【紹介】朝日社説「世界の貧困と不平等 『分配』を共有できるか」

 SDGsロゴ

 

2月21日の朝日新聞社説「世界の貧困と不平等 『分配』を共有できるか」はたいへん共感を呼ぶ内容です。

 

忙しい人のために、超簡単に要約します。

 

1)拡大する格差・不平等そして貧困、これらに歯止めをかけるべく国際社会はSDGs(持続可能な開発目標)を定めた

 

2)が、難題は解決のための資金であり、ODA等ではとても足りない、航空券連帯税等の革新的資金調達や金融取引税に注目すべきだ

 

3)格差・不平等の改善なくして経済成長もおぼつかなく、「分配」が課題となっている。米国でのサンダース氏の支持拡大や安倍総理の分配発言等

 

4)今や多国籍企業にも変化の兆しがあり、CSRというレベルを超え「自然資本会計」という試み等が行われている

 

5)結論:「5月には日本でサミットがある。テロや難民、中東や朝鮮半島の不安定化など課題は山積しているが、共通する要因が貧困だ。世界を主導する国々の首脳が議論すべき課題である」 (以上、要約終わり)

 

ところで、SDGs達成のための資金は10兆ドル(約1200兆円)以上という試算が出されていますが(持続可能な開発のための資金に関する政府間専門家委員会)、グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)では貧困(食料)・教育・保健というベーシック・ヒューマン・ニーズにつき「一人も取り残さない」ようにするための費用としては2810億ドルが必要と試算しています。 また、気候変動関係では緩和と適応のために8000億ドルが必要と試算しました。

 

詳しくは、グローバル連帯税推進協議会「最終報告書」を参照ください。

 

話は変わりますが、サンダース候補の税制政策をWSJは次のように説明しています。「同氏は多くの増税策を提案しており、その中には高額所得者を対象にした大幅な税率の引き上げが含まれる。具体的な数字には言及していないが、レーガン政権以前(70%)や、ニューディール政策当時(94%)の税率をしばしば愛おしげに引き合いに出していた」。つまり、かつては富裕層への超累進的課税は当たり前だったのですね(第二次大戦の戦費問題もあり)。この「当たり前」感を今日のグローバル化時代にあってどのように一般化していくか、が課題ですね。

 

【WSJ・社説】サンダース候補を真剣に受け止めるべき時

 

ピケティになると、累進所得税に加えて累進資産(資本)税をも提案しています(『21世紀の資本』第14章と15章)。 いずれにせよサンダース候補は米国内の格差・不平等を対象としていますが、ピケティ教授はグローバルな格差・不平等を対象としていることが分かります(途上国の統計資料不足のため分析が十分でないということを本人が言及)。 あと企業への内部留保税に関する論文としては、以下の諸富教授の論稿が参考となります。

 

■政策課税としての法人課税-ニューディール期「留保利潤税」の思想と現実を中心に-  

 

右のロゴはSDGs17目標のロゴ、左は第3回開発資金国際会議(15年7月、アジスアベバ)のロゴ

「官邸に行こう、大きなうねりを」国際連帯税議連、総会開催

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2月5日午前8時より衆議院第一議員会館会議室において、「国際連帯税創設を求める議員連盟」の2016年度第1回総会が開催され、国会議員8人をはじめ議員代理、第2次寺島委員会・委員、外務省、市民など40人ほどが参加しました。

 

議題は次の通り。1)総会「2014~2015年度活動報告及び会計報告」、「2016年度活動の重点領域について」、2)講演「グローバル連帯税が切り拓く未来」、「グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)最終報告書のポイント」、3)質疑。

 

●総会

 

冒頭、衛藤征士郎会長(自民)が次のようにあいさつを行いました。「自民党税制調査会でようやく国際連帯税を公式に認知させるところまできた。航空業界からOKを取ることが肝心である」。

 

続いて、石橋通宏事務局長(民主)が2014年から昨年の第2次寺島委員会までの経過報告を行いました。なお、議員連盟は今回新規加入8人を含め総勢70人が参加していることも報告されました。

 

【会員:自民32人、民主22人、公明5人、共産2人、社民5人、日本維新2人、改革結集1人、無所属1人】

 

次に、西岡達史・外務省地球規模課題総括課長より、28年度税制改正に向けた取り組み(国際連帯税の新設要望)や国際連帯税を取りまく世界の動向について報告しました。

 

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●講演

 

1)寺島実郎氏「グローバル連帯税が切り拓く未来」

寺島氏は、次のように3つの観点から報告書の特徴を述べました。

①グローバル化とは金融経済でもある。今や金融が実体経済の4倍にも肥大化し、グローバルなレベルで格差と貧困をもたらしている。各国別に対処していてはダメである。

②この間大きな変化を迎えたのはICT(情報通信技術)基盤の進化だ。ぼう大な金融取引も捕捉可能であり、税を課すことができるようになった。

③とはいえ、連帯税導入には「段階的接近」法が肝心だ。すでに14カ国で導入されている航空券連帯税からはじめよう。今日の感染症の拡大も航空産業の発展というグローバル化と無縁ではない。航空機を利用する人はその責任を共有してもらう。

 

2)上村雄彦横浜市大教授「第2次寺島委・最終報告書のポイント」

 上村氏は端的に「最終報告書のポイント」として、次の5点を提示しました。

ⅰ)必要な資金を試算、ⅱ)グローバル連帯税の税収を試算、ⅲ)課税根拠と原則を明示、ⅳ)段階的アプローチを取る(まず1国でも導入できる航空券連帯税、続いて欧州10カ国と強調しつつ金融取引税を)、ⅴ)首相直轄のグローバル連帯税諮問会議(タスクフォース)の設置。【詳細は、パワーポイント参照】

 

●質疑

 

自民党税制調査会のメンバーからは、「28年度の税制調査会では(消費税の)軽減税率問題に時間が取られすぎ、国際連帯税を十分押し込めなかった。が、これまでは無印だったのを二重三角(中長期的課題扱い)まで何とか引き上げることができた」と発言。これを受け衛藤会長から「29年度は(他に時間が取られても大丈夫なように)早目に取り組んでいこうと事務局長と相談している」と述べました。

 

また、会長は「今後は5月G7伊勢志摩サミット、安保理非常任理事国入り、そして秋の日中韓サミットを射程に入れ国際連帯税をアピールしていきたい」とも述べました。別の議員からは「TICADの日程が8月末に決まったのでこれも射程に入れたい。ところで本日これだけの議員しか集まっていないのは問題だ。これが自民党含め国会議員の意識の低さを物語っており、たいへん遺憾だ」。

 

最後に、斉藤鉄夫会長代行(公明)が次のように発言しまとめました。「与党の税調では、毎回10項目程度共通課題として挙がるが、今年は自民党外交部会からの強い要望もあり、国際連帯税もその中に入った。衛藤会長から次のように言われている(注:会長は5分ほど前に次の会合に出掛けた)。議員連盟で総理官邸に申し入れに行こう、そして大きなうねりを創ろう、と。ともに頑張っていきましょう」。

 

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以上ですが、今回の総会はたいへん元気の出る総会でした。議員さんたちにさらに頑張っていただくために市民側で大いに盛り上げていきたいものです。【文責:田中徹二】

 

グローバル連帯税推進協議会(第2次寺島委員会)最終報告書を読む