河野太郎議員、新刊『日本を前に進める』で「国際連帯税」を記述

 河野本

 

河野太郎議員の最新本、『日本を前に進める』(PHP新書)が27日に発売されました。この本の出版の意図は、今後の彼の政治活動の指針とするためのものではありますが、時期的に自民党の総裁選挙と衆議院選挙が近づいていることから、彼が総理になるための政治信条のための書とも言えるようです。

 

ところで、この本に対する当方の関心は、河野氏が外務大臣時代(2017年8月~19年9月)の後半に彼の政策の目玉としていた国際連帯税について、現在どのように考え記述しているかでした。

 

それは期待に反せずしっかりと述べられていました。「第三章 新しい国際秩序にどう対処するのか――安全保障・外交戦略」の「何のためのODAか」という箇所で(P104~105)。その記述要旨を挙げてみます。

 

【記述の要旨】

 

SDGsを達成するためには年間2.5兆ドルもの資金が不足している。ODAだけではとうていギャップを埋められない。グローバリゼーションの光が当たっている場所から手を差し伸べるべき。例えば、世界中の莫大な為替取引に0.0001%くらいの「国際連帯税」をかけ、その税収を直接国際機関に入れ、その国際機関が緊急の人道支援を行う。

 

外務大臣時代この課題を議論してもらうための有識者会議を立ち上げた。また国際的に議論するため「開発のための革新的資金資金調達リーディング・グループ」の議長国に就任し、国際社会における議論をリードした。

 

このように記述内容は外務大臣時代に主張していたこととまったく同じと言えます。当方としては国際連帯税を実現するための具体的方策などについて、じっくりと河野氏と話し合いところですが、自民党総裁選挙後の内閣改造が行われてからでしょうか。ひょっとして彼が総裁に立候補するかもしれず、そうすれば「次の総理にふさわしい人」という世論調査で1位になっている人ですから、総理になっているかもしれません。もっともその後になるであろう衆議院選挙で現与党が過半数を失うことも考えられますが、その時は国際連帯税創設を求める議員連盟の重要役員に就いていただきましょう。

 

以下、河野本の目次の紹介です。

 

【日本を前に進める】(PHP新書)

目次

第一章 政治家・河野太郎の原点

第二章 父と私――生体肝移植をめぐって

第三章 新しい国際秩序にどう対処するのか――安全保障・外交戦略

第四章 防災4.0

第五章 エネルギー革命を起爆剤に

第六章 国民にわかる社会保障

第七章 必要とされる教育を

第八章 温もりを大切にするデジタル化

 

※左上写真は、「国際連帯税シンポジウム2019」(2019年7月)で学生から要請文を受け取る河野太郎外務大臣(当時)

金融取引税はCOVID-19により国際法人税改革の次に浮上か⁉

●COVID-19の猛威とともに財源として金融取引税(FTT)が注目さる

 

COVID-19(新型コロナウイルス、以下コロナと略)が猛威を振るいはじめた昨年から、どの国も医療や事業支援など莫大な対策費を余儀なくされ、赤字国債(債券)を大量発行しました。そして問題はそのような赤字財政をどうファイナンスしていくかということで、そのリソースの有力なツールとして金融取引税(FTT:Financial Transaction Tax)が挙げられ、議論されていました。

 

日本でも前年度には60兆円もの赤字国債を発行し補正予算を組みましたが、このままでは財政の持続可能性を大きく損なってしまう恐れも生じてきています。これに対し、現在政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会で活躍されている小林慶一郎氏(東京財団政策研究所)など学者やエコノミストの一部から財政立て直しのため世界的規模での金融取引税(またはトービン税)実施の主張もされました。

 

世界的には、欧州連合(EU)の2021年前期議長国であったポルトガルや米国のバーニー・サンダース上院議員らのFTT実施に向けての動きがありましたが、実現に至っていません。もっともこれらの動きは主に国内政策への資金動員という性格のものですが、課税対象や税収の多寡いかんによっては途上国支援のための国際連帯税的な要素を十分持つことができます。例えば、G7など有力国で外国為替取引(通貨取引)へ共同で課税できれば、すぐれて国際公共財の資金源になります。

 

●ITR誌でのFTT小論の要旨

 

ITR(International Tax Review)誌に『金融取引税は反対がありながらもCOVID-19により、その可能性が高まっている』と題してFTTに関する現状と今後の展望について興味深い小論が載っていましたので、紹介します。以下、小論の要旨です。

 

1)世界的にコロナ禍対策による財政立て直しのために金融取引税(FTT)を求める声は高まっている

 

2)実際、FTTの中の株式取引税についてはフランス、イタリアはじめ相当の国で行われており、その実施に困難性はない

 

3)が、FTTはOECDやG20のような組織にとって優先順位は低いとのこと、現在の国際法人税のルール改革が優先されている。しかも、依然としてグローバル企業の反対も強い

 

4)とはいえ、「コロナにより必要になった収入を求める政府の窮状はこの税を採択することで局面が変わるだろう…(今のところ)EUでさえもコンセンサスを得る事は大変だろうが、個々の国々から変化を起こせるだろう」

 

●ITR誌でのFTT小論の全文(日本語・英語)

 

金融取引税は反対がありながらもCOVID-19により、その可能性が高まっている

FTTs more likely due to COVID-19 although objections remain

2021年8月18日 By Alice Jones

 

~各国政府はパンデミックの代償への支払策を探し求めており、金融取引税(FTT)を求める声は高まっている。しかし、論点が依然として残っている。~

 

税務専門家がITRに語った所によると、トービン税として知られている金融取引税(FTT)はCOVID19により失った収入を取り戻す政府の計画の一環として、今後数年間でその可能性が高まってくる。EUが国家間レベルでの課税を協議している間、スペインなど個々の国々は単独で行動をとってきた。

 

「FTTは長い長い間、浮き沈みを繰り返しながらやってきたが、今後目にする機会が多くなるかもしれない。」と税務・財務・会計のフリーランスコンサルタントであるJohn Bush氏は語っている。

(以下省略、続きはこちらをご覧ください

国際連帯税に関するアンケート結果(第1回)

ワクチン接種

 

●いっそう拡大する高所得国と低所得国とのワクチン格差

 

WHOは4日、コロナワクチンの3回目の接種につき、低所得国等でワクチン不足から9月末まで中止すべきと見解を出しました。実際、人口1人当たりのワクチン購入量は、カナダ10回強、英国8回などですが、アフリカ連合はわずか0.36回という状況です(8月5日付日経新聞)。しかし、高所得国はWHOの見解に構わず接種を行おうとしています。

 

低所得国などの支援への圧倒的な資金不足と特許の壁がグローバルなワクチン格差を招いています。前者の役割を担おうというのが国際連帯税であり、その実現が望まれるところです。

 

●国際連帯税に関するアンケートの結果

 

さて、先日「国際連帯税に関するアンケート」をお願いしたところ、386人からのアクセスがありまして、具体的な回答を38人の方からいただきました。まことにありがとうございます。みなさまの貴重なご意見、アイデアについては今後の国際連帯税活動の参考にさせていただきます。

 

なお、今回アンケート結果を第1回としたのは、これからもどしどしアンケートを実施し、みなさんのご意見等を聞いていこうと思っています。以下、結果についてご報告しますので、よろしくお願いします。

 

【Q1】国際連帯税に賛成ですか? 

 

・賛成 81.6% ・反対 5.3% ・どちらでもない 13.2%

 

【Q2】賛成/反対/どちらでもないの理由は?

 

1)主な賛成理由:

 

①不勉強なのですが…、気候危機にせよパンデミックにせよ、先進国だけで解決できる問題ではありません。そもそも先進国がその拡大により多くの責任がある事だと思います。先進国のリーダーシップや技術移転、資金援助のような上から目線の対策ではなく、フラットな関係で共に問題に取り組むためには国際連帯税のフレームがいいのではないかと考えました。

 

②国際間取引には国際的な目的税をかけるのが順当であり、また実態経済とかけはなれた自動高速投機の抑制にもなる。加えて、国境を越えた問題を解決するには国家政府を越えた地球政府機関の独自財源が必要だと考えるため。

 

③グローバルな問題を解決する上で、ODA資金やその亜種では、国の意向が強く働き過ぎるし、約束した拠出を守らない政府が多数存在するので、資金規模不安定となる。民間資金では利益に直結しにくい分野への投資は期待できない。したがって、旧来の公私の資金に依存しない新しい資金メカニズムが必要であり、国際連帯税はその可能性を有している。

 

④グローバルな課題の解決において、先進国の国際政治上のその時々の思惑に左右されることなく、持続的に資金が確保できる方策が必要であるため。

 

⑤炭素税などは国単位でも行っているところがありますが、まだまだグローバルには展開できていないのが現状ですし、為替税でケア階級の人にユニバーサルベーシックインカムを導入する一端を担うことを期待しております。

 

⑥各国の拠出金だけでは不測の事態に対応できない。実際、コロナ対応ですら失敗の連続だった。近代的な国民国家の枠組みにもそろそろ限界が来たのではないか、と改めて考えさせられた。二十一世紀、今こそ、世界的な視野を持ち、国際的な税の導入をすべきだと思う。

 

2)主な反対理由:

 

①意図は賛成できますが,徴収手段の構築が難しいと思います。

 

②学問的にまだ定まっていないから

 

③今時期尚早

 

【Q3】あなたの性別は?

 

・男性 65.8% ・女性 28.9% ・その他 5.3%

 

【Q4】あなたの年代は?

 

・10~20代 7.9% ・30~40代 34.2% ・50~60代 39.5% ・70代以上 18.4%

 

【Q5】主なアイデア・ご意見について

 

①賛同するNGO・NPOの世界的合流を通じ、国際連帯税の根拠となる国際条約成立の実現を目指し、取組みをより一層強化する。

 

②反対の立場に立ち得るステークホルダーの中から理解者や協力者を得て、幅広く捲き込んでいくことが、強硬な反対意見へのプレッシャーになっていく。

 

③炭素税、武器取引税、感染予防協力税、児童労働税など、SDGs問題解決のための課税を検討する。

 

 ④核保有国への核兵器開発を止める平和分担税など、無駄な軍事費を地球環境問題などに活かしていく。それには、核兵器禁止条約を国連加盟国に批准を求める運動を強化していく。

 

⑤まずは学問的な知見を国内で増やすことが肝要。

 

⑥中学校の道徳や自由研究、高校で言うところの総合的な学習に取り上げられるレベルを目指す。

 

⑦アイデアとしては、若者に訴え、世論を動かす為には、国際連帯税についてYouTubeなどに投稿する。

 

⑧まずは、先般(7/9~10)イタリア・ベネチアでの財相・中央銀行総裁会議(G20)合意を最終化するよう、日本政府に働きかける。合わせて法人最低税率引き上げ導入方策などさらなる国際課税ルールづくりのため、「国際連帯税創設を求める議員連盟」などにも具体的に提案し、働きかける。

 

⑨地方自治体からの請願を組織的に行う。国際的なネットワークを強化し、G7やG20の議題に取り上げるように働きかける。ダボス会議の活用も考慮する。

 

⑩ 国際連帯ってあまりにも抽象的なのでパンデミック対策税とかネーミングを工夫したらどうでしょうか?

 

 ⑪具体的に何に誰が課税する、あるいは使途はどのように決めるのか、また懸念されること、反対の立場の人たちの主張など、具体的な議論があれば、関連した議論が考えやすいものになると思います。

 

 ⑫今回のG20決議を踏まえて、国内の議論形成の場を早急に作る。