英国NGO便り:金融取引税(FTT)に関する最新情報-14年10月

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英国のロビンフッド・タックス・キャンペーンの中心メンバーであるマックス・ローソン(Oxfam) / デービッド・ヒルマン(Stamp out poverty)による「ロビンフッド税(RHT)及び金融取引税(FTT)に関する最新情報-2014年10月」を送ります(このメールは10月上旬に送られてきたものです)。

 

★全文はこちら⇒PDF

 

1)「最新情報」の要旨

 

・GDPの88%を占める欧州の10ヶ国は、2014年末までに制度設計と立法化を終了する。
・フランスは単独のFTTを実施しており、税収の20%は西アフリカの医療支援に充てられる。
・イギリスの野党労働党は、2015年5月に総選挙が行われれば、国民医療制度(NHS)への資金提供を増大させるための、イギリスの印紙税(株取引に対する現存のFTT)の抜け穴をふさぐことになるだろうと述べた。
・2015年のG7議長国ドイツに対する人々の関心は、アディスアベバで開催される開発資金国際会議、持続可能な開発目標(SDG)の発表およびパリで開催される気候サミットに先立って、FTTの税収を開発と気候変動に配分するという明確な発表が行われることである。

 

2)10か国FTTは「株と一部のデリバティブ」からスタートするが、その一部のデリバティブとは?

 

「デリバティブに関する当初の議論で第一段階に含まれるべきとされたのは、株式デリバティブ、クレジット・デリバティブおよび長期金利デリバティブ」とありますので、デリバティブ取引で大部分を占める(短期の)金利関連は当初は除外ということのようです。

 

3)他に特筆すべきこと

 

・イギリス全国の63の地方自治体が、ロビンフッド税を支持する決議を採択していること【感想:これはすごい!!】
・多くの著名な金融関係者がFTTを支持していること【感想:が、元**という方が多いですね。まぁ、現役でFTT賛成ということになればそもそも仕事ができなくなりますしね】

 

◆写真は米国のRHTキャンペーンのもよう:シカゴ川を下りつつFTTを訴える(http://www.newstatesman.com/economics/2013/01/europe-moves-financial-transactions-tax-will-we-follow)

 Photograph: Getty Images

 

19日の『サンデーモーニング』で寺島実郎氏、国際連帯税を訴える

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既に観た方もおられると思いますが、10月19日朝8時から放映されたTBSテレビの『サンデーモーニング』で寺島実郎氏(日本総合研究所理事長)が出演され、国際連帯税の必要性を訴えられました。

 

この番組の最後に『風を読む』というコーナーがありますが、この日のテーマは『エボラ出血熱と世界経済』というものでした。ここで寺島実郎氏は、次のようにコメントしました。

 

国境を越えて行う経済活動にはコストがかかること、その何よりの証左がエボラ出血熱のような熱帯性感染症であり、このような問題に対処するために欧州では国際連帯税を先行して導入していること、「これこそが新しい政策科学論であり、新しい政策は新しい革袋【システム・仕組み】に入れなければならない」と述べられました。

 

また国境を越えて行われているマネーゲームを批判し、その取引に薄く広く課税する金融取引税そして再び国際連帯税の必要性を訴えました。

 

最後に、「実は先日私を座長とする国際連帯税に関する委員会の設立を記念して、青山学院大学でシンポジウムを行った。しかし、残念ながらマスメディアから一人も来てなかった。(メディアは)単に騒ぐだけでは無く、(拡大していく)感染症立ち向かっていく仕組みが必要になっていることを分かって欲しい」と述べられ、苦言を呈しました。

 

メディアのみなさんも、感染症問題のみならず、経済のグローバル化がもたらす負の影響、そして地球規模課題に対して関心を持ち、報道していただければと(寺島さんはじめ)私たちも切に思うところです。

 

◆写真左は、10月12日「第2次寺島委員会設立記念シンポジウム」で講演する寺島実郎氏(青山学院大学)。右はTBSのWEBでのサンデーモーニング紹介。

 

金融取引税に関する国際電話会議(10月2日)報告

遅れましたが、金融取引税に関する国際電話会議(10月2日)の報告を送ります。

 

あまりメディアでは報道されていませんが、欧州11カ国のFTT(金融取引税)導入に向けての準備が着々と行われていることがうかがえます。Peter Wahlによる、
FTTの交渉に関するドイツ政府の立ち位置についての報告が面白いですね。

 

すでに10月20日を過ぎですから、もうちょっとFTT準備の進展があるかもしれないと思っているのですが、まだ報告はありません。

 

◆金融取引税に関する国際電話会議報告を読む⇒PDF

国際連帯税議連、菅官房長官に27年度税制要請書提出

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国際連帯税創設を求める議員連盟(以下、議連)は、10月14日、安倍総理にあてた「平成27年度税制改正に向けた『国際連帯税』に関する要請書」を提出しました。

 

官邸側は、菅官房長官が出席。議連側は、衛藤征士郎会長(自民)以下、谷垣禎一顧問(自民)、高村正彦顧問(自民)、大島理森顧問(自民)、藤田幸久会長代行(民主)、額賀福志郎副会長(自民)、小池百合子副会長(自民)、牧原秀樹事務局長代理(自民)、阿部知子常任幹事(未来)の計9人が出席。

 

下記、議連側による官房長官への要請の模様については衛藤会長のWEBサイトの動画をご覧ください.

 

この要請に対し、「菅長官からは、議連の要請を重く受け止め、しっかり対応していきたいと前向きなご回答をいただきました」(石橋みちひろ議員のWEBサイトより)

 

以下、要請書です。また要請書に関する資料についてはPDFを参照ください。

 

 

    平成27年度税制改正に向けた「国際連帯税」に関する要請書

 

内閣総理大臣 安倍 晋三  殿

 

                                                            国際連帯税創設を求める議員連盟

                                                                                  会長  衛藤 征士郎

 

日頃より、我が国国民及び国際社会のためにご尽力いただいておりますことに感謝と敬意を表します。

 

早速ですが、平成27年度税制改正に向け、貧困や飢餓、気候変動や感染症など、地球規模的な課題に対応するための『国際連帯税』の創設について、私ども超党派国会議員による「国際連帯税創設を求める議員連盟」として、下記の通り要望いたします。

 

現在、国連では、2000年から取り組まれてきた「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」が来年で終了することに合わせ、ポストMDGsとなる新たな「持続可能な開発目標(SDGs)」の策定に向けた議論が活発化しています。そしてこの議論の中の一つの大きな焦点が、実施手段としての「新たな資金調達」問題です。

 

新しい開発目標は、MDGsがめざした飢餓や感染症などの克服に加え、環境保全と経済発展の両立を目指すものであり、必要資金も増大することが予想されております。現状の伝統的なODA資金だけでは、到底、その必要を満たすことが出来ず、従って今、革新的資金調達メカニズムとしての『国際連帯税』への関心が世界的に高まっています。

 

我が国においても、2012年8月、『社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律』が国会で成立し、その中に「国際連帯税について国際的な取組みの進展状況を踏まえつつ、検討する」と規定されました。法律が成立してからすでに2年余が経過する中で、また、欧州やアフリカ、韓国ですでに国際連帯税の導入が進められ、具体的な成果が達成されている中で、我が国においても「検討の段階から実施の段階へ」と歩を進めることが、国民からも国際社会からも大いに期待されております。

 

以下、具体的な要望を3点に絞って提案いたします。

 

                     記

 

1、   平成27年度税制改正において「国際連帯税の創設」を明記するとともに、政府内に「国際連帯税の創設」に向けた本格的検討機関を設置し、速やかに具体的な検討に着手すること

 

2、   我が国で導入する「国際連帯税」については、すでに諸外国で導入・実施されており、比較的導入が容易な税制(例えば航空券連帯税)と、まだ諸外国でも検討段階であり、我が国での導入にも相当の検討時間を要する税制(例えば通貨取引税や金融取引税など)とに区別し、まず前者について平成27年度中の導入をめざし、政府として積極的に取り組みを進めること

 

3、   本格的検討機関の構成については、政府の責任の下で多様なステークホルダーを招請し、国民的な議論の下に進めること。その際、フランスにおける国際連帯税導入の土台となった、2004年創設の大統領諮問委員会(通称ランドー委員会)を参考にすること

 

以 上

 

                         2014年10月14日

 

◆写真は、石橋みちひろ議員のWEBサイトよりお借りしました

 

 

 

 

10.12シンポ基調:グローバル化に伴うコストを内部化するメカニズムを

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10.12シンポジウムですが、既報通り寺島実郎さん(日本総合研究所理事長、多摩大学学長)が基調講演を行います。その内容を簡単に披瀝すると次のようになります。

 

「国境を越えた人、モノ、カネ、エネルギーなどの移動には、必ずそれに付随するコストが伴っており、誰かが責任を持って負担しなければならないが、その国際的なメカニズムが欠落している。今こそ、国際連帯税のような国境を越えた課税メカニズムを具現化しなければならないときで、その理念をしっかり訴えていく必要がある」(7月28日第1次寺島委員会の総括会議から、寺島さんの発言)

 

実際、国境を越えた(主に航空機による)人の移動は予期せずともエボラ出血熱やデング熱ウィルスも運ぶこととなり、結果としてそれら感染症対策というコストをもたらします。また、カネの行き過ぎた移動は、それがたびたびバブル崩壊=金融・経済システムの危機として現れ、その修復のためのコストをもたらします。

 

つまり、グローバル経済はそれに伴うコストを内部化しないまま、公共財を過剰消費しており、それが結果として地球規模課題となって現出しているということです。前日銀総裁の白川方明氏は、2008年のリーマンショックからはじまる国際金融危機が「国際金融システムの安定という公共財の過剰消費の結果」であり「そうした財の供給のためのコストが十分に内部化されていない」として述べています(*)。

 

国際連帯税またはグローバル連帯税とは、このようなグローバル経済による公共財の過剰消費(負の影響)に対して「課税」という方法を用いて抑制するとともに、その税収を世界の貧困・感染症や気候変動対策などの地球規模課題対策への資金として使用するメカニズムです。

 

本シンポジウムの目的は、第一に、国際連帯税またはグローバル連帯税という考え方の共有、です。第二には、様々な地球規模課題の最前線で活動している研究者、NGOからの最新情報と問題提起を受けて国際連帯税またはグローバル連帯税を豊富化していく、ということです。ぜひシンポジウムに参加し、ともに議論をまき起こしていきましょう。

 

(*)白川方明・前日銀総裁の発言:
「最近の国際金融危機は、国際金融システムの安定という公共財の過剰消費の結果ということができます。金融機関が、システムの安定を当然視し、過剰なリスクをとってしまいました。

 

…問題は、グローバル化を効果的に制御しようとしても、これが難しいことです。公共財の過剰消費は裏を返せば、そうした財の供給のためのコストが十分に内部
化されていないということです。…公共財にかかる問題を解決するための方法はよく知られています。最も直截なのは、公的部門が公共財を供給することです。公共財の消費にかかるルールを定めることもできます。さらに、公共財の消費に課税したり、その供給に補助金を支給することも考えられます。

 

…そうであるならば、私たちは、公共財の問題を解決するために知られた選択肢を組み合わせる、より現実的なアプローチを追求するべきです。…たとえば、自己資本規制も、リスクの高い投融資活動のコストを高めるという意味で、この一例と位置づけることもできるでしょう。さらに、…金融取引課税も選択肢であると主張する方もいらっしゃると思います。」(『公共財としての国際金融システムの安定』日本銀行総裁 白川方明 2012年10月14日)

https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/ko121014a.htm/ 

 

◆文責:田中徹二(国際連帯税フォーラム代表理事)

 

●写真中央は、2010年の国際連帯税シンポジウムで講演する寺島実郎さん(9月、東洋大学)。左は、9月20日ピケティ勉強会の後に、世界の貧困をなくすための世界的なキャンペーン「スタンド・アップ」を行いました。