欧州金融取引税にフランシスコ・ローマ教皇が関与

教皇

 

今月、フランシスコ・ローマ教皇は、ヘルス・雇用・気候変動対策のために500億ユーロのロビンフッド税(金融取引税)を求めるフランスの活動家たちと会われました。教皇は、従来から金融システムが地球を破壊していると考えており、社会のために働くようにすべきだ、と主張してきました。昨年10月に発表した回勅でも、「新型コロナウイルス禍における資本主義は失敗に終わったとの見解を示し、自由市場政策では人道上最も差し迫った課題全てを解決できないことが、今回のパンデミックで示されたと指摘」(CNN)していました。

 

今後ローマ教皇は欧州金融取引税について、様々な場で関与してくれるのではないでしょうか。

 

今回の活動家たちと教皇との謁見を仲立ちしたのはジャン=クロード・ホレリッチ(Jean-Claude Hollerich)大司教ですが、同大司教は日本での長い宣教経験を持ち、上智大学の元副学長を務めていたとのことです(バチカン・ニュースより)。

 

●宗教家と金融取引税・国際連帯税

 

ところで、金融取引税や国際連帯税に関し、倫理と正義を重んじる宗教家も格差・不平等解消のツールとしてこれを支持してきました。バチカン(ローマ教皇庁)はベネデクト16世前教皇の時から金融取引税への支持を表明していましたし、欧州10か国金融取引税問題が浮上した2014年には欧州カトリック指導者がいっせいにこれを支持。また、ローワン・ウィリアムズ(当時)カンタベリー大主教、デズモンド・ツツ元南部アフリカ聖公会ケープタウン名誉大主教(ノーベル平和賞受賞者)も支持を表明。日本では池田大作・創価学会インタナショナル会長が従来より国際連帯税推進を呼びかけています(*)。

 

(*)金融取引税(FTT)に関する欧州カトリック指導者の声明

 

以下、教皇との謁見の経緯・意義についての報道をお知らせします。

 

 

        欧州金融取引税:ローマ教皇関わる

 

【archyde】European tax on financial transactions: the Pope gets involved

 

欧州(議会)の予算担当の審査官は強力な態度に出ました。L’obs Sundayが伝えるところによると、昨年10月に金融取引税を擁護するためにハンガーストライキを行った欧州議会議員のピエール・ラルトゥロウ(Pierre Larrouturou)氏が、今度は3月15日月曜日に教皇に謁見する予定である。共存運動(Coexist movement)の創始者であるサミュエル・グジボフスキー(Samuel Grzybowski)氏、市民気候会議(Citizen’s Climate Convention)の後見人のシリル・ディオン(Cyril Dion)氏、そして起業家のエヴァ・サドゥン(Eva Sadoun)氏を伴い、エコロジー社会への移行に向けた資金調達を話し合うために会いに行くのである。

 

この会談は、ルクセンブルク大公国の大司教であるジャン=クロード・ホレリッチ(Jean-Claude Hollerich)氏の助力によって実現した。去年1月、ピエール・ラルトゥロウ(Pierre Larrouturou)氏は、財務大臣と会うためルクセンブルクに訪問した期間中、気候擁護に熱心で知られる氏をバチカンに訪ねた。欧州連合司教会議委員会の会長であるジャン=クロード・ホレリッチ(Jean-Claude Hollerich)氏はこの話し合いの内容に賛同を示し、これを発展させる為、教皇に謁見を願い出、教皇はこれに快く応じました。

 

毎年500億ユーロの収入をもたらす税

 

この欧州金融取引税は、年間500億ユーロをもたらすと、広く欧州議会議員や環境活動家から評価されている。しかしながら、このプロジェクトは多くの反対、とりわけフランスからの反対に直面している(注)。

 

教皇はこの大義の為に彼の影響力を行使する用意があるようだが、ポルトガルも「強化された協力 (Enhanced Cooperation)」のために関係国を一つにまとめようとしている。ポルトガルは現在EU理事会の議長を務めており、この教皇の協力により、全会一致を待たずに欧州金融取引税を前に進めることを希望している(注)。

 

(翻訳者:注)本年1月からポルトガルがEU理事会の議長を務めているが、ポルトガルは10か国主導の金融取引税をまず実現しようと株取引と株関連デリバティブ取引への課税を提案しているが、フランスが反対している(デリバティブ取引を含むことに否定的)。

 

 

 

 

 

「国際連帯税が必要です」:逢沢一郎衆議院議員のメルマガより

いつも国際連帯税創設を求める議員連盟の総会に参加され、積極的に発言されているのが逢沢一郎衆議院議員です。逢沢先生の3月11日付メールマガジンに「国際連帯税が必要です」と題した報告が載っていましたので、お知らせします。

 

逢沢先生は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)国会議員連盟や日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟の会長も務められていますように、根っからの国際派、途上国・貧困者支援波です。以下、メルマガ全文です。

 

 

◆◇「国際連帯税が必要です」◆◇

 

 SDGsとはご承知の通り「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」などの2030年までに達成すべき17の持続可能な開発目標です。各国政府や企業、市民団体、大学などがみんなで協力してこの目標を達成しようということです。SDGsの目標が達成されれば、それは本当に素晴らしい地球の実現です。また人類が自然と共生しながら、全ての人がより豊かで人間らしい生活をすることが可能となります。

 

 しかしSDGsの目標達成には、引き続き大きな努力が必要です。まず資金の確保です。UNCTAD世界投資報告書によると、途上国においてSDGsを達成するには年間約3.9兆ドルの資金が必要で、現在の投資額約1.4兆ドルとの間には2.5兆ドルの資金ギャップがあると分析されています。

 

 資金ギャップは後発開発途上国や脆弱な経済の国々においてより大きくなることが予想されます。政府の公的資金だけでなく民間資金も上手に活用していきたいと思います。たとえば電力、交通、水と衛生などの分野には特に民間資金の活用に期待が寄せられます。しかしいずれにしても全てのSDGs関連セクターで投資資金が大きく不足しています。

 

 また新型コロナウイルス感染拡大が、SDGsの達成をさらに困難にしています。今日ワクチン接種が世界中で始まりましたが、やはり問題は発展途上国です。ACTアクセラレータはコロナ感染症のワクチン・治療・診断・保健システムを開発して公平なアクセスを実施する国際的枠組みですが、このACTアクセラレータの枠組みも圧倒的資金不足に陥っています。

 

 コロナを抑え込むには、先進国だけが安全になったとしても不十分です。地球規模で、途上国も含め全ての国と地域で成果を上げなければコロナとの闘いに勝利することは出来ません。

 

 そこで私たちが真剣に考え、実現する必要があるのが「国際連帯税」です。コロナのような感染症との戦いは、まさにボーダレス、グローバルな戦いです。将来、また新たな感染症が人類を脅かす可能性も否定できません。

 

 グローバル化の恩恵を受けている金融セクターやIT情報セクターの取引きやオペレーションに、ごくごく薄く広く負担を求めるのです。スマホや携帯の通話やメールなども候補に挙げてもいいと思います。とにかく世界の人々が皆でごく少額を負担してこの地球を人類を救うための財源づくりです。是非関心を持っていただき、ご理解を頂戴したいと思います。

 

 今後、折に触れて「国際連帯税」に関する考え方や制度設計についてレポート致します。全人類は、一人一人は地球市民です。

 

【E-mail】ask-aisawa@aisawa.net 

 

★写真は、2019年6月、Gaviワクチンアライアンス 理事長のオコンジョイウェアラさんとともに(逢沢先生のTwitterより)。彼女は本年3月WTO(世界貿易機関)の新事務局長に就任された。

 

【資料】3.9国際連帯税議連総会に関するマスコミ報道

東京新聞3月9日東京新聞3月10日

 

3月9日に開催された国際連帯税創設を求める議員連盟の本年第1回総会のもようがマスコミで報道されましたので、お知らせします。東京新聞(新聞紙記事で9日と10日付)と日本経済新聞(電子版9日付、紙記事で10日付)が報道してくれました。

 

なお、「具体的税目として株や為替の取引に課税する金融取引税や航空券連帯税をあげた」(10日付東京新聞)とありますが、航空関係は当面当てにできない中で、金融取引税については現在米国でも活発に議論されている最中です(その最新情報は別項でお知らせします)。

 

 

【日本経済新聞】
国際連帯税、23年に導入を 超党派議連が議員立法めざす
ワクチン確保など途上国支援の財源に

2021年3月9日

 

超党派の「国際連帯税の創設を求める議員連盟」(衛藤征士郎会長)は9日、国会内で会合を開き、政府に2023年度に同税を導入するよう促す議員立法をまとめると決めた。発展途上国のワクチン確保などを支援する財源にする。

 

議員立法は夏までに詳細を詰める。秋にも国会に提出する日程を描く。

 

衛藤氏は日本の制度導入が国際的な取り組みの拡大に結びつくと強調する。「日本が主要7カ国(G7)、20カ国・地域(G20)、経済協力開発機構(OECD)などで提起し、国際的な議論を喚起すべきだ」と主張した。

 

一般的に国際連帯税は飛行機の利用、金融資産の売買など国境を越えた経済取引に課税する。集めた税金は新興国の貧困や感染症の対策に充てる。国連が00年に採択したミレニアム開発目標(MDGs)を契機に先進国で導入機運が高まった。

 

国民民主党の古川元久国会対策委員長は「コロナ禍での世界的な金融緩和の拡大で資産家の富裕層が恩恵を受け低所得者との格差が広がっている」と話した。「先進国と新興国の資金差を埋めるため金融取引への課税が今こそ必要だ」と語った。

 

外務省は10年度から11年連続で税制改正要望に国際連帯税の導入を盛り込んだが、21年度は明記を見送った。外務省の担当者は9日の議連会合で、コロナ禍での税負担の増加に航空業界や与党税制調査会の理解が得られなかったと説明した。

 

議連の事務局長を務める立憲民主党の石橋通宏参院議員は、税制改正要望からの削除について「甚だ遺憾だ」と主張した。古川氏は河野太郎前外相が外相在任時に国際連帯税の創設に前向きな発言を繰り返していたと指摘した。

 

外務省の資料によると…以下、省略

国際連帯税議連総会報告:議員立法で実現めざすことを確認

21.3.9議連総会

 

3月9日、国際連帯税創設を求める議員連盟(会長:衛藤征士郎衆議院議員)の本年第1回総会は、リアル(議員会館会議室)とWebの両方で、国会議員21人プラス秘書の方々、外務省や法制局の方々、市民24人が参加し、開催されました。簡単に報告します。その前に総会のもようが下記のメディアで報道されました(次回報告)。

 

*【日経新聞】

国際連帯税、23年に導入を 超党派議連が議員立法めざす(3月10日付)

ワクチン確保など途上国支援の財源に

*【東京新聞】

国際連帯税の導入 議員立法提出確認(3月10日付) 

「国際連帯税の導入を」SDGs資金源で注目 超党派 法案提出へ(3月9日付) 

       

●外務省とグローバル連帯税フォーラムからの報告

 

司会は石橋通宏事務局長(参議院議員)で、衛藤会長あいさつの後、早速議題に入りました。外務省が次年度税制改正要望から国際連帯税を降ろしてしまったことに対し、「誠に残念というか、むしろ遺憾である」との議連の立場から説明を求めました。

 

外務省・国際協力局の高杉審議官(地球規模課題担当)が、税制による資金調達はコロナ危機のため新税の導入が困難であり、新しい資金源として民間資金利用を考えていく、という説明でした(SDGs達成のための新しい資金を考える有識者懇談会・最終報告書)。このことにつき、懇談会委員でもあった田中から、そもそも懇談会は「①税制、②その他での資金を考える」ということではじまったが、途中でその他=民間資金利用の方が主体となってしまった、と経緯を説明。

 

その後、高杉審議官からワクチンの平等なアクセスを確保するための国際的枠組みであるCOVAX(コバックス)等の説明があり、さらにSDGs達成のための途上国の資金ギャップは従来2.5兆ドルと言われてきたが、それに加えて今回の感染症では0.7兆ドルのギャップがあると指摘されていることを報告(UNCTAD)。次に、田中からワクチン接種における高所得国と貧困・低所得国とのとてつもない格差とそれをもたらしている圧倒的な資金不足を指摘し、今や国際連帯税の出番ではないかと報告。加えて谷本より国際連帯税としては今日、河野太郎前外務相が言っていたように為替取引への課税が有望であること等を報告。

 

●議員の意見:大臣や総理の言葉は重い、にも拘わらず…/国際連帯税にとって大きな機会、日本の大方針を

 

これらの報告を踏まえ、出席した議員から意見が出されました。まず古川元久衆議院議員(国民民主党)から次のような意見。「河野前外務大臣はあれほど国際会議の場で国際連帯税のことを訴えていたが、それにも拘わらず今回外務省が税制改正から国際連帯税を外したのは大きな問題だ。大臣や総理の言葉は重いのだ。河野氏が単に個人の思いとして語っていたのか。外務省は検証すべきだ」。

 

次に逢沢一郎衆議院議員(自民党)から次のような意見。「自民党税調の限界を突破しないといけない。この10年河野大臣は熱意があったが他の大臣は熱量が足りなかった。今日コロナ禍という情勢にあってある意味国際連帯税にとっては大きな機会だ。総理も外務大臣も日本としての大方針を持たなければならない」。

 

●議員立法をめざして、衛藤会長のまとめ

 

次に、石橋事務局長から「国際連帯税制度の創設のための立法について(案)」、つまり議員立法の骨子が提案されました。「SDGsや新型コロナなど、我が国を含む国際社会が地球規模課題による脅威に対応することが求められ、そのための安定した財源を国際連帯税でもって確保する」(要旨)という立法の趣旨にもとづき、国際連帯税創設のため「2年以内に必要な法制上の措置を講ずることを政府に義務付ける」と謳うもの(案文の全文については別に報告します)。

 

これについて1、2質問があり(暗号通貨取引も金融取引税に含めるのかなど)、その後事務局長提案が全体で確認されました。

 

最後に、衛藤会長が「まず河野前外相については必ず当議連に入ってもらうようにしたい。その上で日本での取組みが国際的な取組みの拡大に資すること、そのためにG20やG7、OECDで訴えていくことが求められている。私たちは議員立法の動きを加速化させ、ぜひとも国際連帯税を実現していきたい。外務省とも市民団体とも一緒になって、何としても実現にむけて頑張っていこう」とまとめ、第1回総会を終了しました。

 

※左上の写真は、日経新聞(3月9日付)より。立って話しているのは衛藤会長です。

【ご案内】国際連帯税議員連盟の総会>Zoom傍聴できます

国際連帯税創設を求める議員連盟(会長:衛藤征士郎衆議院議員)の2021年度第1回総会が下記の通り開催されます。市民はZoom傍聴できますので、ご案内します。

 

◎日 時:2021年3月9日(火)9:00~10:00

◎議 題:

 ・令和2年度税制改正要望における国際連帯税の扱いについて(外務省より説明)

 ・新型コロナ・感染症のワクチン確保のための国際協力メカニズムとその現状、及び、SDGsの推進に必要な資金の欠乏状況について(政府担当者から説明、グローバル連帯税フォーラムから報告)

・国際連帯税の導入実現に向けたアクションについての提案 など

 

◎Zoom傍聴

 ・会場は参議院議員会館の会議室ですが、議員を含め極力Zoom視聴で開催するとのことですので、市民側傍聴もZoom視聴となります。

*傍聴ご希望者は、gtaxftt@gmail.comまでお名前(あれば所属)をお書きの上連絡ください。締め切りは3月5日です。

 

<議連総会開催を巡る背景の簡単な説明>

 

・2009年より毎年度外務省は税制改正要望で国際連帯税新設を要望してきましたが、21年度にその要望を取り下げてしまいました。今こそ国際連帯税の出番という状況において旗を降ろしてしまい、誠に遺憾なことであります。

 

・実際、今日新型コロナや気候変動など地球規模課題がいっそう浮上してきています。とくに昨年来のコロナ禍において、切り札の一つであるワクチン接種で貧困国・途上国が置き去りにされている現状があります。その要因の一つが途上国にワクチンや治療薬を公平にアクセスする「ACTアクセラレータ」という国際的な機関の圧倒的な資金不足にあります。

 

・この機関を支援している日本を含むドナー国も国内のコロナ対策のためばく大な借金政策を取っており、ODA(政府開発援助)資金に余裕はありません。そういう状況で、期待される資金調達の方法が国際連帯税です。グローバル化で恩恵を受けている経済セクターに広く薄く課税し、その税収を国際公共財として使うというもので、具体的には為替取引(金融取引)やデジタルサービス取引等への課税です。

 

・「ワクチン等は『国際公共財』である」とは先のG7首脳会議での議論です。であれば、「ワクチン格差」を認めるわけにはいかず、ドナー国は国際的に共同して新しい資金を創出し途上国へのいっそうの支援を行うことが望まれます。日本政府がその先頭に立つことが求められています。残念ながら外務省が新税要望を断念している中で、議員連盟が議員立法という形で国際連帯税創設を求めていくことを期待します。

 

※写真はWHOのHPより