河野外相「新興する課題…:開発のための国際協力の新たな視点」で国際連帯税に言及

9月18日から第73回国連総会が始まり、本日25日から各国代表の一般討論も行われ、また一般討論以外にも様々なハイレベルイベントが開催されます。24日「ネルソン・マンデラ平和サミット」、26日「結核に関するハイレベル会合」等々。

 

そのハイレベルイベントのひとつが、「新興する課題と変化するパラダイム:開発のための国際協力の新たな視点」という会合です(*)。ここに河野太郎外務大臣が出席し、国際連帯税に関して、次のように述べられました。

 

【河野外務大臣臨時会見記録 冒頭発言より】

 

…(前略)…「新興する課題と変化するパラダイム」に関する会合が行われましたが,国際連帯税を含む革新的な資金調達が必要だ,少なくともこの問題についての議論をする必要性に言及しながら,SDGsを推進し,国づくり,人づくりに日本として貢献をしていく考えを示しました。
 議長から,やはりこの国際的な連帯税,政府を経由してODAとしてサポートをするのではなく,なんらかの直接必要なところに財源としていく国際連帯税というものに非常に興味を示されました。…(後略)…

 

なお、この会合についての外務省の報告は、次の通りです。

 

【外務省】「新興する課題と変化するパラダイム:開発のための国際協力の新たな視点」ハイレベル会合への河野外務大臣の出席

 

(*)これは伝統的なODAの枠組みを越えた新しい開発協力のあり方について議論するハイレベル会合で、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)、欧州委員会,OECD開発センターの共催で開催される。

 

★写真は、「新興する課題と変化するパラダイム:開発のための国際協力の新たな視点」で発言する河野外相(外務省のHPより)

待望の『日本の税金 第3版』(岩波新書)が新規発売中!!

日本の税金

 

三木義一・青山学院大学学長(民間税制調査会メンバー)のベストセラーである岩波新書『日本の税金』の第3版が新規に発売されました。「定評ある入門書の最新アップデート版」ですので、ぜひ手に取って勉強しましょう。タックスヘイブン問題や国際連帯税についても記述されています。以下、岩波新書の案内文より

 

<内 容>
日本の税制は複雑でわかりにくい.政治家と官僚まかせで作られた制度を,市民の目線で見直し解きほぐす.所得税,法人税,相続税,消費税,地方税,間接税,国際課税.その基本的な考え方,導入の背景,問題点などをコンパクトに解説する.定評ある入門書の最新アップデート版.税金の仕組みをすぐ知るのに最適な一冊.

 

<目 次>
序 章 私たちは誰のために税を負担するのだろう?
 政権交代・再交代/地震・原発大災害/二一世紀の資本/まず税制を知ろう

 

第1章 所得税――給与所得が中心だが
 1 「所得」税と給与所得
  「収入」と「所得」/給与所得控除/サラリーマンの必要経費/サラリーマンにも実額控除可能?/事業所得者の必要経費/家族労働の必要経費性/住居の維持費
 2 誰の所得なのか
  夫婦の所得?/課税単位/夫婦財産契約
 3 「所得」に課税するのか,「人」に課税するのか
  総所得金額/人税としての所得税/基礎控除額で人間が生活できるだろうか/課税最低限のまやかし/配偶者控除論争/医療費控除等
 4 累進税率の意味
  超過累進税率/税額控除か所得控除か/控除から手当へ/給付付き税額控除/住民税負担
 5 所得税をどう改革すべきか
  建前の応能負担/所得の把握と番号/税のグローバル化

 

第2章 法人税――税率引下げ競争の行く末
 1 会社の税金の実態
  法人税率は高いか/赤字法人/多い法人数
 2 法人税の仕組み
  法人の所得/会社の建前と法人税/同族会社/受取配当益金不算入/交際費損金不算入/税率/公益法人課税/組織再編税制の台頭
 3 会社の所得は誰のものか
  法人擬制説と実在説/選挙権のない法人/法人税の方向

 

第3章 消費税――市民の錯覚が支えてきた?
 1 錯覚する消費者
  痛みを感じた消費税/誰が払うべきなのか/誰に払っているのか――免税業者/誰に払っているのか――簡易課税業者
 2 複雑で,不公平でもある税制
  どの取引に消費税がかかるのか/複雑な税制/消費税は付加価値税/仕入税額控除否認/逆進性と軽減税率/消費税と滞納
 3 どうなるのか消費税
  税率アップと非課税/ゼロ税率/給付付き消費税額控除/高齢化社会と消費税/正規雇用と付加価値税

 

第4章 相続税――取得税方式に徹底すべきでは?
 1 制度疲労に陥っている税制
  相続額が同じでも/遺産取得税方式から折衷方式へ/死亡件数一〇〇件のうち,相続税がかかるのは?/法定相続分でまず計算/取得額が同じでも税負担増/連帯納付/右肩上がりの税制/通達で評価/事業承継
 2 相続税をどう考えるべきか
  相続廃止は可能か/遺産取得税方式の徹底へ/相続三代続くと
 3 贈与税の仕組みと問題点
  贈与税は補完税/相続時精算課税の導入/いつ取得したか/法人への贈与は注意

 

第5章 間接税等――本当に合理的で必要なのか?
 1 税が酒を造る
  ビール業界と大蔵省のいたちごっこ/分類差等課税/ビールは高級酒?/いたちごっこの終焉?/免許は必要か
 2 たばこ増税の攻防
  たばこにかかる四種類の税/四重課税か/増税で禁煙させられるか
 3 暫定が恒久化する自動車関係税
  引上げは暫定?/特定財源の攻防/環境税化へ
 4 様々な流通税
  各種の流通税/相続させる遺言と登録免許税
 5 不思議な国税
  電源開発促進税/森林環境税

 

第6章 地方税――財政自主権は確立できたのか?
 1 地方税の仕組み
  地方税条例主義/不明確な規定/三割自治は変わらず
 2 事業税
  「事業」に課税/外形標準課税
 3 固定資産税
  台帳課税主義/バブル後遺症/家屋はなぜ下がらない/時価に連動すべきなのか/課税ミスの連続
 4 都市計画税
  固定資産税とどう違う/都市計画財源として機能しているか/都市計画への住民参加と都市計画税の再生
 5 法定外税等
  自治体独自の税/実際の導入例/超過課税

 

第7章 国際課税――国境から税が逃げていく
 1 逃げる納税者
  タックス・ギャップ/「居住者」か否か/住所か国籍か/内国法人・外国法人/税金分捕り合戦
 2 パナマ文書,パラダイス文書の衝撃
  国外逃亡と徴税/パナマ文書・パラダイス文書/国境を超えた税――国際連帯税が出国税に

 

終 章 税金問題こそ政治
 反税の義賊=ロビン・フッドは今?/財政ポピュリズムの台頭/毎年の税制改正手続とその公正化

 

あとがき

【寸評&社説】政府の「SDGsアクションプラン」は科学万能・経済成長主義に偏りすぎ

一昨日(9月17日)の朝日新聞に「政府とSDGs かけ声に終わらぬよう」と題した社説が載りましたので、紹介します。実はNGO・NPO側の懸念と共通することが書かれています。

 

その前に、SDGs(持続可能な開発目標)について簡単に説明します。2015年9月国連において採択され、17目標と169ターゲットをもつもので、①主に途上国の貧困問題等を対象としたミレニアム開発目標(MDGs)分野、②気候変動等地球環境問題を対象にしたリオ・サミット分野、③持続可能な経済成長と雇用分野、の3つの分野を統合したものです。その基本理念は「誰一人取り残さない」「貧しい人々や脆弱な状況下にある人々に対する連帯の精神」(*)にあると言えます。

 

(*)[国連総会採択] 「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」

 

我が国も2016年のG7伊勢志摩サミット直前の5月、内閣総理大臣を本部長とする「SDGs推進本部」が立ち上がり、同年12月には「SDGs実施指針」がまとめられ、世界的にもSDGs取組みの先端を走っていました。ところが、昨年12月「SDGsアクションプラン2018」が公表されたのですが、二重の意味で、それまでの取組みを台無しにするような事態になってきています。

 

ひとつは、アクションプランの内容で、あまりにも科学万能・経済成長主義を打ち出し過ぎており(**)、上記SDGs理念から外れつつあること。もうひとつは、マルチステークホルダー(広範な関係者)による連携を謳い、課題の推進や実施について円卓会議で行っていたものが、それなしで一方的に公表されてしまったこと、です。

 

(**)「SDGsアクションプラン2018」

第一目標に「SDGsが掲げる社会課題や潜在ニーズに効果的に対応すべく,破壊的イノベーションを通じた“Society 5.0”や,“生産性革命”を実現」とあるが、経済白書か何かと間違っているのではないか。

 

以下、朝日新聞の社説ですが、本文の下から11行目に「…NPO関係者らは、独自の行動計画づくりに取り組んでいる」とありますが、それはSDGs市民社会ネットワークが作成しつつあるものです。

 

SDGs市民社会ネットワーク「SDGsボトムアップ・アクションプラン2018」(第一次)

 

 

【朝日新聞】(社説)政府とSDGs かけ声に終わらぬよう
 

 地球環境を守り、貧困を克服して、すべての人が平和と豊かさを享受できるようにする。

 

 そんな世界をめざす「持続可能な開発目標」(SDGs)が国連で採択されて3年。国内でも関心が高まっている。

 

 とくに政府の動きが目立つ。安倍政権は、全閣僚からなる推進本部を設けている。この6月の会合では「国家戦略の主軸にすえる」「SDGsで世界の未来を牽引(けんいん)する」とうたった。

 

 かけ声だおれにしてはなるまい。この国際目標の達成には、官民あげた取り組みが欠かせないが、政権の思惑先行の印象がぬぐえないのが懸念材料だ。

 

 少子高齢化のなかで成長への突破口に位置づけつつ、国際貢献の旗印にする。19年のG20首脳会議、20年の東京五輪・パラリンピックに向け、政権はそんな狙いを抱いているようだ。

 

 SDGsは、貧困や健康・福祉、教育、気候変動、まちづくりなど、17分野の169もの目標からなる。抽象的なテーマも多く、行政のどの施策も何らかの形でかかわるといえる。

 

 推進本部がまとめた行動計画には、「生産性革命」や「地方創生」などの言葉が並ぶ。政権が看板とする課題であり、今年度当初予算に盛り込んだ施策が予算額付きで記されている。

 

 問われているのは、SDGsの理念に沿って政策をどう見直していくかであり、既存の施策をPRすることではない。そのことを肝に銘じてほしい。

 

 政権の姿勢を疑問視するNPO関係者らは、独自の行動計画づくりに取り組んでいる。

 

 「誰一人取り残さない」とのSDGsの標語を踏まえ、まず貧困・格差対策を重視する。既存の施策を見直し、すぐ実行すべき事業、政府は手をつけていないが必要と考えられる事業など4段階に整理する。

 

 そうした作業を重ねながら、いずれ「持続可能な社会」基本法をつくる。そんな構想だ。

 

 NPOが動き出したのは、計画をめぐって政府の「言行不一致」が表れたからでもある。

 

 政府はSDGsを「広範な関係者が協力して推進する」として、NPOや大学、経済団体、国際機関などと、各省庁の担当者が集まる円卓会議を立ち上げた。ところが昨年末に最初の行動計画を決める際、円卓会議では触れないまま、その後の推進本部会合で打ち出した。

 

 行政と企業、NPOをはじめとする市民社会が対等の立場で力を合わせていく。それがSDGsの精神だ。政権の本気度は、民間としっかり手を携えるかどうかを通じても試される。

外務省、10年連続で「国際連帯税(国際貢献税)」を要望

全省庁からの平成31年度(2019年度)税制改正要望が出揃いましたが、外務省は今年も「国際連帯税(国際貢献税)」を要望しました。これで10年連続です。要望内容は、ほぼ例年通りですが、国際的な動向に併せて、積極的な提案も目立ちます。以下、2つ上げます。

 

外務省、平成 31 年度税制改正要望事項

 

①『内容』の項:「本年6月の第5回SDGs推進本部会合では,拡大版SDGsアクションプラン2018を決定し,安倍総理は来年のG20サミットとTICADに向け、次世代への保健・教育分野の取組を強化する意向を表明した」

 

②『新設・拡充又は延長を必要とする理由』の項:「平成31年のG20サミット、TICAD7、SDGsのフォローアップを行う首脳級の国連ハイレベル政治フォーラムに向けて,SDGsの実施を我が国として積極的にリードしていくとの観点からも,中長期的な幅広い開発資金の確保に率先して取り組んでいく必要がある」

 

国際連帯税の役割は、基本的には世界の貧困や気候変動問題等の地球規模課題のための資金となるものですから、このような積極的な提案は大いに歓迎するものです。

 

ところで、外務省の要望書でも述べていますように、「国際連帯税に関する(政府による)検討」は2012年8月の国会で決定したものです。つまり、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律(税制抜本改革法)」の第7条第7号で。このことから、私たちは先月の国際連帯税シンポジウムで以下のことを採択し、河野太郎外務大臣に提出しました。

 

「国際連帯税の導入に向けた具体的な検討を行うにあたっては、政府内に省庁横断的な会議体を設置するとともに、その下に専門家・有識者及びNGOや市民団体の代表者等からなる『有識者検討委員会(仮称)』を設置することを要請します」、と。あらためて私たちは、外務省(外務大臣)が省庁横断的な会議体ならびに有識者検討委員会設置のためのイニシアチブをぜひ取っていただくこと、このことを強く要請する次第です。