【速報】国際租税枠組み条約に向けた付託事項草案、圧倒的多数で採択!!

 国連投票結果

           <クリックすると大きな画面になります>

 

8月16日国連において「国際租税協力に関する国連枠組み条約の付託事項の草案」(1)に関し採決を行ったところ、【賛成:110、反対8、棄権44】ということで、草案が圧倒的多数で採択されました。

 

反対の8カ国は、オーストラリア、カナダ、イスラエル、日本、ニュージーランド、韓国、イギリス、アメリカ(英語圏+米国の関与が強い国と言えますか)。

 

また、先進国で賛成に回る国はなく、賛成はグローバルサウス諸国(含む、中国・インド等新興国)の大多数だけということになり、くっきりと南と北の分断が明らかになりました。

 

ちなみに、枠組み条約を作ろうということになった、2023年11月22日の「国連における包摂的かつ効果的な国際租税協力の促進」決議の採択状況は次の通りです。【賛成125、反対48、棄権9】。この時ほとんどの先進国は反対でしたが、今回は上記8カ国を除き棄権に回ったため、反対がぐっと減りました。

 

■ グローバルサウスのアフリカ・ブルンジからの声

 

ブルンジ国連政府代表部は「X」で、次のようなコメントを出しています(2)。

 

素晴らしいニュースです!国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項の草案が、本日 2024 年 8 月 16 日に採択されました。この重要な節目により、グローバルサウスが国際税務の議論に平等に参加できるようになります。南側諸国はこの歴史的な決定を圧倒的に支持しましたが、北側諸国の大半は棄権または反対票を投じました。この分裂は、真の国際租税協力を達成する上での継続的な課題を浮き彫りにしています。こうした違いにもかかわらず、この成果は、世界的な税の公平性を強化し、持続可能な開発を支援するための重要な一歩となります。公正で公平な国際租税システムを求めるキャンペーンは続きます!

 

■ 今後のタイムテーブル>3年かけて枠組み条約と2つの議定書を作成

 

今後のタイムテーブルですが、この草案が本年の総会で採択された後、「IV. 交渉のアプローチと期間」によれば、3年かけて枠組み条約と2つの議定書(3)を作成することになっています。つまり、2027年末までに完成させるとのことです。アフリカ・グループは2年を主張していましたが、先進国側に押し切られたようです(4)。

 

ともあれ、この草案には何点かの問題点はありますが、全体的にはきわめて包括的かつ野心的なものです。一方、我が日本政府は枠組み条約に対して一貫として後ろ向きの姿勢を取っています。建前としてはグローバルサウスとの連携、連帯を言いながら、いざ国際租税取極めを巡っては分裂、分断を選択しています。こうした拗ねたような姿勢ではなく、グローバルサウスのためにも、OECDでのBEPSプロジェクトをけん引した日本政府・財務省の英知を国連租税枠組み条約の取り組みでも生かせるようにしていただきたいと思います。

 

(1)草案最終版

 

(2)ブルンジ国連政府代表部の「X」

 

(3)二つの議定書について

<草案最終版より>

15. 枠組み条約と同時に2つの初期議定書を作成すべきである。早期議定書の1つは、デジタル化とグローバル化が進む経済において、国境を越えたサービスの提供から派生する所得に対する課税を扱うべきである。

 

16. 第二の早期議定書の主題は、政府間交渉委員会の組織会合で決定されるべきであり、以下の特定の優先分野から選択されるべきである:

  a. デジタル化経済への課税

  b. 税関連の不正な資金フローに対する措置

  c. 租税紛争の予防と解決

  d. 富裕層による脱税と租税回避に対処し、関連する加盟国における効果的な課税を確保する。

 

(4)European Network on Debt and Development (Eurodad)のポリシー&アドボカシー・マネージャーのTove Maria Ryding さんの「X」より

 

※写真は、Tove Maria Ryding さんの「X」より

 

「SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け」朝日新聞掲載

miyakoshi' report

 

8月7日付朝日新聞「私の視点」コーナーに、当フォーラム理事の宮越太郎氏の投稿が掲載されましたので、紹介します。なお、文中にある「ジョセフ・スティグリッツの外交誌での論稿」というのは、FOREIGN AFFAIRS誌に載ったThe International Tax System Is Broken(国際課税システムは破綻している)です(*)。

 

 

宮越太郎さん「私の視点」

SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け

 

6月末の国連報告によれば、2030年達成が目標のSDGs(持続可能な開発目標)の内83%が達成されていない。大きな原因は資金不足で、不足額は年間約4.2兆ドルに上る。ESG投資など民間資金は広がっているが、公的資金の拡大なしに達成は難しい。

 

大きなウェートを占める目標が、気候変動対策だ。昨年のCOP28 (国連気候変動会議)では、フランスのマクロン大統領が、「国際課税に関するタスクフォース」を発足した。化石燃料や海上・航空輸送への課税、国境を超えた経済取引の恩恵を受ける金融取引への課税など、グローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を決めるのが目的である。グローバルタックスは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、国境を超える取引や資産に課税し、税収を地球規模課題の解決などに充てる税制だ。

 

すでに導入されているのが航空券連帯税だ。税収はユニットエイドという国際保健機関に送られるが、医薬品開発などは成功率が低くリスクが高いので、まさに公的資金が適しているといえる。

 

…中略…

 

これまで先進国中心のOECDが国際課税ルールを策定してきたが、現行制度では年間約4800億ドル(約72兆円)の租税漏れが生じるため、昨年、国連が国際課税の公平な制度を目指し「国際租税協力枠組み条約」交渉開始の決議をした。9月の国連総会で進捗報告が予定されている「枠組み条約」には、租税回避を許す欠陥税制を改革するものと期待が集まる。ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツも7月、外交誌にそう明確に指摘した論稿を寄せた。

 

この条約に加え、今年と来年はSDGs達成の資金調達にとって決定的に重要な年となる。一つは11月に開催されるCOP29で、気候変動対策へ向けた資金動員が主要な議題になる。二つ目は来年十年ぶりに国連の第4回「開発資金国際会議」が開催されることだ。第3回ではその後の開発資金調達の指針となる行動目標が策定された。

 

グローバル連帯税フォーラム(http://isl-forum.jp)はグローバルタックスや枠組み条約の実現に向けて動いているが、非現実的と批判されることも多い。しかし、これらのアイデアはむしろ国境を越えて繋がる今の世界の現実に即したものだ。SDGsを取り巻く困難な現実に世界が諦めつつある中、国際課税のようなアジェンダに大きな発言権を持つ日本だからこそ、官民総掛かりでこの現状を変え得るアイデアに挑戦すべきではないだろうか。

 

(*)原文はこちら邦訳はこちら。

「SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け」朝日新聞掲載

miyakoshi' report 

 

8月7日付朝日新聞「私の視点」コーナーに、当フォーラム理事の宮越太郎氏の投稿が掲載されましたので、紹介します。なお、文中にある「ジョセフ・スティグリッツの外交誌での論稿」というのは、FOREIGN AFFAIRS誌に載ったThe International Tax System Is Broken(国際課税システムは破綻している)です(*)。

 

 

宮越太郎さん「私の視点」

SDGs推進への資金確保 連帯実現へ 日本も動け

 

6月末の国連報告によれば、2030年達成が目標のSDGs(持続可能な開発目標)の内83%が達成されていない。大きな原因は資金不足で、不足額は年間約4.2兆ドルに上る。ESG投資など民間資金は広がっているが、公的資金の拡大なしに達成は難しい。

 

大きなウェートを占める目標が、気候変動対策だ。昨年のCOP28 (国連気候変動会議)では、フランスのマクロン大統領が、「国際課税に関するタスクフォース」を発足した。化石燃料や海上・航空輸送への課税、国境を超えた経済取引の恩恵を受ける金融取引への課税など、グローバルタックス(国際連帯税)に基づく革新的な資金調達手段を決めるのが目的である。グローバルタックスは、従来の国家主権に専属した課税では対応できない、国境を超える取引や資産に課税し、税収を地球規模課題の解決などに充てる税制だ。

 

すでに導入されているのが航空券連帯税だ。税収はユニットエイドという国際保健機関に送られるが、医薬品開発などは成功率が低くリスクが高いので、まさに公的資金が適しているといえる。

 

…中略…

 

これまで先進国中心のOECDが国際課税ルールを策定してきたが、現行制度では年間約4800億ドル(約72兆円)の租税漏れが生じるため、昨年、国連が国際課税の公平な制度を目指し「国際租税協力枠組み条約」交渉開始の決議をした。9月の国連総会で進捗報告が予定されている「枠組み条約」には、租税回避を許す欠陥税制を改革するものと期待が集まる。ノーベル賞経済学者のジョセフ・スティグリッツも7月、外交誌にそう明確に指摘した論稿を寄せた。

 

この条約に加え、今年と来年はSDGs達成の資金調達にとって決定的に重要な年となる。一つは11月に開催されるCOP29で、気候変動対策へ向けた資金動員が主要な議題になる。二つ目は来年十年ぶりに国連の第4回「開発資金国際会議」が開催されることだ。第3回ではその後の開発資金調達の指針となる行動目標が策定された。

 

グローバル連帯税フォーラム(http://isl-forum.jp)はグローバルタックスや枠組み条約の実現に向けて動いているが、非現実的と批判されることも多い。しかし、これらのアイデアはむしろ国境を越えて繋がる今の世界の現実に即したものだ。SDGsを取り巻く困難な現実に世界が諦めつつある中、国際課税のようなアジェンダに大きな発言権を持つ日本だからこそ、官民総掛かりでこの現状を変え得るアイデアに挑戦すべきではないだろうか。

 

(*)原文はこちら邦訳はこちら。

 

 

【資料】セミナー「国連国際租税協力枠組条約設立の可能性を探る」

7月29日同上セミナーが開催されましたが、当日提案者が使用したパワポ資料を公開します。

 

1)報告1:「国連国際租税協力枠組条約の形成過程」

  -金子文夫・グローバル連帯税フォーラム/横浜市立大学名誉教授

 

 

 2)報告2:「国際租税協力枠組条約を巡る交渉の状況」

      &国連国際租税協力枠組条約への付託事項(TOR)草案の仮訳

  -青葉博雄・CNEO (Center for New Economic Order)

 

【若干の解説】

2023年12月、国連総会は決議78/230「国連における包括的かつ効果的な国際税務協力の推進」を採択し、国際租税協力に関する国連枠組条約の付託事項の草案を作成する権限を持つ特別政府間委員会を設立し、2024年8月までに委員会の作業を完了することを目指しました。

 

それで現在(本年4月26日~5月8日の特別委の第1回会議に続き)、7月29日~8月16日にかけて第2回会議が行われています。この会議に先立ち、枠組条約への付託事項(TOR)草案の改訂版が公表され、これに沿って議論されています。

 

青葉さんは、この草案内容において、そのまま「維持されるべき要素(守り)」と、さらに草案にはないが今後「追加されるべき要素(攻め)」を指摘しています。第2回会議で後者が多く盛り込まれることが期待されます。