【主張】世界の貧困・格差とグローバル連帯税=NL第10号発行

本日『News Letter 国際連帯税・金融取引税』第10号を全国会議員に対して配布してきました。第10号のメインの主張は、以下の通りです。

 

いまイスラム国(IS)のテロや、中東からそして欧州・米国から同国へ戦闘員として参加する者が後を絶たないなど深刻な事態が起きています。こうしたテロの背景には、中東・アフリカの貧困や格差があり、欧州では移民たちへの格差や差別があると、多くの識者が指摘しています。

 

かつて、2001年ニューヨークで9.11同日テロがあり、この時もテロの背景として貧困・格差が問題となり、翌2002年国連開発資金会議では米国や欧州がODA(政府開発援助)の増額を決定しました(日本は時代に逆行し10%削減)。この国連会議は、2015年までに「世界の絶対的貧困を半減する」等のミレニアム開発目標(MDGs)実現のための資金会議でした。

 

そして2015年。確かに1日1.25ドル以下で生活する絶対的貧困層の「半減」は、途上国の努力と先進国からの支援で、2010年の段階で実現しました。が、1日2ドル以下で生活する貧困層は未だ27億人もおります。そういう中で、本年9月の国連サミットではMDGsに替わる2030年を期限とする目標=ポストMDGs/2015開発アジェンダが採択されます。

 

これに先立ち7月には第3回国連開発資金国際会議がアジスアベバで開催されますが、この15年の経緯を見ると、先進国の公的資金であるODAが決して十分でなかったことが証明されています。

 

とするならもうひとつの公的資金であるグローバル連帯税(航空券税や金融取引税など)が求められます。テロ等は力だけで抑えきれるものではありません。途上国の貧困や格差を是正していくため、ODAや連帯税など公的な資金援助を含む自立のための支援が今こそ求められています。

 

●「News Letter国際連帯税・金融取引税」第10号を読む⇒ PDF

 

◆ロゴは、“2015 人々と地球のためのグローバルアクションの年”という国連のロゴ

 

 

 

 

【ご案内】3.22民間税調第2回シンポジウム「消費税を考える」

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民間税調第2回シンポジウム「消費税を考える」のご案内です。民間税調ができる限り市民的目線に立って、分かりやすく議論をリードしていただくことを期待します。

 

また、23日の朝日新聞の社説で民間税調のことを取り上げているので、紹介します。同社説では“「民主党の別動隊」といった声が聞こえてきそうだが…”との記述があります。そういう声が専門家やメディアの中に根強くあるのでしょうか。

 

が、要は様々な税制改革を納税者のものに、国民(市民)のものにしていこうと努力するかどうか、かと思います。

 

 

                 民間税制調査会第2回シンポジウム:「消費税を考える」

 

  ◎日 時:2015年3月22日(日)午後1時~4時30分

  ◎会 場:青山学院大学17号館4階17410教室

                        *キャンパスマップ:         

        http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html

  ◎参加費:無料

  ◎申込み:下記のアドレスにお名前、所属(あれば)、「第2回シンポ参加希望」とお書きの上お送りください。

                           *アドレス: yoshimikimiki@gmail.com

  ●シンポジウム

   ・司 会:水野和夫 (日本大学教授)

   ・パネラー:青木 丈(税理士、千葉商科大学大学院商学研究科客員教授)

      志賀 櫻( 日弁連税制委員会)

      田中秀明( 明治大学教授)

      三木義一(青山学院大学教授)

      峰崎直樹 (東京工業大学非常勤講師)

 

本年10月に予定されていた消費税の引き上げが延期され(8%→10%)、17年4月から導入する、というのが政府の方針です。が、ちょっと待って!

 

現在「税制改革は、…与党、とりわけ自民党の税制調査会が財務省とやりとりしつつ具体案を決める。…肝心の納税者は蚊帳の外と言っても過言ではない」(下記朝日新聞社説)という状態になっており、この間の消費税論議も例外ではありません。

 

民間税調では、様々な税制論議を納税者のものと、すなわち国民のものとすべく奮闘していくということで、今回は国民的関心の高い「消費税」に的を絞りシンポジウムを開催するとのことです。

 

ところで、先の民間税調立ち上げの時の基調報告で、この消費税に関し5つの論点があることが報告されています。すなわち

 

1)10%への引上げの可否

2)その場合における軽減税率の導入による逆進緩和策の可否

3)(導入時=歳入時対策ではなく:注)歳出面での逆進性緩和策(給付付き税額控除を含むがそれには限らず社会保障・文教の歳出面一般、また過重な負担を低所得層に強いる社会保険料)によるべきか否か

4)インボイス制度の導入の可否

5)社会保障・インボイスに伴う番号制の要否の5点です

 

というものでした。

 

私たちの生活に深く影響している消費税も、こうみるとなかなか専門的で分かりずらいものがあります。民間税調ができる限り市民的目線に立って、分かりやすく議論をリードしていただければと思います。納税者としてぜひシンポジウムに参加し、議論をまき起こしましょう。

 

 

【朝日新聞】(社説)民間税調 育て、モノ言う納税者

2015年2月23日

 

 「民間税調(税制調査会)」が発足した。納税やそれに伴う紛争にかかわる税理士や弁護士、税制を研究する税財政分野の学者らのほか、一般の市民にも門戸を開き、皆で議論しながらあるべき税制を考えようという珍しい組織である。

 

 今月上旬の初会合で決めた設立宣言では、真っ先に「格差を是正し、分厚い中間層を形成する税制と財政支出」を掲げた。

 

 中心となる5人は、民主党の元国会議員をはじめ、同党の政権時に政策づくりに加わった人が多い。その主張もあいまって「民主党の別動隊」といった声が聞こえてきそうだが、ここは一般市民の参加を求める姿勢、言わば「モノ言う納税者」を促すことの意義を考えたい。

 

 税制改革は、財務省が選んだ「有識者」からなる政府の税制調査会が理論面を検討し、与党、とりわけ自民党の税制調査会が財務省とやりとりしつつ具体案を決める。その主役は、力の衰えをささやかれながらも、税制通を自任する一部のベテラン議員だ。肝心の納税者は蚊帳の外と言っても過言ではない。

 

以下、省略。

欧州11カ国FTT:5月~6月のEU財務相会合で最終合意か?

2月12日に行われた「金融取引税(FTTs)に関する市民社会グループの国際電話会合」の議事録が届きましたので、報告します。

 

欧州11カ国FTTですが、5月または6月のEU財務相会合で最終合意に至るのではないか、というのがNGO側の分析です。既報通り、昨年末までにまとまるはずであった共通の制度設計がとん挫してしまいました。が、ブレーキ役となっていたフランスが方針を転換したことにより、制度設計が進んでいるようです。

 

針の転換とは、「最初は株取引への課税に限定して行う」というものから「株だけでなくデリバティブを含む金融取引に幅広く課税する」という(元々の)欧州委員会提案に沿ったものに変わったことです。

 

また、3月10日前にはシンクタンクのドイツ経済研究所(DIW)がFTTの税収試算(ただしドイツ、フランス、イタリア、スペインの分)を公表するということで、たいへん興味がありますね。

 

あと米国でのオバマ大統領の一般教書へFTTを盛り込ませようとした活動や議会の動きも興味深いところです。以下、報告します。

     金融取引税(FTTs)に関する市民社会グループの国際電話会合  
                                               2015年2月12日
             報告: Sarah Anderson(Institute for Policy Studies; IPS)

 

1)議論の現状

 

●報告―ヨーロッパ:David Hillman, Stamp Out Poverty

 

フランスが1月にFTTに関する弱々しい提案を取り下げると、EU-FTTの導入にコミットしている11カ国の政府間協議の最後のフェーズにまさに勢いがついた。今やすべてのデリバティブ(を課税対象とすること)が議論の俎上に戻ってきた。債券については各国の負債をめぐる懸念があるため、ソブリン債(訳者注:国債など)への課税はないだろうと我々は考えている。とはいえ、大いに広範な課税ベースとすべきである。

 

また我々は、11カ国の政府が2段階プロセスの計画を取り下げたと考えている。彼らはもはや可能な限りもっとも広範な課税への合意を目指し、それを単一のプロジェクトとして前進させようとしている。もし政府間交渉が手に負えないほど困難であるとわかった場合にのみ、各国は2段階プロセス計画へと回帰することになるだろう。

 

もう一つの主要な前進は、11カ国グループにおける小国の力が増大していることだ。なぜフランスが自身の立場を変えたのか、その一つの理由は、フランス提案が十分な税収をもたらさないために小国らが抵抗したからであったことは今や明らかである。

 

ポルトガルは非公式な形で、技術的議論の調整役となっていくだろう。これは良い知らせで、その理由の一つは、ポルトガルがFTTに非常に前向きな租税専門家を常駐代表として(EUの本拠地である)ブリュッセルに在籍させているからだ。この専門家は今後主要な役割を担っていくことだろう。オーストリアも非公式に政治的な調整役を担っていく見込みだ。

 

今後のスケジュールについて、我々は技術的な取り決めに約3ヶ月ほどかかるだろうと考えている。そして、おそらく5月、あるいは遅くとも6月のEU財務相会合で、最終合意が発表されることになるだろう。我々は、7月中旬のエチオピアでの国連開発資金調達会合までには、11カ国の政府が税収配分についても何らかの合意に達するよう望んでいる。

 

3月10日のECOFIN(EU財務相会合)の前には、シンクタンクのドイツ経済研究所(DIW)がドイツ社会民主党により委託された報告書のなかで、EU11カ国のうち4大経済大国(訳者注:ドイツ・フランス・イタリア・スペイン)にもたらされる税収試算を公表する予定だ。我々はその調査結果を広く拡散させるよう計画すべきである(アメリカにおいても、我々は税収試算に取り組む政策決定者へその結果を確実に知らせていく)。

 

●報告―アメリカ:Nicole Woo, Center for Economic and Policy Research

 

前回の電話会合にて、中道・主流派民主党員と見なされているヴァン・ホーレン(Van Hollen)議員が、民主党員で下院議長のナンシー・ペロシの支持のもとFTTに関する提案をしたことを報告した。それ以降ヴァン・ホーレンは、法案提出に向け支持を獲得すべく、その他多くのメンバーと会合をもってきた。約80名が所属する革新党員集会は、自身が提出する予算案にFTTを採用する予定であり、その提案は通常3月の第2週に発表される。アメリカのキャンペーン担当者らは、同提案について広く報道されるよう方法を検討しているところだ。

 

パブリック・シティズン(訳者注:米国の有力なNGO)は、オバマ大統領の予算案にFTTを含めるよう求める署名を集めた。タイミングの良さもあいまって、この署名活動は主として教育的効果をもち、短期間で2万人の支持者を確保した。結果オバマは予算案にFTTを含めず、我々もそれを期待はしていなかったが、オバマは大銀行の報酬に関する提案を盛り込んだ。これらの提案について、我々は代替策ではなく補完的な施策として検討すべきだと主張している。

 

<訳者注:上記の点については下記の注参照>

 

議会職員は、(予算)法案の税収試算を担う両院合同税制委員会(Joint
Committee on Taxation: JCT)と共に作業を進めており、さまざまな税率の分析に着手している。(それに対し)ドイツの研究は大いに役に立つだろう。同委員会の試算(JCT score)なしには、法案が議会で真剣に検討されることはほとんどあり得ない。

 

Ken Zinn(NNU:全米看護師組合)によれば、ロビン・フッド税キャンペーンは引き続きエリソン議員の法案(もうひとつのFTT法案)が迅速に再提案されるよう推進している。またZinnは、ヴァン・ホーレンがFTT提案を中産階級の減税を含む提案パッケージの一部として提示しているのは問題だと指摘した。

 

2)エチオピアで7月に開催される国連開発資金調達会議に向けたプロセスにおけるFTTの推進

 

サラ・アンダーソンは、このプロセスにてFTTが扱われるよう働きかける集中戦略を検討するため、2週間以内に会合を開催する予定だ。もし同会合に参加したい方、あるいは参加すべき者を推薦したい方がいれば、サラ(sarah@ips-dc.org)まで連絡を。

 

会合では、以下の異なる関わり方について検討する予定。

 

1.インサイダー:どのように最終宣言にFTTを盛り込むよう推進できるか、あるいは公式的なプロセスでFTTに関する話題を取り上げる他の方法、その他すべきことなどを検討。

 

2.準インサイダー:アディスにおいてFTTに関する市民社会イベントを計画。

 

3.アウトサイド:このプロセスに直接的には関係しない人々に、FTTやFfD(開発資金調達)とのつながりをどのように持たせることが出来るか。メディアやその他のコミュニケーション・ツール、あるいは政策決定者の参画に関する戦略的機会、要点など(の模索・検討)。

 

次回会合:3月12日AM9時

 

<注>オバマ大統領の銀行課税案
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NIHZ916TTDS401.html
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM18H0C_Y5A110C1FF8000/
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-02-17/2012021707_01_1.html
http://blog.knak.jp/2015/01/post-1500.html

                                                                                                                                 (翻訳:K.Tsuda)

 

◆写真は、ユーロネックスト(証券取引場)・ブリュッセル

西村内閣府副大臣の国際連帯税発言>ピケティ・シンポジウム

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1月29日朝日新聞主催のピケティ氏来日シンポジウムの動画が同新聞電子版で観ることができるようになりました。

 

それであらためてシンポジウムのパネラーの一人であった西村康稔内閣府副大臣の国際連帯税に関する部分の発言をまとめます。

 

最後に、(ピケティ教授の)資産課税、累進的資産課税のご提案ですが、これは総理も国会で答弁されているように、なかなか現実的には難しいところがあります。わたしはこの議連(国際連帯税創設を求める議員連盟)にも入っているが、国際連帯税(というのがある)。例えばフランスが行っている航空券税。ビジネス・ファースト席で高い賦課金をかける。金融取引税、これもフランスで行われているが、高頻度取引や時価総額の大きい企業の株取引にかける。

 

一応これも国際協調しないと、抜け駆けで国は有利になるとか、また航空業界や金融業界も反対するでしょうし、調整が要ります。

 

とくに所得の高い人が使う(航空券の)ファースト席、株式の高頻度取引、こういうところに国際的に協調して税をかける。そしてこれを貧困層の教育に使う。こうした構想はありえると個人的にはずっと思っていて活動を進めています。こういったことを国際協調の枠組みの中で検討を進めたらどうかと思っています。

 

( )内は投稿者が挿入

 

以上です。

 

【会場変更です】2.8民間税調設立宣言記念シンポジウム

2月8日の民間税調設立宣言記念シンポジウムですが、参加申し込みが多いため下記の通り広い会場に変更となりました。従いまして、若干ですが席の余りがある
ということですので、参加希望者はどうぞ申し込みください。

 

◎青山学院大学第18会議室(総研ビル10階)⇒同大学17号館5階17512教室

 

ところで、話が変わり、トマ・ピケティ教授が3泊4日の慌ただしい来日スケジュールをこなし、2月1日帰国されました。で、ちょっと気になるのはメディア等の論調がピケティ理論の紹介に終始したため(やむを得ない面もあるが)、その理論の帰結としてのグローバル資産<富裕>税について、どのように(日本で)実現していくかという議論が弱かったことです。

 

例えば、グローバル課税ではありませんが、かつて日本にも富裕税がありましたし(1950年度~52年度末)、現在でもフランス、スイス、ノルウェーなど欧州の一部で実施されています。が、近年ドイツやスウェーデンなど廃止に、そしてフランスも廃止方向となっています。

 

また、ピケティ理論では強く勧められていない金融取引税についても、かつて日本には有価証券取引税があり(1999年廃止)、88・89年には2兆円を超える税収を上げていました。

 

この民間税調の基調が税制改革を通して格差是正をすすめるということですので、ピケティ理論をはじめとし様々な理論・アイデアを「どのように日本で実践していくか」という方向性で議論できればいいなと思っています。「格差を縮小し、かつての『1億総中流』のような社会を目指していく。税制の在り方について新たな方向性を示していきたい」(共同座長・三木教授)。

 

 

      シンポジウム「主権者たる国民が、税制にもの申す」
            ―民間税調設立宣言―

 

◎日 時:2015年2月8日(日)午後1時~ (12時半開場)
◎会 場:青山学院大学17号館5階17512教室
     *キャンパスマップ:      http://www.aoyama.ac.jp/outline/campus/aoyama.html
◎参加費:無料
◎申込み:下記のアドレスにお名前、所属(あれば)をお書きの上、シンポ参加希望としてお      送りください。
       *アドレス: yoshimikimiki@gmail.com

 

●シンポジウム
 ・共同座長 三木義一(青山学院大学教授)
 ・共同座長 水野和夫 (日本大学教授)
 ・峰崎直樹 (東京工業大学非常勤講師)
 ・志賀 櫻( 日弁連税制委員会)
 ・田中秀明( 明治大学教授