ユーチューブ版>7.7「国際連帯税は未来を救えるのか?」集い  

去る7月7日にグローバル連帯税フォーラムと横浜市立大学SDGs学生団体TEHsとの共催による「気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?」講演・討論会をユーチューブにアップしましたので、どうぞご覧ください。

 

◎接続URLhttps://youtu.be/4xQOH9mAXWA 

 

【動画のタイムライン】

1)明日香壽川教授・・・4分以降(パワポ資料はこちらから

2)儀同千弥さん・・・・34分50秒以降

3)田中徹二さん・・・・47分35秒以降(パワポ資料はこちらから

4)質疑応答・・・・・・1時間10分5秒以降

 

<質疑応答の一端>

・学生「環境問題に関する欧州と日本との若者の意識の違いについて」

・教授「例えば、フランスの国民的スポーツは何かと聞いたら、フランス人は何と答えると思いますか?」

・学生「サッカーでしょうか」

・教授「違います。国民的スポーツはデモだと答えます。それはどうしてかと言いますと…」(以下、省略)■■

【ご案内】途上国・新興国の債務問題を解決するためにー政府と市民社会との対話ー

「G7市民社会コアリション2023(C7経済WG)」と「SDGs市民社会ネットワーク 開発ユニット」との共催で、今日懸案の途上国・新興国の債務問題について政府との対話(学習会)を開催します(グローバル連帯税フォーラムはどちらにも参加しています)。コロナ禍や異常気象等により途上国での貧困や飢餓人口が増大する一方ですが、先のG20財務相会合では何ら債務問題の進展がありませんでした。由々しき事態といえましょう。関心のある方はどうぞご参加下さい。

 

 

【8/7開催】オンライン学習会:
途上国・新興国の債務問題を解決するためにー政府と市民社会との対話ー

 

新型コロナウイルスのパンデミック、ウクライナ戦争による食料不足や物価高騰、そして不安定な国際金融などの中で、これまで以上に途上国・新興国が抱える対外債務は膨れ上がっています。

 

世界銀行によると、2021年末の低・中所得国の対外債務残高は約9兆3,000億ドルと、2010年末の約4兆2,900億ドルから倍増しました。さらに物価高騰への対応として2022年3月に始まった米連邦準備制度理事会(FRB)による急速な利上げ(政策金利引き上げ)は、ドル建ての対外債務を多く抱える途上国に大きな打撃となっています。

 

すでにスリランカ、ガーナ、ザンビア、エチオピアをはじめ債務不履行(デフォルト)あるいはそのリスクに直面する国は多数あります。債務返済のため社会保障費や教育費を削減せざるを得ない国もあるなど、まさに債務問題が人々の生活―とりわけ貧困層や社会的に脆弱な人びとの暮らしに打撃を与えているのです。

 

債務問題については、IMF・世界銀行も喫緊の課題と位置づけており、5月に開催されたG7広島サミット首脳会合のコミュニケでは、「債務脆弱性に対処する緊急性を再確認」しました。また、G20では債務再編のための「G20共通枠組み」がすでに設置されています。しかし、これまでの経済・金融システムが生み出した構造の上に生じている債務問題は複雑であり、これらの対策が十分機能しているわけではありません。新たな貸し手として存在感を増す中国の存在も含め、課題は大きいと言えます。

 

国際市民社会からは、債務帳消しやグローバルサウスの立場からの債務再編などより根本的な対策の必要性が提起されています。このたび、主に日本で経済課題のアドボカシーを行う団体や開発分野で活動する団体、SDGs達成や貧困削減などに取り組む団体を中心に、公正で持続可能なグローバル経済を実現するためのステップとして、政府担当者をお招きし債務問題の現状と政策課題について対話を行います。ぜひご参加ください。

 

◆日時:2023年8月7日(月)15:00-16:30
◆形式:オンラインのみ
◆内容(予定):
 ◎主旨説明
   内田聖子(C7「公正な経済への移行」ワーキンググループ コーディネーター/NPO法人アジア太平洋資料センター共同代表)
 ◎日本政府担当者からのレクチャー
  「途上国・新興国の債務問題の現状と国際社会・日本政府の対応」(仮)
   真船貴史氏(財務省国際局開発政策課)
 ◎質疑応答
 ◎日本政府と市民社会組織との対話
  ※モデレーター:若林秀樹(JANIC理事/THINK Lobby所長)

 

◆お申込み方法:以下のURLから登録をお願いします。自動返信メールに接続URLが記載されています。自動返信メールが届かない場合はメールアドレスの入力ミスである可能性がありますので、今一度ご確認の上、再登録をお願いします。
 https://zoom.us/meeting/register/tJUvfu-vqjorG91EnA4OjBhgvoPxcP5NIfFU

◆共催:G7市民社会コアリション2023/一般社団法人SDGs市民社会ネットワーク 開発ユニッ

◆お問い合わせ: G7市民社会コアリション2023共同事務局 堀内 <horiuchi@janic.org>

格差是正に向け、米国でも52団体が金融取引税を要求

この間6月パリで開催された「新グローバル金融協定のためのサミット」を前後して、主に欧州での格差=不平等拡大に対する運動を紹介してきましたが、今回は米国での取り組みにつき、NGOパブリック・シチズン(1971年弁護士で著名な社会活動家のラルフ・ネーダーが設立した老舗のNGO)から最新情報が寄せられたので、紹介します。

 

◎要旨:

・民主党の2議員が「2023年ウォール街税法(金融取引税)」案を提案しましたが、これへの共同提案者になっていただくための上・下両院議員への52団体による要請書で、

・内容は、株式、債券またはデリバティブの購入に0.1%課税し、その税収(10年間で推定7,520億ドルの収入)を、教育・医療・保育・住宅・気候危機への対応など社会的課題の投資に充てること

 

 

52団体がウォール街税法を支持  

52 Groups Endorse the Wall Street Tax Act

2023年7月26日

 

親愛なる上院議員および下院議員のみなさま

 

下記に署名した52団体を代表して、私たちはブライアン・シャッツ上院議員(民主党、ハワイ州)とヴァル・ホイル下院議員(民主党、オレゴン州)が提案した2023年ウォール街税法への共同提案を求める書簡を送ります。所得格差に対処するために支出を拡大すべきときに、壊滅的なデフォルトを回避するための最近の債務制限合意に、栄養支援から医療、環境保護、ヘッドスタート(注:就学援助のためのプログラム)などに至る重要なプログラムのインフレ調整後の削減が含まれていたことは良心的ではありません。そしてアメリカの他の差し迫った問題もあります。わが国は、弱者を助けるために歳出を削減するのではなく、企業やウォール街の大浪費家を含む企業や超富裕層への増税によって歳入を増やすべきだったのです。

 

米国で金融取引税(FTT)とも呼ばれるウォール街税を復活させることは、ウォール街に公平な税負担を求めるための重要な一歩となります。株式、債券、またはデリバティブの購入に0.1%、つまり 100 ドルあたり 10 セントという非常に少額の税金を課すことにより、ウォール街税法は10年間で推定 7,520 億ドルの収入を得ることができます [1 ] 。教育、医療、保育、住宅、気候危機への対応など、勤労者家庭の優先事項の投資に充てることができます。

 

アメリカにおける株式所有の分布から、この法案はアメリカで蔓延する経済的不平等に対処するための重要な一歩となるでしょう。アメリカ国民の大部分は、たとえ退職金口座を通じて間接的にであっても[2] 、株式市場の富をまったく所有していないため、FTTには何の負担もかからず、重要な政府サービスへの投資資金として利用できるより大きな収入から恩恵を受けることになるでしょう。社会の最も裕福な人々が税の大部分を支払い、ウォール街税の収入の4分の3は上位20%の所得者が、40%は上位1%の所得者が負担することになる。税収のほぼ 4 分の 1 (23.5%) は、私たちの中で最も裕福な人々、つまり所得上位 0.1%の所得者だけが負担することになります。[3]

 

制度的な不公平のため、残念なことに、有色人種のコミュニティでは経済格差がさらに顕著になっています。[4]これに関連して、黒人家族とラテン系家族の金融資産所有率は、収入を調整した場合でもはるかに低いです。[5]これは、税発生率のより大きな割合を白人世帯が支払うことを意味し、再分配の役割を果たす可能性があります。

 

この法案はまた、もう一つの明白な不均衡を是正することになるでしょう。一般庶民はあらゆる種類の商品やサービスに対して売上税を支払っているが、現在、ウォール街の関係者が取引を行う際にはそのような税金は適用されない。[6]さらに、金融会社は近年減税を受けており、銀行は2017年のトランプ・共和党による減税法案から最大級の恩恵を受けており[7]、その額は1兆9000億ドルを超えており、これが債務上限騒動を悪化させる一因となっています。

 

ウォール街は非常に不正確なメッセージキャンペーンを展開していますが、[8]退職金貯蓄者は税金による不利益はなく、利益を得る可能性が高い。なぜなら、FTTを導入することで解約率が減り、税金のコストが完全に相殺される可能性があるからです。投資家がすでに支払っている手数料やその他の料金も同時に削減されることになります。[9]その仮定に頼らなくても、典型的な退職金口座を持つ中所得のアメリカ人は、0.1% FTT に対して平均で月額 1 ドル (年間 13 ドル) をわずかに上回る額を支払うことになります。[10]また、年金基金は金融取引税が課される海外市場にすでに多額の投資が行われているため、この税による悪影響を受けることはありません。[11]政府は社会保障、メディケア、高齢者向けの栄養補助といった重要な退職プログラムを強化、さらには拡大するための追加財源を得ることができるため、退職者は税収の受益者となる可能性が高いと言えます。

 

この提案のもう1つの利点は、金融セクターのリスクとボラティリティを軽減し、ウォール街の焦点を投機から、メインストリートの企業、従業員、勤労者家族を支援する長期投資へと方向転換できることです。調査によると、高頻度取引による「レイテンシー裁定取引」は、世界中の市場のトレーダーに50億ドルの「税金」を課していることが分かっています。[12]この法案で提案されている 10 ベーシスポイント課税のような非常に少額の金融取引税であっても、平均的なアメリカ人への影響は無視できる程度でありながら、高頻度取引を事実上排除することになるでしょう。

 

FTT は新しいものではありません。米国は 1914 年から 1965 年まで金融取引税をか導入していましたが、大恐慌による経済危機に対応して増税しました。[13]現在、フランス、香港、インド、韓国、スイス、英国などの経済大国や先進資本市場を含む 30か国以上が FTT を導入しています。[14]バークシャー・ハサウェイCEOのウォーレン・バフェットを含む著名なアメリカ人投資家、元 TIAA-CREFコーポレートガバナンス責任者であるCalSTRS CEOのジャック・イーネス氏、ジョン・ウィルコックス氏、ゴールドマン・サックスの元会長ジョン・ホワイトヘッド氏は取引に対する物品税を支持した。[15]元労働長官ロバート・ライヒ[16]。元米国財務長官ロバート・ルービン、[17]元財務長官顧問のアントニオ・ワイス氏[18]も金融取引税を支持しています。

 

ウォール街税法は、経済的不平等を緩和し、投資を長期投資に再集中させるための重要な一歩を踏み出すと同時に、我が国の差し迫ったニーズに応えて多額の歳入を確保するためのきわめて進歩的な方法です。ぜひこの良識ある法案に共同提案してくださいますよう強くお願いいたします。

 

敬具、

 

Affordable Homeownership Foundation Inc.

AFL-CIO

American-Arab Anti-Discrimination Committee (ADC)

American Family Voices

American Federation of State, County and Municipal Employees (AFSCME)

American Federation of Teachers

Americans for Democratic Action (ADA)

Americans for Financial Reform

Americans for Tax Fairness

Blue Future

Center for Popular Democracy

Chicago Political Economy Group

Child Labor Coalition

Citizens for Tax Justice

Coalition on Human Needs

Communications Workers of America

Congregation of Our Lady of Charity of the Good Shepherd, U.S. Provinces

Congregation of Sisters of St. Agnes

Consumer Action

CorpGov.net

Demand Progress

Food & Water Watch

Greenpeace USA

Institute on Taxation and Economic Policy

International Federation of Professional and Technical Engineers (IFPTE)

Latino Farmers & Ranchers International, Inc.

Main Street Alliance

Media Voices for Children

Medical Mission Sisters, Justice Office

MomsRising

National Advocacy Center of the Sisters of the Good Shepherd

National Association of Consumer Advocates

National Consumers League

National Education Association (NEA)

NETWORK Lobby for Catholic Social Justice

Our Revolution

Oxfam America

Poverty Project at the Institute for Policy Studies

Progressive Democrats of America

Public Citizen

Public Justice Center

Revolving Door Project

RootsAction.org

Take on Wall Street

UAW

Unitarian Universalists for Social Justice

UNITE HERE

United Church of Christ, Justice and Local Church Ministries

United for Respect

United Steelworkers International Union (USW)

Unrig Our Economy 

 

[1]議会予算局、赤字削減のオプション: 2021年から2030年まで、86 (2020年12月)、https://bit.ly/2MJu4Cp.
[2] Jeffrey M. Jones、What Percentage of Americans Own Stock?、 Gallup (2023 年 5 月 24 日) https://tinyurl.com/mrykwbam
[3] Aaron Klein、What Is a Financial Transaction Tax?、ブルッキングス研究所、(2020 年 3 月 27 日) https://brook.gs/3o7ygbC
[4] クレッグ・スティーブン・ブラウン、米国の人種的富の格差の歴史を調べると、これらの格差の解消に向けた進歩が停滞していることが示されている、ワシントン公平成長センター(2023年2月24日)https://tinyurl.com/yckx27pf.
[5]米国財務省、経済安全保障における人種の違い: 非住宅資産 (2023 年 1 月 10 日) https://tinyurl.com/29vucb6a.
[6]証券取引委員会によって少額の手数料が課されますが、その手数料は現在 0.002% に設定されています。
https://www.sec.gov/news/press-release/2023-15
[7] JUST Capital、法人税改革に関する JUST Capital ランキング、https://bit.ly/3sHusSh
[8]テイラー・リンカーン、一般市民、警告: 金融取引税を攻撃するために業界がデータをどのように操作したか (2019 年 10 月 10 日) https://bit.ly/394v5xe.
[9]テイラー・リンカーン、公共市民、有益な効果のある累進税 (2019 年 9 月 16 日) https://bit.ly/2Y5yohk.
[10] 同上。
[11] Dean Baker、経済政策研究センター、金融取引税: 年金基金に影響を与えないウォール街の課税 (2020 年 10 月 30 日) https://bit.ly/3a8PMYr.
[12] Matteo Aquilina 他、金融行動監視機構、高頻度取引「軍拡競争」の定量化: シンプルな新しい方法論と推定 (2020 年 1 月) https://tinyurl.com/b95cavk5.
[13] Antonio F. Weiss および Laura Kawano、ブルッキングス研究所、金融取引への課税に関する提案 (2020 年 1 月 28 日) https://brook.gs/2KC9CCp.
[14] Gunther Capelle-Blancard、ソルボンヌ経済センター、金融取引の課税: 世界の税収の推定 (2023 年 5 月 10 日) https://tinyurl.com/yswhhtu2
[15]短期主義の克服: 投資と事業管理へのより責任あるアプローチの呼びかけ、アスペン研究所 (2009 年 9 月 9 日) https://bit.ly/3sLKn1D.
[16] Why a Tax on Wall Street Trades is an Even Better Idea Than You Know、robertreich.org (2016 年 8 月 10 日) https://bit.ly/2O6TJp4.
[17]ロバート E. ルービン、「経済を活気づける」、ニューヨーク・タイムズ紙 (2020 年 4 月 17 日) https://nyti.ms/361RedO.
[18] Antonio F. Weiss および Laura Kawano、ブルッキングス研究所、金融取引への課税に関する提案 (2020 年 1 月 28 日) https://brook.gs/2KC9CCp.

 

※写真はNY証券取引所

 

6月30日「第13回グローバル連帯税フォーラム年次総会」開催

去る6月30日、グローバル連帯税フォーラムは第13回年次総会を開催し、22年度の活動報告を承認するとともに23年度の活動方針を採択しました。総会議案書を送りますので、どうぞお読みください。

 

 

なお、お忙しい方は、以下の23年度活動方針の「情勢の特徴」をご覧ください。

 

●情勢の特徴

 

 

・コロナによるパンデミックはひと段落したものの、ウクライナ戦争や米中対立など地政学的な危機はいぜんとし続き、先進国ではインフレに、途上国では債務問題に悩む情勢となっています(日本では国家債務が持続不可能なレベルまで到達しつつある)。そして先進国、途上国問わず気候危機が迫っています。とくに途上国の気候危機による被害は「適応策」ではとうてい間に合わず、従って先のCOP27で「損失と被害」基金設立が合意されました。

 

・国際連帯税に関して、現在欧州では2つの場で金融取引税が議論され、実現に迫ろうとしています。ひとつは6月22-23日に開催される「新グローバル金融協定に関するサミット」です。もうひとつは欧州議会です。前者は「革新的資金の動員」というテーマで、他の国際課税と共に取り上げられることになりそうです。後者は国際連帯税的な内容ではありませんが、「次世代EU」資金(旧コロナ復興基金)の償還資金のための有力財源として今年中に欧州委員会は提案すべき、という決議が上がっています。さらに本年G20サミット議長国のインドでも「気候と開発資金創出のための金融取引税を議題に上げよ」との要求がNGOや専門家から上がっています。

 

・2023年は革新的資金調達メカニズム・国際連帯税創設にとってエポックとなる年です。すなわち、6月新グローバル金融協定サミット(パリ)、9月G20サミット(インド)、同月国連SDGsサミット、10月世銀・IMF合同年次総会(モロッコ)、11月COP28(アラブ首長国連邦)というように開発と気候のための「資金調達」に向け重要な国際会議が相次いで開催されます。フォーラムとしては、これらの会議に注目するとともに国会議員や省庁へのアドボカシー活動を強化するとともに、関連するNGO等とともに世論を高めていく活動を展開していきます。■■

「環境・社会富裕税」創設に向け、9月から欧州100万人署名に向かう

欧州レベルで最富裕層1%を対象とした富裕税創設に向け、具体的に動きが始まりました。仏ルモンド紙は「7月11日火曜日、欧州委員会は、欧州社会民主党陣営の有力人物2人、ベルギーのPaul Magnette議員とフランスのAurore Lalucq議員による欧州市民イニシアチブ(ECI)の登録を決定したと発表」と報道(注1)。

 

両議員による欧州委への要請は「エコロジーと社会的移行のための巨万の富への課税」(Taxing great wealth to finance the ecological and social transition、以下、環境・社会富裕税と略)をECI方式で行うというものです。この方式は少なくとも7カ国の欧州国民から1年以内に100万人の署名を集めれば、欧州委員会に対して立法を提案することができる制度です。これを欧州委が受理したということで、9月から署名がはじまるようです。

 

●環境・社会富裕税の目的

 

「この構想は、欧州委員会に対し、巨万の富に対する欧州税の創設を求めるものである。これにより欧州連合の財源が確保され、加盟国が共同出資する欧州の生態系・社会的移行および開発協力政策を拡大し、永続させることが可能となる。この拠出金は、気候変動や不平等と闘うために使用され、これらの目標達成のために欧州市民が公平な負担をすることを保証するのに役立つだろう。」(欧州連合のHPより)

 

●欧州富裕税を推進する人々・団体

 

1)欧州議会議員100人ほどの賛同(注:中道右派の一部、中道左派、グリーン、左派など)

2)研究者・専門家:トマ・ピケティ、ガブリエル・ズックマン、ジョセフ・スティグリッツ、ジャヤテイ・ゴーシュ、アン・ペティフォーなど

3)愛国的な大富豪:マリーナ・エンゲルホルン(1992年、オーストリア生まれ。世界最大の総合化学メーカーBASF社の創設者の一人)など

4)NGO/シンクタンク:オックスファム、TaxEd Alliance (Actionaid, Global Alliance for Tax Justiceほか)、ETUC(欧州労働組合連合)、Patriotic Millionairesなど

 

なお、上記の名前、団体等は欧州富裕税に向けたキャンペーンサイト(注2)をご覧いただくとして、この富裕税の仕組み等についてはまだ公表されていないようです。オックスファムの試算によれば、欧州の億万長者に年間最大5%の富裕税を課せば、年間2500億ユーロ近くが集まる可能性があると報告しています(注3)。

 

●富裕税関する最近の動きと100万人署名への注目

 

・富裕税については欧州各国で廃止・縮小されてきましたが、この間、欧州議会においてEUの長期予算である多年度財政枠組み(パンデミック復興資金の返済資金も含む)の修正議論の過程で富裕税提案が出されました。しかし、この提案は見送られたという経緯があります。そこで議会(並びに行政)の外から市民の総意で富裕税の実現を目指そうというのが今回の動向といえます。実際、世論調査でも富裕税への賛同は高いようです。

 

・ひとつ問題は、富裕税実現となれば、富裕層が国外脱出を図るということで、最近でもノルウェー政府が富裕税1.1%に引き上げたところ続々と富裕層が国を出ているということです(行先は主にスイス)。これへの歯止めが絶対必要になりますが、推進派はどのような制度設計を考えていますでしょうか?

 

・さらに言えば、富裕税は直接税ですので、その分抵抗が激しくなると思いますので、まずは富裕層が行う資金運用に課税していく、つまり株や通貨などの金融取引に課税していくという間接税の方がやり易いのではないかと思います。ともあれ、何しろ100万人署名ですから、大きな運動になることは間違いありません。この運動に注視し、わが国でも増税が待ち受ける中、大衆収奪にならない形での増税を、すなわちお金がうなるほどあり十分担税力のある所から徴収することのできる税制を考えていきたいと思います。

 

(注1)

欧州委員会、富裕層課税に関する請願を承認

(注2)

欧州富裕税キャンペーンサイト

(注3)

Economists, activists and millionaires register landmark ‘European Citizens’ Initiative’ calling for a European wealth tax on the richest 1%

 

 

報告:気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?

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7月7日横浜市立大学の講堂とオンラインによって「~明日のために今の大学生が考える~気候危機とグローバルサウス 国際連帯税は未来を救えるのか?」が開催され、70人を超えての参加申し込みがありました。

 

主催は、グローバル連帯税フォーラムと横浜市立大学SDGs学生団体TEHs。冒頭主催者挨拶として、TEHs代表が挨拶されました。同グループは「SDGsを広めることを目的に様々なプロジェクトベースで活動している団体」で現在100人を超える部員が活動しているとのことでした。

 

プログラムですが、「第1部:講演」では、明日香壽川・東北大学東北アジア研究センター/環境科学研究科教授と田中徹二・グローバル連帯税フォーラム代表理事が行い、グリーンピース・ジャパンの儀同千弥さんが「COP28に向けての活動事例」との報告を行いました。その後「第2部:大学生による未来のためのディスカッション」に移りました。

 

今回は、講演を行ったお二人の当日の資料を送ります(第2部の報告は別稿で)。

 

・明日香壽川「気候危機と『損失と被害』」

 

・田中 徹二「国際連帯税は未来を救えるのか?」

 

なお、グローバル連帯税フォーラムのニュースレター『国際連帯税・通貨取引税』も送ります。同レターでフォーラムの会員を呼び掛けていますので、会員になっていただける方は gtaxftt@gmail.com までご連絡ください。

 

 

《講演のエッセンス》

 

●明日香壽川「気候危機と『損失と被害』」

 

お話するのは、①気候危機の現状、②気候変動の国際交渉、③損失と被害、④今後の展望。中でも、③につき、次のように話された。

 

「損失と被害」(基金)の意義

日本に限らず、先進国に住む人々は、途上国での被害に同情するものの、自らを加害者として認めて賠償金を払うという意識を持つ人の数は極めて少ない(ほぼゼロ?)。しかし、自分が交通事故などの被害者になった時のことを考えればわかるように、「援助」と「賠償」は全く意味合いが異なる。

 

さらに、日本の場合、財政支出は増えるものの、その財源に関する議論は乏しい。一方、実現可能かどうかは別にして、「損失と被害」に関しては、国際航空のフライト、化石燃料会社や金融市場などへの課税などイノベーティブな財源が提案されており、硬直化した日本の財政に関する議論にも一石を投じる可能性がある。

 

●田中徹二「国際連帯税は未来を救えるのか?」

 

1)世界には幸福がいっぱいあるが、不幸もそれ以上に多い。本来人間は幸福を求める権利があるが、この地球上では貧困・飢餓という最悪の不幸に見舞われている人が多い。とくに途上国では今日、感染症、食料・エネルギー危機、気候危機、債務危機等のポリクライシス(複合危機)に苦しむ。

 

2)よって途上国支援が求められているが、国際社会が確約した「SDGs=持続可能な開発目標」を達成するための資金が毎年4.2兆ドルも不足している。が、富裕国によるODA総額は2000億ドルたらずで、公的資金による支援では間に合わず。そこで先進国や国際機関は盛んに民間資金の動員・利用を訴え、ブレンドファイナンスやESG投資など様々なスキームが実施されている。しかし、肝心の貧困国や脆弱国にはお金届かず。民間資本は利益の上がらないところに融資したがらないから。

 

3)従来の公的資金ならびに民間資金が途上国の資金ニーズに及ばないとすれば、第三の革新的資金の創出が必要。それが国際課税方式による国際連帯税。そのスキームは極めてシンプルで、グローバル化によって受益している経済セクターの活動に広く薄く課税して、その税収を地球規模課題であるSDGsや気候変動対策資金に充てる、というもの。

 

4)国際連帯税はまずは航空券連帯税としてフランス等で始まったが、国際的な広がりに欠けてきた。しかし、SDGsや気候危機資金ニーズが今や「兆ドル」単位に跳ね上がる中で再び注目を浴びる。6月開催された「新グローバル金融協定のためのサミット」でも多くの提案が行われた。とくに金融取引税。OECDも言うように世界の金融資産はコロナ禍やインフレににもかかわらず増額の一途を辿っている。つまり、お金は有り余るほど世の中にはある。まずそのフローである株取引や為替取引(通貨取引)への課税へ、と。

 

5)このままではODAや民間資金動員が増えたとしても依然として億ドル規模だし、民間資金は貧困国等には向かわない。すると債務に押しつぶされそうな60を超える低・中所得国では借金返済に手いっぱいであり、SDGs達成はまず不可能に。「誰一人取り残さない(Leave No One Behind)」というSDGsの理念は水泡に帰す。こうした根本問題・構造的な解決なくしてSDGsを語ることはできない。債務の帳消しと新しい資金による支援が必要だ。世界にはお金はある、有り余るほど使い切れないほどあるのだから。

 

※左のロゴは、横浜市大TEHsグループのロゴです。