会において有識者として出席し、「航空券連帯税により、航空利用者の負担とすることについては、受益と負担の関係が不明確」として批判的見解を述べていました。出国税は「受益と負担の関係が明確だ」とぜひ証明していただきたいですね。

【山内教授】航空券連帯税について

 

●航空券連帯税に関する受益と負担の関係について

 

航空券連帯税に関する受益と負担の関係は、ちょうどODAのそれと同じです。ODA資金は国民からの税金から拠出されますので、負担者は日本の国民です。一方、ODA資金を受け取りそれを貧困対策や基礎教育関係などに使うのは途上国です。つまり、受益者は途上国の国民ということになります。

 

え? ではODAも受益と負担との関係が乖離しているではないか、と思われるかもしれません。しかし、「情けは人のためならず」ということわざにもあるように、それなりに裕福な国民が困窮する国民を助けることは、まわりまわってやがて逆の関係になることもあるのです。実際、先の東日本大震災で、ハイチはじめ世界の最も貧しい国々からも支援の申し込みが寄せられました。それはともかく、困っている隣人を助けることは、それが国同士の関係においても必要なことであり、(貧困国で多発している)民族対立や地域紛争を未然に防ぐことができるのです。そういう意味で、ODAは直接的には受益と負担との関係は薄いものの、間接的にその関係は濃いものとなっていきます。

 

話を航空券連帯税に戻しまして、負担するのは飛行機の国際線を利用する客で(以下、利用者と略)、受益するのは途上国の国民です。利用者には直接受益はないものの、途上国の貧困や感染症対策などグローバルな課題の解決に資することになり、上記のODAのように間接的ながら利用者にも受益が及びます。

 

さらに航空券連帯税はそれにとどまりません。利用客は地球規模の航空網の発達というグローバル化の恩恵を受けていますが、反面、航空網の発達は感染症(デング熱やジカ熱など)のパンデミック的な拡大、温室効果ガスの大量排出という負の影響をもたらしています。これを改善するにはコストがかかりますが、今日利用者はそのコストを支払っていません。この負のコストを支払ってもらうことは実に理にかなっていると思います。

 

ところで、グローバル化の恩恵を受けているのは、国境を超えて経済活動を行っている航空、船舶、電子、金融、貿易などです。ですから、国際(グローバル)連帯税は航空券のみならず、輸送税、電子商取引税、金融取引税、多国籍企業税などを射程に入れて導入を図っていきたいと考えています。

18年度税制改正要望での「出国税」と「航空券連帯税」

(1)国交省、18年度税制改正(新設)でいわゆる「出国税」を要望

 

先に外務省が18年(平成30年)度税制改正(新設)で引き続き「国際連帯(貢献)税」を要望したことをお知らせしましたが、国土交通省は『次世代の観光立国実現のための財源の検討』というきわめて漠然とした税制を要望しています(下記参照)。この財源ですが、マスコミでも報道されていますように、いわゆる「出国税」であることは間違いありません。

 

「出国税」とすれば、日本から飛行機や船舶で出国する人たちの運賃(航空券や船舶券)に税を課すことになります。飛行機ですと国際線を利用する人が税を払うことになりますが、この仕組みは航空券連帯税と同じです。

 

(2)国交省は航空券連帯税に反対していながら、出国税を要望するのはおかしくないか?

 

国交省は航空業界とともに、この間ずっと航空券連帯税に反対してきました。その理由は、「観光立国として頑張ろうとしているのに、航空券に税がかかると観光客が減少してしまう」というものでした。ところが、出国税もやはり航空券に税がかかることになりますので、本来なら反対となるはずですが。航空券連帯税だと観光客は減るが、出国税だと観光客は減らないとでもいうのでしょうか。まったくのご都合主義といえるでしょう。

 

(3)出国税は誰に課税するのか? 受益と負担の関係は?

 

この国交省の要望は、漠としていて具体的な税目も課税方法も税収もいっさい書かれていませんが、メディア報道等によれば、航空機や船で出国する旅行者をターゲットにした出国税を想定しています。

 

そこでまず課税対象の問題が起きますが、要望では「観光立国の受益者の負担による」と書かれています。しかし、「観光立国の受益者」とは誰なのか? よく分からない定義ですが、報道などを読むとどうやら訪日する外国人観光客のようです。したがって、課税対象は外国人観光客となります。

 

するといろいろな問題が起きます。ひとつは、出国日本人の扱いです。受益者定義からすれば、出国日本人は課税対象にはならないはずですが、そうなれば、①徴税システムが煩雑になる、②WTOサービス貿易に違反する、という問題が起きそうです。①ですと、例えば同じJALの飛行機に乗っても、税を払う人(外国人)と払わない人(日本人)が出てきますので、JAL側は分けて税務当局に報告し、徴税をして納入しなければなりません。また、②のWTO違反とは「運送サービスの越境取引での差別」の問題(注)につながってくると思います。したがって、外国(の政府や航空会社・旅行会社・旅行客)から相当反発されるのではないでしょうか。

 

(注)「サービスの貿易」とは何か 

 

実際、出国税のある香港やオーストラリアでは「課税対象:香港(オーストラリア)から出発する旅客」となっており、外国人と内国人を区別していません。

 

さらに、要望内容では「受益と負担の適正なあり方…を勘案しつつ」と言っていますが、次のようなフリーライダーが現われてきます。つまり、負担しないが受益する人たちです。国内の日本人旅行者や日本人相手の国内旅行業者、それと観光地の地元の土産物屋やホテル業など、です。

 

(4)観光資源だけでなく、地球規模課題を包含した「出国税」を

 

国交省が出国税を要望するということは、これまで「航空券税のような税制は観光立国を目指すという政策に逆行する、観光客が減少する」と言ってきたことを翻した、というように解釈してもよいでしょう。しかし。観光資源の財政のための出国税というだけでは、上記のような受益と負担問題もあり、きわめて課税根拠が弱いと言えます。

 

本来、出国税であろうが航空券連帯税であろうが、日本政府の課税権が及ばない(したがって、一般消費税が課せられない)国際線航空へ課税することになり、その行為は日本政府が超国家の肩代わりとして行うことになるという性格を持ちます。それ故に、税収も日本国内の政策の財源にするのではなく、超国家的(グローバルな)課題の財源にすべき、というのが「航空運賃への国際人道税」を提唱した金子宏・東京大学名誉教授でした(注)。

 

(注)「人道支援の税制創設を 国際運輸に定率で」(日本経済新聞)

 

実際、グローバルな課題は、貧困・飢餓、感染症、テロや難民、気候変動等枚挙にいとまがなく、したがってその財源もいくらあってもありすぎることはありません(というか、圧倒的に不足している)。

 

以上から、出国税もグローバルな課題の財源とすることも内包しつつ(とくに航空網など国際交通の発達は感染症のパンデミック的拡大の危険性がありそれへの対処が求められている)、観光資源のための財源としても考慮する、ということも考えられるのではないでしょうか。これを一言でいえば、「国際貢献と日本文化・観光に関する出国税」の創出となりましょうか。

 

「国際航空運賃に対する課税は国家の領土主権の外で行われる消費行為に対する課税であるから、その税収はこれを徴収した国家の歳入とされるべきではなく、国際社会のために使うべきである」(金子宏 同上)。

 

 

 

平成30年度税制改正要望(国土交通省)

 

◎制度名:次世代の観光立国実現のための財源の検討 (新設)

 

◎要望の内容:
増加する観光需要に対して高次元で観光施策を実行するために必要となる国の財源の確保策について、受益と負担の適正なあり方や訪日旅行需要への影響を勘案しつつ、諸外国の取組も参考に検討を行う。
 

以下、省略

 

18年度税制改正要望>外務省、9年連続「国際連帯税」を新設要望

2018年度(平成30年度)税制改正要望が8月31日締め切られましたが、外務省は9年連続して「国際連帯税(国際貢献税)」を新設要望しました(下記、外務省要望事項参照)。今回の特徴としては、持続可能な開発目標(SDGs)の推進という文脈の中から革新的資金メカニズムの必要が語られ、国際連帯税(国際貢献税)を要望するというもので、これまでの要望内容に太い線が入ったということで評価することができます。

 

しかし、問題は国際連帯税の中のどの税制を要求するか、です。が、外務省は事例として航空券連帯税と金融取引税を挙げているだけで、この税を新設したいという具体性に欠けており、その分迫力不足であることは否めません。

 

ともあれ、私たちは具体的に航空券連帯税の実現を第一義に(次のステップは金融取引税)、次の舞台は与党税制調査会での議論の場となりますので、ここをターゲットにロビングを強化していきます。同時に、国際連帯税創設を求める議員連盟とともに、官邸に向けての申し入れ等を行っていきたいと考えています。どうぞご支援、ご協力をお願いいたします。

 

 

◆外務省 平成 30年度税制改正 要望事項

 

[制度名]:国際協力を使途とする資金を調達するための税制度の新設
[税 目]:国際連帯税(国際貢献税)
[要望内容]:…前・中略… 以上を踏まえて,以下のとおり要望する。①と②は省略。
③ 課税方法として,我が国としてどのような方式を導入することが適当かについては,【持続可能な開発目標(SDGs)の推進等に係る我が国の取組や開発アジェンダを巡る国際潮流及び国際連帯税(国際貢献税に係る】国際的な取組の進展状況を踏まえつつ検討する。
 ※【 】内は、昨年度の要望書に加えられた文章

 

外務省「平成 30年度税制改正 要望事項」の全文

 

 

◎写真は、主に航空券連帯税からの収入で感染症の治療薬を提供しているユニットエイド(国際医薬品購入ファシリティ)による、サヘル地域での子供たちのマラリア対策への支援の動画の一部です。
……
サヘル地域では2500万人の子供たちが暮らしています。ここは季節ともなればマラリアの恐怖が押し寄せます。 世界保健機関(WHO)は効果的マラリア対策として「季節性マラリアの科学的予防(SMC)」を推奨しています。2016年には約1200万人の子供たちがSMCで守られました。そのうち640万人はユニットエイド出資のACCESS-SMCプロジェクトによるもの。プロジェクトの実施は マラリア・コンソーシアムが カトリック・リリーフ・サービスと共に担当しています。

 

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